第170回国会 衆議院 財務金融委員会 第5号 2008年11月05日
平成20年11月5日(水)
○田中委員長 次に、中川正春君。
○中川(正)委員 民主党の中川正春です。
ちょっと最初に、通告をしてなかったんですけれども、アメリカの大統領選挙について、これは、通告がなくてもふだんからしっかり考えておっていただくことだろうというふうに思いますので、まず入り口、そこから話を進めていきたいというふうに思います。
先ほど、委員会が始まる前に、テレビ等々の報道は大統領選挙一色でありまして、オバマ候補がランドスライドで勝っていくという状況が確定をしてきておるようであります。アメリカも、政権交代、その政権の交代ということだけではなくて、恐らく、世界の権力構造というか、経済の構造も含めて大きな転換期をこれで迎えたんだろうというふうに思います。
そのオバマ候補の勝利について、日本の総理大臣としてこれをどう受けとめて、どのようにこれからの対応を考えていこうとされておるかというところをまずお聞かせをいただきたいと思います。
○麻生内閣総理大臣 これは基本的に、どなたがアメリカの大統領になられようとも、日本にとりましては日米というものが基軸というのは、終始一貫変わっていないところであります。
したがって、これまで民主党政権のときであろうと共和党政権のときであろうと、日本政府としてはきちんとした対応をアメリカとやってこれた。そういった努力を引き続きオバマという人とやっていかねばならぬ。これは、日本にとりまして与えられている責任、また、一番大事な点だと私どももそう思っております。(発言する者あり)
○中川(正)委員 つまらないなという声が出ていましたけれども、私もその反応ではつまらないなというふうに思います。
もちろん、日米の関係というのを基軸にしていく、そんな中でこれから新しい構造を模索をしていくということだと思うんですが、変化は出てくると思うんです。はっきりオバマさんは言っているんです。イラクからのいわゆる撤退ということを早期に考えていくという、これは、政策変更ということはもうはっきりしてきています。
それから、外交政策にしても経済にしても、これまでのネオコン体制の中でこれは破綻が今起こっているわけですが、この考え方については根本的に新しい基軸というのが生まれてくるんだろう。それが何かということを早く私たちは理解をしていかなきゃいけないというふうに思っておりますし、威圧だけじゃなくて対話を重視した外交政策に変わっていくということの中で、恐らく中国を中心にした新しい対話というのがアジアに対しても始まってくるんだろうというような、そういういろいろな与件というのをしっかりとらえていきながら日本の戦略を考えていくということ、これが私は大切なんだろうというふうに思います。
その上で、一つ、総理の基本的な経済の枠組みを考えるときの考え方というのを確認しておきたいんです。
これまではドルが基軸であった。これはアイロニーなんですが、アメリカ発のサブプライムで金融破綻を起こしたにもかかわらず、依然としてドルというのは崩壊をしないんですよ。いわゆる決済通貨として、さっきIMFの話が出ましたが、やはりドルを使ってやっていこうということは今の時点ではあるということなんですが、これは、総理の頭の中では、将来これから先もドルだけが基軸通貨として世界で秩序をつくっていくんだという形でいいのか。
それとも、いろいろなところで模索が始まっているように、例えばユーロという新しい通貨のいわゆる塊というか、これが出てきた。あるいはアラブ諸国でも、中長期的に見てこれはドルは危ないという形の中で、決済はドル以外のものでしていこうというような動きで、アラブの中でも一つのバスケットをつくるようなそういう流れも出てきた。あるいはアジアでも、私たちはやはりそういうことに対応していくという思いというのはしっかり持っていかなきゃいけない時代になってきたんじゃないかということがあります。
その上で、総理の今の基本的なスタンスというか考え方として、やはりドルを守り続けていくんだ、ドルでないといけないんだ、そういう前提でこれからもやっていこうとされるのか。それとも、それぞれのブロック単位で、ある程度の決済通貨というのをドルが崩れたときの準備としてつくり上げていきながら、新たな通貨秩序といいますか、世界通貨をつくっていこうというふうに日本は歩み出すべきだというふうに考えておられるのか。ここによって非常に戦略が変わってくるんですよ。
いずれその基本というのを、これも事前の通告がなくてあれなんですが、これはもう自然に持っていなきゃいけないスタンスだと思うので、改めて確かめさせていただきます。
○麻生内閣総理大臣 国際協調がキーワードです。それが基本だと思いますが、今、ドルの決済をやめて別の通貨になって、仮にドルが崩落、暴落したときにおける日本の被害というのは考えておかねばならぬ。どこの国でもドルによる外貨準備をしておりますので、その意味では、ドルの暴落イコール国益を大きく損なうことになる。これは、世界じゅう皆同じことであります。したがって、短期的にはドルというものをある程度支えないとやっていけない。これは、フランスもドイツもインドも中国も皆そこのところは同じだと思っております、既に意見も交換しておりますが。
