参議院 内閣委員会(新型インフルエンザ対策特措法(午前)/はた委員、山谷委員、古川委員))
平成24年4月17日(火)
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○新型インフルエンザ等対策特別措置法案(内閣
提出、衆議院送付)
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○委員長(芝博一君) それでは、新型インフルエンザ等対策特別措置法案を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。
○はたともこ君 民主党のはたともこでございます。
新型インフルエンザ等対策特別措置法案について質問させていただきます。
まず、中川大臣に基本的な考え方について伺います。
本法案は、二〇〇九年の新型インフルエンザ、H1N1パンデミック、そして二〇一〇年の宮崎口蹄疫、二〇一一年、昨年の東日本大震災と福島原発事故などによる我が国の危機管理上の反省や教訓を踏まえて作られた法案であると理解してよろしいでしょうか。私はそうでなければならないと思いますが、中川大臣の御見解を伺います。
○国務大臣(中川正春君) 基本的には御指摘のとおりでございます。
この新型インフルエンザについてはいつ発生するか予断を許さないという状況にありまして、これまでにも行動計画の策定、それから抗インフルエンザウイルス薬の備蓄、それから細胞培養法によるワクチンの迅速な製造ラインの整備などについて所要の準備を進めてまいりました。
さらに、御指摘の要素と同時に東日本大震災の教訓も踏まえておりまして、これは行動計画の実効性を更に向上するために今般、国会に提出をしたということでございます。二〇〇九年の新型インフルエンザ対策など過去の様々な危機管理の反省、教訓、これを地方公共団体や医療関係者等の意見を聞きつつまとめてまいりました。行動計画や対策本部を法定化するなど、あるいは国、地方公共団体の体制整備、責任の明確化などを目指しているということと同時に、感染拡大防止策や国民生活の安定化策などの法的根拠の整備、これを盛り込んだというところでございます。
○はたともこ君 それでは、二〇〇九年のA/H1N1パンデミックでは具体的にどのような反省点があり、それを教訓として具体的にどのように本法案に反映されたのかを説明していただきたいと思います。
○副大臣(後藤斎君) 先ほど大臣がお答えをいただいたように、先生の御指摘の二〇〇九年のさきのインフルエンザ、そして二〇一〇年の口蹄疫、さらには東日本大震災の昨年の教訓を踏まえて、いろんな意味で検討してまいりました。特に今先生が御指摘の二〇〇九年のインフルエンザの教訓ということで、もう先生御案内のとおりに、厚労省で二〇〇九年の新型インフルエンザ対策総括会議報告書というものを専門家の皆さん方の御意見も賜りながらまとめたところでございます。あわせて、医療団体や地方公共団体の皆さん方からもたくさんの御意見をいただきながら幅広く検討してまいりました。
そういう意味で、二〇〇九年の新型インフルエンザの特に反省、教訓ということは、一点目は、水際対策について病原性等を踏まえた専門家の意見を基に機動的、スピード感がある縮小ができなかったということ、そして、医療従事者の皆さん方に一番協力をいただかなければいけませんが、その際に医療従事者の皆さん方の死亡や後遺症が生じた場合の補償制度がなかったこと、さらには予防接種に関する実施主体、費用の在り方が不明確であったこと、もう一点は、感染防止のために学校等を休業をしなければいけない場合がございますが、その際に法的根拠が不十分であった等が指摘、教訓だというふうに認識しております。
それを踏まえまして、今御議論いただいております法案におきましては、十八条において、検疫の実施など新型インフルエンザ等対策の実施に当たって、専門家の意見を踏まえて基本的対処方針を定めながら、病原性の程度に応じ的確かつ柔軟性に行うという規定を設けたこと、さらには六十三条一項において、要請や指示に応じて新型インフルエンザ等の患者さんに対する医療提供を行う医療関係者が死亡等をした場合には補償措置を講ずること、さらには二十八条、四十六条、六十九条におきまして、予防接種の実施主体、費用負担等について明確化する、さらには四十五条におきまして、感染防止のための協力要請等の措置を盛り込み、実施権限を有する都道府県知事に実施権限を付与をする等の必要な規定を盛り込んでいるところでございます。
○はたともこ君 本法案は成立後一年以内に施行されるということですが、法案成立後、どのような手順、スケジュールで政令、政府行動計画、都道府県行動計画、市区町村行動計画、各種ガイドライン等が策定されていくのか、説明していただきたいと思います。
○大臣政務官(園田康博君) 先生御指摘のように、法律が成立をいたしましてから一年未満に政令あるいは施行の様々な行動計画を作成をしていくということが決められているわけでございますけれども、指定公共機関であるとか緊急事態宣言、これに係る具体的な基準を定める政令につきましては、まず、関係団体、これまでも聞いてまいりましたけれども、更に具体的な手順を決めていくわけでございますので、そういった関係団体や専門家の皆さん方の御意見を聞かせていただきながら、そしてまたこれをパブリックコメントに付させていただきましてやはり国民の皆さん方にも広く御意見を聞かせていただきたいという、その手順を踏まえて行ってまいりたいというふうに思っております。当然、これはできる限り早く定めていくということに努めてまいりたいというふうに思っております。
また、この法律の施行後におきましては、先ほど申し上げた学識経験者の御意見を伺わせていただき、またパブリックコメントにも付して、できる限り速やかに、先ほど申し上げた本法律案に基づく今度は政府行動計画、これを策定をするといったところが一番最初に来る私どもの作業であるというふうに考えております。
この政府の行動計画を作成をし、そしてそれに基づいて今度は具体的な手順を更に具体化したガイドライン、これを作成をするといったところを考えております。このガイドラインの作成については、これは法律上の根拠にはありませんけれども、やはり具体的な行動計画を実践をしていくといった点では、しっかりと関係省庁の連絡会議の中においてこのガイドラインというものを精緻に作る必要があるというふうに考えておるところでございますので、そういったところをやっていきたいというふうに思っております。
さらに、今度は政府だけではなくて、やはり都道府県、そして市町村といったところの行動計画といったところもお願いをしていかなければならないわけでございますので、そういった点では、政府が行動計画を作らせていただいた後に、今度はそれに基づいて都道府県、市町村といったところにお願いをしていくといったところも出てまいります。これについては、当然、早期に作成ができるように、私ども政府としてもしっかりと支援を、都道府県あるいは市町村が具体的なところができるように政府としても支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○はたともこ君 そこで、中川大臣に伺います。
四月四日の本院予算委員会で、A/H1N1pdm二〇〇九当時の厚生労働大臣で対策に当たられた舛添要一先生が本法案について説明されまして、本法案は当時の経験が十分に生かされていないと指摘をされました。さらに、万機公論に決すべし、いろんな人の意見を聞く場をつくらなければいけないとおっしゃいました。
今後、政令、各種行動計画、各種ガイドライン等を策定するに際して、現場の意見、批判者の意見、関係団体等の意見をよく聞いて取り入れるべき点は取り入れるべきだと私は思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) この法案が様々な関係者と連携をしながら対応を取っていくということが前提になっているだけに、先ほど御指摘がありましたような、それこそ万機公論に決すべしで、そしてまた、その御意見をこれに組み込みながら法案を作っていく、また、法案だけではなくてこれからの行動計画でありますとか対処方法の中でも、そうした特に専門家の意見もしっかり聞き込んでいきながら対応をしていくということが大事だというふうに思っています。
具体的には、学識経験者から公の場で意見を聞く場を設けてきました。それから、新型インフルエンザ発生時に多くの実務を担っていただく地方公共団体、この間でも実務者レベルで検討協議会を開催をいたしまして、精力的な御議論をいただいてきております。あるいは日本医師会、それから病院団体あるいは経団連など、非常に関係の深い各種団体との公開の意見交換というのも進めてまいりました。また、与党だけではなくて、自由民主党あるいは公明党の勉強会などの場でもこれ積極的に御議論をいただきまして、その御議論の中で出てきた論点というのもこの中に整理をさせていただいたということであります。
新型インフルエンザ等対策は広く国民生活にかかわっておりまして、その理解と協力が必要であるということで、この先も同じようなスタンスで様々に議論を広げていきたいというふうに思います。従来の取組に対して批判的な御意見、これもあると思うんですが、それも多様な観点から是非御議論をいただきたいというふうに思っておりまして、具体的な、特に行動計画の中ではそうした多様性ということもしっかり尊重していきたいというふうに思っております。
○はたともこ君 現場の意見や批判者、関係団体等、あるいは専門家の方々の意見を聞く方法として、先日の四月十二日の参考人質疑で尾身先生と川本先生のお二人から、インターネットで専門家同士、現場同士のリンクを張る方法、あるいはITを使ったテレビ会談などの提案がありました。
田河室長、これらの意見を是非取り入れていただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
○政府参考人(田河慶太君) お尋ねの点でございます。
本法案におきましては、政府行動計画、基本的対処方針を定める際に事前に感染症に関する専門家等の意見を聞くことを法案の中で定めております。御指摘、参考人質疑の中でも御意見いただきましたように、新型インフルエンザ等の発生時に迅速に専門家の御意見を聞く方法としてテレビ会議等のIT等の手法を活用していくこと、そうしたことも一つの考え方であると私どもも思っております。今後、検討していきたいというふうに考えております。
○はたともこ君 中川大臣にもう一つ伺いたいと思います。
先日、三月二十二日の本委員会で、私は大臣に、参考人質疑もお願いした国立感染研の田代眞人先生の提言の中で、新型インフルエンザ対策の事前対応として野鳥、家禽、豚の事前監視体制の必要性について質問させていただきました。中川大臣から、政府行動計画指針の中でしっかり具体的に盛り込んでいくということで一つ一つ確かなものを作っていきたいという答弁をいただきました。
そこで、大臣、本日は、特に豚のサーベイランスの重要性について伺います。
先日の参考人質疑で田代先生は、日本では鳥については農水省、野鳥については環境省がやっているが、豚についてはどこもやっていない、豚についてはどこの国も農業関係の強い圧力があるが、日本において是非そこを克服していただきたいとおっしゃいました。
中川大臣、豚サーベイランスの必要性と今後の取組について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 御指摘がありましたように、新型インフルエンザの発生の可能性をいち早く把握するということの中では、それぞれ体内で人にうつりやすいインフルエンザウイルスに変化させやすい豚を含めた動物のインフルエンザの発生状況というのをつかんでいくということは非常に大事なことであるというふうに考えております。
この新型インフルエンザ等感染症に変異するおそれが高い動物のインフルエンザの外国及び国内における発生の状況、それから動向及び原因の情報収集について、この法案の第六条第二項第二号イなんですが、これにおいて規定をしておりまして、特に豚という御指摘がございましたが、その辺しっかり念頭に置きながら対応していきたいというふうに思います。
○はたともこ君 では、農水省に伺います。
二〇一〇年の宮崎口蹄疫については、私は、韓国での口蹄疫発生と万全の防疫体制の周知を各都道府県に発出した一月七日の農水省動物衛生課長通知が宮崎県においては全く周知されなかったこと、初動が全く遅れたこと、数々の情報隠蔽が行われたこと、獣医師の不足等々非常に多くの問題があったと思いますが、農水省は二〇一〇年の宮崎口蹄疫についてどのような反省、総括をしているのか、説明してください。
○政府参考人(高橋博君) 平成二十二年におけます宮崎県の口蹄疫の発生に関しましては、農林水産省といたしましては、国、県などの対応を検証していただくために第三者によります口蹄疫対策検証委員会を設置したところでございます。
同委員会におきましては、平成二十二年の十一月に報告書を発表いたしまして、この中で、異常家畜の発見の見逃しあるいは通報の遅れがあり、感染を広げる大きな原因となったこと、それから畜産農家におきまして飼養に関する衛生管理基準が守られていなかったこと、さらには国及び都道府県などの役割分担が不明確であり、連携も不足していたというようなことが指摘されておるところでございます。
この報告書を受けまして、さらには平成二十二年度におけます高原性鳥インフルエンザの発生状況、こういったことを踏まえまして、昨年四月に家畜伝染病予防法が改正をされまして、その際、発生の予防、早期通報、迅速な初動対応の三点に重点を置きました防疫対応を強化いたしたところでございます。その中では、畜産農家が遵守すべき飼養衛生管理基準、あるいは国、都道府県等が連携をして防疫措置を講ずる際の防疫指針、こういったものについて大幅に見直したところでございます。
○はたともこ君 それでは、農水省、新型インフルエンザ対策において豚のサーベイランスの重要性について、なぜ豚のサーベイランスが必要なのかも含めてどのように認識をしておられるのか、お答えください。
○政府参考人(高橋博君) 豚のインフルエンザにつきましては、豚の場合、従来から一過性の発熱あるいは鼻汁等の風邪様の症状を示すものの、通常、一定期間程度で自然治癒をするものでございまして、家畜衛生あるいは畜産経営上大きな問題となるものではないという疾病でございます。このため、家畜伝染病予防法上におきましては、いわゆる届出対象義務というものも実は課されておるところではございません。
しかしながら、いわゆる新型インフルエンザ対策の観点からは、豚が人のインフルエンザウイルスやあるいは高病原性鳥インフルエンザウイルスなどに同時に感染をした場合には、豚の体内で新型インフルエンザウイルスが生じる可能性があると、このことはきちんと認識をしておりまして、一般的に農場段階におけます豚インフルエンザのサーベイランスということについては重要であると認識しております。
ただ、我が国におきましては、諸外国、特に東南アジア等とは異なりまして、農場段階あるいは日常生活におきましても豚が他の家禽あるいは人と濃厚に接触する機会というのは極めて僅かな飼養形態にございます。このことから、豚につきましては、先ほど申し上げました家畜伝染病予防法の改正によりまして、新型インフルエンザ対策上も衛生的な飼養管理基準、これを徹底をしていくということがやはり強く求められているものと認識しております。
○はたともこ君 続いて農水省に伺います。
感染研の田代先生は、豚のサーベイランスについては日本政府のどこもやっていないとおっしゃっているわけですが、農水省は、お配りした資料のこの一ページにあるように、やっているとおっしゃっているわけですが、現在豚サーベイランスはどのように行われているのか、検査頭数も含めてお答えいただきたいと思います。また、それで十分であるということなのか、今後の取組はどうするのかも含めてお答えください。
○政府参考人(高橋博君) 豚インフルエンザにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、いわゆる家畜伝染病予防法、いわゆる法律上の義務といたしましては飼養者に対しまして届出対象とはしておらないところでございますけれども、先ほど来の新型インフルエンザの問題もございまして、農林水産省といたしましては、畜産農家が遵守すべき飼養衛生管理基準におきまして、飼養家畜に、豚に異状が見られた場合には獣医師の診察を受けるように定めるとともに、せきなどの呼吸器症状、これによりまして家畜保健衛生所に精密検査の依頼があった豚につきましては豚インフルエンザの検査を併せて実施をしていく、このようなパッシブサーベイランスを行うことによりまして、陽性時には当然のことながら当該個体の移動、出荷を自粛するよう全都道府県を指導しております。
これにつきましては、平成二十一年度の段階から全都道府県に対して指導しているところでございまして、なお、この豚インフルエンザの検査についてでございますけれども、年間おおよそ百件程度が実施されております。
これまでのところは、我が国におきましては豚の体内で新型インフルエンザが生じたと疑われる事例は発見されておりませんけれども、引き続き、検査結果等の情報につきまして、厚生労働省等が行っております屠畜場におけますインフルエンザのサーベイランスと同様に共有化をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○はたともこ君 厚生労働省も、資料の二ページにあるように豚のサーベイランスを行っていると思いますが、現在どのように行っているのか、四十七都道府県全てで行うつもりがあるのかも含めて、厚生労働省、説明してください。
○政府参考人(外山千也君) 厚労省におきましても、豚には人のインフルエンザウイルスと鳥のインフルエンザウイルスの両方が感染し得ることから、それら複数のウイルスが同時に感染した際に遺伝子の組換えが起こって新型インフルエンザが発生することが懸念されているというふうに考えております。このため、豚におけるインフルエンザサーベイランスは新型インフルエンザの出現を早期に把握するための取組として重要であると考えております。
それで、厚生労働省では、都道府県の協力を得まして、豚を対象とした新型インフルエンザウイルスの出現を監視するための調査を予算事業として実施しております。この調査では、屠畜場の豚から鼻腔や気管の拭い液を採取いたしまして、都道府県衛生研究所でインフルエンザウイルスの分離を行い、ウイルスが分離された場合にはその亜型等についての詳細な検査を実施しております。平成二十三年度は、十県で調査を実施いたしまして、約千検体の検査を行ったところであります。
○はたともこ君 農水省に伺います。
厚生労働省が行っている検査で、屠畜場の豚から新型インフルエンザウイルスが発見された場合、発生農場をすぐに特定できますか。また、今後、農場での無症状の豚も含めたサーベイランスの拡大強化に取り組んでいくつもりがおありになるのかどうか、お答えください。
○政府参考人(高橋博君) 屠畜場におけまして、豚インフルエンザのサーベイランスの結果、そのような豚が生じた場合に、御承知のとおり、基本的に我が国におきましては飼育農場から屠畜場への出荷ルートというのはほぼ確定が可能となっております。したがいまして、そのようなルートをきちんと使うということは可能だろうと思っております。
仮に、厚生労働省から、屠畜場におきまして発見されました豚インフルエンザウイルスの性状を科学的な知見に基づいて分析した結果、新型インフルエンザの可能性が示唆されるというような事態になった場合におきましては、農林水産省におきましても、当然のことながら、厚生労働省あるいは都道府県と連携をいたしまして、専門家からの科学的な意見も十分に聞きながら、出荷元農場におけますサーベイランスの強化あるいは飼養豚の隔離及び移動自粛等について、迅速かつ的確に対応してまいりたいというふうに考えております。
