参議院 災害対策特別委員会?◆塀?野委員、上野委員、山下委員)
平成24年6月20日(水)
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。お役に立てますよう質疑に入ります。
今回の法案で新規に定められました八十六条の二、広域一時滞在につきまして、協議を受けた市町村長が被災住民を受け入れないことについての正当な理由について現時点ではどのようなものを想定しているか、見解を求めたいと思います。
○大臣政務官(郡和子君) 改正案に盛り込まれております広域一時滞在につきましては、正当な理由がある場合を除き、被災者を受け入れる義務を課しているわけでございます。
この正当な理由についての御質問でございましたけれども、一般的には、あらかじめ指定していた被災住民の受入れ施設の収容能力を超える受入れが求められた場合、キャパシティーが超えているということになりますけれども、これは正当な理由があるというふうに考えられるのではないかと思います。
一方で、受入れ施設の収容人数が市町村の規模に比べて極端に少なくて、ほかの施設を探す努力を全くしていないような場合、これは正当な理由があるとは言えないというふうに思います。
いずれにいたしましても、正当な理由があるのかどうかにつきましては、災害の規模や被災状況、各市町村の受入れ能力等を総合的に勘案して判断すべきものと考えております。後にこれは施行通知などによって示したいというふうに考えているところです。
○秋野公造君 どうか具体的にお願いをしたいと思います。
先ほど小坂理事からもありましたが、少しストレートに聞きたいと思います。
八十六条の九に新設をされました運送事業者への運送要請を実効性あるものとするためには、東日本の震災を正確に教訓として踏まえるならば、指定公共機関をもっと増やす見直しを行う必要があるのではないでしょうか、大臣の見解を求めたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 先ほどもその点、御指摘がございました。
指定公共機関の見直しを始め、民間事業者等との協力体制の在り方については、これをしっかり幅広く検討していきたいというふうに思います。
○秋野公造君 どうぞよろしくお願いします。
今回の法案は非常に画期的なものであると私は思っています。理由は、自治体間の協力について、これまで出張として位置付けられてきたものを応援として位置付けるというような形でありますが、国が行うことについてはあくまで調整機能ということにとどめて、国が直接行うこと又は法定受託事務とすること、こういったことは今後の検討になっていくんだろうと思います。
今後の検討を行っていくに当たり、今回の東日本の震災において東北地方整備局が果たした役割をどのように評価をしているか、大臣の見解を求めたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 地方整備局は、市町村、特に市町村長さんにとっては非常に有り難かったという評価が出ているというふうに思っております。例えば、東北の地方整備局が東北自動車道と国道四号について地震発生翌日に緊急輸送道路としての機能を確保いたしまして、地震発生四日目までにいわゆるくしの歯作戦というのを太平洋沿岸までの道路啓開を行って、救急救命活動あるいは緊急物資輸送などに貢献をしたというふうに考えております。
○秋野公造君 となってきますと、今後、国の責務を考えるに当たり問題になってくるのは、国の出先機関の廃止にかかわる検討であります。
東日本の震災を本当に教訓としてとらえるならば、今回の東北地方整備局が果たした役割というのは非常に大きくなってまいります。これが地方移管により機能がなくなってしまう、失われてしまうようなことがあっては絶対にならないと思います。地方主権はやらなくてはいけないことでありますが、命を守れなくなるのであれば何の意味もありません。
東日本の震災を踏まえて、こういった地方移管ありきではなく、国の出先機関については一歩立ち止まって慎重に検討するべきではないかと考えますが、見解を求めたいと思います。
○副大臣(後藤斎君) 私、地域主権も担当を川端大臣の下でさせてもらっていますし、防災は中川大臣の下で仕事をさせてもらっています。両方兼任をしている人間として、先生御指摘のとおり、今大臣からも答弁がありましたように、地方整備局も含めた国の出先機関が昨年の東日本大震災の部分で非常に役割を大きく果たしたということについては、私は当然同感であります。
今先生が一方でお話があったように、今の検討状況というのは、少なくとも出先機関の原則廃止という大きな目標がありますが、その機能や権能、組織もなくしてしまうということではなくて、事務や権限、人材、資機材、財源を丸ごと移管をして、出先機関の持つ機能をそのまま広域連合等に引き継ぐという基本方針の下で今整理をさせていただいています。当然、その際にも、関係の市町村長や知事さん、また、今関西が先行して進んでおりますから関西広域連合の皆さん方ともお話合いをし、先生御指摘の昨年の三・一一以降の大規模災害にどう備えるかという論点も当然その中で議論になっていますし、また政府の中でもその点について十分な議論をさせていただいております。
いずれにしましても、今後、法案が、今出す準備を当然政府としてはしておりますし、その中では、例えば緊急時、緊急災害対策本部が設置された等大きな災害の場合は、国の大臣が広域連合等に対して協力指示を行う仕組みができるということも検討しておりますし、さらに、緊急対策本部の設置に至らない場合でも協力要請等を行うこととしながら、当該要請に広域連合も応諾義務を課すという検討もさせています。
いずれにしましても、こういうふうな仕組みというのは、先生が冒頭御指摘いただいたように、今の機能をきちっと維持をし、災害時にもきちっと有効であるという前提の部分で、現行の国の出先機関の機能をしっかり、仮に法案という形で成立を、広域連合に出先の事務、今三事業を考えておりますけれども、それが引き継げたとしても、きちっとそれが担保ができるような形を今政府内での最終合意形成をしておりますし、また党内での議論も含めて、関係知事会、市長会また町村会とも今最終的な詰めの作業をしているところでございます。
○秋野公造君 竜巻の災害のときに経済産業局が果たした役割等も副大臣はよく御存じのはずであります。今お話を聞いていると、国が広域連合に指示をすることができるから機能は落ちないとおっしゃいますが、本当にそれで即応性を担保できるかということはよくお考えになっていただく必要があると思っています。地域主権ありきではなく、国民の命を守るという観点でこの災害対策基本法をしっかり定めることができる妨げにならないように、どうかお願いをしたいと思います。
終わります。
○上野ひろし君 上野ひろしでございます。よろしくお願いいたします。
私も災害対策基本法改正案について質問させていただきます。
まず、今回の改正でありますけれども、平成七年の阪神・淡路大震災を契機とした大改正、それ以来の大きな改正ということだと思います。今回、昨年の大変なあの震災があったわけでありますけれども、その震災からの復旧復興に当たりまして、現行の災害対策基本法の、どのような点に問題があったと考えるのか、また、昨年来のこの一年数か月間の対応を踏まえて、どのような観点から今回改正をされるのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 東日本大震災を徹底的に検証していくということ、これが大事だというふうに思っております。
多くの教訓、課題が得られましたけれども、今回の法案においては、まず第一に、地方公共団体の対応能力を超える災害への即応力ということですね、これが大きな課題であったということ。この点を踏まえて、具体的には、被災によって市町村が被害状況の報告ができなくなった場合における都道府県による情報収集の規定、これを設けた。それから、地方公共団体間の応援について、対象業務の拡充、それから国や都道府県による調整規定、これを新設、拡充を行うということにしました。
それから第二に、支援物資の供給でありますが、これが被災者支援においてあらかじめ制度的な枠組みが整備されていなかったということで、発災当初は混乱をしまして、手探りでやっていたということなものですから、スピード感に欠けていたという反省がありました。これを踏まえて、まず物資の供給の仕組みというのを創設をしていくということ、それから市町村や都道府県の区域を越えて避難を行う枠組み、これを設けているということです。
それから第三に、防災教育ですが、釜石の奇跡のように、防災に向けた不断の努力というのが大切であるということで、住民による教訓の伝承の努力義務化、それから各防災機関における防災教育の実施、これを努力義務化を設定をいたしました。
今回の法案というのは、まずできるところからということで中間報告に基づいてやりましたけれども、これから、国家的な緊急事態への対応であるとかあるいは被災者支援対策の体系化など、総合的な他の法案も含めた対応について次の国会でまとめられるように努力をしていきたいというふうに思います。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
今、法案の内容についても御説明いただきましたので、個別に幾つかお伺いをしていきたいと思うんですけれども、この委員会でも随分議論もさせていただきました東日本大震災発生後の復旧復興に際して、我々、大変強く感じたのが、各省庁が様々な権限を縦割りで持っていることに伴う対応の遅れでありますとか、大事なことがなかなか決定をできないという状況でありました。
緊急対応が必要な震災の発生直後、災害の発生直後こそ政府が一体となって対応すべきというふうに思うんですけれども、まさにそういった国の対応、政府の対応についてどうするのか、一体となってやれるかどうかといったことこそこの災害対策基本法にしっかりと規定をすべきではないかと思うんですけれども、その点、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 御指摘のとおりでありまして、これは、政府全体として総合力を発揮していくということが大切であります。
そういう意味で、緊急災害対策本部の組織体制であるとか、あるいは本部長の権限の在り方等、今検討を進めておりまして、これも次の国会には整理をしていきたいというふうに思います。
同時に、情報という観点からいきますと、前に申し上げたとおり、ニーズがある、何がどこで起こっているかというこの情報と、それからもう一つは、それを解決するためにどこに資本があるかということ、それを両方併せて統合的な指揮権というのが発動できるんだと思うんで、そこの情報というものについてもどういうふうに組み立てていくかというのも議論をしていきたいというふうに思っております。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
是非しっかり検討いただいて、また議論もさせていただきたいと思います。