しかし、中長期的にはいろいろなことを考えねばならぬ。ブレトンウッズ体制ができてきちんとアメリカのドル通貨体制になるまでにどれぐらいかかったか、御記憶のとおりです。それが七一年になったらどうなったか、御記憶のとおりです。いずれも厳しいことになりました。それでもドルの通貨体制は続いたという背景というものが、一つ考えておかねばならぬもう一点のところ。
同時に、二十七カ国であのユーロをきちんと維持できるかということに関して、それをやり切るだけの決意と覚悟がEUにあるのか。我々は、そこは見きわめないかぬところなんだと思っております。
いずれにしても、いろいろな話を、我々は国際的に見れば決済というものを考えないけませんから、その決済がきちんとできるための対応をどうやっていくか。キーワードは国際協調だと思います。
○中川(正)委員 私の問いかけに対してしっかりとしたクリアな返事は返ってこなかったので非常に残念なことでありますが、恐らく、私たちのこの国家のいわゆる戦略として、そこのところはもっと議論を深めていかなきゃいけないところなんだろうというふうに思います。
これはごまかしてもいけないところだし、いつも日本の政府というのは、国際協調だ国際協調だと言って、そうやっている間に自分の存在感をなくしてしまって、他に合わせていく。他が決めたことを与件として受け入れてしまって、それに合わせていくだけで戦々恐々としているというようなそういう状況が続いてきました。それだけに、我々の意思というのをしっかりつくり上げていくということが大切なんだろうというふうに思います。
そういう意味では、さっきの答弁はそういう答えになっていなかったということ、これを指摘をしておきたいというふうに思います。
その上で、この金融機能強化法の論点について、総理みずからの考え方を端的にただしていきたいというふうに思っています。
でき得る限り私たちも話し合いをしながら法案の修正をして、それぞれいいところをしっかり組み込んで頑張ってきたんですが、もう少しというところで強硬に採決ということを与党からきょうは話がありまして、非常に憤りを感じております。
そこで、私たちの意思としては、前々から申し上げておりますように、今の状況を見ていると、確かに、地方を中心にした中小企業の状況というのは本当に厳しい。これからまだ厳しくなってくる。そんな中で貸しはがしや貸し渋り、地方によって相当状況が違ってきておりますが、これに対応するために、公的資金で資本注入をしていくというこの法案をもう一回生き返らせるということ、これについては基本的には賛成なんです。
ところが、今回問題になったのは、そのことに乗じて、そうした本来の目的とはかけ離れたといいますか、それをうまく使って違った目的を達成しようとする中身が入り込んできている。これを排除しようというのが我々の思いでありました。具体的には、農林中金の問題と新銀行東京であります。
最初に農林中金の問題に端的に質問をしたいんですが、総理、農林中金にもこのスキームでいわゆる公的資金を資本注入すべきだというふうにお考えですか。
○中川国務大臣 現行法においても、農林中央金庫には……(中川(正)委員「総理、総理なんです。総理、あなたの考え方も聞いているんです」と呼ぶ)今、委員長から指名されたんですけれども……(中川(正)委員「委員長、違いますよ。総理です」と呼ぶ)
○田中委員長 後ほど、答えた後、総理にも答えてもらいます。
○中川国務大臣 現行法におきましても、農林中央金庫を初め、労働金庫等々、協同組合組織中央機関がその対象になっているわけでございます。そして今回も、農林中央金庫は日本のいわゆる代表的な金融機関としてこの対象にするということを排除するということは、私は、むしろこの制度の目的からいって、中小機関、あるいは中小企業、あるいは地域経済への貸し出しをよりやりやすくするというこの法律の目的の趣旨からいって、最初から排除をするということは、この法律の目的に合致しないことだというふうに考えております。
○麻生内閣総理大臣 農林中金のお話ですけれども、農林中金に対する基本的な考えは今の財務大臣と同じなんですが、国の資本参加というものの申請に対して、これは、中小企業向けの貸し出しやら何やらいろいろしておられるところだと思いますので、そういった見込みなどいろいろの審査をする必要はあろうとは思いますけれども、基本的に、いろいろな今回の一連の今の状況にあわせて農林中金等々がきちんとしたものになっているというのは大変大事なことだと思いますので、考え方と言われていましたけれども、農林中金がきちんとするのは大事なことだと思っておりますが。