○はたともこ君 では、文部科学省にも伺います。
田代先生は参考人質疑で、私は文科省のコントリビューションも非常に大事だと思います、日本においては鳥インフルエンザ若しくはインフルエンザの専門家というのはほとんどが大学における研究者です、そういった方たちを巻き込んで、この法案の趣旨が貫徹できるように体制を事前に構築していただきたいと発言されました。田代先生は、大学の獣医学の研究室、先生方の御参加を強く希望しておられます。この田代先生の御提言に対して、文部科学省はどのようにお答えになりますか。
○政府参考人(森本浩一君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、新型インフルエンザへの対応につきましては、医学のみならず獣医学も含めまして、日ごろから幅広い研究開発を実施して最新の科学的知見を蓄積して緊急事態に備えると、こういうことが重要であると考えております。このため文部科学省におきましては、大阪大学、長崎大学を始めといたしまして、国立大学法人における感染症に関する研究体制の整備充実等を推進しております。
また、国際協力が重要という認識の下にアジア、アフリカの八か国十三か所に海外研究拠点を展開いたしまして、これらを相互に連携させるネットワークを構築して感染症対策に関する基礎的知見の集積や人材育成を図るとともに、政府開発援助、ODAを活用してアジア、アフリカ等の諸国との感染症に関する国際共同研究を推進しております。
文部科学省といたしましては、大学等における新型インフルエンザに関する専門家の知見が有効活用されるように、今後とも、厚生労働省など感染症に関する研究対策を実施される関係省庁と連携を密にしていきたいと考えております。
○はたともこ君 中川大臣、農水省も厚生労働省も豚のサーベイランスはやっているということですが、厚生労働省のサーベイは実は田代先生の提言で始まったものと聞いておりますし、田代先生はこの現状を十分に認識された上で、あえてどこもやっていないとおっしゃったのだと思います。是非、ここは大臣のリーダーシップで豚のサーベイランスを行動計画の中にしっかりと盛り込んで、農水省、厚生労働省、環境省、文部科学省等の連携を密にして確かなものをつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) 大切な御指摘をいただいたんだというふうに思います。関係省庁間が一層連携を密にしていくということ、それを前提にして、この新たな政府行動計画等においても、是非サーベイランスの具体化、していきたいというふうに思っております。
○はたともこ君 次に、ワクチンについて厚生労働省に伺います。
海外で新型インフルエンザが発生した場合、いかに早くウイルス株を入手するかがワクチンの早期かつ必要十分な生産、蔓延の防止のポイントになると思います。パンデミックワクチンの承認については、行動計画において、プロトタイプワクチン、プレパンデミックワクチンに関するデータを活用して短期間に適切に審査、承認を行うとされており、国の採択事業者となった四者は、いざ海外で新型インフルエンザが発生したとなると、国立感染研からシードウイルスとしてリバースジェネティクス弱毒化株の配付を受け、パンデミックワクチンの生産を開始すると聞いているところでございます。
そこで、お尋ねいたします。海外で新型インフルエンザが発生した場合、日本は速やかにウイルス株を入手できる体制にあるのかどうか、まず確認をしたいと思います。
○政府参考人(外山千也君) 現在の新型インフルエンザ対策行動計画に基づき、未発生期から国立感染症研究所やWHO、OIEなどの国際機関、在外公館等を通じましてインフルエンザに関する必要な情報を収集しております。
新型インフルエンザ発生期には、世界五か国に設置されておりますWHOインフルエンザ協力センターの一つに指定されております国立感染症研究所に対し、WHOの枠組みを通じまして速やかにウイルス株が提供されることとなっております。
○はたともこ君 さらに、リバースジェネティクス弱毒化株は、海外で作ったものを日本国内に持ち込むのか、あるいは野生株をそのまま国立感染研に持ち込んで感染研でリバースジェネティクス弱毒化株を作るのか、あるいはメーカーが直接野生株を扱うこともあるのかどうか、この野生株を直接国内に持ち込むことに対するリスク管理は万全なのかどうか、厚生労働省、説明してください。
○政府参考人(外山千也君) パンデミックワクチンの製造に当たりましては、WHOのインフルエンザ協力センターの一つである国立感染症研究所が、WHOの枠組みを通じまして野生株の提供を受け、弱毒化などの処理によりワクチン株の開発を進めることとしておりますけれども、他の協力センター等で開発されましたワクチン株が優れたものである場合には、その株を入手することもあり得ると考えております。国内のワクチン製造会社が直接海外からワクチン株を入手することはなく、国立感染症研究所を通じてワクチン株が提供されることとなっております。
国立感染症研究所は、バイオセーフティーレベル3である新型インフルエンザウイルスを取り扱うことのできる施設設備を有しまして、また十分な訓練を受けた専門家が輸送中も含め病原体を管理しておりますことから、安全管理体制は確保されているものと考えております。
○はたともこ君 現在、政府は、四事業者、化血研、北里第一三共ワクチン、バクスターとライセンス契約をした武田薬品、阪大微研を採択事業者として特例交付金を支給して、新型インフルエンザが発生した際、この四者にシード株を配付してから半年以内をめどに全国民一億三千万人分のパンデミックワクチンを生産できる体制を構築中であるということですが、いかに早く生産するかということであれば、二十回分の十ミリリットルバイアルということになるのでしょうが、使いやすい二回分の一ミリリットルバイアルを生産するメーカーもあるなど、メーカーによってはバイアルのサイズは異なるようです。
ワクチン接種となれば、妊婦へは保存剤の入っていない一回分用のプレフィルドシリンジ製剤の使用が一般的には好ましいと思いますが、現段階では四者のうち一者のみがプレフィルドシリンジをパンデミックワクチンの生産ラインに組み込んでいると聞いております。
パンデミックワクチン生産供給体制におけるプレフィルドシリンジ製剤、あるいは一ミリリットルバイアル、十ミリリットルバイアル等の生産供給体制について、どのような想定、取組になっているのか、必要量が早期に調達できるのかも含めて説明してください。
○政府参考人(外山千也君) 今年一月に取りまとめられました新型インフルエンザ専門家会議の意見書では、新型インフルエンザが発生した際には必要量のワクチンを可能な限り短期間で製造する必要があることから、集団接種を基本といたしまして、早期の供給に適している一本十ミリリットル等のマルチバイアルを主に供給することとし、接種会場ごとに発生する端数の人数や集団的接種に適さない対象者への接種のために、一定程度は一ミリリットル等の小さなバイアルを供給することが提言されております。
現在、実施している新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業におきましては、こうした点も踏まえた上で、全国民のワクチンを約半年で生産する体制の整備を図っております。
また、パンデミックワクチンに添加される保存剤には、特に催奇形性などの問題があるとの科学的な根拠が明らかになっているわけではありませんけれども、希望する妊婦等に配慮し、一定量について保存剤を使用していないプレフィルドシリンジ製剤により供給できる体制の整備を進めているところであります。
○はたともこ君 ワクチンについてもう一点確認いたします。
児童生徒、園児に対して速やかにパンデミックワクチンを接種することは、学校、保育園、幼稚園等で集団接種を行うのか、それとも個別に医療機関で行うこととするのか、どのように考えておられるのか、厚生労働省、説明してください。
○政府参考人(外山千也君) パンデミックワクチンの接種につきましては、平成二十四年一月に専門家会議が取りまとめた意見書におきまして、保健所、保健センター、学校などの公的な施設を活用する等により接種会場を確保し、原則として集団的接種を行うこととすると提言されております。
厚生労働省といたしましては、この意見書を踏まえまして、児童などに対するパンデミックワクチンの接種を安全かつ迅速に実施できるよう、文部科学省などの関係者と連携しつつ、具体的な接種体制の構築に向け検討していきたいと考えております。
○はたともこ君 次に、漢方製剤麻黄湯について厚生労働省に伺います。
麻黄湯は、インフルエンザに対して効能を有する製剤として薬事承認をされており、去る三月二十二日の本委員会での私の質問に対して厚生労働省平山大臣官房審議官は、新型インフルエンザが発生した際には適切な診断の下で処方がなされ、初期のインフルエンザの諸症状に対して有効であることが期待されておりますと答弁されました。
麻黄湯は、検査でインフルエンザが陽性となる前から使用でき、薬価も安いなど、タミフルやリレンザにはない利点があると考えておりますが、新型インフルエンザを所管する健康局長として麻黄湯の有用性をどのように認識しておられるのか、外山局長にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(外山千也君) 麻黄湯は、初期のインフルエンザにおける悪寒、発熱等の諸症状に対して効能を有する製剤として薬事承認されておりまして、病原性等が未知であるものの、新型インフルエンザの発生時においても、医師の適切な判断の下、臨床の現場において活用されるものと想定しております。
新型インフルエンザの治療に当たりましては、タミフル等の抗インフルエンザウイルス薬だけでなく、麻黄湯についても初期のインフルエンザの諸症状改善のための一つの手段となり得るものと考えております。
○はたともこ君 では、今後の厚生労働省が作成する新型インフルエンザ対策のガイドラインの中にタミフル、リレンザとともに選択肢の一つとして麻黄湯を明記すべきであると私は思いますが、いかがでしょうか。さらに、タミフル、リレンザと同様に麻黄湯を備蓄すべきであるとも考えておりますが、厚生労働省、いかがでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 現行の新型インフルエンザ対策行動計画では、厚生労働省は、新型インフルエンザの診断、治療方針等に関するガイドラインを作成することとなっております。麻黄湯は、インフルエンザウイルスの増殖を抑える作用を持つタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザウイルス薬とは効果等が異なる薬剤であることから、ガイドラインへの記載や備蓄等の新型インフルエンザ対策上の位置付けにつきましては、専門家による医学的な判断等を踏まえた上で検討したいと考えております。
○はたともこ君 さて、昨年の東日本大震災、福島原発事故の教訓はいまだ検証中ではありますが、やはり初動の問題、司令塔が不明確であったこと、総理大臣なのか、保安院長なのか、原子力安全委員長なのか、混乱があったのではないかと思います。
そこで、本法案の新型インフルエンザ対策ですが、初動体制、事務方、行政サイドの司令塔はどうなっているのか、初動体制の事務方の司令塔は四月十三日の北朝鮮ミサイル発射でも問題となっている内閣危機管理監なのか、また三人いらっしゃる内閣官房副長官補のうちのどなたなのか、あるいは新型インフルエンザ等対策室長なのか、内閣官房、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(田河慶太君) 法案におきましては政府対策本部の設置を規定しているところでございますが、新型インフルエンザ対策につきましては事務方としても平時より体制を整えておくことが重要であると考えております。
その体制としまして、平時におきましては、内閣官房の内閣危機管理監を議長として、各省の局長等を構成員とします新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議を開催し、関係省庁の緊密な連携を確保しているところでございますが、私、内閣官房新型インフルエンザ等対策室長も事務局総括という立場で内閣危機管理監を助け、会議の運営を行っているところでございます。
また、海外において新型インフルエンザが発生の疑いが強まった場合におきましては、内閣危機管理監も中心となり、関係省庁の局長が集まり緊急参集チームを参集いたしますが、そこでは事態について分析、協議をし、内閣総理大臣に報告することとしておりますが、私も当然その参集チームのメンバーという形でございます。
さらに、新型インフルエンザが発生したことが確認された場合、これは内閣総理大臣を本部長とする政府対策本部が設置されることとなります。その下に、事務方の体制としましては内閣危機管理監が主宰する新型インフルエンザ対策本部幹事会を置くこととなっておりますが、私も内閣官房の事務局総括という立場から幹事会の運営事務を行うこととなっております。
以上でございます。
○はたともこ君 中川大臣、この司令塔の問題については、先日の参考人質疑で自治医大教授であられた尾身先生が、二〇〇九H1N1の経験を生かす第一の点として、意思決定のプロセス、いろんな意見を聞いて最終的には一つのところに集約するシステムがなかった、最終的な意思決定は内閣総理大臣だが、その前に専門家の人たちが十分議論するシステムをつくって最終的な専門家の意見を総理に持っていくシステムが重要だとおっしゃいました。
大臣、新型インフルエンザ対策でこのような専門家のチームをいつからどのようにつくるのか、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 大震災の教訓の中で非常に大事な点であったというふうに思っております。
本法案において、政府行動計画そして基本的対処方針、それぞれを定める際に、事前に感染症に関する専門家等の意見を聞くことというふうに規定をされております。それに基づいてそれぞれ委員会的なものを置いていきたいというふうに思っておりまして、新たなシステムをそうした形で構築していく中で、専門家の判断を仰ぎながら最終的には総理が判断をしていくという体制をつくっていきたいと思います。
○はたともこ君 では、次に内閣府に伺います。
今年大きな話題となった東京大学医科学研究所の河岡教授チームらのH5N1鳥インフルエンザウイルスの論文公開差止め問題について経緯を説明してください。
○政府参考人(吉川晃君) お答えいたします。
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1に関するオランダと日本の研究論文二本につきまして、米国の国立衛生研究所、NIHの諮問機関、生物安全保障のための科学諮問委員会、これはNSABBと申します、の助言に基づきまして、米国政府が昨年十二月二十日に内容の一部の削除を求める勧告を科学ジャーナル及び研究者に対して行いました。
なお、日本の研究者は、御指摘のとおり、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授であります。実験は米国ウィスコンシン大学で実施されて、我が国には当該ウイルスは持ち込まれておりません。
この勧告を受けまして本年一月二十日に、H5N1ウイルス研究を実施している研究者たちが連名で、哺乳類間で連鎖可能なH5N1の感染実験について自主的に六十日間中止を表明いたしまして、この間に悪用が懸念される研究成果の公表について、米国政府、WHO、その他関係機関に対して適切な仕組みを検討するように求めました。
WHOでは、二月十六、十七日に専門家を集めた検討を行いまして、三つの点について見解をまとめました。その一つは、二つの研究論文は公衆衛生上非常に重要であり、基本的に全面公表が適当であるということ、二つ目に、十分な安全対策の上で今後も研究を継続すべきであるということ、三つ目に、自主的な公表の留保についてはバイオセーフティー及びバイオセキュリティーの面からの検証等が終了するまでは延期することが適当である、こういうことでございます。
そして、その後、三月三十日、再度の検討が研究者も交えてNSABBにおいて行われた結果、これら二本の研究論文については、テロに悪用される危険性が少なく、公表は差し支えないという方針が決定されたものでございます。
○はたともこ君 科学技術には社会への貢献と悪用のおそれの両面、いわゆるデュアルユースの問題がありますが、この河岡教授らの研究悪用のリスクはあるのか、あるとすればどのような対策を講じるのか、説明をしてください。
○政府参考人(吉川晃君) 結果的ではありますけれども、河岡義裕教授らの論文につきましては、先ほども御説明申し上げましたとおり、テロに悪用される危険性は少ないとされたわけでございます。
本件におきましては、報道がありまして以来、内閣府におきましては、関連する省庁間での事実確認や情報交換等のための会合を適宜開催してまいりました。そして、連絡体制を構築するとともに、情報共有や意見交換を行ってまいりました。また、日本学術会議におきまして、本件も含みますデュアルユースの問題に関する検討委員会を立ち上げております。現在も対応を検討しているというふうに承知しておりますが、具体的には研究者のための行動規範の策定あるいはその普及啓発の活動というような取組でございます。
研究者が自ら、研究の必要性、有用性のみならず、その成果の社会的影響や特に安全性に関して十分な認識を持ち、説明責任を果たすということは非常に大切なことであると存じます。研究のリスクとその利益のバランスを常に念頭に置いて、まずは科学者と政府との間で意見交換の場を設けるなど、我々としても努力してまいりたいと存じます。
○はたともこ君 では、最後に中川大臣に伺いたいと思います。
私は、新型インフルエンザウイルスが国内で確認される場合については、海外で発生し人が我が国に持ち込むケース、野鳥等が我が国に持ち込んで豚で遺伝子再集合が起こり人に感染するケースのほかに、参考人質疑で同志社大学法学部教授の川本先生も触れられたバイオテロあるいは研究施設からのウイルスの漏えい事故なども想定され得る、想定すべきであると考えております。
そこで、本法案が、そのようなバイオテロや研究施設等からのウイルス漏えい事故も想定しているのか、あるいはそのような場合にもしっかりと対応できる法案となっているのかどうか、中川大臣にお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 研究過程でのウイルス等の管理については、今の日本の法制の中では感染症法において管理義務が課されているということで、厚生労働省を中心にその辺の対応をしていくということであります。
そんな中でも、先ほど御指摘があったように、バイオテロ等で研究施設から漏れ出した場合の事故についても、もちろんこの新型インフルエンザの発生がいかなる要因に基づくものであってもこの法案はそれに対応をしていくということでありまして、基本的には、この新型インフルエンザの蔓延の防止を図って、そして国民の生命と健康を保護し社会の安定を図るということ、これを国を挙げて確保をしていくということでありまして、それに対する危機対応を法律というのをそのバックにして体制をつくっていくということであります。政府全体で的確に対応していくということ、これをこの法律によって実現をしていきたいというふうに思っております。
○はたともこ君 ありがとうございました。終わります。
○委員長(芝博一君) 以上をもちましてはたともこ君の質疑を終了いたします。
次に、山谷えり子君。