次に、今回の改正内容の中に、過去の災害からの教訓の伝承、それから防災に関する教育の実施というお話がございました。これは法律に規定をするということは大変結構だと思うんですけれども、大事なことは、いかに実効性があるものにしていくのか、具体的な中身をどうつくっていくのかということだと思います。
大臣からも、釜石の奇跡という話がございました。これは群馬大学大学院の片田教授が長年にわたって釜石市で津波防災教育をされてきて、その結果、小中学生に被害がなかったというような本当に奇跡と言われるような教育を、まさにされてきたわけでありますけれども、これはいろいろな要件が重なってこういうすばらしい結果が出たんだとは思うんですけれども、まさに、こういったことをいかに実際に教育の場でやっていくのか、また地域の場でやっていくのかといった、法律に規定をした後の取組が大事なのではないかと思うんですけれども、その辺りどう取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 訓練を通じてということだと思うんですね。そのときに、学校教育の中でもちろんいろんな工夫をしながら子供たちの防災意識を高めていくということなんですが、学校教育とそれから地域、あるいは関係の民間機関、企業等々を含めて総合的な訓練の体系をつくる、それを実施をしていくということ、これについてしっかり考えていかなきゃいけないということだと思います。
それからもう一つは、今回の教訓では広域ということがあると思うんです。市町村単位あるいは県単位で訓練の体系というのはできていますが、まだしかし、さっきの統計的に見たら実際にやっているところは十分ではないという結果が出ていますけれども、それを徹底的にやるということと、広域、市あるいは県を越えた広域の取組というのを構築をしていくということが大事だというふうに思っております。
そういう意味で、具体的には首都直下それから南海トラフでその訓練体系と、それからもう一つは地方自治体と一緒に防災の計画を作り上げていくという、地方自治体からの意見をくみ上げるという、その機能を両方兼ねた形で協議会をつくりまして、ブロック単位で一つ広域の訓練ということに対して結び付けていきたいというふうに思っています。
○上野ひろし君 是非しっかりと対応をお願いをしたいと思います。単に教育をする、単に訓練をするというだけではなくて、是非、実効性が上がるような仕組みでありますとか工夫をしていただけると有り難いと思います。
次に、広域一時滞在に関する規定が、今回の改正で盛り込まれております。
今回の東日本大震災のときの状況を見ますと、避難する被災者の方々それから受入先、これをしっかり把握をして、例えば政府でありますとかどこかが一元的に把握をして調整をして、しっかりマッチングをするような仕組みが必要なのではないかと思います。今回、この一年間の状況を見ますと、たまたま姉妹都市提携を結んでいるとか、また、たまたま首長さん同士が連携をできたといった個別の事情によって受入先が決まったというケースも随分あったのではないかと思います。
一方で、どこに住んでいても速やかに避難先、広域一時滞在先が決まるということは、災害の発生後、本当に大事なことだと思うんですけれども、その辺りをどのように手当てをされるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 一時滞在を広域的に展開するということについては、今回の災害では事前の備えが十分ではなかったということが指摘がされると思います。
この枠組みによる市町村間あるいは都道府県間の被災者の受入れに係る調整、これを事前にやっていくこと、これはもちろんでありますが、それが事が起こったときに十分にできなかったということについて、改正法第八十六条の六において、被災都道府県知事が広域一時滞在を行おうとしても容易に協議の相手先を見付けることができない場合や、都道府県の区域を越えた行政サービスが適切に行われるための備えとして、内閣総理大臣による協議の相手先等に係る助言規定というのを設けたということであります。
ですから、事前に様々な協定のネットワーク、これをつくるという努力をしておくということ、それでいざというときに、それでもなかなか調整できなかったというところでこの助言規定を生かすというような体系で進めていきたいということであります。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
是非その規定、助言ということでありますけれども、しっかり機能するようにしていただければと思います。
次に、先ほど大臣からもお話がありましたが、今回の東日本大震災発災直後、物資の輸送について大変な混乱が生じたということであります。今回様々な規定が盛り込まれているということだと思うんですけれども、それについて何点かお伺いをしたいと思います。
まず、支援物資の供給、運送につきまして、これは、どこかで一元的に全体を把握して調整をするような仕組みが必要なのではないかというふうに思います。
今回の災害では、どの地域でどういう支援物資に対するニーズがあるのかというのが特に当初、なかなか明らかにならなかったということで、支援物資を送る側とのギャップ、そごが生じていたということがあったのではないかと思います。また、支援物資の運送主体についても、自衛隊も搬送している、また各自治体が個別に搬送もする、また場合によっては民間の方々、また個人の方々が個別に届けるというケースもあったんだと思います。
どこで何が必要なのかというニーズを的確に把握をした上で、そこに誰が何を届けるのかといったことをきちんと混乱しないように指示をする、又は調整をするといったような仕組みが必要なのではないかと思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 問題が二つあったと思うんです。一つは、支援物資の調達、供給というのが需要追従型ということであったので、情報が取れなかったということから非常に遅れてしまったということ、この反省に基づいてプッシュ型を一つ入れたということですね。それからもう一つは、大量の物資が県の集積拠点にあふれてしまって、不慣れな行政職員による業務であったということで、そこから先が届かなかったということですね。そういう意味で、専門家の支援というのを途中で入れた、いわゆる運送業者が直接それに携わるということになって、それ以降、物資拠点の在庫管理や避難所への配送というのが円滑に行われたということがありました。
これらの反省、教訓を踏まえまして、物資要請の受付、それから物資調達の調整、それから輸送調整の各段階を一元的に管理をして、物資の供給状況を被災地方公共団体に提供する新システム、新しいシステムというのを本年度末までに構築をしていきたいと。政府、調達業者、それから輸送業者及び被災地方公共団体との情報の共有化をそれによって図っていくということで、これを物流専門家のノウハウを導入して防災計画の基本計画に位置付けていきたいというふうに思っております。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
今、若干後半の方で御答弁もいただいたかと思うんですけれども、今回プッシュ型にされるという話がございました。今回の震災で問題になったのは、まさに各地域までは物資が届くんだけれども、その先、個々の被災者の方々がそもそもどこにいらっしゃるのかなかなか把握ができなかった、また、その被災者の方々個人がどういう物資に対するニーズがあるのか分からなかった、また、集積所までは届くんだけれども、地方自治体の方々のマンパワーも不足をしていて、物資の仕分作業だけでもう手いっぱいになってしまったという状況があったのではないかと思います。
プッシュ型にされるというお話もありましたけれども、プッシュ型がうまく機能する前提として、その現場で混乱が生じないような体制の整備でありますとか、また地方に行ってから個々の被災者の方々に、また避難所にどう届けるのかといった点が整備をされていないと、そういった前提がしっかり確保されていないとプッシュ型で物を送っても、また地方に物資が山積みになってその先に流れないということになるんだと思いますけれども、その辺りの手当てをどうするのかといった点についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 二つの点があるんだと思うんですね。どこに何があるかという供給をする物資の情報の把握と、それから供給先ですね、これについての把握ということだと思うんですが、これを東日本大震災における反省を受けて、民間物資拠点のリストアップとそれから官民の連携協力体制の構築ということは、もうふだんから物流業者というのはどこに何があってどういうところに何を送っているか、どういうルートでというのはつかんでいますから、そういう意味での連携協力体制というのを、構築などについて取りまとめを実は国土交通省で行っております。
内閣府においては、関係省庁や物流事業者とともに物資調達それから輸送調整を一元的に管理するシステム、これを先ほど申し上げたように構築を進めておりまして、物流専門家あるいは地方公共団体、あるいはそれぞれのノウハウの導入等々含めて完成をさせて、そして防災基本計画にこれを位置付けていくということで対応をしていく所存でございます。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
是非しっかりとした管理システムといいますか、そういった調整をするような仕組みができることがこの今回の改正のまた前提にもなると思いますので、しっかりとした対応をお願いをしたいと思います。
次に、今回の法律改正に当たってどういった災害を想定をしているのかといった点についてお伺いをしたいと思います。
この改正でありますけれども、東日本大震災の発生時において、特に被災した市町村の機能が低下をしたということを踏まえて、都道府県でありますとか国の役割というのを新たに規定をするといった点があるんだと思います。
一方で、そもそも今後どういう災害が発生をするのかといったことを考えてみると、例えば都道府県の機能自体が失われるという可能性もあると思いますし、例えば首都直下型の地震といったことを考えてみれば、国の機能自体が失われるといったことも我々は想定をしなければいけないんだと思います。
そういった点について、今回の改正も含めてどう対応していくのか、この災害対策基本法上どう規定をしていくのかといった議論は当然必要なんだと思うんですけれども、大臣の見解をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 確かに、御指摘のように、現行の制度では、都道府県が機能低下した場合には、都道府県の行うべき災害応急対策や災害復旧などが、国が代行する、あるいは直接自らの事務権限とするということについては規定をされていないという事実があります。
それゆえに、それこそ東日本大震災を超える、あるいはまた地形的に南海トラフなどに面しているところではその可能性もやっぱりあるんだと思うんで、そういうより巨大な災害というのが発生したときには国家的緊急事態ということになると思うんですが、これについて引き続き防災対策推進検討会議で議論をしていただくと、その上での法改正というのを考えていかなければならないというふうに思っております。