○中川(正)委員 この農林中金については、これまでの委員会の議論を通じてさまざまな問題が指摘をされました。恐らく、それがしっかりと総理の頭の中で整理がされていないんだろうというふうに思うので、もう一回これはとめ返しますが、例えば六十兆円の運用資金のうち、この組織そのものが目的とする農業関係の資金の円滑化ということからすると、たった一・六兆円しか貸していないということ、それから、約四十兆円が証券化商品やデリバティブなどいろいろなものを含めて高リスクのいわゆる投資に回っているということ、それがために、恐らく今回の金融破綻で相当穴があいてしまっているだろう。それを、経営責任を問わずに、そのまま公的資本の注入をして穴埋めだけにこれを使うということについては、これは、この法律の趣旨に全く違った形で公的資金が使われていくということになっていくじゃないかという指摘をずっとしてきています。それに対して、いや、そうじゃないんですよというしっかりとした説明もないままに今まで流れてきているということなんです。
そうした意味で、総理もこの枠組みの中でこれに資本注入すべきだというふうにお考えかどうかということを聞いているんです。
○麻生内閣総理大臣 これは、農林中金が申請をしていない段階で今の御質問ですね。そういうことですね。だから、農林中金が申請した場合の話をしておられるわけですね。これはちょっと意味が、前提条件をきちんとしておかぬとはっきりしませんから。
今の段階で、まだ農林中金がそのようなことを国に対して申請したという事実を知りませんのでちょっとお答えのしようがないんですが、仮にしたとして、その内容を審査した上で、きちんとしておればできる、審査した結果、やるべきと思えばするということなんだと思いますが。
○中川(正)委員 もっと言えば、この理事長あるいはその役員の集団、十五、六人いるんだと思うんですが、これはみんな農林省の天下り。給与もはっきりしてきましたが、年収四千百万ですか、こういう年収を取って大穴をあけたということ、今こんなことがどんどん表に出てきたということでありまして、そういうところに対して政府がなぜこれはこだわり続けるのか。ちゃんとした基準をつくって、こんなところはだめですよという話をしっかりしたらいいじゃないかということを我々は言い続けてきているということ、このことを一つ指摘をしておきたいと思いますし、そこのところはしっかりした基準でというのは、基準を見るまでもなく、農中の現状というのはわかっているわけですから、こんなことに対してどうだというリーダーシップを総理の方からしっかり出してくる、そんな中で話し合いをして、ちゃんとこんなものは解決したらどうだと言うぐらいのメッセージが総理から出てくるということ、これを私は期待をしています。まだこれから参議院の話し合いは続いていきますが、そのことを一つ指摘をしておきたいというふうに思います。
それから、もう一つは新銀行東京でありますが、最近の報道機関で次から次へとずさんな現場の状況が報道をされてきております。都自身は一千億円出資して、三年間で一千十六億円の累積赤字をつくってしまった。さらに、今回の都の決定で四百億円の追加出資をすることにした。これで公的な資金は注入済みであるということ。さらに言えば、もともとの発想の中で、このビジネスモデルが成り立つ、そういう前提の銀行だったのかどうかということと同時に、その役員構成を知事みずからが裁量権を持ってさまざまにやった、やったその役員が現場に対して監督権を全く発動していなかったということ等々、さまざまにこれは指摘されております。
これに対しても、今のこの金融機能強化法の枠組みの中では、同じようなことで注入しようと思ったらできるんだ、こういうようなことがあるわけですが、私は、本来の目的からいけば、こういう銀行を救済するための法律ではないというふうに思っているんです。そこのところをはっきりさせるべきだというふうに思うんです。
だから改めて聞きますが、総理はどう思っておられますか。この新銀行東京にも国の公的資金を注入すべきだというふうに思いますか。
○麻生内閣総理大臣 この種の場所で個別の議論をするのはいかがかなと。正直、質問しておられる御本人もそう思っておられるんでしょうけれども。あり方についてはちょっと適当じゃないんじゃないかなと私自身は率直にそう思っております、まずは。
ただ、一般論として申し上げさせていただければ、地方公共団体が支配をしているという形になるんだと思いますね、今のお話ですと。そういった金融機関について、その支配団体であります地方公共団体というものがその資本の充実につきましては一義的な責任を負うのは当然だと思いますので、そういった意味におきましては、制度が適切に運用されるということなんだと思いますが。
○中川(正)委員 総理、ここまでこの委員会が議論を進めてきて、それで、金融対策の日本の政策誘導としては一つの目玉なんだと思うんですよ。それをしっかり事前に整理をせずに、ここへ出てきてさっきのような答弁をするということは、一体どこまで腹かけてこの金融対策をやろうとしているのかというのは、私は非常に疑問に思っております。だから、そこのところを総理のリーダーシップを発揮することによって、今問題になっていることがすっきりするんですよ。
私たちはあえて反対しているわけじゃないんです。あえて反対しているわけじゃない。この問題というのは、資本注入して中小企業に対する資金を円滑化していくというのは、これは本当に金融対策の中では重要だと思っているんです。思っているにもかかわらず、こうしたとんでもないものが中に紛れ込んできて、そこで責任逃れして、公的資金だけもらって穴埋めしようというようなそんな見え透いたものがそこにあるから、我々はそれを指摘しているということなんですよ。