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。中川大臣、関係省庁の皆々様、御苦労さまでございます。
この新型インフルエンザ等対策特別措置法案、平成二十一年のときのいろいろな反省も踏まえ、あのときは基本方針や基本的な対処プロセスのいろいろな責任体制あるいは権限の明確化というものがなされていなかったという反省の下に、そうした体制をつくらなければならない、この基本的な考え方には賛同いたしますけれども、参考人の方々の意見や今日の、今のはた委員のいろんな指摘もありましたけれども、具体的にどう適用されるのか、運用されていくのかということになると、まだまだ見えないところが多過ぎるというのがいまだに私の思いでございます。
そこで、何点かお聞きしたいと思います。
まず、そもそも短期間に数十万人死亡ということを設定していろんなことを考えられたということなんですが、このそもそもが実はスペイン風邪並みのものだろうという予測って、それは全く根拠がない予測だと思いますが、どうしてスペイン風邪並みの六十四万人が短期間で死亡するという、新型だから全く未知のものなのにそのような設定をなさったんでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) これは、専門家の中でその検証といいますか、議論をしていただいた上での判断ということになります。
具体的には、平成十六年八月に厚生労働省の新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会の報告書、これにおいて、新型インフルエンザが発生した場合の影響として、スペイン・インフルエンザの我が国における患者数、それから死亡者数のデータを挙げるとともに、スペイン・インフルエンザ流行時と比較すると医療供給体制が質、量共に大幅に改善されて衛生環境も向上しているということはあるんですけれども、もう一方で、人口が増加して高齢人口と基礎疾患を有する者の増加があり、都市への人口集中、あるいは世界的な高速大量交通の飛躍的な発達があるということ、こういうことを前提にしていくと社会生活環境が感染症対策に好ましくない方向に大きな変化を遂げているということがあって、そのことを指摘がされたということ。
それからもう一つは、現行の政府行動計画、平成二十三年九月にこれは制定しているんですけれども、この対策を考える上での一つの想定としてスペイン・インフルエンザの死亡率等を参考にしております。これも専門事項については厚生省新型インフルエンザ専門会議の意見、これを踏まえたものであります。
そういう意味から、その専門家の意見を聞いたということと、それからもう一つは、東日本大震災の対応の経験から考えて最悪の事態を想定をしていくということ、これも重要な要素であるということでありまして、被害想定に係る推計については多様な要因が複雑に影響するものでありますけれども、これから先も、これは随時最新の科学的な知見を踏まえて、実際どういうことなのかということを見直していくという努力もこれもまた必要だというふうに思っております。
以上です。
○山谷えり子君 バイオテロにも考え方としては準用されるというようなことをおっしゃられましたけれども、バイオテロだともう百万、二百万、三百万人、そういうレベルだと思うんですね。
それから、今の説明、長々とおっしゃられましたけれども、スペイン風邪流行のときよりは衛生状況がいい、しかし都市部にいろんな人口が集中したりということもあって、だからスペイン風邪並みのこういう想定にする、プラスマイナスを考えるとって、余りにも非科学的、根拠のない説明を長々となさって非常に不安になるばかりでございます。
それから、これまでのワクチンの製造では間に合わないだろうということで、細胞培養法という新しい形で開発していくんだということをお決めになった。しかし、この細胞培養法というのはまだ開発、確立しておりませんで、平成二十五年にできるんじゃないかなと言われているんですね。
WHOが推奨株、新型インフルエンザと思われるものがはやり始めたときに、推奨株というのをこれだと決めるのが二か月掛かる。そして、それに基づいて、推奨株に基づいてワクチンが、新しい新型インフルエンザに対応するワクチンが生産開始ラインに乗るか乗らないかというところまで一・五か月掛かる。つまり、三・五か月間は無防備な状態でワクチンがないままほうっておかれるわけですね。それから、ワクチンが開発されても、何と今の考えでは一億二千万人全員がワクチンを打つというような、私はこの想定自体あり得るのかなと思っているんですけれども、生産に六か月掛かると。ということは九か月間掛かるんですよ。これ、流行終わっちゃうんじゃないでしょうかね。
○国務大臣(中川正春君) ワクチンの接種がその対応の全てということではありませんで、基本的にはワクチン接種を含めてトータルな対応をしていくということであります。
ワクチンというのは蔓延期に間に合わせることができるということ、これを目標に作っていかなきゃいけないわけでありますが、その以前の対策としては、水際対策、あるいは外出の自粛要請等の公衆衛生的な介入、あるいはタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬等による治療によって実は感染のピークをなるべく後ろへ向いてずらしていくという、そういう対応をまず初期にやっていって、その間にこのワクチンの製造というのを急いで、できる限りその遅らせたピークに間に合うような形でこのワクチンを製造して接種をしていくというふうなことであります。
また、新型インフルエンザというのは、最初の蔓延期が終息した後の第二波、それから第三波といった流行も懸念をされておるということが専門家の間で指摘をされておりまして、仮にワクチンの供給が第一波に間に合わなかったとしても、第二波以降に備える意味においても、免疫を有していない方が予防接種をすることは非常に重要だということ、こういう知見を前提にしてワクチンを製造していくということであります。
○山谷えり子君 流行のピークを後ろに遅らせていく、そして第二波、第三波もあり得るのではないかという想定の下に今議論しているわけですね。ですけど、新型インフルだから、全然その想定に外れる場合も非常に考えられるわけです。
この流行のピークを遅らせて、第二波、まあ第三波ぐらいには間に合うんじゃないか、一億二千万人分作るには。しかし、それには九か月掛かると。流行終わっちゃうんじゃないですかと私は先ほど聞いたんです。中川大臣の答えは今の私の問いに対しての答えではないと思いますが。
○国務大臣(中川正春君) 海外を想定したときに、そこで株が取得ができて、それから日本でその対応をしていくということになるわけですが、その間、この細胞培養法によると、今のそれぞれの専門家の話の中では、六か月でこれを製造していくということができる、そういう体制をしいていくんだということであります。
先ほど申し上げたように、これまでの蔓延の波というのは、最初の部分を後へずらしていって第二波、第三波ということになると、その六か月間の猶予というのは、私は間に合うというふうに思います。
○山谷えり子君 ですから、WHOが推奨株をこれだと決めるまでに二か月掛かるんですよ。それからワクチンができるまでに一・五か月掛かるんですよ。それから生産開始して六か月なんですね。つまり、九・五か月。
一億二千万人、全国民がワクチンを接種するだろうというような体制を欧米は取っておりません。日本だけがなぜそのようなシミュレーションをしているんでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 事実関係だけ申し上げますと、平成二十一年の新型インフルエンザ発生時には、発生から約一か月後にWHO推奨株が決定されまして、その後、国立感染症研究所等でいろいろワクチン株を推奨したということで、その間一月掛かっておりまして、二か月後に国内ワクチンメーカーに生産開始を要請したということになっております。
で、今度の細胞培養へ行きますと、全国民にその後行き渡るには六か月掛かりますけれども、三か月後には国産ワクチンの初出荷を開始できるというふうになっておりまして、時間の関係はそういうことになっております。
○山谷えり子君 私は金曜日のレクで聞いた数字ですからね。それは、そこのところ、ちゃんと厚生労働省で見解を統一しておいてほしいというふうに思います。そして、このときは細胞培養法ではありませんでしたし、いろんな変化が今起きているということをきちんと認識しながら進めていただきたいと思います。
このワクチン生産体制づくりに四つの事業者が指定されて、そして既にお金も行っておりますが、その四つの事業者にそれぞれ幾らお金が渡っておりますでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 今委員の方からお話がございました四事業者でございますけれども、この四事業者に対しては現段階では約三百六十二億円が交付をされているところでございます。
○山谷えり子君 私は、やっぱり金曜日、レクを受けたところによりますと、一般財団法人化学及血清療法研究所に約二百四十億円、北里第一三共ワクチン株式会社に約三百億円、武田薬品工業株式会社に約二百四十億円、一般財団法人阪大微生物病研究会に約二百四十億円ということになっているんですが、今の答えと違いますね。
○大臣政務官(藤田一枝君) 全体として基金の中で割り振っている金額、総体的にはそういう金額だと思いますけれども、現時点で交付をしている額については三百六十二億円ということでございます。
○山谷えり子君 今私が言ったのは平成二十三年八月に決定しているものですから、今の私の数字でお答えいただくのが適当なのではないかというふうに思うんですが。
この四事業者、どういう基準で選定したんでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 平成二十三年度から第二次事業として、実生産施設の整備あるいは臨床試験の実施等に関する事業ということを行っておりまして、そこでこの四事業者を採択をしたわけでございますけれども、事業の実施に当たっては、まず事業者の公募を行って、提出された事業計画について有識者から成る評価委員会で専門的、学術的観点や事業の継続性の観点から評価をした上で、厚生労働省において価格などの観点を含めて総合的な評価を行いまして、応募事業者のうち評価の高かったこの四事業者を採択したものでございます。
○山谷えり子君 これまで、いろいろな医薬、製薬関係では、医者の学閥があったり製薬会社との利権があったり、国民は大きな不信感を持っているわけでございます。この四つの事業体が選定されて、そしてワクチン生産をこの四者で担っていくんだということに関しては国民のいろんな心配もあるかもしれませんので、きちんとプロセス、透明性をチェックしていただきたいというふうに思います。
この一億二千万人分ワクチンを生産していく、これ、欧米ではそんなことやりません。全国民の全てに生産するというような形を取ってはいないというふうに思うんですが、一億二千万人分、もう流行のピーク終わっちゃっているかもしれませんよね、九か月たっていて。幾ら掛かるんでしょうね。
○政府参考人(田河慶太君) 新型インフルエンザ対策に要する費用につきましては、新型インフルエンザ等の病原性の程度や、あるいは国内での流行の状況により異なるものでございまして、現時点でなかなかお答えすることが難しい面もございますが、しかし、仮に病原性が高い新型インフルエンザが国内で発生し、多くの国民に予防接種を実際行うというふうになった場合におきましては、これはやはりもう数千億円のようなお金が掛かる場合も考えられます。しかしながら、一方、そうした病原性が低い場合、そうした費用は掛からないことも考えられます。
いずれにせよ、新型インフルエンザが発生した際に必要な財政措置につきましては、状況に応じて適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○山谷えり子君 ウイルスの型が途中で変容していくかもしれない、だから違うタイプのワクチンに生産切り替えなきゃいけないかもしれない、あるいは一億二千万人分も実は要らないというような状況が起きるかもしれない。誰が判断するんでしょうかね、これは。
○政府参考人(田河慶太君) 新型インフルエンザ対策につきましては、平時から事前に専門家等の御意見等も聞きながら政府対策行動計画を定めていく必要がございますが、状況に応じて対応を変えていく必要もございます。
その際、やはり、この法案の中でも学識経験者の意見を聞くことを定めておりますが、そうした学識経験者の意見も踏まえながら、政府対策本部として方向性を決めていくことになるというふうに考えております。
○山谷えり子君 六条の五に政府行動計画の作成、公表というのがいろいろ書かれておりまして、総理は、専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聞かなければいけないと。専門家、学者の意見を聞いて、そして閣議決定をしていくと。
ところが、当時、平成二十一年、厚生労働大臣でありました舛添さんが、先日、四月四日の参議院の予算委員会で、この行動計画、そのときは厚生労働省が作った、これが実は、強毒性の鳥インフルエンザだと思って行動計画作ったと、しかし実は弱毒性の豚インフルだったと、だから行動計画がかえって役立つどころか手かせ足かせになっちゃったんだということを言っているわけですね。
これ、学者を集めて、学者にはいろんな意見ありますよ。原発のときも分かりました。もういろんな学者がいろんな意見を言って、菅総理がお友達を集めてもういろんなことを言わせるから、船頭多くして船山に上るじゃないけれども、結局、手かせ足かせになっちゃったわけですよ。そういうことはないんでしょうかね。これ、机上の空論だと思いますよ、この六条の五というのは。
○国務大臣(中川正春君) 事前にしっかりとした学者集団あるいは専門家集団というのを確定をするということ、これは一つ大事なことだというふうに思うんです。そのときそのとき、あの人に聞いたらいい、この人に聞いたらいいというような、そういう話ではなくて、その委員会を構成する専門家が責任を持って判断する体制というのをつくっていくということ、これは一つあると思います。
その上に立って、最終的にその専門家がまとめた考え方を、それに基づいて政治的な判断をするというのは、これはもう最終、総理大臣の判断になっていくということでありまして、そこのところの体制というのを、事前に行動計画を作っていく過程で、そしてまた事が起こったときに対処ということで対応していく過程で、あるいはまた見直していく過程でそれぞれ機能させていくということでありまして、そこのところ、御指摘のように、あの大震災の経緯を踏まえて、しっかりとした整理をしながら専門家の意見を反映をさせていくということだと思っております。
○山谷えり子君 基本的対処方針に関して、第十八条の四では、あらかじめ専門家の意見を聞かなければならない、ただし緊急を要する場合はこの限りではないと書いてあるんですね。
もう本当に危機的な状況で、学者の意見を聞かなきゃいけない、いや、このときはもうこの限りではないとか、今の民主党政権で本当にそのようなことができるんだろうかと。準備していくことは本当に大事なことだと思いますけれども、あの原発のときの民主党政権の官邸のめちゃくちゃぶり、あるいは原子力村のめちゃくちゃぶりを見ますと、これは相当に緻密に準備をしていかなきゃいけないし、それぞれの現場でコンセンサスが十分にお互いに行き渡っていなければ機能しないことだというふうに思っております。
北朝鮮がミサイルを発射した四月十三日、米国早期警戒情報は、SEWは、七時四十分確認、防衛省の幹部たちにも全部それが伝わりました。イージス艦にも空自のレーダーにもPAC3にも伝わりました。しかし、八時三分に内閣危機管理監は、全国の自治体にエムネットというシステムで、発射確認せずという、流したんですよ、偽情報を、間違った情報を。今回のこれも、この新型インフルエンザの対策ですね、今民主党のはた委員が、責任者、司令塔誰ですかと言ったら、まさにその内閣危機管理監だというじゃないですか。八時三分に全国の自治体に確認しないって間違った偽情報を、アメリカや韓国はもう当局のニュースとして七時四十分と言っているんですよね、それを実はそのとき総理も官房長官も知らなかったんですよ、そんな八時三分にネットを流したって。
これ、今更言ったってしようがないですけど、こういう民主党政権に、今、中川大臣、きれい事をお答えになられましたけれども、私は本当に機能するんだろうかということを思っておりまして、もっともっと細部を詰めていただきたいというふうに思います。
ところで、平成二十一年のときの推定接種者は二千二百八十三万人とされております。前回、ワクチンですね、国産で二百六十億円、外資で八百五十三億円使ったんじゃないかと言われておりますが、これは、国産にこれだけ注文するんだ、どこの企業に注文するんだということを誰が決めたんでしょうか、二十一年のときです。
○大臣政務官(藤田一枝君) 平成二十一年のワクチン量ですけれども、二十一年新型インフルエンザ発生時には、同年の七月から九月にかけて厚生労働省において専門家で構成する新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会というものを開催をいたしまして、ワクチンの接種対象者や接種回数等の検討を行ってまいりました。
その意見等を踏まえて、政府の新型インフルエンザ対策本部が二十一年十月一日に新型インフルエンザワクチン接種の基本方針というものを策定をいたしまして、二回接種を前提としたワクチンを、七千七百万人分程度のワクチンを確保する方針を決定したところでございます。
○山谷えり子君 その決定は、だから正しくなかったんですね。結局、弱毒性で、はやりもなかったということでたくさん余っちゃったんですよ、注文したのが。だから、外資の製薬会社に違約金を払わなければならなくなりました。ノバルティス社には幾ら払いましたか。
○政府参考人(外山千也君) ノバルティス社に対しましては、違約金といたしまして九十二億円を払っております。
○山谷えり子君 外資で注文した会社は、ノバルティス社とグラクソ・スミスクライン社です。グラクソ・スミスクライン社には違約金幾ら払いましたか。
○政府参考人(外山千也君) 払っておりません。
○山谷えり子君 なぜグラクソ・スミスクライン社はノバルティス社が違約金をもらったにもかかわらず違約金を放棄したんでしょうか、払わなくてもいいと言ったんでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 輸入ワクチンにつきましては、第二波に対応するために備蓄等を考慮してもなお余剰が見込まれたことから、グラクソ・スミスクライン社に解約を要請し交渉を行ったところ、先方の方からの申出によりまして違約金なしで解約に至ったものでございます。
○山谷えり子君 外資というのはお金にシビアなところです。ノバルティス社が九十二億円もらっているのに、グラクソ・スミスクライン社が違約金を要りませんと言う訳がちょっと私には分かりません。
その後、グラクソ・スミスクライン社が作っている子宮頸がんワクチン、サーバリックス、これに公費補助をするということが急展開で決まりました。当時、鳩山総理、長妻大臣は否定的な言い方していたんです。この有効性、安全性、まだまだ分からないし、ヒトパピローマウイルスという、百種類以上あるウイルスの中で子宮頸がんになるハイリスクタイプが十五種類、その中で、グラクソ・スミスクライン社のサーバリックスは16型と18型と二つのタイプにしか効かない、だから公費助成するのに適当かどうか、それはまだ結論が出ないというような答弁を本会議でも委員会でもしていらっしゃるんですよ。ところが、急に決まったんです。これはなぜでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 先ほどのグラクソ・スミスクライン社の対応でございますけれども、同社は他国でも場合によっては違約金なしで解約している例がございます。