また、首都直下地震ということがあるわけですが、これの問題は首都中枢機能をどういうふうに維持していくかということで、前半にも御議論ありましたけれども、BCP、それぞれの省庁あるいは民間企業等々も含めてこれを確実なものにしていくということであります。一旦そうしたBCP、書かれていたんですけれども、先ほど平野大臣の御答弁にもありましたように、これ、そんな想定では駄目だということで、改めてシビアな想定の下にこのBCPを今検討をしております。同時に、バックアップということについても更なる検討をしていかなければならないというふうに思っています。
○上野ひろし君 ありがとうございました。
この法律、またしっかり、施行の状況も踏まえて議論もさせていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。
○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
阪神・淡路大震災の救援、復旧復興活動では、コミュニティーの維持、再生が非常に重要であることが教訓の一つとされました。阪神・淡路では、避難所から仮設住宅、仮設から復興公営住宅と被災者が移動をするたびにコミュニティーがばらばらにされてしまったわけです。大変悲しいことではありますけれども、震災では助かった命が後に復興公営住宅で相次いで孤独死するということが起こり、今もそういう状態が続いているわけであります。
その後の中越、中越沖、あるいは東日本大震災においては、こういう阪神の教訓、負の教訓を生かして、地域のきずな、御近所同士のつながり、コミュニティーの維持、再生が不可欠という見地が重視されてきたと思います。防災対策推進検討会議の中間報告でも、その旨、指摘されております。
そこで、平野復興担当大臣、なぜ復興復旧においてコミュニティーの維持、再生が不可欠なのか、改めて認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(平野達男君) 被災者は、いろんなことで精神的あるいは物資という面でも非常な困難に直面します。公助というのはもちろんございますけれども、基本はやっぱり自助、共助ということで、そういう中でのお互いの助け合い、それは物資という面の助け合いもございますし、しかし、何よりもやっぱり精神的な面での助け合いということがやっぱりこれは非常に重要なことでありまして、これは別にきずなという言葉がございますけれども、このきずなの重要性、それからコミュニティーの重要性、これは今回の東日本大震災の中での今の避難されている方々の仮設住宅の生活状況を見ていても、これは強く再確認をさせられるところであります。
○山下芳生君 そこで次に、阪神・淡路大震災の際に、被災者の恒久住宅を確保するための一つの手段として、復興公営住宅の建設とともに、民間のアパートやマンションの建設費を支援して丸ごとそれを借り上げたり、それからURや民間の既存の住宅を借り上げたりして公営住宅として提供する借り上げ復興公営住宅制度というものが活用されました。現在、そうした借り上げ住宅が兵庫県と神戸市合わせて五千九百戸あります。
それが今、兵庫県や神戸市が、URや民間オーナーとの二十年の契約期間が切れるということを理由にして入居者に住み替えを迫るという事態が生じております。入居者の多くは高齢で、八十にもなって引っ越しはつらいですとか、移転の予告にこの先どうなるのか毎日のように悩んでいますとか、ここに来たときは期限の話なんかなかった、先が短いのに住み慣れたこの場所で身を埋めたいです、助けてくださいとか、郊外の市営住宅に引っ越しとなればかかりつけの病院に行けなくなるとか、追い出さんといてなどの声が上がっております。
中川大臣、こういう事態が起こっていることを御存じですか。
○国務大臣(中川正春君) 借り上げ公営住宅について、二十七年度からこれは順次借り上げ期間の満了を迎えるということになるというふうに認識をしておりまして、この期間の満了に際して、御指摘のように、入居者の居住の安定確保、これを図っていくということが重要な課題であると思っております。
現在、兵庫県や神戸市において対応方策について検討をしているというふうに連絡を受けておるところであります。
○山下芳生君 私、これは兵庫県や神戸市の問題ではないと思っております。なぜなら、災害公営住宅というのは借り上げの場合も含めて国の制度だからです。国のこれは国費も使って国の政策で行われたものでありまして、だから、これは国の制度なんだと、この確認が一点。
それからもう一つは、兵庫県や神戸市は、先ほど紹介したように、民間オーナーあるいはURとの二十年の契約期間が切れるので、もう住み替えてもらうしかないんだと、ほかに方法がないかのような説明を行っております。しかし、私は、市や県がこのURや民間オーナーと新たに契約を結べば希望する入居者は引き続き住み続けることが可能なのではないか、そのための国の支援もあるのではないかと考えますが、国交省、御説明いただきたい。その二点、よろしくお願いします。
○政府参考人(渡延忠君) お答えを申し上げます。
ただいま委員から御指摘がありましたとおり、阪神・淡路大震災の被災者向けの災害公営住宅については、公営住宅法の規定に基づきまして、地方公共団体が建設するほか、民間賃貸住宅等を借り上げて供給がなされたところでございます。
公営住宅法、もちろん法律がございますが、同法におきましては、公営住宅供給の事業主体は都道府県又は市町村ということになっております。国は、これに対して所定の財政援助を行う形でその環境整備について支援申し上げるというのが基本の構造でございます。
ただいま御指摘がありましたとおり、借り上げの公営住宅につきましては、平成七年発災当時の法令の下で上限とされます二十年の借り上げ期間を定めたという事実がございます。これを経て、平成二十七年度から順次借り上げ期間の満了期を迎えることと承知いたしております。期間の満了に際しましては、ただいま御指摘がありましたとおり、入居者の居住の安定、生活の維持に配慮することが必要なのはもちろんのことと考えております。
借り上げ期限の到来時におきましては、御指摘がありましたように様々な方法がございます。借り上げ期間が到来した住宅を公営住宅として再度借り上げる、あるいは借り上げ期間が到来した住宅を公営住宅として買い取る、あるいは地域における他の公営住宅に入居できるように自治体があっせんする等々の方策が考えられるところでございます。
いずれにしましても、高齢化の進んでいる入居者の御希望、御要望などを十分踏まえることが必要と考えておりまして、現在、兵庫県あるいは神戸市など関係自治体におきましては対応方策をよく入居者の御要望も伺いながら検討中と聞いておるところでございます。
入居者の居住安定確保が図られるよう、国土交通省といたしましても、地方公共団体の方針を踏まえまして、その御相談にも乗りつつ必要な支援を引き続き行ってまいりたいと考えております。
○山下芳生君 今説明があったように、これ二十年来たからもう出ていってくださいよというだけではないわけですね。別に道はあるということです。
今、公営住宅の実施主体は地方自治体ということがもちろん説明あったわけですが、当然そうなんですけれども、制度としては、国の制度として国費も出ているわけですね。そもそもこの災害公営住宅制度の目的というのは、震災のときにおいて、住宅復興をする際に自分の力だけでは住宅再建を果たせない被災者に対して恒久住宅を提供して居住の安定を図るということが目的だというふうにされておりますけれども、その制度の下で今居住の安定が脅かされているという事態が起こっているんですね。
県や市が入居者の希望を聞いてというふうに今表現されましたけど、余り希望に即した対応がされているという実態ではないと私は現場の声を聞いております。だから今、心配しているんですよ。もう追い出されるんじゃないか、出ていくしかないのかという先ほどの声が出ているわけですね。だから、これはやっぱりほっといたらあかん、国としてかかわっていかなければならない問題だと思っております。
入居者の声をもう少しリアルに紹介したいと思います。
全盲の視覚障害の方、この方は神戸市東灘区にあるURの借り上げ住宅にお住まいの方です。実は、ちょうど昨日、神戸市議会で借り上げ復興住宅の入居継続を求める請願が審議されまして、この方は請願者として意見陳述をされました。紹介します。
大震災で夫を亡くし、還暦を過ぎた私は、この先どこへ行ってどうやって生きていけばいいのでしょうか。知らない土地へ行けば、文字どおり右も左も分かりません。団地に住めば、同じような建物ばかりで自分のうちに帰るのも一苦労です。今盲導犬と住んでいます。近所に何があるのか、駅への道はどうなっているのか、それらをまず自分が覚えて犬に教えるのです。新しいところに移れと言われても簡単にできません。視覚障害者の多くは、はりやマッサージなどの治療で細々と生計を立てています。この不況下で治療を受ける人は減っています。知らない土地へ移って、治療に来てくれる人がいるでしょうか。今のUR住宅に住み続けるなら家賃は十万円以上、契約の際、四か月分以上を前納する必要があるという通知が神戸市から届いています。そんなことができるなら苦労しません。入居当初はいろいろ困難がありましたが、今は団地の皆さんが温かく手伝ってくれたり見守ってくださいます。どうか追い出さないでください、住み続けさせてくださいという意見陳述であります。
私も以前、借り上げ公営住宅を訪ねまして、四人の方に直接それぞれ入居の経過や生活状況を聞きました。共通していたのは、仮設住宅から早く出たいと申し込んだ公営住宅に何回も落選しながら、やっと当たったのが今の住宅だった、それがたまたま借り上げだったということです。そして、二十年たったら出ていかなければならないとの認識はなかったということであります。これは非常に重大な問題なんですね。しかも、退去の対象となっている方々は皆さん高齢で、一番早い退去の期間は三年後ですけれども、そのときには八十歳や九十歳になっておられる方であります。
御自身が民間借り上げ住宅に住んでおられる被災者ネットワークという被災者を支援する団体の代表、安田秋成さん、この方も八十代後半ですけれども、安田さんは、四十代、五十代の人の転居と違って、病院やかかりつけの医者、近所のスーパーの特売日など生活全体が根本から崩れる、それが一番心配とおっしゃっておりました。
私、聞いていて、これは命に直結する問題だと感じたわけですね。震災で何度も転居を強いられて苦労をされてきた高齢の被災者に、人生の最終盤でこんな冷たい仕打ちはないと思います。安心して住み続けてもらえるように政治の役割を果たさなければならないと感じた次第ですが、中川大臣、これは命に直結する問題、人道問題として対応すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) 住み慣れた地域で引き続き暮らしたいという被災者の方々の思いというのは十分理解ができるというふうに思います。また一方で、コミュニティーの維持といった観点からも配慮が必要であるというふうに思っております。