そこのところをしっかり理解してもらった上で答弁してもらわないと、さっきのような、後ろの役人にちょこちょこっと耳打ちされて、それでそれをそのままオウム返しで答弁しているようなそんなことでは、なかなか我々も納得をしないということ、このことを指摘をしておきたいと思います。
さらに腹かけた答弁があるんだったら、答えてください。
○麻生内閣総理大臣 後ろにちょこちょこ言われて何となく答弁しているかのごとき無礼な話はかなり失礼な話だと思いますけれどもね。まず最初にそう申し上げておきます。
それから、今話しのお話ですけれども、新生銀行だか何銀行でも結構ですが、その銀行から少なくとも申請があって、審査して、その結果がよければ出します、それだけのことだと思います。ほかには何のルールもありませんので、その審査に受かるか受からないか、それはそこできちんと審査をされればいいのであって、その上での話だと思いますので、これについてはどう思うかというような話を、今、個別の話をされてもお答えのしようがないんだと私はそう思いますけれどもね。これは、どなたが投げても同じことしか言えないと思いますが。
○中川(正)委員 論点をそらしちゃだめですよ。私が言っているのは、基準を言っているんです。それから法律の目的を言っているんですよ。これは、中小企業を救済していく、その円滑化をするためにあるという法律であるにもかかわらず、それとは違った目的で使われる可能性があるから、この基準についてははっきりしましょうと言っているんですよ。
恐らく、総理の頭の中ではこれについてもう議論する気持ちはないんだ、そんな雰囲気がもうありありと出ています。そんなことでは国会の運営は成り立っていきません。これは、総理の考え方がはっきり出てきて、初めて我々は、与党・政府は何を考えているのかというのがわかるんですよ。それが、総理がそんな形であいまいな答弁、あいまいというよりも論点をそらしていくようなそんな答弁で終始しているということ、これに対して、これから先、でき得れば話し合いをしていこうと我々は思っているんですが、非常に暗たんたる思いになります。
この国会、そういう見通しというのがもうそこに出てきているような気がいたしまして、でき得る限り、早いところこれはもう解散して、しっかりと国民の意思の中ではっきりしていく、何をしていくかということを国民が選んでいくというところまでいかないと、総理、本音といいますか、なかなかまともな議論が出てこないというような感じがします。そのことを指摘をしておきたいというふうに思います。
次に、経済緊急対策について一つ二つお聞きをしておきたいというふうに思うんです。
これから、それぞれの緊急対策、私たちも私たちの思いの中で今緊急対策を発表して、これを二つ並べて、また政策のいわゆる競争といいますか、選択肢というのを広げていきたいというふうに思っています。
その上で、今回総理が出してこられた緊急対策を一言で言えば、その場しのぎのばらまきだ。実際は、内需拡大に向けた種まきを今しなきゃいけない。土壌改良をしていくということ、このことがないと、しっかりとした景気が持続ができる、あるいは今の金融崩壊の荒波に対して日本が立ち向かっていく、そういうエネルギーが恐らく出てこないんだということ、このことだと思います。
実は、私はさっきばらまきだと言いましたが、私だけが言っているんじゃなくて、これはちょっとした雑誌を見ていたら、前の経済財政の大田弘子大臣がやはり同じことを言っているんですよ。「景気対策の名で必要のない歳出を増やしてはならない。それは、たとえば公共事業の拡大や一時的な減税策だ。今の消費の落ち込みは消費マインドの低下によるもので、一時的な浮揚策では効果は望めない。」ということです。
特に、最初は定額減税という話で始まったものなんですが、それはそういう形ではなくて、低所得者に向けた定額のクーポンかあるいは現金をばらまこう、それも一年限り。それをやって、最終的に三年後には消費税を上げようということを同時に発表をされておられるわけですが、これ、基本的には景気対策になっていかない、逆にますます国民は不安になっていく、そんなイメージを私は持っていますし、恐らく大田さんも、そういうことを直接的に言うよりも、こうしたものでやわらかく書いておられるんだろうというふうに思います。
実は、その前の竹中平蔵さんのちょっとした書き物でも、どんなことをこの人は言っているのかなと思って調べてみたんですが、似たり寄ったりの話をしています。
こういうことから考えて、今の経済対策、いろいろ説明はしておられますが、改めて、その土壌の部分、それからいわゆる土壌改良の部分、種まきの部分、ここをどのようにこれから構築をしていこうとしているのか。今回の緊急対策というのは全くそこからはかけ離れたものだと私は思っているんですが、そういう認識について、総理の改めたお話を聞きたいと思います。
もう時間が来てしまいましたのでここで聞きっ放しになりますが、これから、そうした論戦をしっかりと繰り広げていきたいというふうに思います。