この子宮頸がん予防ワクチンの問題につきましては、グラクソ・スミスクライン社のワクチンを使っているわけでございますけれども、これは子宮頸がん予防ワクチン、それから小児の肺炎球菌ワクチン、それからHibワクチンということで、厚生労働省の厚生科学審議会の予防接種部会の方でこの三つについてしかるべきワクチン接種事業を行うべしというふうなことは提言を受けまして、それから国会での様々な議論も踏まえまして、補正予算で対応したということでございます。
○山谷えり子君 だから、その決め方が急展開だったんです。Hibワクチンは副作用が出るから、お母さんたち、今打ちたくないといってすごく控えていますよね。十分なデータがそのときあったのかどうかということをもう一回検証し直していただきたいと思います。
平成二十二年八月二十日、菅内閣のときです。私は質問主意書を出しております。子宮頸がんワクチン、小六から高一まで七五%ぐらいが今もう打っています、既に。国と地方でお金を出すことが決まったと。三回打ってこれ六万円という非常に高いワクチンなんですね。それで、私は、子宮頸がん、若い人になぜ近年急に増えたんですか、子宮頸がんが、そして予防ワクチンはどの程度効くんですか、安全性、有効性のデータは十分ですかというような質問をいたしました。
なぜ近年、二十代後半から三十代の若い女性の子宮頸がん発症率が上昇しているのか、政府の見解を聞きましたが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 今委員の方から御指摘がございましたように、近年、四十歳代以下の年齢の女性に子宮頸がんにかかる方の割合が増加をしているということについては認識をいたしているところでございます。そして、この子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスは性交渉により感染することが知られておりまして、国立感染症研究所の報告によると、性交渉開始時期の低年齢化が四十歳代以下の年齢層の子宮頸がんの罹患率の増加に関係していると考えられるとされているところでございます。
○山谷えり子君 そうなんです。そのとき私の質問に対して政府が答えたのはこういうふうだったんです。性交渉開始時期の低年齢化等の影響があるものと考えている。そして、国立がん研究センターがん対策情報センターのホームページにもこう書いてありました。子宮頸がんリスクの要因は低年齢での初交、つまり十代前半とかローティーン、ミドルティーン、複数の人とセックスする、性的パートナーが多い、そして他の性行為感染症とのかかわりというようなことなんです。つまり、十三歳セクシャルデビューなんて言って、今もうワクチン接種の勧めをグラクソ・スミスクライン社はこんな漫画まで作ってやっているんですよ。それで、子宮頸がん予防ワクチンはセクシャルデビュー前、性交渉の経験前の十代で接種すると効果的と書いてあります。そしてまた、ホームページも、キティちゃんのこんなのを作って、メール、ツイッターでお友達に子宮頸がんワクチン打つのが大事よって知らせましょうねって書いてあります。
しかし、両方とも本当の原因を書いていないんですよ。なぜ子宮頸がんになるのか、十代の前半あるいはミドルティーンで複数の人とセックスする、性交渉年齢が早いからだって。二十代では、神様がちゃんとお体つくってくれているんですよ。だから、低年齢でセックスしちゃ駄目よって、そうすれば子宮頸がんになるリスク減りますから。それをまず教えるべきじゃないでしょうかね。
○大臣政務官(藤田一枝君) 今委員の方から御指摘をいただきました、そういう視点も含めていろんな啓発に取り組んでいかなければいけないと考えております。
○山谷えり子君 視点も含めてじゃなくて、それがまず第一だというふうに思っています。
これ地域差がありまして、16型、18型というグラクソ・スミスクライン社が効くと言われている型、これは欧米では八、九割ですが、日本ですと五割から七割有効という形で地域差もあるんですね。それから、長期的な効果、どのぐらい持続するんですかと聞きましたら、海外の十五歳から二十五歳までの七百七十六例を対象とした試験結果によると、平均追跡期間五・九年の時点では、その予防効果は最長六・四年間持続することが確認されているものの、その予防効果の持続期間については確立していないと政府はお答えになられました。これから二年たっていますから、今予防効果最長八・四年ぐらい効くと、こういう状況でよろしいんでしょうかね、政府としては。
○政府参考人(外山千也君) 最近のグラクソ・スミスクライン社より確認できた情報でございますけれども、十五歳から二十五歳の女性四百三十七例を追跡した海外の臨床試験では、平成二十三年三月時点で予防効果が最長九・四年間持続することが確認されております。
○山谷えり子君 費用対効果について、私はこのときも質問を政府にいたしました。
平成二十二年七月七日、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の資料によりますと、サーバリックスによる免疫維持期間が明らかでないこと、全ての子宮頸がん患者に占めるサーバリックスが感染予防効果を有するHPV、ヒトパピローマウイルスですね、16型及び18型が検出される子宮頸がん患者の割合が五〇%から七〇%までと幅があることから、費用対効果について現時点で評価は難しいというふうに言っているんですね。この政府見解は今も同じなんでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 子宮頸がんワクチン等について厚生科学審議会の感染症分科会予防接種部会に設けられましたワクチン評価に関する小委員会で、その効果や安全性、そしてまた医療経済的な評価というものをこの間行っていただいてまいりました。そして、昨年の三月十一日に報告書が取りまとめられたところでございます。
その中で、医療経済的な比較分析を行ったところ、ワクチン接種により健康な寿命を一年延伸させる効果を得るための費用については五百万円程度以下であれば良好であると判断されておりまして、この子宮頸がん予防ワクチンは二百一万円と推計されることから、国内での子宮頸がん予防ワクチン導入の費用対効果というものは良好であると、このように推計されたところでございます。
ただ、ワクチンの評価については医療経済的な分析のみで行えるものではなくて、効果や安全性などを総合的に考えていかなければいけないと、このようにも考えているところでございます。
○山谷えり子君 これ、婦人科の病院のホームページなんですが、ハイリスクタイプのヒトパピローマウイルスに感染しても、九〇%以上は体内から自然消滅すると。全世界で毎年三億人の女性が発がん性のハイリスク型ヒトパピローマウイルスに感染すると仮定した場合、そのうちの約〇・一五%が子宮頸がんを発症すると推定されているというふうなこともございます。
日本の場合、さっきも言ったように、HPV16型、18型が地域的には小さいもの、それから性交渉を十代の初め、半ば、そういった時期にしなければゼロなんですよ。今の費用対効果の、私、説明、何か違うんではないかと思いますけれども、疑問感じられませんか。
○大臣政務官(藤田一枝君) この子宮頸がん予防ワクチンの効果ということについては、いろんな御議論もございましたし、国会の中でも様々な御指摘もございました。もちろん、このワクチンだけが全てではなくて、先ほどから委員の方から御指摘をいただいているような啓発をしっかりやるということが当然必要だということは言うまでもございません。その上に、この予防ワクチンということで取組をさせていただいているところでございます。
○山谷えり子君 このグラクソ・スミスクライン社の子宮頸がんワクチンの説明書には、本剤の予防効果の持続期間は確立していないと書いてあります。それから、副作用の検証もまだ不十分でありまして、抗体が子宮頸部の粘膜ににじみ出ることによって予防されるのではないかと考えられているというような分析なんですが、そしてまた、新しいタイプの免疫増強剤も使われておりまして、この有効性、安全性というのもフォローアップが十分ではないんですね。
今、厚生労働省は、追跡調査をこの会社にお任せしちゃっているんですよ。グラクソ・スミスクライン社は、製造販売後ももちろん安全性を調査しているというところで、今、一生懸命安全性を調査しつつあるところなんですね。これに対して、国の行政としてはインフォメーションの在り方に非常に問題があると思いますけれども、今言ったような、まあ山谷さんの意見もそれはそうですねというような意見じゃ、答えじゃなくて、もう少し根本的に問題をとらえ直していただいて、十代、つまり十代の初め、半ばでセックスを始めて複数とするから、十数年の潜伏期で二十歳から三十歳までの子宮頸がんの人たちが今増えちゃっているわけでしょう、急に。そういうことをもう少し分かりやすく説明したらどうでしょうかね。
○政府参考人(外山千也君) 先生御指摘のように、現在、グラクソ・スミスクライン社では、有効性及び安全性に関する製造販売後調査を行っております。しかし一方、厚生労働省の方でも、子宮頸がん等接種緊急促進事業の中で、ワクチン接種後の副反応の収集、評価も実施しておりまして、医薬局、健康局合同の委員会の中でそういった副作用のことについても抜かりなくフォローアップしております。
○山谷えり子君 ノルウェーでは公費助成はまだ早いということでしていないというふうなことも聞いておりますし、またアメリカの大統領選でも、子宮頸がんワクチン打ったからもう子宮頸がんにならないからといってセックスしてもオーケーというような、そういうようなむしろモラル破壊の方がかえってリスクを高めているんだというようなこともありまして、きちんと海外の情報も得てください。この新型インフルエンザワクチンのことについても私は似たようなことが言えると思います。ある部分では欧米に倣ったりするんですが、この今の特措法に関しては私はちょっと前のめり過ぎるんじゃないかなと。そういう根拠がない状態の中で、根拠があるんならいいんですが、根拠を決めるその土俵設定が余りにも曖昧過ぎるということで、本当に何かに引っ張られていく可能性が非常に強いということを心配しているわけでございます。
医学と科学とは違う政治判断、政治決着、あるいはワクチンビジネスというお金の問題と絡んで、どこか人々の健康とか有効性とか費用対効果とか、そうしたこととは違う方向に走っていってしまう、それは国民の思いとは違うわけですから、十分気を付けていただきたいと思います。
中村祐輔先生、残念ながら、アメリカで研究するんだといって出られました。がんペプチドワクチン、それから丸山ワクチンのようながん免疫活性化療法にも注目すべきではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) がんペプチドワクチンが、手術、放射線療法、そしてまた化学療法に次ぐ第四の治療法として大変期待をされているということは強く認識をいたしております。このため、全国どこでも質の高いがんペプチドワクチンを受けてもらえるように、平成二十三年度より薬事承認を目指した新たな研究事業を立ち上げまして、八課題の臨床研究を採択をし、本格的な医師主導治験を実施する準備段階に入っているところでございます。
今後も、早期の実用化を目指して財政的な支援も含めて取り組んでまいりたいと、このように考えております。
○山谷えり子君 今、丸山ワクチンもがん免疫活性化療法の一つだという形で再注目をされているわけですが、三十年前、残念ながら、厚生労働省の審議会で承認されなかったと。しかし、それからもずっと有償治験薬として三十数万人の方たちがお使いになられて、効くのではないかというようなことを言っておられるわけでありまして、バランスの問題として私は引っかかるものがあるんですね。
三十年前、私は記者でありまして、丸山博士、あるいは行列を並んで丸山ワクチンを手にしておられる患者の皆さん、家族の皆様、取材しました。そして、国会でも集中審議が開かれて、何だかおかしいんじゃないかというようなことが言われたんです。いろいろな形の承認あるいは財政的支援も含めて、バランスの良い支援体制というものをいま一度、今回の特措法を機にもう一度見直してほしいと思いますけれども、いかがですか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 難病あるいはがん等の疾患分野の医療費の、実用化研究事業ということで、先ほど申しましたように、平成二十三年度からかなり力を入れて取り組んできておりまして、今年度予算でも十二・六億円を計上させていただいているところでございます。そういうことを活用しながら、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
○山谷えり子君 ですから、その部署とかその金額の掛け方が全く違うんです。ですから、総合的にもう少しバランスの配分を見直してほしい。
それから、国内産業の育成ということが余り視野にないのではないかなというふうに思います。ですから、どんどん外資と合体していかないと生き残れないような状況に追い詰めようとしているように思われますけれども、国内産業の育成についてはどのような体制を取ろうとしていらっしゃいますか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 医薬品産業というのは経済成長を担う重要な産業だというふうに認識もいたしておりますし、期待もいたしているところでございます。
政府としては、これは委員も御承知のことと思いますけれども、二十二年六月に閣議決定をいたしました新成長戦略において七つの戦略分野の一つにライフイノベーションを位置付けまして、日本発の革新的な医薬品等の研究開発等を推進をしているところでございます。厚生労働省としても、今年度予算で革新的医薬品等を創出するためのライフイノベーションの一体的推進として百二十七億円を計上させていただきました。
さらに、平成十九年に厚労省が取りまとめました革新的医薬品・医療機器創出のための五か年戦略というものがございますが、これが五か年を経過をいたしましたので、現在、医療イノベーション推進室と協力をして新たに医療イノベーション五か年戦略を策定しているところでございます。この新たな五か年戦略については、今後、日本再生戦略が策定される予定でございまして、その中にしっかりと盛り込んでいきたい、このように考えております。
今後も、医薬品産業を我が国の成長牽引役とすべく、引き続き支援を強化をしてまいりたいと考えております。
○山谷えり子君 今、百二十七億円って、少な過ぎるんですよ。で、中村祐輔先生は責任者として呼ばれたのに実は違っていたと。もう悲しみ、無念こらえながら、アメリカで研究の場を移されてしまうんですね。その事実を受け止めてください。
それから、子宮頸がんワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、これ千六百億円、よく分からないまま急に決まって、それから新型インフルエンザだってそうですよ、一億二千万人分作ると七千億円掛かると、もしかしたら無駄になるものかもしれない、流行終わっちゃっているかもしれないと。そのお金の掛け方が違う、それから透明性に対して非常に疑問を感じているところでございます。
最後に、専門家からのヒアリングで、経団連の久保田専務理事が、労働法制や事業法上の諸規制の弾力的運用、法令、事前リスト化など見直しが必要だというふうに思うのですと。ここには何にも書いていないんです、法律には、何にも書いていないんですよ、現場を分かっていらっしゃらないから、民主党政権は、申し訳ないけれども。事前に意見をきちんと経済界の皆さん方と、聞かなきゃいけないと思いますよ。その辺はいかがですか。
○政府参考人(田河慶太君) 御指摘の様々な活動に対するものでございますが、経団連等からもお話をこれまでもお伺いしております。そのため、例えばよく、これは知事会の方からも要望書の中で出されましたけれども、運転免許の更新期限が来たらどうするのか等々御指摘もいただきました。そういう観点から、この法案の五十七条におきましては、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法案を、これを準用するような規定も設けているところでございますが、それ以外にも運用の面で配慮していくべき点もございます。
昨年九月に改定しました政府行動計画におきましても、そうした点を踏まえ検討していく旨記載をしておりますが、今後私どもとしても、政府行動計画を策定する際には、経済界等のお話などもよく聞きながら、さらに運用面で考えていくべき点、そうした点も検討してまいりたいというふうに考えております。
○山谷えり子君 それから、同志社大学の川本哲郎法学部教授は、やはり参考人のヒアリングのときに、人権とか何か、不服申立てのところとか、もう全く何も書かれていないんですよ。
例えば、四十五条の三、施設管理者に感染防止の協力を求める、特に必要とされる場合って、じゃ、特に必要とされる場合って何なんですかとか、六十二条の方でも補償がいろいろ書いてありますが、補償の範囲とか何にも、これ政令で決めるって書いてあるんですが、イメージができないんです。イメージができない。
私、衆議院の内閣委員会のこの特措法に関する議事録全部読みました。たくさん質問していらっしゃいます、これに関して。答えは何にも分かりません。そういうことなんです。不服申立ての規定もありません。非常に乱暴な、雑な特措法なんですね、今のこの法案は。心配でいっぱいでございます。
時間が来ましたので、この委員会で更に詰めて、同僚議員が、いただけるというふうに思います。
質問、これで終わります。
○委員長(芝博一君) 以上で山谷えり子君の質疑を終了いたします。
次に、古川俊治君。
○古川俊治君 続きまして、自由民主党、古川俊治の方から御質問させていただきます。
まず、大臣に伺いたいんですが、先ほど、今、山谷議員のお話にもありましたけれども、大臣、いろんなところの、経済界の意見も聞いて、医療界の意見も聞いたとおっしゃっておりますけれども、この法案について、先日の参考人質疑でも相当の御議論があったようでございますけれども、私も医療界の仲間からも相当の批判が来ております。
本当にこれは聞いたと言えるのかどうか非常に疑問に思っておりまして、一つ申し上げると、特に三十二条の新型インフルエンザ等緊急事態宣言ですか、これが公示された場合には相当の基本的人権の制約ができるという構造になっている、これはお分かりだと思うんですね。第五条に、だからだと思いますけれども、必要最小限にしなきゃいけないと書いてあるわけですけれども、当然のことながら、基本的自由権、精神的自由権及び経済的自由権は必要最小限度じゃないとこれ違憲になるんですよ、そもそもが。だから、当たり前のことが書いてあるわけですね。それをまず御認識いただきたいと。
それで、今回の法案はまず、三年前の新型インフルエンザのように、多くの国民が免疫を持っていない、ですから、全国的かつ急速に蔓延するおそれがある、そういうものをまず対象にしているわけですよね。その上に立って、緊急事態宣言が出される場合には、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあって、かつ、つまりそれは病状が重いということだと思うんですね。それから、国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす可能性がある、そういう疾患だと言っているんですね。これが一体どういうものを想定しているのか。物すごく重篤で、まさに経済や国民生活が物すごく混乱すると甚大な混乱が起こるわけですから、私、ちょっと想定できないんですよね。