それぞれ現在の状況を踏まえた選択ができるように、行政が借り上げ期間の満了時の対応として入居者に複数の選択肢を示していくということも一方で大事なことではないかと思っておりまして、こういうことをそれぞれしんしゃくしながら、それぞれ入居者の意向を十分確認をしていくという作業、これが大切なことだというふうに思っております。
○山下芳生君 入居者に複数の選択肢が示されているというのはどういうことですか。私のちょっと理解とは違うんですが。
○国務大臣(中川正春君) それぞれ家庭の状況なりなんなりがあると思うんですね。一律にそこに住み続けていきたいという人ばかりとは限らないということも想定しながら考えていかなきゃいけないということだと思うんです。
○山下芳生君 おっしゃるとおり、もう移ってもいいよと、別の公営住宅に行きますよと行った方もいるんですね。
しかし、行けない方、さっき紹介したような、もう八十歳、九十歳になられた、あるいは視覚障害、全盲の方、こういう方は行けないですよね。そういう方にも今残念ながらとられているのは、期限が来たら出ていっていただきますと。それで今悩んでいるわけですね、苦しんでいるわけですよ。だから、そういう方には、これはやっぱり残れるという選択肢を示す必要が私は人道上あるんじゃないかと思いますが、それはいかがですか。
○国務大臣(中川正春君) 確定的に残れるという選択肢がないのかということについては、ちょっと私も確認をしていないので、もう少しそこのところ、現状というのを確認しながら、できることをしていきたいというふうに思っております。
○山下芳生君 確認していただきたいんですが、今ないんです。さっき国交省の説明がありましたけれども、制度としてはあるんですが、神戸市と兵庫県の選択肢の中にはないんです。それで大変苦しんでいるんです。
私は、これ兵庫県、神戸市で起こっている借り上げ復興住宅からの事実上の追い出し問題を許していたら、これは東日本大震災の復興やその後の大災害の復興でも同じようなことが起こるということになると思うんですね。そんなことを許しちゃならない。あるいは、もう借り上げ方式でスピーディーに公営住宅を提供することのこれは障害になりかねないと思います。もし借り上げ方式のところに入っちゃったら、二十年後、年取ったときに出ていかなあかんみたいなことになったら、そこには行きませんという方さえ多分出るでしょう。だから、これはすぐれて神戸や兵庫だけの問題ではない、東日本や今後の大災害にも直結する大きな問題だと思うんですが、そういう認識も持って当たっていただきたいんですが、いかがですか。
○国務大臣(中川正春君) 被災者の立場に立って丁寧に対応していくということ、これが重要だと思います。
国としても、自治体としっかり相談をして、入居者の居住の安定確保、これに向けて必要な支援を構築していくべきというふうに考えております。
○山下芳生君 もう一つ、入居者の方とともに、この借り上げ住宅を提供された民間賃貸マンションのオーナーの方、この方々からもいろいろ声が出ています。これを一つ紹介します。
震災当時、市の要請にこたえて自分の土地にマンションを建て、市に提供しました。建設費約二億円。バリアフリーなど公営住宅仕様にするために建設単価は高くなった。市の担当者は借り上げ期間は延長されると何度も説明した。今になってほっぽり出すのか。ローンを払える家賃にすると高くなり、入居者がいない。我々のような素人をマンション経営に引っ張り込んだのは神戸市ではないか。市の対応に怒っている。これらのオーナーは借り上げ契約の再契約を求めて民間借上復興住宅所有者協議会を各行政区ごとに立ち上げ、今神戸市と交渉を重ねていますということでありました。
だから、大変な震災でしたから、公営住宅確保するために土地を持っている方々に建ててくださいと市から頼んで、それまでやったことないけれども、分かりました、貢献できるならと建てた方がたくさんいるんですね。そういう方々が今もう打切りだということで、この方々も苦しんでおります。入居者も苦しんでおります。
ですから、大臣、最後に、やっぱりこれは放置してはならないと思うんですね。まだ何年かあるから、そのうちに調整しようではないと思います。もう既にあと三年たったら出ていかなければならないのかということで、もう何年も後こういう不安な気持ちをさせるということ自体が許されないと思います。
国の制度の下で起こっている問題、人道上の問題、そして東日本を始め今後の災害復興にも影響する問題。私は、国が主導してこの追い出し問題を解決するために、県や市と相談、調整を早くやるべきだと。そして、その上で、今もある支援策に加えて更に必要な支援策があるのなら、それも検討すべきだと。是非国がイニシアチブを取っていただきたい、そう思いますが、もう一度大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) 現在、県や市において説明会の開催や入居者の意向確認等も実施しているところだというふうに聞いております。改めて、その結果、そしてそれぞれ自治体の意向、あるいは先ほど御指摘いただいた入居者の皆さん、またオーナーの皆さんの意向、総合してしっかり私なりにチェックをして、整理をしていきたいというふうに思います。
○山下芳生君 調整して、聞いていただいて、チェックしていただいて、こういう追い出しが、もうあの震災をくぐり抜けた方が二十年たって高齢になって希望しないのに出ていかなあかんということは、これはやっぱりないようにする、それが国の役割だと思いますが、そういう点でイニシアを発揮していただきたい。いかがですか。
○国務大臣(中川正春君) 人と人とのつながりを持って生活をしていくということは、その人の心身の健康、これを確保するとともに、自立に向けた意欲というものを維持向上させるということにもつながっていくということ、これは今回の東日本大震災に対する対応ということについても原則だと思います。そういうことを踏まえて、重要な問題であるというふうに考えて、対応をしていきたいというふうに思います。
○山下芳生君 終わります。
○委員長(松下新平君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
災害対策基本法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
○委員長(松下新平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、加治屋義人君から発言を求められておりますので、これを許します。加治屋義人君。
○加治屋義人君 私は、ただいま可決されました災害対策基本法の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会、自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会、公明党、みんなの党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
災害対策基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一 過去の災害からの教訓の伝承及び防災に関する教育の実施については、多様な主体による取組を推進するため、国による財政上の措置を含め、可能な限りの支援を行うこと。特に学校教育においては、災害発生時に児童・生徒が自ら適切な行動を取れるよう、自然災害、避難等に関する正しい知識の習得や訓練の実施等に関し配慮すること。
二 地理空間情報の活用については、都道府県及び市町村が十分に活用できるものとするため、情報の内容、共有、利用方法等に留意してシステムを構築するなど、真に災害対策に有用な、実効性のあるものとするとともに、NPOやボランティアなど、災害に関与する団体及び個人を含め、広く国民に対する情報提供にも活用すること。
三 地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害時において、内閣総理大臣による応援要求等被災地に対して的確な災害応急対策を実施することができるよう、関係省庁の情報収集体制の整備を図るとともに、内閣の情報集約機能の強化を図ること。
四 応援の要求、広域一時滞在、物資・資材の供給など、国及び都道府県による関与が充実強化されたものについては、適時適切な応援、被災住民の受入れ及び物資等の供給がなされるよう、その仕組みを十全に機能させること。また、広域的な災害応急対策等の応援等の実効性を高めるため、知事会、市長会や町村会との連携を進めること。
五 円滑な応援の受入れ及び他者への応援については、災害発生時の初動対応において極めて重要であることから、都道府県及び市町村による広域的な協定の締結、訓練の実施等が促進されるよう、国としても積極的に取り組むこと。
六 救援物資等を被災地に確実に供給するためには、現在の国及び地方の指定公共機関である運送事業者だけでは運送の対象となる物資が限定されるなど、不十分なことが懸念されることから、陸上のみならず海・空にわたる輸送に関する事業者の指定の在り方について検討すること。さらに、国及び地方の指定公共機関については、今後の防災対策推進検討会議における検討等も踏まえ、医療機関等も含め指定公共機関の更なる拡充について検討すること。
七 国、都道府県及び市町村の防災会議の委員の任命については、女性、障がい者、高齢者など、社会及び地域の実情に応じて多様な主体の参画が確保されるよう、今後とも制度及び運用の改善に努めること。
八 今回の改正では、災害応急対策責任者や災害予防責任者など、国や地方の公的立場にある者の役割が強化されたが、東日本大震災では、NPOやボランティアなどが大きな役割を果たしたことから、災害の予防、災害からの復旧及び復興など、災害全般においてかかる主体の果たす役割についても、引き続き検討を進めること。
九 これからの災害対策基本法改正に向けて、避難や減災など災害に対する基本的考え方をはじめ、防災会議や災害対策本部など組織・権限の在り方、大規模災害発生時の災害緊急事態の布告の内容やその手続、さらに災害からの復興の進め方に至るまで、現行法のあらゆる問題点について迅速に検討を進め、必要な法案を策定し、提出すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
以上です。
○委員長(松下新平君) ただいま加治屋君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
○委員長(松下新平君) 全会一致と認めます。よって、加治屋君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、中川防災担当大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中川防災担当大臣。
○国務大臣(中川正春君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重して、適切な措置の実施に努めてまいります。
ありがとうございました。
○委員長(松下新平君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