以上です。
○中川(正)委員 民主党の中川正春です。
ちょっと最初に、通告をしてなかったんですけれども、アメリカの大統領選挙について、これは、通告がなくてもふだんからしっかり考えておっていただくことだろうというふうに思いますので、まず入り口、そこから話を進めていきたいというふうに思います。
先ほど、委員会が始まる前に、テレビ等々の報道は大統領選挙一色でありまして、オバマ候補がランドスライドで勝っていくという状況が確定をしてきておるようであります。アメリカも、政権交代、その政権の交代ということだけではなくて、恐らく、世界の権力構造というか、経済の構造も含めて大きな転換期をこれで迎えたんだろうというふうに思います。
そのオバマ候補の勝利について、日本の総理大臣としてこれをどう受けとめて、どのようにこれからの対応を考えていこうとされておるかというところをまずお聞かせをいただきたいと思います。
○麻生内閣総理大臣 これは基本的に、どなたがアメリカの大統領になられようとも、日本にとりましては日米というものが基軸というのは、終始一貫変わっていないところであります。
したがって、これまで民主党政権のときであろうと共和党政権のときであろうと、日本政府としてはきちんとした対応をアメリカとやってこれた。そういった努力を引き続きオバマという人とやっていかねばならぬ。これは、日本にとりまして与えられている責任、また、一番大事な点だと私どももそう思っております。(発言する者あり)
○中川(正)委員 つまらないなという声が出ていましたけれども、私もその反応ではつまらないなというふうに思います。
もちろん、日米の関係というのを基軸にしていく、そんな中でこれから新しい構造を模索をしていくということだと思うんですが、変化は出てくると思うんです。はっきりオバマさんは言っているんです。イラクからのいわゆる撤退ということを早期に考えていくという、これは、政策変更ということはもうはっきりしてきています。
それから、外交政策にしても経済にしても、これまでのネオコン体制の中でこれは破綻が今起こっているわけですが、この考え方については根本的に新しい基軸というのが生まれてくるんだろう。それが何かということを早く私たちは理解をしていかなきゃいけないというふうに思っておりますし、威圧だけじゃなくて対話を重視した外交政策に変わっていくということの中で、恐らく中国を中心にした新しい対話というのがアジアに対しても始まってくるんだろうというような、そういういろいろな与件というのをしっかりとらえていきながら日本の戦略を考えていくということ、これが私は大切なんだろうというふうに思います。
その上で、一つ、総理の基本的な経済の枠組みを考えるときの考え方というのを確認しておきたいんです。
これまではドルが基軸であった。これはアイロニーなんですが、アメリカ発のサブプライムで金融破綻を起こしたにもかかわらず、依然としてドルというのは崩壊をしないんですよ。いわゆる決済通貨として、さっきIMFの話が出ましたが、やはりドルを使ってやっていこうということは今の時点ではあるということなんですが、これは、総理の頭の中では、将来これから先もドルだけが基軸通貨として世界で秩序をつくっていくんだという形でいいのか。
それとも、いろいろなところで模索が始まっているように、例えばユーロという新しい通貨のいわゆる塊というか、これが出てきた。あるいはアラブ諸国でも、中長期的に見てこれはドルは危ないという形の中で、決済はドル以外のものでしていこうというような動きで、アラブの中でも一つのバスケットをつくるようなそういう流れも出てきた。あるいはアジアでも、私たちはやはりそういうことに対応していくという思いというのはしっかり持っていかなきゃいけない時代になってきたんじゃないかということがあります。
その上で、総理の今の基本的なスタンスというか考え方として、やはりドルを守り続けていくんだ、ドルでないといけないんだ、そういう前提でこれからもやっていこうとされるのか。それとも、それぞれのブロック単位で、ある程度の決済通貨というのをドルが崩れたときの準備としてつくり上げていきながら、新たな通貨秩序といいますか、世界通貨をつくっていこうというふうに日本は歩み出すべきだというふうに考えておられるのか。ここによって非常に戦略が変わってくるんですよ。
いずれその基本というのを、これも事前の通告がなくてあれなんですが、これはもう自然に持っていなきゃいけないスタンスだと思うので、改めて確かめさせていただきます。
○麻生内閣総理大臣 国際協調がキーワードです。それが基本だと思いますが、今、ドルの決済をやめて別の通貨になって、仮にドルが崩落、暴落したときにおける日本の被害というのは考えておかねばならぬ。どこの国でもドルによる外貨準備をしておりますので、その意味では、ドルの暴落イコール国益を大きく損なうことになる。これは、世界じゅう皆同じことであります。したがって、短期的にはドルというものをある程度支えないとやっていけない。これは、フランスもドイツもインドも中国も皆そこのところは同じだと思っております、既に意見も交換しておりますが。