先ほど言いました、確かに都市が都市型になってきて感染しやすくなる。それは全部同じなんですよ。今、インフルエンザだけじゃないです。都市型の感染症で起こっているものって、みんな今の医療体制の中でやっていますよ。別に何の混乱も起きていないじゃないですか、国民生活にも。それは生活が密になれば当然感染は起こりますが、軽症である限りはさほど問題はないわけですよ。それはそれなりに医療も進歩していますし、先ほど大臣おっしゃられましたように、いろんな機器も整備されてきて医療体制も確立されて、まず公衆衛生の状態が全然違いますから、昔とは。今回、スペイン風邪とかアジア・インフルエンザ風邪って、これはもう今から百年近く前、五十年以上前と、こういうことをやっているわけですよ。全く事情が違いますね、医療の事情がですね。それをまず申し上げて。
私は今回、ちょっとSF映画みたいな法律だと思っているんですが、一体どういう立法事実を考えていらっしゃるのか、あるのかどうか、そういう必要性がですね。全く想定外で、単に想像だけのことでこれだけ基本的人権を制約するような法律を本当に作っていいのかどうか、まずこの基本的なことが疑問なんですよ。どういう点で、科学的に根拠にというふうにいって今どういうような疾患を想定されているのか、その致死率何%ぐらいのものがあるのか、ちょっと教えていただきたいと思うんですが。
○国務大臣(中川正春君) 先ほどの質疑の中でもお話し申し上げたんですけれども、一つは、厚生労働省の新型インフルエンザ対策専門家会議意見書、これは専門家の中での議論でありますが、ここでスペイン・インフルエンザ並みの場合を重度として致死率は二%というふうに想定をしていると。これを欧米諸国においても対策を考える際の参考にされているということもありまして、これを一つ前提にしたということ。
それからもう一つは、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるということの根拠といいますか前提はどういうことかといいますと、一つは、高病原性である、病原性が高いということ。それからもう一つは、いわゆる波及性といいますか、流行前、確認された患者が多数の人に感染させる可能性のある行動を取っていた場合、多数の患者が発生する蓋然性が見込まれる状況、これがいわゆるパンデミックになっていく状況があるということ。この二つなんですけれども、一つ、その最初の方の重篤になるという部分については、発生した新型インフルエンザが強毒のH5N1であると遺伝子で判断されるようなことであるとか、あるいは海外で発生した新インフルエンザの臨床例の集積によって、通常のインフルエンザとは異なる重症症例、これが多く見られる。この異なる重症症例の例でありますが、多臓器の不全であるとか、あるいはウイルス性の肺炎、あるいは脳症等々、こういうことが見られるという場合、これを高病原性というふうに規定をしていくということ、この二つを想定をしているということであります。
それからもう一つは、病原性が変化をしやすいという特性があるということで、致死率は、第一波だけではなくて、第二波以降も含めた相当長期にわたる症例の積み重ねによって確定をされてくるということ、こんなことを前提にしながら緊急事態宣言の要件というのを確定をしていくということでありまして、そういう意味で、これが現実のものになると社会全体が相当に混乱をするということが想定をされる、そういう想定の中で法律で二段階に整理をしているということであります。
○古川俊治君 先ほど言いました二%というのはスペイン風邪とおっしゃっていましたよね、これ。それはもう今から九十四年前のことなんですよ、日本で流行したのは。それと今の医療事情と一緒にするのはおかしいと申し上げているんですね。それは、脳炎や肺炎は起こるかもしれません。それが死につながるかどうかというのは、その間の医療状況によって全然違いますから。多臓器不全というのがあると今おっしゃいましたけど、いきなりは起こってこないんですよ。途中の医療経過があって初めて最初に起こってくるんですね。今、様々な新しい薬もできている、いろんな治療法もできています。それが実際、致死率何%ぐらいなのか。私は、今そこであえて大臣とこれ議論する気はないですけどね。
そういうことも考えて、これ、単なるおそれのことなんですよ。それから、さっき言いましたウイルスが変異して強毒化する可能性がある。それは極めて抽象的なおそれだけで、これだけ現実的に具体的に基本的人権を制約するような法律を作っていいのかどうか。こういう問題がまず全然基本的に考えられていないんですよね。
これ、この法律で私が数えただけでも十七条項の国民保護法からの転用があるんですね、大体同じようにね。これ、国民保護法って武力攻撃ですよ、起こることが。私は、もう今まで二十五年医者やってきましたけど、病気が武力攻撃と同じぐらいというものは見たことがないですね。それはがんだって今、年間三十数万人亡くなりますけど、別に国民生活や経済、混乱していないですよ。多くの人が、二千万人罹患をした前回の新型インフルエンザにしても、多くの人は別に、悪化する人は悪化するし、治る人は治るんですよ。悪化する人は、今多くの場合、インフルエンザ疾患の場合は高齢者の方々、あるいは元々が合併症を持っている方々です。健常人がそのまま死亡するという例は今の医療下では本当にどのぐらいの可能性があるのか、これはきっちりやっぱり議論をして考えていかなきゃ困ると思っています。これはまず最初に申し上げます。
これだけ問題の多い法律で、国民保護法のときは、衆議院で五十二時間近く、参議院で四十三時間近く質疑が行われているんですね。ところが、前回衆議院でこの法案は五時間で終わっている、質疑が。それで、これは、私は正直申し上げて衆議院が余りに拙速であったと言ってもしようがないと思うんです、残念ですけどね。そう思っています。やっぱりここで必要があれば、しっかり改正すべきところは修正をしましてもう一度衆議院でも御審議いただくというような、しっかりとした議論を参議院で是非委員の皆さんにお願いをしたいというふうに思っております。
最初に、緊急事態宣言が出された場合、都道府県知事は、住民の外出規制や集会中止、学級閉鎖などの措置を要請、指示できることになっておりますけれども、これらの指示が感染の全国的かつ急速な蔓延を抑制可能なのか、その科学的根拠について教えてください。
○国務大臣(中川正春君) 施設利用の制限等については、これ一つは、これもスペイン・インフルエンザ発生時の米国の例があるんですけれども、多数の者が使用する施設の閉鎖を実施したセントルイスでは、対策を講じなかったフィラデルフィアと比べてピーク時の死亡率は四分の一以下であったと、こういうデータがございます。また、学級閉鎖についても、押谷東北大学教授らによる新型インフルエンザ流行時における学級閉鎖に関する基本的考え方、これにおいて、学校閉鎖はピーク時の罹患率を四〇%まで減少させるというふうに述べておられまして、こういう紹介の中でその有効性が示されているというふうに我々は考えております。
また、学校や興行等において長時間生活を共にしたり、あるいは人の密度が高くなるなど感染が広がりやすい、またこのような施設で感染拡大が起これば広い地域における感染源となるおそれがあるという、このことのために多数の者が集まる機会をできるだけ少なくするということ、それから感染拡大を防止してピーク時の患者を減らしていく、そしてピークをその後にずらしていくというふうなそういう効果があるということを専門家の中で指摘がありまして、それを踏まえてそういう設計をしているということであります。
○古川俊治君 なるべく端的にお答えをいただきたい、時間が限られていますから、お願いしたいと思っております。
先ほどセントルイスの例をおっしゃいましたけれども、あれで一つ気付いていただきたいのは、死亡率が下がっているんですね。後にピークずれるのは、そういうこと、可能性があるのは分かりますよ。ですけど、医療環境が同じだったら同じ疾患に罹患して死亡率が大幅に減ることってありますか。何でなんですかね。
○国務大臣(中川正春君) フィラデルフィアとそれからセントルイス、これを比べてということでありますから、そういう意味で、多数の者が使用する施設の閉鎖、これを実行したセントルイスがピーク時の死亡率が四分の一になったということ、ここだと思うんですけどね。
○政府参考人(外山千也君) 当然、感染者数が減ったということで、人口に対する死亡率で、死亡率が下がったということでございます。
○古川俊治君 それは対人口での死亡率ですね、致死率が減ったというわけじゃないですね。正確に御答弁いただきたい。
私、その期間を遅らせるというのは分かるんですよ、それ、幾つかエビデンスもあるようですから。そういう意味で私も全部調べました。その上で、何で患者数が、ピーク時の患者数が減るんでしょうか。専門家がそう言っているからというのはやめてください、報告があるとか。科学的にどうしてだということをお答えください。専門家にもいろんな意見がありますから、その点を明確にお答えいただきたい。なぜピーク時が遅れて、そこでピークの患者数が減るのか、論理的に科学的にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) いや、私たち、政治的に判断するときには、専門家による委員会を構成して、その中で議論をした結論に基づいてそれを採用したシステムをつくるかどうかという、そういう判断でありますから、その中で出てきた知見に基づいていわゆる答弁させていただくよりないと思うんですよ。そこのところを私が説明しても恐らく説得力はないんだと思います。
○政府参考人(外山千也君) こういった問題につきましては、人道上の問題からケースコントロールスタディーなるものをやることは不可能だと思いますので、歴史的な状況から判断するという以外ないと思いますが、このセントルイスとフィラデルフィアにつきましては、類推されることは、これがインフルエンザでありますので感染症だということでありますから、接触の機会を制限すれば当然その感染の拡大のスピードは遅くなったであろうと。その結果としてフィラデルフィアとセントルイスでは差ができて、セントルイスはなだらかなピークになったんだろうと思いますけれども、厳密な意味でほかの要因も全部そろえて、人口集団とか他の医療の状況とか全部そろえた上での解釈じゃありませんので、一定程度の類推でございます。
○古川俊治君 大臣のおっしゃるのは、それはそうです、それはそうなんですよ。ただ、その場合に、いろんな意見がある中でなぜそういう有識者の意見を取ったのか、政府としてはやっぱりそれは国民に説明すべきでしょう。それは専門家の委員が言ってきたから、それを受け取るのが政治家の仕事じゃないですよ。これは、政治家、そういう意見の中でどれを採用するか、それを決断するのはまさに政治責任ですよ。だから、この場で問われたときにそれは答えられないじゃ困るということも、まずそういう認識でいていただきたいんですね。
それから、今のお話ありました、十分に検証ができないということですね、それ、今局長がおっしゃいましたけど。ですから、このことについて、そういった答えができないんであれば、何で、問題は、これほど重要な基本的人権の制限がそれほど答えられないようなエビデンスをもって許されるのか、そのことを考えなきゃいけないんですよ。これは弁護士会が言っていますよね、集会の自由、精神的自由権ですよ、それが答えられないようなエビデンスでもってそれを制約していいのかどうか。これはやっぱりちゃんと考えなきゃいけない。答えられないんですよ。まさにそれは科学的な問題でないはずであります。
それで、じゃ、次行きますよ。もう時間がないからいいです、そっちの。水際対策についてお聞きしますけれども、じゃ、水際対策のエビデンスって何なんですか。もっと言うと、一言で申し上げますと、もういいや、いいや、じゃ先に御答弁をお願いします。
○政府参考人(外山千也君) 平成二十一年の新型インフルエンザでは、WHOにより発生、フェーズ4の宣言がなされた時点では、既に北米における影響が広がった段階であったため、国内へのウイルス侵入を長期間遅らせる効果は期待できない状況にありました。それでも、発生後に行われました海外の研究によりまして、日本を含めた検疫の実施国におきまして国内感染をある程度の期間遅らせる効果があった可能性を示唆する結果が報告されております。
また、今年一月の厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議が取りまとめました意見書におきましても、この水際対策はその対策の開始時期に日本への感染者の到着数が少数と考えられる場合などに侵入遅延に有効となる可能性が期待できるとされていることから、入国する感染者数が極めて少ない段階では水際対策を行うことが適当であると考えております。
ただ、新型インフルエンザの感染力等は様々でございまして、フェーズ4からフェーズ6に進むまでの時間も様々であること等考えられますことから、実際に発生した場合に、海外や国内での発生状況を踏まえまして合理的な措置をとることとしてまいりたいと考えております。
○古川俊治君 今お答えありましたように、総括会議ですね、二〇〇九年のときの、その中で、水際対策については、検疫により感染拡大時期を遅らせる意義があるとする意見があるが、その有効性を証明する科学的根拠は明らかでないと言っているんですね。これ出ていますよね、お分かりだと思いますけど。
その上、よく考えていただいて、水際対策って、元々が無症状の人も多いんですね、最初。非常に不確定な症状です。それで、潜伏時期がありますから、だから、そうすると症状は出ていないんですよ。そういう人がどんどんどんどん入ってくるのに止められるわけがないです、論理的に考えてもね。そういう状況でやっていて、今局長おっしゃられませんでしたが、私が内閣府からいただいた資料の中にメタスタディーがありました、二十六か国を比較したやつですね。そこで結果は出ていないですよ、差がないという結論になっていますから。それからいうと、やっぱりこれは、中で見ても、停留させて相当の抑制、そこで全部チェックするわけですから、相当のこれはもう人権侵害になっているわけですね。これは十分にお考えいただきたい、本当にこういう状況でやるべきかどうか。これはやっぱり反省すべきだと思うんですね。同じです。それが仮にその時期を遅らせることに有効だとしても、本当にピークの感染者を減らせるのかどうか、こういうことも是非考えていただきたい。これ相当の抑制になっていますので、人権に対する、そこから取り組んでいただきたいと思います。
一番今回の本題に入りますけれども、今回の法案では新型インフルエンザ対策は、免疫を獲得していない国民が大変多い、その中で全国的に蔓延するおそれがあると、こういう場合についてやるわけですけれども、その中でも、実を言うと、患者さんの病態に応じて三種類に分ける対策になっているんですね。一番重いのが、大変重篤で国民の甚大な障害があるというやつですね、影響がある。これは緊急事態宣言が出されてという措置をやるということになっています。次が、季節性インフルエンザよりは病状が重いんだけれども、緊急事態宣言を出すほどには重くないというやつ、真ん中型ですね。一番下は、季節性インフルエンザと同等又はその以下というんですね。この三つに分かれているわけでありますね。
それで、まず新型インフルエンザ対策というのは、水際対策、それから医療機関への要請、指示というのは、季節性インフルエンザよりも重いものについては全て、これ水際対策とか、あるいは医療機関への指示、要請はやることになっているんですけれども、緊急事態宣言が出されないと集会の停止の要請とかそういうものは出されないことに、発動されないことになっているんですね。これはなぜなんでしょうか。私は、基本的に、人に接触しないというのは基本的なこれ防御の問題だと思うんですけれども、それがなぜ季節性インフルエンザよりも重いインフルエンザの場合は取られないのか、この点についてちょっと伺いたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) これは先ほどの議論でもあったように、インフルエンザ自体の高病原性あるいはパンデミック性という、そういうことが前提になって緊急宣言ということが出てくるわけだと思うんです。それ以前のものについては、でき得る限りこれまでの対処法の中で対処していくということ。先ほどの水際も含めて国民に注意を喚起しながら、インフルエンザ、いわゆる季節性のインフルエンザの対応ということになっていくと、そういう前提だと思うんです。
それがあるときに、いわゆるその病状の程度によって、これは高病原性のものであるというふうなことが確定し、またそれをもって緊急事態宣言というのを発動していくわけでありますから、その二段階の中の前段というのは、当初は季節性のインフルエンザ等々を含めた対応になっていくということだと思います。
○古川俊治君 いや、だから季節性のインフルエンザよりは重いんですよ、この場合に、段階として。だから、水際対策もやるし、医療機関への指示をして、これ別の条文ですよ、今までも医療機関への要請は事実上やっていたかもしれませんけれども、それ以上のものが置かれているわけですね。ところが、重いにもかかわらず、とても重くなければ集会、人が集まることを抑制したりというお願いはしないと言っているんですよ。
私は、先ほど申し上げました、水際対策にエビデンスはないけれども、集会停止なんか、あるいは学校閉鎖なんかは多少のエビデンスはあると。そっちの方があるのに、それはもうとても重くならないとやらないと言っているわけですね。だって、季節性インフルエンザ、少なくとも重い疾患に対してですから、やったらいいじゃないですか、それ。
○国務大臣(中川正春君) 対策本部はそれぞれつくられていくわけでありまして、知事の判断の中でそれをしてはいけないということではないというふうに思うんです。それぞれの判断の中で、いわゆる指示や要請にはなりませんけれども、お願いをする形で、あるいはこういうことが発生をしておるのでそれぞれ気を付けてくださいというような、そういう体制の中で対応をしていくということについては妨げるということではないというふうに思っております。
○政府参考人(田河慶太君) この法案でございますが、現在も、地方公共団体で三年前も様々なお願いをされた、そういうこともございます。そうしたことを踏まえまして、この法案におきましても、法案の二十四条九項という規定の中でいろんな必要な協力の要請をすることができる、そうした規定も置いているところでございます。
○古川俊治君 いや、具体的な集会の中止の要請のお願いというのは、緊急事態宣言のところに書いてあるわけですよ。四十何条でしたっけね、そこに書いてあるんですけれども、別にそこだってやらなきゃいけないと書いていないんですよ、できると書いてあるんですよ、別に。だから、それは先ほど、都道府県知事ができるというのは別に禁止しているわけじゃないんだと、それは事実上できると言っていますけれども、だったら緊急事態宣言が出された後も、できると書いてあるんだから同じじゃないですか。
私は、この元々の集会中止なんかは、別に今回対策本部をつくるような病状の、同程度だったら、それは指示はしないまでも要請ぐらいできてもいいんじゃないか、せっかく書いてあるんだからね。先ほど今、田河さんおっしゃいましたけれども、その法条と別に書き分けてあるわけでしょう、特別にこういうことを要請できるって。私、そうすると、この緊急事態宣言等が出された場合の要請というのは一体、法律的に今そのほかの場合に知事ができる要請とどう違うのか、これもまた非常に疑問になってくるんですよ。それはお答えいただけますかね。