○委員長(松下新平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
今回の法案で新規に定められました八十六条の二、広域一時滞在につきまして、協議を受けた市町村長が被災住民を受け入れないことについての正当な理由について現時点ではどのようなものを想定しているか、見解を求めたいと思います。
○大臣政務官(郡和子君) 改正案に盛り込まれております広域一時滞在につきましては、正当な理由がある場合を除き、被災者を受け入れる義務を課しているわけでございます。
この正当な理由についての御質問でございましたけれども、一般的には、あらかじめ指定していた被災住民の受入れ施設の収容能力を超える受入れが求められた場合、キャパシティーが超えているということになりますけれども、これは正当な理由があるというふうに考えられるのではないかと思います。
一方で、受入れ施設の収容人数が市町村の規模に比べて極端に少なくて、ほかの施設を探す努力を全くしていないような場合、これは正当な理由があるとは言えないというふうに思います。
いずれにいたしましても、正当な理由があるのかどうかにつきましては、災害の規模や被災状況、各市町村の受入れ能力等を総合的に勘案して判断すべきものと考えております。後にこれは施行通知などによって示したいというふうに考えているところです。
○秋野公造君 どうか具体的にお願いをしたいと思います。
先ほど小坂理事からもありましたが、少しストレートに聞きたいと思います。
八十六条の九に新設をされました運送事業者への運送要請を実効性あるものとするためには、東日本の震災を正確に教訓として踏まえるならば、指定公共機関をもっと増やす見直しを行う必要があるのではないでしょうか、大臣の見解を求めたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 先ほどもその点、御指摘がございました。
指定公共機関の見直しを始め、民間事業者等との協力体制の在り方については、これをしっかり幅広く検討していきたいというふうに思います。
○秋野公造君 どうぞよろしくお願いします。
今回の法案は非常に画期的なものであると私は思っています。理由は、自治体間の協力について、これまで出張として位置付けられてきたものを応援として位置付けるというような形でありますが、国が行うことについてはあくまで調整機能ということにとどめて、国が直接行うこと又は法定受託事務とすること、こういったことは今後の検討になっていくんだろうと思います。
今後の検討を行っていくに当たり、今回の東日本の震災において東北地方整備局が果たした役割をどのように評価をしているか、大臣の見解を求めたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 地方整備局は、市町村、特に市町村長さんにとっては非常に有り難かったという評価が出ているというふうに思っております。例えば、東北の地方整備局が東北自動車道と国道四号について地震発生翌日に緊急輸送道路としての機能を確保いたしまして、地震発生四日目までにいわゆるくしの歯作戦というのを太平洋沿岸までの道路啓開を行って、救急救命活動あるいは緊急物資輸送などに貢献をしたというふうに考えております。
○秋野公造君 となってきますと、今後、国の責務を考えるに当たり問題になってくるのは、国の出先機関の廃止にかかわる検討であります。
東日本の震災を本当に教訓としてとらえるならば、今回の東北地方整備局が果たした役割というのは非常に大きくなってまいります。これが地方移管により機能がなくなってしまう、失われてしまうようなことがあっては絶対にならないと思います。地方主権はやらなくてはいけないことでありますが、命を守れなくなるのであれば何の意味もありません。
東日本の震災を踏まえて、こういった地方移管ありきではなく、国の出先機関については一歩立ち止まって慎重に検討するべきではないかと考えますが、見解を求めたいと思います。
○副大臣(後藤斎君) 私、地域主権も担当を川端大臣の下でさせてもらっていますし、防災は中川大臣の下で仕事をさせてもらっています。両方兼任をしている人間として、先生御指摘のとおり、今大臣からも答弁がありましたように、地方整備局も含めた国の出先機関が昨年の東日本大震災の部分で非常に役割を大きく果たしたということについては、私は当然同感であります。
今先生が一方でお話があったように、今の検討状況というのは、少なくとも出先機関の原則廃止という大きな目標がありますが、その機能や権能、組織もなくしてしまうということではなくて、事務や権限、人材、資機材、財源を丸ごと移管をして、出先機関の持つ機能をそのまま広域連合等に引き継ぐという基本方針の下で今整理をさせていただいています。当然、その際にも、関係の市町村長や知事さん、また、今関西が先行して進んでおりますから関西広域連合の皆さん方ともお話合いをし、先生御指摘の昨年の三・一一以降の大規模災害にどう備えるかという論点も当然その中で議論になっていますし、また政府の中でもその点について十分な議論をさせていただいております。
いずれにしましても、今後、法案が、今出す準備を当然政府としてはしておりますし、その中では、例えば緊急時、緊急災害対策本部が設置された等大きな災害の場合は、国の大臣が広域連合等に対して協力指示を行う仕組みができるということも検討しておりますし、さらに、緊急対策本部の設置に至らない場合でも協力要請等を行うこととしながら、当該要請に広域連合も応諾義務を課すという検討もさせています。
いずれにしましても、こういうふうな仕組みというのは、先生が冒頭御指摘いただいたように、今の機能をきちっと維持をし、災害時にもきちっと有効であるという前提の部分で、現行の国の出先機関の機能をしっかり、仮に法案という形で成立を、広域連合に出先の事務、今三事業を考えておりますけれども、それが引き継げたとしても、きちっとそれが担保ができるような形を今政府内での最終合意形成をしておりますし、また党内での議論も含めて、関係知事会、市長会また町村会とも今最終的な詰めの作業をしているところでございます。
○秋野公造君 竜巻の災害のときに経済産業局が果たした役割等も副大臣はよく御存じのはずであります。今お話を聞いていると、国が広域連合に指示をすることができるから機能は落ちないとおっしゃいますが、本当にそれで即応性を担保できるかということはよくお考えになっていただく必要があると思っています。地域主権ありきではなく、国民の命を守るという観点でこの災害対策基本法をしっかり定めることができる妨げにならないように、どうかお願いをしたいと思います。
終わります。
○上野ひろし君 上野ひろしでございます。よろしくお願いいたします。
私も災害対策基本法改正案について質問させていただきます。
まず、今回の改正でありますけれども、平成七年の阪神・淡路大震災を契機とした大改正、それ以来の大きな改正ということだと思います。今回、昨年の大変なあの震災があったわけでありますけれども、その震災からの復旧復興に当たりまして、現行の災害対策基本法の、どのような点に問題があったと考えるのか、また、昨年来のこの一年数か月間の対応を踏まえて、どのような観点から今回改正をされるのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 東日本大震災を徹底的に検証していくということ、これが大事だというふうに思っております。
多くの教訓、課題が得られましたけれども、今回の法案においては、まず第一に、地方公共団体の対応能力を超える災害への即応力ということですね、これが大きな課題であったということ。この点を踏まえて、具体的には、被災によって市町村が被害状況の報告ができなくなった場合における都道府県による情報収集の規定、これを設けた。それから、地方公共団体間の応援について、対象業務の拡充、それから国や都道府県による調整規定、これを新設、拡充を行うということにしました。
それから第二に、支援物資の供給でありますが、これが被災者支援においてあらかじめ制度的な枠組みが整備されていなかったということで、発災当初は混乱をしまして、手探りでやっていたということなものですから、スピード感に欠けていたという反省がありました。これを踏まえて、まず物資の供給の仕組みというのを創設をしていくということ、それから市町村や都道府県の区域を越えて避難を行う枠組み、これを設けているということです。
それから第三に、防災教育ですが、釜石の奇跡のように、防災に向けた不断の努力というのが大切であるということで、住民による教訓の伝承の努力義務化、それから各防災機関における防災教育の実施、これを努力義務化を設定をいたしました。
今回の法案というのは、まずできるところからということで中間報告に基づいてやりましたけれども、これから、国家的な緊急事態への対応であるとかあるいは被災者支援対策の体系化など、総合的な他の法案も含めた対応について次の国会でまとめられるように努力をしていきたいというふうに思います。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
今、法案の内容についても御説明いただきましたので、個別に幾つかお伺いをしていきたいと思うんですけれども、この委員会でも随分議論もさせていただきました東日本大震災発生後の復旧復興に際して、我々、大変強く感じたのが、各省庁が様々な権限を縦割りで持っていることに伴う対応の遅れでありますとか、大事なことがなかなか決定をできないという状況でありました。
緊急対応が必要な震災の発生直後、災害の発生直後こそ政府が一体となって対応すべきというふうに思うんですけれども、まさにそういった国の対応、政府の対応についてどうするのか、一体となってやれるかどうかといったことこそこの災害対策基本法にしっかりと規定をすべきではないかと思うんですけれども、その点、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 御指摘のとおりでありまして、これは、政府全体として総合力を発揮していくということが大切であります。
そういう意味で、緊急災害対策本部の組織体制であるとか、あるいは本部長の権限の在り方等、今検討を進めておりまして、これも次の国会には整理をしていきたいというふうに思います。
同時に、情報という観点からいきますと、前に申し上げたとおり、ニーズがある、何がどこで起こっているかというこの情報と、それからもう一つは、それを解決するためにどこに資本があるかということ、それを両方併せて統合的な指揮権というのが発動できるんだと思うんで、そこの情報というものについてもどういうふうに組み立てていくかというのも議論をしていきたいというふうに思っております。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
是非しっかり検討いただいて、また議論もさせていただきたいと思います。
次に、今回の改正内容の中に、過去の災害からの教訓の伝承、それから防災に関する教育の実施というお話がございました。これは法律に規定をするということは大変結構だと思うんですけれども、大事なことは、いかに実効性があるものにしていくのか、具体的な中身をどうつくっていくのかということだと思います。