しかし、中長期的にはいろいろなことを考えねばならぬ。ブレトンウッズ体制ができてきちんとアメリカのドル通貨体制になるまでにどれぐらいかかったか、御記憶のとおりです。それが七一年になったらどうなったか、御記憶のとおりです。いずれも厳しいことになりました。それでもドルの通貨体制は続いたという背景というものが、一つ考えておかねばならぬもう一点のところ。
同時に、二十七カ国であのユーロをきちんと維持できるかということに関して、それをやり切るだけの決意と覚悟がEUにあるのか。我々は、そこは見きわめないかぬところなんだと思っております。
いずれにしても、いろいろな話を、我々は国際的に見れば決済というものを考えないけませんから、その決済がきちんとできるための対応をどうやっていくか。キーワードは国際協調だと思います。
○中川(正)委員 私の問いかけに対してしっかりとしたクリアな返事は返ってこなかったので非常に残念なことでありますが、恐らく、私たちのこの国家のいわゆる戦略として、そこのところはもっと議論を深めていかなきゃいけないところなんだろうというふうに思います。
これはごまかしてもいけないところだし、いつも日本の政府というのは、国際協調だ国際協調だと言って、そうやっている間に自分の存在感をなくしてしまって、他に合わせていく。他が決めたことを与件として受け入れてしまって、それに合わせていくだけで戦々恐々としているというようなそういう状況が続いてきました。それだけに、我々の意思というのをしっかりつくり上げていくということが大切なんだろうというふうに思います。
そういう意味では、さっきの答弁はそういう答えになっていなかったということ、これを指摘をしておきたいというふうに思います。
その上で、この金融機能強化法の論点について、総理みずからの考え方を端的にただしていきたいというふうに思っています。
でき得る限り私たちも話し合いをしながら法案の修正をして、それぞれいいところをしっかり組み込んで頑張ってきたんですが、もう少しというところで強硬に採決ということを与党からきょうは話がありまして、非常に憤りを感じております。
そこで、私たちの意思としては、前々から申し上げておりますように、今の状況を見ていると、確かに、地方を中心にした中小企業の状況というのは本当に厳しい。これからまだ厳しくなってくる。そんな中で貸しはがしや貸し渋り、地方によって相当状況が違ってきておりますが、これに対応するために、公的資金で資本注入をしていくというこの法案をもう一回生き返らせるということ、これについては基本的には賛成なんです。
ところが、今回問題になったのは、そのことに乗じて、そうした本来の目的とはかけ離れたといいますか、それをうまく使って違った目的を達成しようとする中身が入り込んできている。これを排除しようというのが我々の思いでありました。具体的には、農林中金の問題と新銀行東京であります。
最初に農林中金の問題に端的に質問をしたいんですが、総理、農林中金にもこのスキームでいわゆる公的資金を資本注入すべきだというふうにお考えですか。
○中川国務大臣 現行法においても、農林中央金庫には……(中川(正)委員「総理、総理なんです。総理、あなたの考え方も聞いているんです」と呼ぶ)今、委員長から指名されたんですけれども……(中川(正)委員「委員長、違いますよ。総理です」と呼ぶ)
○田中委員長 後ほど、答えた後、総理にも答えてもらいます。
○中川国務大臣 現行法におきましても、農林中央金庫を初め、労働金庫等々、協同組合組織中央機関がその対象になっているわけでございます。そして今回も、農林中央金庫は日本のいわゆる代表的な金融機関としてこの対象にするということを排除するということは、私は、むしろこの制度の目的からいって、中小機関、あるいは中小企業、あるいは地域経済への貸し出しをよりやりやすくするというこの法律の目的の趣旨からいって、最初から排除をするということは、この法律の目的に合致しないことだというふうに考えております。
○麻生内閣総理大臣 農林中金のお話ですけれども、農林中金に対する基本的な考えは今の財務大臣と同じなんですが、国の資本参加というものの申請に対して、これは、中小企業向けの貸し出しやら何やらいろいろしておられるところだと思いますので、そういった見込みなどいろいろの審査をする必要はあろうとは思いますけれども、基本的に、いろいろな今回の一連の今の状況にあわせて農林中金等々がきちんとしたものになっているというのは大変大事なことだと思いますので、考え方と言われていましたけれども、農林中金がきちんとするのは大事なことだと思っておりますが。