○政府参考人(田河慶太君) 第四十五条の緊急事態宣言時における要請の関係とそれ以外の場合のお尋ねかというふうに思っております。
この四十五条の感染防止のための要請や指示につきましては、これは病原性の高い新型インフルエンザが国内で発生した場合に行われるものでございます。そのため、まず要請等を行うわけでございますが、それでもなかなか従っていただけないようなそういう場合に関しまして、更にこれは必要な当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる、そうした規定を置いている、そういう意味では二段構えになっております。それに対して、緊急事態宣言以外の場合に関してはそうした指示の規定等は置いていない、そういうふうな違いもございます。
○古川俊治君 私の質問に答えてくださいよ。だから、緊急事態宣言が出された場合の要請とそれ以外の場合の要請はどう違うのかと言っているんですよ。
○国務大臣(中川正春君) そういうこともあって、法的に、法定化するということだと思うんです。
意味合い、よく分かるんですよ。知事が、これはパンデミックになる可能性があるということの中で、緊急事態宣言の前にそれぞれ判断をして集会あるいは興行場に対してお願いをしていくと、自粛をしてくれというようなお願いをするケースは出てくるというふうに思うんですが、その場合は法律の中で規定されたような行為ではないと。しかし、緊急事態宣言後は、ここで規定しているように、要請ないしは指示という形で法定化することによって、そこのところもはっきり段階的にさせていこうという意味。そういう意味で、今回、行動計画だけではなくて、法律というものでその辺の定義も特に緊急事態宣言以降ははっきりさせていくということがいいんではないかということだと思います。
○古川俊治君 だから、その緊急事態宣言より前の、病態になる前の段階のより軽いものであっても、季節性インフルエンザ以上なんだから知事の判断で要請できてもいいじゃないですか。それ、何で、法律に書き込んでもいいでしょう、悪いわけじゃないですよね。どう思われます、大臣。
○国務大臣(中川正春君) 実は、二十四条にこういう規定があるんですが、都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる、こういう規定の中で、これは、緊急事態宣言前に対してもこれを適用をするような形でここに規定は置いてあります。
○古川俊治君 じゃ、今この二十四条に書かれているような協力の要請と四十五条に書かれている協力の要請と、どこが違うんですか。要請と書かれている言葉がどういう意味なのかを知りたいんですよ。
○政府参考人(田河慶太君) 要請を行う状況は違いますが、要請ということ自身は大きな違いはないと思います。
ただし、四十五条の場合の要請につきましては、その要請に正当な理由なく従っていただけないような場合については指示ができる、そういうふうな二段構えの構成になっている、そういう点が違うというふうに考えております。
○古川俊治君 これ、またこの委員会の中で後日もう一回質問したいと思います。私、全くこれ意味が分かりません。
これ、二つ書き分けて、後の方はより人権に対する重大な侵害をしようとしているんですね。その場合の要請が前と同じ。わざわざ書き分けてあって、それだったら前のところに入れればいいじゃないですか、それがまず一点。
それで、もう一つ、じゃ、お聞きしておきますけれども、これは、田河さんも、先日も私お聞きしましたけれども、本部がなくなるような疾患、例えば、全国的に蔓延するんでしょう、元々が、新型インフルエンザ。二〇〇九年のときの新型インフルエンザもそうでしたけれども、免疫がなくてみんなに蔓延すると、そういうものなんですけれども、季節性インフルエンザと同程度の症状だったら何の対策もしなくていいとなっているんですよ、この法案の中では。季節性インフルエンザ、従来の対策だけでいいわけでしょう。全く対策本部はつくられないんですから、元々が。だから、今までの行動計画も何もできないわけですよ。
本当にそれでいいんですか。何でそれのときに何にも取らないんですか。教えてください。
○政府参考人(田河慶太君) この政府対策本部をどういう場合に置くのか、その病状の程度が季節性インフルエンザとおおむね同程度以下であることが明らかになったときに対策本部が廃止されるので、そういうことになってしまうんではないかというお尋ねかというふうに思っております。
しかしながら、新型インフルエンザのウイルス、変異しやすく第二波の方が病原性が高くなる、そういうふうな可能性があるという特性のために、現段階の科学的知見においては、その病原性、この法案の中でも明らかになったときというふうに規定しておりますけれども、その病原性が明らかになるには多くの国民が罹患し、その症状が大量に集積されていくことも必要であると考えております。そういうためには、やはり相当の期間も必要である。そういうことから、病原性が同程度以下であるかもしれない、そういう段階において、対策本部が即座に廃止され、また対策が講じられなくなる、そういうものではないということでございます。
○古川俊治君 時間限られているから短く答弁してください、要点は分かっているはずなんだから。
これ、何回も言っていますけど、二〇〇九年のインフルエンザのときに反省やっているんですよ。あれは病状が同じです、ほとんど季節性インフルエンザと。そうすると、あのときの反省って何も生かせないことになるわけですね、この中では。だって、適用されないんだから、何にも。
先ほど申し上げたように、それで、今おっしゃいました、それまで、明らかになるまでだというから二、三か月たてば分かるんですよ。ところが、前回のインフルエンザのときだって、二、三か月の間はまだ少なくとも数万人です、罹患したのがですね。最終的に二千万人まで行っているんでしょう。それ、数万人の段階ではもう既に季節性インフルエンザと同じだということはもう分かっているんですよ、はっきり申し上げて。そうすると対策が取られなくなっちゃうわけですね、これは、この法案でいきますと。本来であれば、それから数千万人に広がるときに、軽症ではあっても何らかの対策は生かされるべきなんですよ。それがそうなっていないんですよ、この法案は。どうですか、一言。
○政府参考人(田河慶太君) 先ほどの繰り返しになりますけれども、ある程度、相当な期間はやはりその状況が明らかになったとは言えないと思います。また、仮にその病状の程度が本当に季節性インフルエンザとおおむね同程度以下であった場合、そういう場合は感染症法等において適切にまた対策も講じられていく、そういうふうに考えております。
○古川俊治君 時間がないので短くしてください。
医療について伺っておきますけれども、三十一条の規定する要請と指示の違い、端的にお答えください。
○国務大臣(中川正春君) 要請というのは、一定の行為について相手方に好意的な処理を期待するものでありまして、医療関係者は法的に医療の提供等を行うべき立場に立たされるものではないが、指示というのは、一定の行為について方針、基準、手続等を示してそれを実施されることをいい、医療関係者は法的に医療の提供等を行う義務がここで生じるということであります。ただし、罰則は設けないということであります。
○古川俊治君 医師法十九条の一項にも応招義務の規定がありますけれども、これとの関係はどうでしょうか。
○政府参考人(田河慶太君) 要請と指示、大臣が今お答えしたところでございますが、医師法に定められた応招義務、これは患者からの個別具体的な診察治療の求めがあった場合の義務でございます。そういう面では、本法案における要請、指示、これは行政の側からのものでございますが、医師法による応招義務とは制度的に別なものであるというふうに考えております。
○古川俊治君 元々政府から要請があっても、結局患者さんから要請がなきゃ医療をやれないわけですから、その関係について伺ったんですけれども。
これ、いずれにしても重要なのは、その場合に、お断りした場合に罰則は付いてないと大臣おっしゃいましたけど、民事的にはこれ損害賠償の問題になってくるんですよ。それは、確定された判例もありますし、政府から指示来ているのにそこを断れない、断った場合には、罰則はなくても後々法的責任を問われるわけですね、民事によって。
この場合、例えば他の患者さんに感染する可能性がある、我が病院ではほかの患者さんが入院していてその患者さんがインフルエンザになっては困るということでお断りした場合は、これはどうですか。
○国務大臣(中川正春君) この応招義務については医師法の問題であって、厚生労働省において基本的には判断することになるんですけれども、それが正当な事由に該当するか否かということについて、社会通念に照らして個別具体的に判断されるものということになっていくと思います。
○古川俊治君 だから今日、大臣じゃなくて厚生労働省の方をお呼びしてあるんですけど、今伺ったことと、それからほかの患者さんに手いっぱいだった、そういう場合はどうなんですか。この二つの点について。ほかの患者さんに感染する可能性がある、あるいはほかの診療に手いっぱい、通常の業務をやるので手いっぱいだったと、そういう場合にインフルエンザの患者さんを診ないことは医師法の応招義務に触れませんか触れるのか、厚生労働省の方、お願いします。
○政府参考人(篠田幸昌君) 補足して御説明申し上げたいと思います。
いろいろケースあろうかと思います。具体的に個々の事案に即して考える必要があると思いますけれども、一例を挙げて申し上げるわけでございますけれども、ただいまの、今先生おっしゃいましたように、新型インフルエンザの発症の疑いのある患者さんがある医療機関を受診すると、その場合に、例えば当該医療機関では特別の感染防止が取られていないとか、あるいは地域の医療体制としてそうした患者の医療を担う医療機関がほかに整備されているとか、そういう場合につきましては、さらに、医療従事者や他の患者さんの安全、あるいは一般市民への影響等を考慮いたしまして他の医療機関を受診するようにお勧めをする、直接の診療をしなかったという場合ございますけれども、一般的にはそういうケースであれば医師法の応招義務違反には当たらないというふうに考えられております。
○古川俊治君 ちょっとこれ議論をする時間がないんですけど、それは是非大臣の方でも、そういう場合の指示に従わなくてもこれは問題がないということはしっかり現場の判断をさせていただきたい。
それで、もう一個、三十一条四項には、その要請や指示をする場合には、医療従事者の生命及び健康の確保に関し十分に配慮し、危険が及ばないよう必要な措置を講じるという義務が課されております。これは行政側に義務があるわけですね、こういう措置をとる。それなのに、六十三条には補償の規定が置かれているんですよ、医療従事者の健康を害したり死亡した場合ってね。これは矛盾するんじゃないですか。だって、危険が及ばないように措置をする義務が課せられているのに、何で補償する規定が置かれているんですか。それは死ぬということを元々想定されているわけですよね。これは何でなんですか。
○国務大臣(中川正春君) 医療関係者への要請とか指示を行うときは、特定接種の実施、あるいは新型インフルエンザ等に関する最新の情報を可能な限り適時に提供することなどによって、当該医療関係者の生命及び健康の確保に関し十分に配慮をして、危険が及ばないような必要な措置を講じること、これを厚生労働大臣や都道府県知事に課しています。
一方、さっき御指摘のように、六十三条では要請、指示を受けた医療従事者が死亡、罹患等した場合における損害補償を規定していますけれども、これは、危険が及ばないような配慮をしたとしても新型インフルエンザ等の発症を完全に防ぐことはできないということも想定をしておかなければならないと。万が一そのような事態になったときに、死亡、罹患した場合の損害を放置することは必要な場合に十分な医療関係者の協力が得られないというおそれがあるということで、そういう補償に関する規定を設けることとしたということであります。
○古川俊治君 これは、もしそこに書くんであれば、危険が及ばないようにって書いてあるんですよ、元々がですね、三十一条四項には。だから、危険が及んじゃいけないんですよ、この措置で。これは本来であれば補償ではなくて賠償ですよね。だって、国家がそういう義務を負っているのに、これを怠っているわけですから。国家賠償にして、これは補償ですと一定の限られた金額しか支払われません、これはやっぱり医師の逸失利益ということでもちゃんと払わなきゃいけないと思うんですよ。だって、そのために、指示を受けたためにそこで働いて亡くなるわけですから、当然、一定額の低い補償金で収めようというのは私はこれはおかしいと思いますよ。それは、まさに国民のために働いてくれって強制して、それだったらやっぱりその部分はしっかりと賠償と同程度の金額が払われるべきですよ。それぐらいはお考えいただきたいですね。
この法案、更にまだまだいろんな問題、先ほど申し上げました軽度のインフルエンザのとき、あるいは季節性と重篤の間の場合、それから重篤の場合、これをしっかり整理してもう一度議論し直さなきゃいけないと思います。
それから、今までの、二〇〇九年のときのインフルエンザ対策は、まさに医療現場の中でいろんなことが日々起こっているわけですよ。その意見が全然、吸収されて次々政策に生かしていけると、そういう反省がないんですね。元々、今、この法案も、まさにパンデミックになったときに、国内でですよ、医療が満杯になったときに、どうやって医療関係者の意見をそのまま吸い上げて、すぐにそこでうまくやっていくというようなシステムは全く考慮されていないんですよね。これは大きな欠陥だと思います。これ、やっぱりそういうところを総合的に参議院では議論させていただいて、しかるべき修正が私は必要だと思っています。
時間になりましたので、以上で質問を終わらせていただきます。
○委員長(芝博一君) 以上をもちまして古川俊治君の質疑を終了いたします。
午後一時に再開することとし、休憩といたします。
午後零時二十分休憩
→午後の委員会質疑(
○政府参考人の出席要求に関する件
○新型インフルエンザ等対策特別措置法案(内閣
提出、衆議院送付)
─────────────
○委員長(芝博一君) それでは、新型インフルエンザ等対策特別措置法案を議題といたします。
質疑のある方は順次御発言を願います。
○はたともこ君 民主党のはたともこでございます。
新型インフルエンザ等対策特別措置法案について質問させていただきます。
まず、中川大臣に基本的な考え方について伺います。
本法案は、二〇〇九年の新型インフルエンザ、H1N1パンデミック、そして二〇一〇年の宮崎口蹄疫、二〇一一年、昨年の東日本大震災と福島原発事故などによる我が国の危機管理上の反省や教訓を踏まえて作られた法案であると理解してよろしいでしょうか。私はそうでなければならないと思いますが、中川大臣の御見解を伺います。
○国務大臣(中川正春君) 基本的には御指摘のとおりでございます。
この新型インフルエンザについてはいつ発生するか予断を許さないという状況にありまして、これまでにも行動計画の策定、それから抗インフルエンザウイルス薬の備蓄、それから細胞培養法によるワクチンの迅速な製造ラインの整備などについて所要の準備を進めてまいりました。
さらに、御指摘の要素と同時に東日本大震災の教訓も踏まえておりまして、これは行動計画の実効性を更に向上するために今般、国会に提出をしたということでございます。二〇〇九年の新型インフルエンザ対策など過去の様々な危機管理の反省、教訓、これを地方公共団体や医療関係者等の意見を聞きつつまとめてまいりました。行動計画や対策本部を法定化するなど、あるいは国、地方公共団体の体制整備、責任の明確化などを目指しているということと同時に、感染拡大防止策や国民生活の安定化策などの法的根拠の整備、これを盛り込んだというところでございます。
○はたともこ君 それでは、二〇〇九年のA/H1N1パンデミックでは具体的にどのような反省点があり、それを教訓として具体的にどのように本法案に反映されたのかを説明していただきたいと思います。
○副大臣(後藤斎君) 先ほど大臣がお答えをいただいたように、先生の御指摘の二〇〇九年のさきのインフルエンザ、そして二〇一〇年の口蹄疫、さらには東日本大震災の昨年の教訓を踏まえて、いろんな意味で検討してまいりました。特に今先生が御指摘の二〇〇九年のインフルエンザの教訓ということで、もう先生御案内のとおりに、厚労省で二〇〇九年の新型インフルエンザ対策総括会議報告書というものを専門家の皆さん方の御意見も賜りながらまとめたところでございます。あわせて、医療団体や地方公共団体の皆さん方からもたくさんの御意見をいただきながら幅広く検討してまいりました。
そういう意味で、二〇〇九年の新型インフルエンザの特に反省、教訓ということは、一点目は、水際対策について病原性等を踏まえた専門家の意見を基に機動的、スピード感がある縮小ができなかったということ、そして、医療従事者の皆さん方に一番協力をいただかなければいけませんが、その際に医療従事者の皆さん方の死亡や後遺症が生じた場合の補償制度がなかったこと、さらには予防接種に関する実施主体、費用の在り方が不明確であったこと、もう一点は、感染防止のために学校等を休業をしなければいけない場合がございますが、その際に法的根拠が不十分であった等が指摘、教訓だというふうに認識しております。
それを踏まえまして、今御議論いただいております法案におきましては、十八条において、検疫の実施など新型インフルエンザ等対策の実施に当たって、専門家の意見を踏まえて基本的対処方針を定めながら、病原性の程度に応じ的確かつ柔軟性に行うという規定を設けたこと、さらには六十三条一項において、要請や指示に応じて新型インフルエンザ等の患者さんに対する医療提供を行う医療関係者が死亡等をした場合には補償措置を講ずること、さらには二十八条、四十六条、六十九条におきまして、予防接種の実施主体、費用負担等について明確化する、さらには四十五条におきまして、感染防止のための協力要請等の措置を盛り込み、実施権限を有する都道府県知事に実施権限を付与をする等の必要な規定を盛り込んでいるところでございます。
○はたともこ君 本法案は成立後一年以内に施行されるということですが、法案成立後、どのような手順、スケジュールで政令、政府行動計画、都道府県行動計画、市区町村行動計画、各種ガイドライン等が策定されていくのか、説明していただきたいと思います。
○大臣政務官(園田康博君) 先生御指摘のように、法律が成立をいたしましてから一年未満に政令あるいは施行の様々な行動計画を作成をしていくということが決められているわけでございますけれども、指定公共機関であるとか緊急事態宣言、これに係る具体的な基準を定める政令につきましては、まず、関係団体、これまでも聞いてまいりましたけれども、更に具体的な手順を決めていくわけでございますので、そういった関係団体や専門家の皆さん方の御意見を聞かせていただきながら、そしてまたこれをパブリックコメントに付させていただきましてやはり国民の皆さん方にも広く御意見を聞かせていただきたいという、その手順を踏まえて行ってまいりたいというふうに思っております。当然、これはできる限り早く定めていくということに努めてまいりたいというふうに思っております。
また、この法律の施行後におきましては、先ほど申し上げた学識経験者の御意見を伺わせていただき、またパブリックコメントにも付して、できる限り速やかに、先ほど申し上げた本法律案に基づく今度は政府行動計画、これを策定をするといったところが一番最初に来る私どもの作業であるというふうに考えております。