大臣からも、釜石の奇跡という話がございました。これは群馬大学大学院の片田教授が長年にわたって釜石市で津波防災教育をされてきて、その結果、小中学生に被害がなかったというような本当に奇跡と言われるような教育を、まさにされてきたわけでありますけれども、これはいろいろな要件が重なってこういうすばらしい結果が出たんだとは思うんですけれども、まさに、こういったことをいかに実際に教育の場でやっていくのか、また地域の場でやっていくのかといった、法律に規定をした後の取組が大事なのではないかと思うんですけれども、その辺りどう取り組んでいくのか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 訓練を通じてということだと思うんですね。そのときに、学校教育の中でもちろんいろんな工夫をしながら子供たちの防災意識を高めていくということなんですが、学校教育とそれから地域、あるいは関係の民間機関、企業等々を含めて総合的な訓練の体系をつくる、それを実施をしていくということ、これについてしっかり考えていかなきゃいけないということだと思います。
それからもう一つは、今回の教訓では広域ということがあると思うんです。市町村単位あるいは県単位で訓練の体系というのはできていますが、まだしかし、さっきの統計的に見たら実際にやっているところは十分ではないという結果が出ていますけれども、それを徹底的にやるということと、広域、市あるいは県を越えた広域の取組というのを構築をしていくということが大事だというふうに思っております。
そういう意味で、具体的には首都直下それから南海トラフでその訓練体系と、それからもう一つは地方自治体と一緒に防災の計画を作り上げていくという、地方自治体からの意見をくみ上げるという、その機能を両方兼ねた形で協議会をつくりまして、ブロック単位で一つ広域の訓練ということに対して結び付けていきたいというふうに思っています。
○上野ひろし君 是非しっかりと対応をお願いをしたいと思います。単に教育をする、単に訓練をするというだけではなくて、是非、実効性が上がるような仕組みでありますとか工夫をしていただけると有り難いと思います。
次に、広域一時滞在に関する規定が、今回の改正で盛り込まれております。
今回の東日本大震災のときの状況を見ますと、避難する被災者の方々それから受入先、これをしっかり把握をして、例えば政府でありますとかどこかが一元的に把握をして調整をして、しっかりマッチングをするような仕組みが必要なのではないかと思います。今回、この一年間の状況を見ますと、たまたま姉妹都市提携を結んでいるとか、また、たまたま首長さん同士が連携をできたといった個別の事情によって受入先が決まったというケースも随分あったのではないかと思います。
一方で、どこに住んでいても速やかに避難先、広域一時滞在先が決まるということは、災害の発生後、本当に大事なことだと思うんですけれども、その辺りをどのように手当てをされるのか、お伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 一時滞在を広域的に展開するということについては、今回の災害では事前の備えが十分ではなかったということが指摘がされると思います。
この枠組みによる市町村間あるいは都道府県間の被災者の受入れに係る調整、これを事前にやっていくこと、これはもちろんでありますが、それが事が起こったときに十分にできなかったということについて、改正法第八十六条の六において、被災都道府県知事が広域一時滞在を行おうとしても容易に協議の相手先を見付けることができない場合や、都道府県の区域を越えた行政サービスが適切に行われるための備えとして、内閣総理大臣による協議の相手先等に係る助言規定というのを設けたということであります。
ですから、事前に様々な協定のネットワーク、これをつくるという努力をしておくということ、それでいざというときに、それでもなかなか調整できなかったというところでこの助言規定を生かすというような体系で進めていきたいということであります。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
是非その規定、助言ということでありますけれども、しっかり機能するようにしていただければと思います。
次に、先ほど大臣からもお話がありましたが、今回の東日本大震災発災直後、物資の輸送について大変な混乱が生じたということであります。今回様々な規定が盛り込まれているということだと思うんですけれども、それについて何点かお伺いをしたいと思います。
まず、支援物資の供給、運送につきまして、これは、どこかで一元的に全体を把握して調整をするような仕組みが必要なのではないかというふうに思います。
今回の災害では、どの地域でどういう支援物資に対するニーズがあるのかというのが特に当初、なかなか明らかにならなかったということで、支援物資を送る側とのギャップ、そごが生じていたということがあったのではないかと思います。また、支援物資の運送主体についても、自衛隊も搬送している、また各自治体が個別に搬送もする、また場合によっては民間の方々、また個人の方々が個別に届けるというケースもあったんだと思います。
どこで何が必要なのかというニーズを的確に把握をした上で、そこに誰が何を届けるのかといったことをきちんと混乱しないように指示をする、又は調整をするといったような仕組みが必要なのではないかと思うんですけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 問題が二つあったと思うんです。一つは、支援物資の調達、供給というのが需要追従型ということであったので、情報が取れなかったということから非常に遅れてしまったということ、この反省に基づいてプッシュ型を一つ入れたということですね。それからもう一つは、大量の物資が県の集積拠点にあふれてしまって、不慣れな行政職員による業務であったということで、そこから先が届かなかったということですね。そういう意味で、専門家の支援というのを途中で入れた、いわゆる運送業者が直接それに携わるということになって、それ以降、物資拠点の在庫管理や避難所への配送というのが円滑に行われたということがありました。
これらの反省、教訓を踏まえまして、物資要請の受付、それから物資調達の調整、それから輸送調整の各段階を一元的に管理をして、物資の供給状況を被災地方公共団体に提供する新システム、新しいシステムというのを本年度末までに構築をしていきたいと。政府、調達業者、それから輸送業者及び被災地方公共団体との情報の共有化をそれによって図っていくということで、これを物流専門家のノウハウを導入して防災計画の基本計画に位置付けていきたいというふうに思っております。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
今、若干後半の方で御答弁もいただいたかと思うんですけれども、今回プッシュ型にされるという話がございました。今回の震災で問題になったのは、まさに各地域までは物資が届くんだけれども、その先、個々の被災者の方々がそもそもどこにいらっしゃるのかなかなか把握ができなかった、また、その被災者の方々個人がどういう物資に対するニーズがあるのか分からなかった、また、集積所までは届くんだけれども、地方自治体の方々のマンパワーも不足をしていて、物資の仕分作業だけでもう手いっぱいになってしまったという状況があったのではないかと思います。
プッシュ型にされるというお話もありましたけれども、プッシュ型がうまく機能する前提として、その現場で混乱が生じないような体制の整備でありますとか、また地方に行ってから個々の被災者の方々に、また避難所にどう届けるのかといった点が整備をされていないと、そういった前提がしっかり確保されていないとプッシュ型で物を送っても、また地方に物資が山積みになってその先に流れないということになるんだと思いますけれども、その辺りの手当てをどうするのかといった点についてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 二つの点があるんだと思うんですね。どこに何があるかという供給をする物資の情報の把握と、それから供給先ですね、これについての把握ということだと思うんですが、これを東日本大震災における反省を受けて、民間物資拠点のリストアップとそれから官民の連携協力体制の構築ということは、もうふだんから物流業者というのはどこに何があってどういうところに何を送っているか、どういうルートでというのはつかんでいますから、そういう意味での連携協力体制というのを、構築などについて取りまとめを実は国土交通省で行っております。
内閣府においては、関係省庁や物流事業者とともに物資調達それから輸送調整を一元的に管理するシステム、これを先ほど申し上げたように構築を進めておりまして、物流専門家あるいは地方公共団体、あるいはそれぞれのノウハウの導入等々含めて完成をさせて、そして防災基本計画にこれを位置付けていくということで対応をしていく所存でございます。
○上野ひろし君 ありがとうございます。
是非しっかりとした管理システムといいますか、そういった調整をするような仕組みができることがこの今回の改正のまた前提にもなると思いますので、しっかりとした対応をお願いをしたいと思います。
次に、今回の法律改正に当たってどういった災害を想定をしているのかといった点についてお伺いをしたいと思います。
この改正でありますけれども、東日本大震災の発生時において、特に被災した市町村の機能が低下をしたということを踏まえて、都道府県でありますとか国の役割というのを新たに規定をするといった点があるんだと思います。
一方で、そもそも今後どういう災害が発生をするのかといったことを考えてみると、例えば都道府県の機能自体が失われるという可能性もあると思いますし、例えば首都直下型の地震といったことを考えてみれば、国の機能自体が失われるといったことも我々は想定をしなければいけないんだと思います。
そういった点について、今回の改正も含めてどう対応していくのか、この災害対策基本法上どう規定をしていくのかといった議論は当然必要なんだと思うんですけれども、大臣の見解をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 確かに、御指摘のように、現行の制度では、都道府県が機能低下した場合には、都道府県の行うべき災害応急対策や災害復旧などが、国が代行する、あるいは直接自らの事務権限とするということについては規定をされていないという事実があります。
それゆえに、それこそ東日本大震災を超える、あるいはまた地形的に南海トラフなどに面しているところではその可能性もやっぱりあるんだと思うんで、そういうより巨大な災害というのが発生したときには国家的緊急事態ということになると思うんですが、これについて引き続き防災対策推進検討会議で議論をしていただくと、その上での法改正というのを考えていかなければならないというふうに思っております。