○中川(正)委員 この農林中金については、これまでの委員会の議論を通じてさまざまな問題が指摘をされました。恐らく、それがしっかりと総理の頭の中で整理がされていないんだろうというふうに思うので、もう一回これはとめ返しますが、例えば六十兆円の運用資金のうち、この組織そのものが目的とする農業関係の資金の円滑化ということからすると、たった一・六兆円しか貸していないということ、それから、約四十兆円が証券化商品やデリバティブなどいろいろなものを含めて高リスクのいわゆる投資に回っているということ、それがために、恐らく今回の金融破綻で相当穴があいてしまっているだろう。それを、経営責任を問わずに、そのまま公的資本の注入をして穴埋めだけにこれを使うということについては、これは、この法律の趣旨に全く違った形で公的資金が使われていくということになっていくじゃないかという指摘をずっとしてきています。それに対して、いや、そうじゃないんですよというしっかりとした説明もないままに今まで流れてきているということなんです。
そうした意味で、総理もこの枠組みの中でこれに資本注入すべきだというふうにお考えかどうかということを聞いているんです。
○麻生内閣総理大臣 これは、農林中金が申請をしていない段階で今の御質問ですね。そういうことですね。だから、農林中金が申請した場合の話をしておられるわけですね。これはちょっと意味が、前提条件をきちんとしておかぬとはっきりしませんから。
今の段階で、まだ農林中金がそのようなことを国に対して申請したという事実を知りませんのでちょっとお答えのしようがないんですが、仮にしたとして、その内容を審査した上で、きちんとしておればできる、審査した結果、やるべきと思えばするということなんだと思いますが。
○中川(正)委員 もっと言えば、この理事長あるいはその役員の集団、十五、六人いるんだと思うんですが、これはみんな農林省の天下り。給与もはっきりしてきましたが、年収四千百万ですか、こういう年収を取って大穴をあけたということ、今こんなことがどんどん表に出てきたということでありまして、そういうところに対して政府がなぜこれはこだわり続けるのか。ちゃんとした基準をつくって、こんなところはだめですよという話をしっかりしたらいいじゃないかということを我々は言い続けてきているということ、このことを一つ指摘をしておきたいと思いますし、そこのところはしっかりした基準でというのは、基準を見るまでもなく、農中の現状というのはわかっているわけですから、こんなことに対してどうだというリーダーシップを総理の方からしっかり出してくる、そんな中で話し合いをして、ちゃんとこんなものは解決したらどうだと言うぐらいのメッセージが総理から出てくるということ、これを私は期待をしています。まだこれから参議院の話し合いは続いていきますが、そのことを一つ指摘をしておきたいというふうに思います。
それから、もう一つは新銀行東京でありますが、最近の報道機関で次から次へとずさんな現場の状況が報道をされてきております。都自身は一千億円出資して、三年間で一千十六億円の累積赤字をつくってしまった。さらに、今回の都の決定で四百億円の追加出資をすることにした。これで公的な資金は注入済みであるということ。さらに言えば、もともとの発想の中で、このビジネスモデルが成り立つ、そういう前提の銀行だったのかどうかということと同時に、その役員構成を知事みずからが裁量権を持ってさまざまにやった、やったその役員が現場に対して監督権を全く発動していなかったということ等々、さまざまにこれは指摘されております。
これに対しても、今のこの金融機能強化法の枠組みの中では、同じようなことで注入しようと思ったらできるんだ、こういうようなことがあるわけですが、私は、本来の目的からいけば、こういう銀行を救済するための法律ではないというふうに思っているんです。そこのところをはっきりさせるべきだというふうに思うんです。
だから改めて聞きますが、総理はどう思っておられますか。この新銀行東京にも国の公的資金を注入すべきだというふうに思いますか。
○麻生内閣総理大臣 この種の場所で個別の議論をするのはいかがかなと。正直、質問しておられる御本人もそう思っておられるんでしょうけれども。あり方についてはちょっと適当じゃないんじゃないかなと私自身は率直にそう思っております、まずは。
ただ、一般論として申し上げさせていただければ、地方公共団体が支配をしているという形になるんだと思いますね、今のお話ですと。そういった金融機関について、その支配団体であります地方公共団体というものがその資本の充実につきましては一義的な責任を負うのは当然だと思いますので、そういった意味におきましては、制度が適切に運用されるということなんだと思いますが。
○中川(正)委員 総理、ここまでこの委員会が議論を進めてきて、それで、金融対策の日本の政策誘導としては一つの目玉なんだと思うんですよ。それをしっかり事前に整理をせずに、ここへ出てきてさっきのような答弁をするということは、一体どこまで腹かけてこの金融対策をやろうとしているのかというのは、私は非常に疑問に思っております。だから、そこのところを総理のリーダーシップを発揮することによって、今問題になっていることがすっきりするんですよ。
私たちはあえて反対しているわけじゃないんです。あえて反対しているわけじゃない。この問題というのは、資本注入して中小企業に対する資金を円滑化していくというのは、これは本当に金融対策の中では重要だと思っているんです。思っているにもかかわらず、こうしたとんでもないものが中に紛れ込んできて、そこで責任逃れして、公的資金だけもらって穴埋めしようというようなそんな見え透いたものがそこにあるから、我々はそれを指摘しているということなんですよ。