この政府の行動計画を作成をし、そしてそれに基づいて今度は具体的な手順を更に具体化したガイドライン、これを作成をするといったところを考えております。このガイドラインの作成については、これは法律上の根拠にはありませんけれども、やはり具体的な行動計画を実践をしていくといった点では、しっかりと関係省庁の連絡会議の中においてこのガイドラインというものを精緻に作る必要があるというふうに考えておるところでございますので、そういったところをやっていきたいというふうに思っております。
さらに、今度は政府だけではなくて、やはり都道府県、そして市町村といったところの行動計画といったところもお願いをしていかなければならないわけでございますので、そういった点では、政府が行動計画を作らせていただいた後に、今度はそれに基づいて都道府県、市町村といったところにお願いをしていくといったところも出てまいります。これについては、当然、早期に作成ができるように、私ども政府としてもしっかりと支援を、都道府県あるいは市町村が具体的なところができるように政府としても支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○はたともこ君 そこで、中川大臣に伺います。
四月四日の本院予算委員会で、A/H1N1pdm二〇〇九当時の厚生労働大臣で対策に当たられた舛添要一先生が本法案について説明されまして、本法案は当時の経験が十分に生かされていないと指摘をされました。さらに、万機公論に決すべし、いろんな人の意見を聞く場をつくらなければいけないとおっしゃいました。
今後、政令、各種行動計画、各種ガイドライン等を策定するに際して、現場の意見、批判者の意見、関係団体等の意見をよく聞いて取り入れるべき点は取り入れるべきだと私は思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) この法案が様々な関係者と連携をしながら対応を取っていくということが前提になっているだけに、先ほど御指摘がありましたような、それこそ万機公論に決すべしで、そしてまた、その御意見をこれに組み込みながら法案を作っていく、また、法案だけではなくてこれからの行動計画でありますとか対処方法の中でも、そうした特に専門家の意見もしっかり聞き込んでいきながら対応をしていくということが大事だというふうに思っています。
具体的には、学識経験者から公の場で意見を聞く場を設けてきました。それから、新型インフルエンザ発生時に多くの実務を担っていただく地方公共団体、この間でも実務者レベルで検討協議会を開催をいたしまして、精力的な御議論をいただいてきております。あるいは日本医師会、それから病院団体あるいは経団連など、非常に関係の深い各種団体との公開の意見交換というのも進めてまいりました。また、与党だけではなくて、自由民主党あるいは公明党の勉強会などの場でもこれ積極的に御議論をいただきまして、その御議論の中で出てきた論点というのもこの中に整理をさせていただいたということであります。
新型インフルエンザ等対策は広く国民生活にかかわっておりまして、その理解と協力が必要であるということで、この先も同じようなスタンスで様々に議論を広げていきたいというふうに思います。従来の取組に対して批判的な御意見、これもあると思うんですが、それも多様な観点から是非御議論をいただきたいというふうに思っておりまして、具体的な、特に行動計画の中ではそうした多様性ということもしっかり尊重していきたいというふうに思っております。
○はたともこ君 現場の意見や批判者、関係団体等、あるいは専門家の方々の意見を聞く方法として、先日の四月十二日の参考人質疑で尾身先生と川本先生のお二人から、インターネットで専門家同士、現場同士のリンクを張る方法、あるいはITを使ったテレビ会談などの提案がありました。
田河室長、これらの意見を是非取り入れていただきたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
○政府参考人(田河慶太君) お尋ねの点でございます。
本法案におきましては、政府行動計画、基本的対処方針を定める際に事前に感染症に関する専門家等の意見を聞くことを法案の中で定めております。御指摘、参考人質疑の中でも御意見いただきましたように、新型インフルエンザ等の発生時に迅速に専門家の御意見を聞く方法としてテレビ会議等のIT等の手法を活用していくこと、そうしたことも一つの考え方であると私どもも思っております。今後、検討していきたいというふうに考えております。
○はたともこ君 中川大臣にもう一つ伺いたいと思います。
先日、三月二十二日の本委員会で、私は大臣に、参考人質疑もお願いした国立感染研の田代眞人先生の提言の中で、新型インフルエンザ対策の事前対応として野鳥、家禽、豚の事前監視体制の必要性について質問させていただきました。中川大臣から、政府行動計画指針の中でしっかり具体的に盛り込んでいくということで一つ一つ確かなものを作っていきたいという答弁をいただきました。
そこで、大臣、本日は、特に豚のサーベイランスの重要性について伺います。
先日の参考人質疑で田代先生は、日本では鳥については農水省、野鳥については環境省がやっているが、豚についてはどこもやっていない、豚についてはどこの国も農業関係の強い圧力があるが、日本において是非そこを克服していただきたいとおっしゃいました。
中川大臣、豚サーベイランスの必要性と今後の取組について大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 御指摘がありましたように、新型インフルエンザの発生の可能性をいち早く把握するということの中では、それぞれ体内で人にうつりやすいインフルエンザウイルスに変化させやすい豚を含めた動物のインフルエンザの発生状況というのをつかんでいくということは非常に大事なことであるというふうに考えております。
この新型インフルエンザ等感染症に変異するおそれが高い動物のインフルエンザの外国及び国内における発生の状況、それから動向及び原因の情報収集について、この法案の第六条第二項第二号イなんですが、これにおいて規定をしておりまして、特に豚という御指摘がございましたが、その辺しっかり念頭に置きながら対応していきたいというふうに思います。
○はたともこ君 では、農水省に伺います。
二〇一〇年の宮崎口蹄疫については、私は、韓国での口蹄疫発生と万全の防疫体制の周知を各都道府県に発出した一月七日の農水省動物衛生課長通知が宮崎県においては全く周知されなかったこと、初動が全く遅れたこと、数々の情報隠蔽が行われたこと、獣医師の不足等々非常に多くの問題があったと思いますが、農水省は二〇一〇年の宮崎口蹄疫についてどのような反省、総括をしているのか、説明してください。
○政府参考人(高橋博君) 平成二十二年におけます宮崎県の口蹄疫の発生に関しましては、農林水産省といたしましては、国、県などの対応を検証していただくために第三者によります口蹄疫対策検証委員会を設置したところでございます。
同委員会におきましては、平成二十二年の十一月に報告書を発表いたしまして、この中で、異常家畜の発見の見逃しあるいは通報の遅れがあり、感染を広げる大きな原因となったこと、それから畜産農家におきまして飼養に関する衛生管理基準が守られていなかったこと、さらには国及び都道府県などの役割分担が不明確であり、連携も不足していたというようなことが指摘されておるところでございます。
この報告書を受けまして、さらには平成二十二年度におけます高原性鳥インフルエンザの発生状況、こういったことを踏まえまして、昨年四月に家畜伝染病予防法が改正をされまして、その際、発生の予防、早期通報、迅速な初動対応の三点に重点を置きました防疫対応を強化いたしたところでございます。その中では、畜産農家が遵守すべき飼養衛生管理基準、あるいは国、都道府県等が連携をして防疫措置を講ずる際の防疫指針、こういったものについて大幅に見直したところでございます。
○はたともこ君 それでは、農水省、新型インフルエンザ対策において豚のサーベイランスの重要性について、なぜ豚のサーベイランスが必要なのかも含めてどのように認識をしておられるのか、お答えください。
○政府参考人(高橋博君) 豚のインフルエンザにつきましては、豚の場合、従来から一過性の発熱あるいは鼻汁等の風邪様の症状を示すものの、通常、一定期間程度で自然治癒をするものでございまして、家畜衛生あるいは畜産経営上大きな問題となるものではないという疾病でございます。このため、家畜伝染病予防法上におきましては、いわゆる届出対象義務というものも実は課されておるところではございません。
しかしながら、いわゆる新型インフルエンザ対策の観点からは、豚が人のインフルエンザウイルスやあるいは高病原性鳥インフルエンザウイルスなどに同時に感染をした場合には、豚の体内で新型インフルエンザウイルスが生じる可能性があると、このことはきちんと認識をしておりまして、一般的に農場段階におけます豚インフルエンザのサーベイランスということについては重要であると認識しております。
ただ、我が国におきましては、諸外国、特に東南アジア等とは異なりまして、農場段階あるいは日常生活におきましても豚が他の家禽あるいは人と濃厚に接触する機会というのは極めて僅かな飼養形態にございます。このことから、豚につきましては、先ほど申し上げました家畜伝染病予防法の改正によりまして、新型インフルエンザ対策上も衛生的な飼養管理基準、これを徹底をしていくということがやはり強く求められているものと認識しております。
○はたともこ君 続いて農水省に伺います。
感染研の田代先生は、豚のサーベイランスについては日本政府のどこもやっていないとおっしゃっているわけですが、農水省は、お配りした資料のこの一ページにあるように、やっているとおっしゃっているわけですが、現在豚サーベイランスはどのように行われているのか、検査頭数も含めてお答えいただきたいと思います。また、それで十分であるということなのか、今後の取組はどうするのかも含めてお答えください。
○政府参考人(高橋博君) 豚インフルエンザにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、いわゆる家畜伝染病予防法、いわゆる法律上の義務といたしましては飼養者に対しまして届出対象とはしておらないところでございますけれども、先ほど来の新型インフルエンザの問題もございまして、農林水産省といたしましては、畜産農家が遵守すべき飼養衛生管理基準におきまして、飼養家畜に、豚に異状が見られた場合には獣医師の診察を受けるように定めるとともに、せきなどの呼吸器症状、これによりまして家畜保健衛生所に精密検査の依頼があった豚につきましては豚インフルエンザの検査を併せて実施をしていく、このようなパッシブサーベイランスを行うことによりまして、陽性時には当然のことながら当該個体の移動、出荷を自粛するよう全都道府県を指導しております。
これにつきましては、平成二十一年度の段階から全都道府県に対して指導しているところでございまして、なお、この豚インフルエンザの検査についてでございますけれども、年間おおよそ百件程度が実施されております。
これまでのところは、我が国におきましては豚の体内で新型インフルエンザが生じたと疑われる事例は発見されておりませんけれども、引き続き、検査結果等の情報につきまして、厚生労働省等が行っております屠畜場におけますインフルエンザのサーベイランスと同様に共有化をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○はたともこ君 厚生労働省も、資料の二ページにあるように豚のサーベイランスを行っていると思いますが、現在どのように行っているのか、四十七都道府県全てで行うつもりがあるのかも含めて、厚生労働省、説明してください。
○政府参考人(外山千也君) 厚労省におきましても、豚には人のインフルエンザウイルスと鳥のインフルエンザウイルスの両方が感染し得ることから、それら複数のウイルスが同時に感染した際に遺伝子の組換えが起こって新型インフルエンザが発生することが懸念されているというふうに考えております。このため、豚におけるインフルエンザサーベイランスは新型インフルエンザの出現を早期に把握するための取組として重要であると考えております。
それで、厚生労働省では、都道府県の協力を得まして、豚を対象とした新型インフルエンザウイルスの出現を監視するための調査を予算事業として実施しております。この調査では、屠畜場の豚から鼻腔や気管の拭い液を採取いたしまして、都道府県衛生研究所でインフルエンザウイルスの分離を行い、ウイルスが分離された場合にはその亜型等についての詳細な検査を実施しております。平成二十三年度は、十県で調査を実施いたしまして、約千検体の検査を行ったところであります。
○はたともこ君 農水省に伺います。
厚生労働省が行っている検査で、屠畜場の豚から新型インフルエンザウイルスが発見された場合、発生農場をすぐに特定できますか。また、今後、農場での無症状の豚も含めたサーベイランスの拡大強化に取り組んでいくつもりがおありになるのかどうか、お答えください。
○政府参考人(高橋博君) 屠畜場におけまして、豚インフルエンザのサーベイランスの結果、そのような豚が生じた場合に、御承知のとおり、基本的に我が国におきましては飼育農場から屠畜場への出荷ルートというのはほぼ確定が可能となっております。したがいまして、そのようなルートをきちんと使うということは可能だろうと思っております。
仮に、厚生労働省から、屠畜場におきまして発見されました豚インフルエンザウイルスの性状を科学的な知見に基づいて分析した結果、新型インフルエンザの可能性が示唆されるというような事態になった場合におきましては、農林水産省におきましても、当然のことながら、厚生労働省あるいは都道府県と連携をいたしまして、専門家からの科学的な意見も十分に聞きながら、出荷元農場におけますサーベイランスの強化あるいは飼養豚の隔離及び移動自粛等について、迅速かつ的確に対応してまいりたいというふうに考えております。
○はたともこ君 では、文部科学省にも伺います。
田代先生は参考人質疑で、私は文科省のコントリビューションも非常に大事だと思います、日本においては鳥インフルエンザ若しくはインフルエンザの専門家というのはほとんどが大学における研究者です、そういった方たちを巻き込んで、この法案の趣旨が貫徹できるように体制を事前に構築していただきたいと発言されました。田代先生は、大学の獣医学の研究室、先生方の御参加を強く希望しておられます。この田代先生の御提言に対して、文部科学省はどのようにお答えになりますか。
○政府参考人(森本浩一君) お答え申し上げます。
先生御指摘のとおり、新型インフルエンザへの対応につきましては、医学のみならず獣医学も含めまして、日ごろから幅広い研究開発を実施して最新の科学的知見を蓄積して緊急事態に備えると、こういうことが重要であると考えております。このため文部科学省におきましては、大阪大学、長崎大学を始めといたしまして、国立大学法人における感染症に関する研究体制の整備充実等を推進しております。
また、国際協力が重要という認識の下にアジア、アフリカの八か国十三か所に海外研究拠点を展開いたしまして、これらを相互に連携させるネットワークを構築して感染症対策に関する基礎的知見の集積や人材育成を図るとともに、政府開発援助、ODAを活用してアジア、アフリカ等の諸国との感染症に関する国際共同研究を推進しております。
文部科学省といたしましては、大学等における新型インフルエンザに関する専門家の知見が有効活用されるように、今後とも、厚生労働省など感染症に関する研究対策を実施される関係省庁と連携を密にしていきたいと考えております。
○はたともこ君 中川大臣、農水省も厚生労働省も豚のサーベイランスはやっているということですが、厚生労働省のサーベイは実は田代先生の提言で始まったものと聞いておりますし、田代先生はこの現状を十分に認識された上で、あえてどこもやっていないとおっしゃったのだと思います。是非、ここは大臣のリーダーシップで豚のサーベイランスを行動計画の中にしっかりと盛り込んで、農水省、厚生労働省、環境省、文部科学省等の連携を密にして確かなものをつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) 大切な御指摘をいただいたんだというふうに思います。関係省庁間が一層連携を密にしていくということ、それを前提にして、この新たな政府行動計画等においても、是非サーベイランスの具体化、していきたいというふうに思っております。
○はたともこ君 次に、ワクチンについて厚生労働省に伺います。
海外で新型インフルエンザが発生した場合、いかに早くウイルス株を入手するかがワクチンの早期かつ必要十分な生産、蔓延の防止のポイントになると思います。パンデミックワクチンの承認については、行動計画において、プロトタイプワクチン、プレパンデミックワクチンに関するデータを活用して短期間に適切に審査、承認を行うとされており、国の採択事業者となった四者は、いざ海外で新型インフルエンザが発生したとなると、国立感染研からシードウイルスとしてリバースジェネティクス弱毒化株の配付を受け、パンデミックワクチンの生産を開始すると聞いているところでございます。
そこで、お尋ねいたします。海外で新型インフルエンザが発生した場合、日本は速やかにウイルス株を入手できる体制にあるのかどうか、まず確認をしたいと思います。
○政府参考人(外山千也君) 現在の新型インフルエンザ対策行動計画に基づき、未発生期から国立感染症研究所やWHO、OIEなどの国際機関、在外公館等を通じましてインフルエンザに関する必要な情報を収集しております。
新型インフルエンザ発生期には、世界五か国に設置されておりますWHOインフルエンザ協力センターの一つに指定されております国立感染症研究所に対し、WHOの枠組みを通じまして速やかにウイルス株が提供されることとなっております。
○はたともこ君 さらに、リバースジェネティクス弱毒化株は、海外で作ったものを日本国内に持ち込むのか、あるいは野生株をそのまま国立感染研に持ち込んで感染研でリバースジェネティクス弱毒化株を作るのか、あるいはメーカーが直接野生株を扱うこともあるのかどうか、この野生株を直接国内に持ち込むことに対するリスク管理は万全なのかどうか、厚生労働省、説明してください。
○政府参考人(外山千也君) パンデミックワクチンの製造に当たりましては、WHOのインフルエンザ協力センターの一つである国立感染症研究所が、WHOの枠組みを通じまして野生株の提供を受け、弱毒化などの処理によりワクチン株の開発を進めることとしておりますけれども、他の協力センター等で開発されましたワクチン株が優れたものである場合には、その株を入手することもあり得ると考えております。国内のワクチン製造会社が直接海外からワクチン株を入手することはなく、国立感染症研究所を通じてワクチン株が提供されることとなっております。
国立感染症研究所は、バイオセーフティーレベル3である新型インフルエンザウイルスを取り扱うことのできる施設設備を有しまして、また十分な訓練を受けた専門家が輸送中も含め病原体を管理しておりますことから、安全管理体制は確保されているものと考えております。
○はたともこ君 現在、政府は、四事業者、化血研、北里第一三共ワクチン、バクスターとライセンス契約をした武田薬品、阪大微研を採択事業者として特例交付金を支給して、新型インフルエンザが発生した際、この四者にシード株を配付してから半年以内をめどに全国民一億三千万人分のパンデミックワクチンを生産できる体制を構築中であるということですが、いかに早く生産するかということであれば、二十回分の十ミリリットルバイアルということになるのでしょうが、使いやすい二回分の一ミリリットルバイアルを生産するメーカーもあるなど、メーカーによってはバイアルのサイズは異なるようです。
ワクチン接種となれば、妊婦へは保存剤の入っていない一回分用のプレフィルドシリンジ製剤の使用が一般的には好ましいと思いますが、現段階では四者のうち一者のみがプレフィルドシリンジをパンデミックワクチンの生産ラインに組み込んでいると聞いております。