また、首都直下地震ということがあるわけですが、これの問題は首都中枢機能をどういうふうに維持していくかということで、前半にも御議論ありましたけれども、BCP、それぞれの省庁あるいは民間企業等々も含めてこれを確実なものにしていくということであります。一旦そうしたBCP、書かれていたんですけれども、先ほど平野大臣の御答弁にもありましたように、これ、そんな想定では駄目だということで、改めてシビアな想定の下にこのBCPを今検討をしております。同時に、バックアップということについても更なる検討をしていかなければならないというふうに思っています。
○上野ひろし君 ありがとうございました。
この法律、またしっかり、施行の状況も踏まえて議論もさせていただきたいと思います。
以上で質問を終わります。
○山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。
阪神・淡路大震災の救援、復旧復興活動では、コミュニティーの維持、再生が非常に重要であることが教訓の一つとされました。阪神・淡路では、避難所から仮設住宅、仮設から復興公営住宅と被災者が移動をするたびにコミュニティーがばらばらにされてしまったわけです。大変悲しいことではありますけれども、震災では助かった命が後に復興公営住宅で相次いで孤独死するということが起こり、今もそういう状態が続いているわけであります。
その後の中越、中越沖、あるいは東日本大震災においては、こういう阪神の教訓、負の教訓を生かして、地域のきずな、御近所同士のつながり、コミュニティーの維持、再生が不可欠という見地が重視されてきたと思います。防災対策推進検討会議の中間報告でも、その旨、指摘されております。
そこで、平野復興担当大臣、なぜ復興復旧においてコミュニティーの維持、再生が不可欠なのか、改めて認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(平野達男君) 被災者は、いろんなことで精神的あるいは物資という面でも非常な困難に直面します。公助というのはもちろんございますけれども、基本はやっぱり自助、共助ということで、そういう中でのお互いの助け合い、それは物資という面の助け合いもございますし、しかし、何よりもやっぱり精神的な面での助け合いということがやっぱりこれは非常に重要なことでありまして、これは別にきずなという言葉がございますけれども、このきずなの重要性、それからコミュニティーの重要性、これは今回の東日本大震災の中での今の避難されている方々の仮設住宅の生活状況を見ていても、これは強く再確認をさせられるところであります。
○山下芳生君 そこで次に、阪神・淡路大震災の際に、被災者の恒久住宅を確保するための一つの手段として、復興公営住宅の建設とともに、民間のアパートやマンションの建設費を支援して丸ごとそれを借り上げたり、それからURや民間の既存の住宅を借り上げたりして公営住宅として提供する借り上げ復興公営住宅制度というものが活用されました。現在、そうした借り上げ住宅が兵庫県と神戸市合わせて五千九百戸あります。
それが今、兵庫県や神戸市が、URや民間オーナーとの二十年の契約期間が切れるということを理由にして入居者に住み替えを迫るという事態が生じております。入居者の多くは高齢で、八十にもなって引っ越しはつらいですとか、移転の予告にこの先どうなるのか毎日のように悩んでいますとか、ここに来たときは期限の話なんかなかった、先が短いのに住み慣れたこの場所で身を埋めたいです、助けてくださいとか、郊外の市営住宅に引っ越しとなればかかりつけの病院に行けなくなるとか、追い出さんといてなどの声が上がっております。
中川大臣、こういう事態が起こっていることを御存じですか。
○国務大臣(中川正春君) 借り上げ公営住宅について、二十七年度からこれは順次借り上げ期間の満了を迎えるということになるというふうに認識をしておりまして、この期間の満了に際して、御指摘のように、入居者の居住の安定確保、これを図っていくということが重要な課題であると思っております。
現在、兵庫県や神戸市において対応方策について検討をしているというふうに連絡を受けておるところであります。
○山下芳生君 私、これは兵庫県や神戸市の問題ではないと思っております。なぜなら、災害公営住宅というのは借り上げの場合も含めて国の制度だからです。国のこれは国費も使って国の政策で行われたものでありまして、だから、これは国の制度なんだと、この確認が一点。
それからもう一つは、兵庫県や神戸市は、先ほど紹介したように、民間オーナーあるいはURとの二十年の契約期間が切れるので、もう住み替えてもらうしかないんだと、ほかに方法がないかのような説明を行っております。しかし、私は、市や県がこのURや民間オーナーと新たに契約を結べば希望する入居者は引き続き住み続けることが可能なのではないか、そのための国の支援もあるのではないかと考えますが、国交省、御説明いただきたい。その二点、よろしくお願いします。
○政府参考人(渡延忠君) お答えを申し上げます。
ただいま委員から御指摘がありましたとおり、阪神・淡路大震災の被災者向けの災害公営住宅については、公営住宅法の規定に基づきまして、地方公共団体が建設するほか、民間賃貸住宅等を借り上げて供給がなされたところでございます。
公営住宅法、もちろん法律がございますが、同法におきましては、公営住宅供給の事業主体は都道府県又は市町村ということになっております。国は、これに対して所定の財政援助を行う形でその環境整備について支援申し上げるというのが基本の構造でございます。
ただいま御指摘がありましたとおり、借り上げの公営住宅につきましては、平成七年発災当時の法令の下で上限とされます二十年の借り上げ期間を定めたという事実がございます。これを経て、平成二十七年度から順次借り上げ期間の満了期を迎えることと承知いたしております。期間の満了に際しましては、ただいま御指摘がありましたとおり、入居者の居住の安定、生活の維持に配慮することが必要なのはもちろんのことと考えております。
借り上げ期限の到来時におきましては、御指摘がありましたように様々な方法がございます。借り上げ期間が到来した住宅を公営住宅として再度借り上げる、あるいは借り上げ期間が到来した住宅を公営住宅として買い取る、あるいは地域における他の公営住宅に入居できるように自治体があっせんする等々の方策が考えられるところでございます。
いずれにしましても、高齢化の進んでいる入居者の御希望、御要望などを十分踏まえることが必要と考えておりまして、現在、兵庫県あるいは神戸市など関係自治体におきましては対応方策をよく入居者の御要望も伺いながら検討中と聞いておるところでございます。
入居者の居住安定確保が図られるよう、国土交通省といたしましても、地方公共団体の方針を踏まえまして、その御相談にも乗りつつ必要な支援を引き続き行ってまいりたいと考えております。
○山下芳生君 今説明があったように、これ二十年来たからもう出ていってくださいよというだけではないわけですね。別に道はあるということです。
今、公営住宅の実施主体は地方自治体ということがもちろん説明あったわけですが、当然そうなんですけれども、制度としては、国の制度として国費も出ているわけですね。そもそもこの災害公営住宅制度の目的というのは、震災のときにおいて、住宅復興をする際に自分の力だけでは住宅再建を果たせない被災者に対して恒久住宅を提供して居住の安定を図るということが目的だというふうにされておりますけれども、その制度の下で今居住の安定が脅かされているという事態が起こっているんですね。
県や市が入居者の希望を聞いてというふうに今表現されましたけど、余り希望に即した対応がされているという実態ではないと私は現場の声を聞いております。だから今、心配しているんですよ。もう追い出されるんじゃないか、出ていくしかないのかという先ほどの声が出ているわけですね。だから、これはやっぱりほっといたらあかん、国としてかかわっていかなければならない問題だと思っております。
入居者の声をもう少しリアルに紹介したいと思います。
全盲の視覚障害の方、この方は神戸市東灘区にあるURの借り上げ住宅にお住まいの方です。実は、ちょうど昨日、神戸市議会で借り上げ復興住宅の入居継続を求める請願が審議されまして、この方は請願者として意見陳述をされました。紹介します。
大震災で夫を亡くし、還暦を過ぎた私は、この先どこへ行ってどうやって生きていけばいいのでしょうか。知らない土地へ行けば、文字どおり右も左も分かりません。団地に住めば、同じような建物ばかりで自分のうちに帰るのも一苦労です。今盲導犬と住んでいます。近所に何があるのか、駅への道はどうなっているのか、それらをまず自分が覚えて犬に教えるのです。新しいところに移れと言われても簡単にできません。視覚障害者の多くは、はりやマッサージなどの治療で細々と生計を立てています。この不況下で治療を受ける人は減っています。知らない土地へ移って、治療に来てくれる人がいるでしょうか。今のUR住宅に住み続けるなら家賃は十万円以上、契約の際、四か月分以上を前納する必要があるという通知が神戸市から届いています。そんなことができるなら苦労しません。入居当初はいろいろ困難がありましたが、今は団地の皆さんが温かく手伝ってくれたり見守ってくださいます。どうか追い出さないでください、住み続けさせてくださいという意見陳述であります。
私も以前、借り上げ公営住宅を訪ねまして、四人の方に直接それぞれ入居の経過や生活状況を聞きました。共通していたのは、仮設住宅から早く出たいと申し込んだ公営住宅に何回も落選しながら、やっと当たったのが今の住宅だった、それがたまたま借り上げだったということです。そして、二十年たったら出ていかなければならないとの認識はなかったということであります。これは非常に重大な問題なんですね。しかも、退去の対象となっている方々は皆さん高齢で、一番早い退去の期間は三年後ですけれども、そのときには八十歳や九十歳になっておられる方であります。
御自身が民間借り上げ住宅に住んでおられる被災者ネットワークという被災者を支援する団体の代表、安田秋成さん、この方も八十代後半ですけれども、安田さんは、四十代、五十代の人の転居と違って、病院やかかりつけの医者、近所のスーパーの特売日など生活全体が根本から崩れる、それが一番心配とおっしゃっておりました。
私、聞いていて、これは命に直結する問題だと感じたわけですね。震災で何度も転居を強いられて苦労をされてきた高齢の被災者に、人生の最終盤でこんな冷たい仕打ちはないと思います。安心して住み続けてもらえるように政治の役割を果たさなければならないと感じた次第ですが、中川大臣、これは命に直結する問題、人道問題として対応すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) 住み慣れた地域で引き続き暮らしたいという被災者の方々の思いというのは十分理解ができるというふうに思います。また一方で、コミュニティーの維持といった観点からも配慮が必要であるというふうに思っております。
それぞれ現在の状況を踏まえた選択ができるように、行政が借り上げ期間の満了時の対応として入居者に複数の選択肢を示していくということも一方で大事なことではないかと思っておりまして、こういうことをそれぞれしんしゃくしながら、それぞれ入居者の意向を十分確認をしていくという作業、これが大切なことだというふうに思っております。