そこのところをしっかり理解してもらった上で答弁してもらわないと、さっきのような、後ろの役人にちょこちょこっと耳打ちされて、それでそれをそのままオウム返しで答弁しているようなそんなことでは、なかなか我々も納得をしないということ、このことを指摘をしておきたいと思います。
さらに腹かけた答弁があるんだったら、答えてください。
○麻生内閣総理大臣 後ろにちょこちょこ言われて何となく答弁しているかのごとき無礼な話はかなり失礼な話だと思いますけれどもね。まず最初にそう申し上げておきます。
それから、今話しのお話ですけれども、新生銀行だか何銀行でも結構ですが、その銀行から少なくとも申請があって、審査して、その結果がよければ出します、それだけのことだと思います。ほかには何のルールもありませんので、その審査に受かるか受からないか、それはそこできちんと審査をされればいいのであって、その上での話だと思いますので、これについてはどう思うかというような話を、今、個別の話をされてもお答えのしようがないんだと私はそう思いますけれどもね。これは、どなたが投げても同じことしか言えないと思いますが。
○中川(正)委員 論点をそらしちゃだめですよ。私が言っているのは、基準を言っているんです。それから法律の目的を言っているんですよ。これは、中小企業を救済していく、その円滑化をするためにあるという法律であるにもかかわらず、それとは違った目的で使われる可能性があるから、この基準についてははっきりしましょうと言っているんですよ。
恐らく、総理の頭の中ではこれについてもう議論する気持ちはないんだ、そんな雰囲気がもうありありと出ています。そんなことでは国会の運営は成り立っていきません。これは、総理の考え方がはっきり出てきて、初めて我々は、与党・政府は何を考えているのかというのがわかるんですよ。それが、総理がそんな形であいまいな答弁、あいまいというよりも論点をそらしていくようなそんな答弁で終始しているということ、これに対して、これから先、でき得れば話し合いをしていこうと我々は思っているんですが、非常に暗たんたる思いになります。
この国会、そういう見通しというのがもうそこに出てきているような気がいたしまして、でき得る限り、早いところこれはもう解散して、しっかりと国民の意思の中ではっきりしていく、何をしていくかということを国民が選んでいくというところまでいかないと、総理、本音といいますか、なかなかまともな議論が出てこないというような感じがします。そのことを指摘をしておきたいというふうに思います。
次に、経済緊急対策について一つ二つお聞きをしておきたいというふうに思うんです。
これから、それぞれの緊急対策、私たちも私たちの思いの中で今緊急対策を発表して、これを二つ並べて、また政策のいわゆる競争といいますか、選択肢というのを広げていきたいというふうに思っています。
その上で、今回総理が出してこられた緊急対策を一言で言えば、その場しのぎのばらまきだ。実際は、内需拡大に向けた種まきを今しなきゃいけない。土壌改良をしていくということ、このことがないと、しっかりとした景気が持続ができる、あるいは今の金融崩壊の荒波に対して日本が立ち向かっていく、そういうエネルギーが恐らく出てこないんだということ、このことだと思います。
実は、私はさっきばらまきだと言いましたが、私だけが言っているんじゃなくて、これはちょっとした雑誌を見ていたら、前の経済財政の大田弘子大臣がやはり同じことを言っているんですよ。「景気対策の名で必要のない歳出を増やしてはならない。それは、たとえば公共事業の拡大や一時的な減税策だ。今の消費の落ち込みは消費マインドの低下によるもので、一時的な浮揚策では効果は望めない。」ということです。
特に、最初は定額減税という話で始まったものなんですが、それはそういう形ではなくて、低所得者に向けた定額のクーポンかあるいは現金をばらまこう、それも一年限り。それをやって、最終的に三年後には消費税を上げようということを同時に発表をされておられるわけですが、これ、基本的には景気対策になっていかない、逆にますます国民は不安になっていく、そんなイメージを私は持っていますし、恐らく大田さんも、そういうことを直接的に言うよりも、こうしたものでやわらかく書いておられるんだろうというふうに思います。
実は、その前の竹中平蔵さんのちょっとした書き物でも、どんなことをこの人は言っているのかなと思って調べてみたんですが、似たり寄ったりの話をしています。
こういうことから考えて、今の経済対策、いろいろ説明はしておられますが、改めて、その土壌の部分、それからいわゆる土壌改良の部分、種まきの部分、ここをどのようにこれから構築をしていこうとしているのか。今回の緊急対策というのは全くそこからはかけ離れたものだと私は思っているんですが、そういう認識について、総理の改めたお話を聞きたいと思います。
もう時間が来てしまいましたのでここで聞きっ放しになりますが、これから、そうした論戦をしっかりと繰り広げていきたいというふうに思います。
以上です。