○山下芳生君 入居者に複数の選択肢が示されているというのはどういうことですか。私のちょっと理解とは違うんですが。
○国務大臣(中川正春君) それぞれ家庭の状況なりなんなりがあると思うんですね。一律にそこに住み続けていきたいという人ばかりとは限らないということも想定しながら考えていかなきゃいけないということだと思うんです。
○山下芳生君 おっしゃるとおり、もう移ってもいいよと、別の公営住宅に行きますよと行った方もいるんですね。
しかし、行けない方、さっき紹介したような、もう八十歳、九十歳になられた、あるいは視覚障害、全盲の方、こういう方は行けないですよね。そういう方にも今残念ながらとられているのは、期限が来たら出ていっていただきますと。それで今悩んでいるわけですね、苦しんでいるわけですよ。だから、そういう方には、これはやっぱり残れるという選択肢を示す必要が私は人道上あるんじゃないかと思いますが、それはいかがですか。
○国務大臣(中川正春君) 確定的に残れるという選択肢がないのかということについては、ちょっと私も確認をしていないので、もう少しそこのところ、現状というのを確認しながら、できることをしていきたいというふうに思っております。
○山下芳生君 確認していただきたいんですが、今ないんです。さっき国交省の説明がありましたけれども、制度としてはあるんですが、神戸市と兵庫県の選択肢の中にはないんです。それで大変苦しんでいるんです。
私は、これ兵庫県、神戸市で起こっている借り上げ復興住宅からの事実上の追い出し問題を許していたら、これは東日本大震災の復興やその後の大災害の復興でも同じようなことが起こるということになると思うんですね。そんなことを許しちゃならない。あるいは、もう借り上げ方式でスピーディーに公営住宅を提供することのこれは障害になりかねないと思います。もし借り上げ方式のところに入っちゃったら、二十年後、年取ったときに出ていかなあかんみたいなことになったら、そこには行きませんという方さえ多分出るでしょう。だから、これはすぐれて神戸や兵庫だけの問題ではない、東日本や今後の大災害にも直結する大きな問題だと思うんですが、そういう認識も持って当たっていただきたいんですが、いかがですか。
○国務大臣(中川正春君) 被災者の立場に立って丁寧に対応していくということ、これが重要だと思います。
国としても、自治体としっかり相談をして、入居者の居住の安定確保、これに向けて必要な支援を構築していくべきというふうに考えております。
○山下芳生君 もう一つ、入居者の方とともに、この借り上げ住宅を提供された民間賃貸マンションのオーナーの方、この方々からもいろいろ声が出ています。これを一つ紹介します。
震災当時、市の要請にこたえて自分の土地にマンションを建て、市に提供しました。建設費約二億円。バリアフリーなど公営住宅仕様にするために建設単価は高くなった。市の担当者は借り上げ期間は延長されると何度も説明した。今になってほっぽり出すのか。ローンを払える家賃にすると高くなり、入居者がいない。我々のような素人をマンション経営に引っ張り込んだのは神戸市ではないか。市の対応に怒っている。これらのオーナーは借り上げ契約の再契約を求めて民間借上復興住宅所有者協議会を各行政区ごとに立ち上げ、今神戸市と交渉を重ねていますということでありました。
だから、大変な震災でしたから、公営住宅確保するために土地を持っている方々に建ててくださいと市から頼んで、それまでやったことないけれども、分かりました、貢献できるならと建てた方がたくさんいるんですね。そういう方々が今もう打切りだということで、この方々も苦しんでおります。入居者も苦しんでおります。
ですから、大臣、最後に、やっぱりこれは放置してはならないと思うんですね。まだ何年かあるから、そのうちに調整しようではないと思います。もう既にあと三年たったら出ていかなければならないのかということで、もう何年も後こういう不安な気持ちをさせるということ自体が許されないと思います。
国の制度の下で起こっている問題、人道上の問題、そして東日本を始め今後の災害復興にも影響する問題。私は、国が主導してこの追い出し問題を解決するために、県や市と相談、調整を早くやるべきだと。そして、その上で、今もある支援策に加えて更に必要な支援策があるのなら、それも検討すべきだと。是非国がイニシアチブを取っていただきたい、そう思いますが、もう一度大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) 現在、県や市において説明会の開催や入居者の意向確認等も実施しているところだというふうに聞いております。改めて、その結果、そしてそれぞれ自治体の意向、あるいは先ほど御指摘いただいた入居者の皆さん、またオーナーの皆さんの意向、総合してしっかり私なりにチェックをして、整理をしていきたいというふうに思います。
○山下芳生君 調整して、聞いていただいて、チェックしていただいて、こういう追い出しが、もうあの震災をくぐり抜けた方が二十年たって高齢になって希望しないのに出ていかなあかんということは、これはやっぱりないようにする、それが国の役割だと思いますが、そういう点でイニシアを発揮していただきたい。いかがですか。
○国務大臣(中川正春君) 人と人とのつながりを持って生活をしていくということは、その人の心身の健康、これを確保するとともに、自立に向けた意欲というものを維持向上させるということにもつながっていくということ、これは今回の東日本大震災に対する対応ということについても原則だと思います。そういうことを踏まえて、重要な問題であるというふうに考えて、対応をしていきたいというふうに思います。
○山下芳生君 終わります。
○委員長(松下新平君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
災害対策基本法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
○委員長(松下新平君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、加治屋義人君から発言を求められておりますので、これを許します。加治屋義人君。
○加治屋義人君 私は、ただいま可決されました災害対策基本法の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会、自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会、公明党、みんなの党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
災害対策基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。
一 過去の災害からの教訓の伝承及び防災に関する教育の実施については、多様な主体による取組を推進するため、国による財政上の措置を含め、可能な限りの支援を行うこと。特に学校教育においては、災害発生時に児童・生徒が自ら適切な行動を取れるよう、自然災害、避難等に関する正しい知識の習得や訓練の実施等に関し配慮すること。
二 地理空間情報の活用については、都道府県及び市町村が十分に活用できるものとするため、情報の内容、共有、利用方法等に留意してシステムを構築するなど、真に災害対策に有用な、実効性のあるものとするとともに、NPOやボランティアなど、災害に関与する団体及び個人を含め、広く国民に対する情報提供にも活用すること。
三 地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害時において、内閣総理大臣による応援要求等被災地に対して的確な災害応急対策を実施することができるよう、関係省庁の情報収集体制の整備を図るとともに、内閣の情報集約機能の強化を図ること。
四 応援の要求、広域一時滞在、物資・資材の供給など、国及び都道府県による関与が充実強化されたものについては、適時適切な応援、被災住民の受入れ及び物資等の供給がなされるよう、その仕組みを十全に機能させること。また、広域的な災害応急対策等の応援等の実効性を高めるため、知事会、市長会や町村会との連携を進めること。
五 円滑な応援の受入れ及び他者への応援については、災害発生時の初動対応において極めて重要であることから、都道府県及び市町村による広域的な協定の締結、訓練の実施等が促進されるよう、国としても積極的に取り組むこと。
六 救援物資等を被災地に確実に供給するためには、現在の国及び地方の指定公共機関である運送事業者だけでは運送の対象となる物資が限定されるなど、不十分なことが懸念されることから、陸上のみならず海・空にわたる輸送に関する事業者の指定の在り方について検討すること。さらに、国及び地方の指定公共機関については、今後の防災対策推進検討会議における検討等も踏まえ、医療機関等も含め指定公共機関の更なる拡充について検討すること。
七 国、都道府県及び市町村の防災会議の委員の任命については、女性、障がい者、高齢者など、社会及び地域の実情に応じて多様な主体の参画が確保されるよう、今後とも制度及び運用の改善に努めること。
八 今回の改正では、災害応急対策責任者や災害予防責任者など、国や地方の公的立場にある者の役割が強化されたが、東日本大震災では、NPOやボランティアなどが大きな役割を果たしたことから、災害の予防、災害からの復旧及び復興など、災害全般においてかかる主体の果たす役割についても、引き続き検討を進めること。
九 これからの災害対策基本法改正に向けて、避難や減災など災害に対する基本的考え方をはじめ、防災会議や災害対策本部など組織・権限の在り方、大規模災害発生時の災害緊急事態の布告の内容やその手続、さらに災害からの復興の進め方に至るまで、現行法のあらゆる問題点について迅速に検討を進め、必要な法案を策定し、提出すること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
以上です。
○委員長(松下新平君) ただいま加治屋君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
○委員長(松下新平君) 全会一致と認めます。よって、加治屋君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、中川防災担当大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中川防災担当大臣。
○国務大臣(中川正春君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重して、適切な措置の実施に努めてまいります。
ありがとうございました。
○委員長(松下新平君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
○委員長(松下新平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。