パンデミックワクチン生産供給体制におけるプレフィルドシリンジ製剤、あるいは一ミリリットルバイアル、十ミリリットルバイアル等の生産供給体制について、どのような想定、取組になっているのか、必要量が早期に調達できるのかも含めて説明してください。
○政府参考人(外山千也君) 今年一月に取りまとめられました新型インフルエンザ専門家会議の意見書では、新型インフルエンザが発生した際には必要量のワクチンを可能な限り短期間で製造する必要があることから、集団接種を基本といたしまして、早期の供給に適している一本十ミリリットル等のマルチバイアルを主に供給することとし、接種会場ごとに発生する端数の人数や集団的接種に適さない対象者への接種のために、一定程度は一ミリリットル等の小さなバイアルを供給することが提言されております。
現在、実施している新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業におきましては、こうした点も踏まえた上で、全国民のワクチンを約半年で生産する体制の整備を図っております。
また、パンデミックワクチンに添加される保存剤には、特に催奇形性などの問題があるとの科学的な根拠が明らかになっているわけではありませんけれども、希望する妊婦等に配慮し、一定量について保存剤を使用していないプレフィルドシリンジ製剤により供給できる体制の整備を進めているところであります。
○はたともこ君 ワクチンについてもう一点確認いたします。
児童生徒、園児に対して速やかにパンデミックワクチンを接種することは、学校、保育園、幼稚園等で集団接種を行うのか、それとも個別に医療機関で行うこととするのか、どのように考えておられるのか、厚生労働省、説明してください。
○政府参考人(外山千也君) パンデミックワクチンの接種につきましては、平成二十四年一月に専門家会議が取りまとめた意見書におきまして、保健所、保健センター、学校などの公的な施設を活用する等により接種会場を確保し、原則として集団的接種を行うこととすると提言されております。
厚生労働省といたしましては、この意見書を踏まえまして、児童などに対するパンデミックワクチンの接種を安全かつ迅速に実施できるよう、文部科学省などの関係者と連携しつつ、具体的な接種体制の構築に向け検討していきたいと考えております。
○はたともこ君 次に、漢方製剤麻黄湯について厚生労働省に伺います。
麻黄湯は、インフルエンザに対して効能を有する製剤として薬事承認をされており、去る三月二十二日の本委員会での私の質問に対して厚生労働省平山大臣官房審議官は、新型インフルエンザが発生した際には適切な診断の下で処方がなされ、初期のインフルエンザの諸症状に対して有効であることが期待されておりますと答弁されました。
麻黄湯は、検査でインフルエンザが陽性となる前から使用でき、薬価も安いなど、タミフルやリレンザにはない利点があると考えておりますが、新型インフルエンザを所管する健康局長として麻黄湯の有用性をどのように認識しておられるのか、外山局長にお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(外山千也君) 麻黄湯は、初期のインフルエンザにおける悪寒、発熱等の諸症状に対して効能を有する製剤として薬事承認されておりまして、病原性等が未知であるものの、新型インフルエンザの発生時においても、医師の適切な判断の下、臨床の現場において活用されるものと想定しております。
新型インフルエンザの治療に当たりましては、タミフル等の抗インフルエンザウイルス薬だけでなく、麻黄湯についても初期のインフルエンザの諸症状改善のための一つの手段となり得るものと考えております。
○はたともこ君 では、今後の厚生労働省が作成する新型インフルエンザ対策のガイドラインの中にタミフル、リレンザとともに選択肢の一つとして麻黄湯を明記すべきであると私は思いますが、いかがでしょうか。さらに、タミフル、リレンザと同様に麻黄湯を備蓄すべきであるとも考えておりますが、厚生労働省、いかがでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 現行の新型インフルエンザ対策行動計画では、厚生労働省は、新型インフルエンザの診断、治療方針等に関するガイドラインを作成することとなっております。麻黄湯は、インフルエンザウイルスの増殖を抑える作用を持つタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザウイルス薬とは効果等が異なる薬剤であることから、ガイドラインへの記載や備蓄等の新型インフルエンザ対策上の位置付けにつきましては、専門家による医学的な判断等を踏まえた上で検討したいと考えております。
○はたともこ君 さて、昨年の東日本大震災、福島原発事故の教訓はいまだ検証中ではありますが、やはり初動の問題、司令塔が不明確であったこと、総理大臣なのか、保安院長なのか、原子力安全委員長なのか、混乱があったのではないかと思います。
そこで、本法案の新型インフルエンザ対策ですが、初動体制、事務方、行政サイドの司令塔はどうなっているのか、初動体制の事務方の司令塔は四月十三日の北朝鮮ミサイル発射でも問題となっている内閣危機管理監なのか、また三人いらっしゃる内閣官房副長官補のうちのどなたなのか、あるいは新型インフルエンザ等対策室長なのか、内閣官房、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(田河慶太君) 法案におきましては政府対策本部の設置を規定しているところでございますが、新型インフルエンザ対策につきましては事務方としても平時より体制を整えておくことが重要であると考えております。
その体制としまして、平時におきましては、内閣官房の内閣危機管理監を議長として、各省の局長等を構成員とします新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議を開催し、関係省庁の緊密な連携を確保しているところでございますが、私、内閣官房新型インフルエンザ等対策室長も事務局総括という立場で内閣危機管理監を助け、会議の運営を行っているところでございます。
また、海外において新型インフルエンザが発生の疑いが強まった場合におきましては、内閣危機管理監も中心となり、関係省庁の局長が集まり緊急参集チームを参集いたしますが、そこでは事態について分析、協議をし、内閣総理大臣に報告することとしておりますが、私も当然その参集チームのメンバーという形でございます。
さらに、新型インフルエンザが発生したことが確認された場合、これは内閣総理大臣を本部長とする政府対策本部が設置されることとなります。その下に、事務方の体制としましては内閣危機管理監が主宰する新型インフルエンザ対策本部幹事会を置くこととなっておりますが、私も内閣官房の事務局総括という立場から幹事会の運営事務を行うこととなっております。
以上でございます。
○はたともこ君 中川大臣、この司令塔の問題については、先日の参考人質疑で自治医大教授であられた尾身先生が、二〇〇九H1N1の経験を生かす第一の点として、意思決定のプロセス、いろんな意見を聞いて最終的には一つのところに集約するシステムがなかった、最終的な意思決定は内閣総理大臣だが、その前に専門家の人たちが十分議論するシステムをつくって最終的な専門家の意見を総理に持っていくシステムが重要だとおっしゃいました。
大臣、新型インフルエンザ対策でこのような専門家のチームをいつからどのようにつくるのか、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 大震災の教訓の中で非常に大事な点であったというふうに思っております。
本法案において、政府行動計画そして基本的対処方針、それぞれを定める際に、事前に感染症に関する専門家等の意見を聞くことというふうに規定をされております。それに基づいてそれぞれ委員会的なものを置いていきたいというふうに思っておりまして、新たなシステムをそうした形で構築していく中で、専門家の判断を仰ぎながら最終的には総理が判断をしていくという体制をつくっていきたいと思います。
○はたともこ君 では、次に内閣府に伺います。
今年大きな話題となった東京大学医科学研究所の河岡教授チームらのH5N1鳥インフルエンザウイルスの論文公開差止め問題について経緯を説明してください。
○政府参考人(吉川晃君) お答えいたします。
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1に関するオランダと日本の研究論文二本につきまして、米国の国立衛生研究所、NIHの諮問機関、生物安全保障のための科学諮問委員会、これはNSABBと申します、の助言に基づきまして、米国政府が昨年十二月二十日に内容の一部の削除を求める勧告を科学ジャーナル及び研究者に対して行いました。
なお、日本の研究者は、御指摘のとおり、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授であります。実験は米国ウィスコンシン大学で実施されて、我が国には当該ウイルスは持ち込まれておりません。
この勧告を受けまして本年一月二十日に、H5N1ウイルス研究を実施している研究者たちが連名で、哺乳類間で連鎖可能なH5N1の感染実験について自主的に六十日間中止を表明いたしまして、この間に悪用が懸念される研究成果の公表について、米国政府、WHO、その他関係機関に対して適切な仕組みを検討するように求めました。
WHOでは、二月十六、十七日に専門家を集めた検討を行いまして、三つの点について見解をまとめました。その一つは、二つの研究論文は公衆衛生上非常に重要であり、基本的に全面公表が適当であるということ、二つ目に、十分な安全対策の上で今後も研究を継続すべきであるということ、三つ目に、自主的な公表の留保についてはバイオセーフティー及びバイオセキュリティーの面からの検証等が終了するまでは延期することが適当である、こういうことでございます。
そして、その後、三月三十日、再度の検討が研究者も交えてNSABBにおいて行われた結果、これら二本の研究論文については、テロに悪用される危険性が少なく、公表は差し支えないという方針が決定されたものでございます。
○はたともこ君 科学技術には社会への貢献と悪用のおそれの両面、いわゆるデュアルユースの問題がありますが、この河岡教授らの研究悪用のリスクはあるのか、あるとすればどのような対策を講じるのか、説明をしてください。
○政府参考人(吉川晃君) 結果的ではありますけれども、河岡義裕教授らの論文につきましては、先ほども御説明申し上げましたとおり、テロに悪用される危険性は少ないとされたわけでございます。
本件におきましては、報道がありまして以来、内閣府におきましては、関連する省庁間での事実確認や情報交換等のための会合を適宜開催してまいりました。そして、連絡体制を構築するとともに、情報共有や意見交換を行ってまいりました。また、日本学術会議におきまして、本件も含みますデュアルユースの問題に関する検討委員会を立ち上げております。現在も対応を検討しているというふうに承知しておりますが、具体的には研究者のための行動規範の策定あるいはその普及啓発の活動というような取組でございます。
研究者が自ら、研究の必要性、有用性のみならず、その成果の社会的影響や特に安全性に関して十分な認識を持ち、説明責任を果たすということは非常に大切なことであると存じます。研究のリスクとその利益のバランスを常に念頭に置いて、まずは科学者と政府との間で意見交換の場を設けるなど、我々としても努力してまいりたいと存じます。
○はたともこ君 では、最後に中川大臣に伺いたいと思います。
私は、新型インフルエンザウイルスが国内で確認される場合については、海外で発生し人が我が国に持ち込むケース、野鳥等が我が国に持ち込んで豚で遺伝子再集合が起こり人に感染するケースのほかに、参考人質疑で同志社大学法学部教授の川本先生も触れられたバイオテロあるいは研究施設からのウイルスの漏えい事故なども想定され得る、想定すべきであると考えております。
そこで、本法案が、そのようなバイオテロや研究施設等からのウイルス漏えい事故も想定しているのか、あるいはそのような場合にもしっかりと対応できる法案となっているのかどうか、中川大臣にお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) 研究過程でのウイルス等の管理については、今の日本の法制の中では感染症法において管理義務が課されているということで、厚生労働省を中心にその辺の対応をしていくということであります。
そんな中でも、先ほど御指摘があったように、バイオテロ等で研究施設から漏れ出した場合の事故についても、もちろんこの新型インフルエンザの発生がいかなる要因に基づくものであってもこの法案はそれに対応をしていくということでありまして、基本的には、この新型インフルエンザの蔓延の防止を図って、そして国民の生命と健康を保護し社会の安定を図るということ、これを国を挙げて確保をしていくということでありまして、それに対する危機対応を法律というのをそのバックにして体制をつくっていくということであります。政府全体で的確に対応していくということ、これをこの法律によって実現をしていきたいというふうに思っております。
○はたともこ君 ありがとうございました。終わります。
○委員長(芝博一君) 以上をもちましてはたともこ君の質疑を終了いたします。
次に、山谷えり子君。
○山谷えり子君 自由民主党、山谷えり子でございます。中川大臣、関係省庁の皆々様、御苦労さまでございます。
この新型インフルエンザ等対策特別措置法案、平成二十一年のときのいろいろな反省も踏まえ、あのときは基本方針や基本的な対処プロセスのいろいろな責任体制あるいは権限の明確化というものがなされていなかったという反省の下に、そうした体制をつくらなければならない、この基本的な考え方には賛同いたしますけれども、参考人の方々の意見や今日の、今のはた委員のいろんな指摘もありましたけれども、具体的にどう適用されるのか、運用されていくのかということになると、まだまだ見えないところが多過ぎるというのがいまだに私の思いでございます。
そこで、何点かお聞きしたいと思います。
まず、そもそも短期間に数十万人死亡ということを設定していろんなことを考えられたということなんですが、このそもそもが実はスペイン風邪並みのものだろうという予測って、それは全く根拠がない予測だと思いますが、どうしてスペイン風邪並みの六十四万人が短期間で死亡するという、新型だから全く未知のものなのにそのような設定をなさったんでしょうか。
○国務大臣(中川正春君) これは、専門家の中でその検証といいますか、議論をしていただいた上での判断ということになります。
具体的には、平成十六年八月に厚生労働省の新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会の報告書、これにおいて、新型インフルエンザが発生した場合の影響として、スペイン・インフルエンザの我が国における患者数、それから死亡者数のデータを挙げるとともに、スペイン・インフルエンザ流行時と比較すると医療供給体制が質、量共に大幅に改善されて衛生環境も向上しているということはあるんですけれども、もう一方で、人口が増加して高齢人口と基礎疾患を有する者の増加があり、都市への人口集中、あるいは世界的な高速大量交通の飛躍的な発達があるということ、こういうことを前提にしていくと社会生活環境が感染症対策に好ましくない方向に大きな変化を遂げているということがあって、そのことを指摘がされたということ。
それからもう一つは、現行の政府行動計画、平成二十三年九月にこれは制定しているんですけれども、この対策を考える上での一つの想定としてスペイン・インフルエンザの死亡率等を参考にしております。これも専門事項については厚生省新型インフルエンザ専門会議の意見、これを踏まえたものであります。
そういう意味から、その専門家の意見を聞いたということと、それからもう一つは、東日本大震災の対応の経験から考えて最悪の事態を想定をしていくということ、これも重要な要素であるということでありまして、被害想定に係る推計については多様な要因が複雑に影響するものでありますけれども、これから先も、これは随時最新の科学的な知見を踏まえて、実際どういうことなのかということを見直していくという努力もこれもまた必要だというふうに思っております。
以上です。
○山谷えり子君 バイオテロにも考え方としては準用されるというようなことをおっしゃられましたけれども、バイオテロだともう百万、二百万、三百万人、そういうレベルだと思うんですね。
それから、今の説明、長々とおっしゃられましたけれども、スペイン風邪流行のときよりは衛生状況がいい、しかし都市部にいろんな人口が集中したりということもあって、だからスペイン風邪並みのこういう想定にする、プラスマイナスを考えるとって、余りにも非科学的、根拠のない説明を長々となさって非常に不安になるばかりでございます。
それから、これまでのワクチンの製造では間に合わないだろうということで、細胞培養法という新しい形で開発していくんだということをお決めになった。しかし、この細胞培養法というのはまだ開発、確立しておりませんで、平成二十五年にできるんじゃないかなと言われているんですね。
WHOが推奨株、新型インフルエンザと思われるものがはやり始めたときに、推奨株というのをこれだと決めるのが二か月掛かる。そして、それに基づいて、推奨株に基づいてワクチンが、新しい新型インフルエンザに対応するワクチンが生産開始ラインに乗るか乗らないかというところまで一・五か月掛かる。つまり、三・五か月間は無防備な状態でワクチンがないままほうっておかれるわけですね。それから、ワクチンが開発されても、何と今の考えでは一億二千万人全員がワクチンを打つというような、私はこの想定自体あり得るのかなと思っているんですけれども、生産に六か月掛かると。ということは九か月間掛かるんですよ。これ、流行終わっちゃうんじゃないでしょうかね。
○国務大臣(中川正春君) ワクチンの接種がその対応の全てということではありませんで、基本的にはワクチン接種を含めてトータルな対応をしていくということであります。
ワクチンというのは蔓延期に間に合わせることができるということ、これを目標に作っていかなきゃいけないわけでありますが、その以前の対策としては、水際対策、あるいは外出の自粛要請等の公衆衛生的な介入、あるいはタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬等による治療によって実は感染のピークをなるべく後ろへ向いてずらしていくという、そういう対応をまず初期にやっていって、その間にこのワクチンの製造というのを急いで、できる限りその遅らせたピークに間に合うような形でこのワクチンを製造して接種をしていくというふうなことであります。
また、新型インフルエンザというのは、最初の蔓延期が終息した後の第二波、それから第三波といった流行も懸念をされておるということが専門家の間で指摘をされておりまして、仮にワクチンの供給が第一波に間に合わなかったとしても、第二波以降に備える意味においても、免疫を有していない方が予防接種をすることは非常に重要だということ、こういう知見を前提にしてワクチンを製造していくということであります。
○山谷えり子君 流行のピークを後ろに遅らせていく、そして第二波、第三波もあり得るのではないかという想定の下に今議論しているわけですね。ですけど、新型インフルだから、全然その想定に外れる場合も非常に考えられるわけです。
この流行のピークを遅らせて、第二波、まあ第三波ぐらいには間に合うんじゃないか、一億二千万人分作るには。しかし、それには九か月掛かると。流行終わっちゃうんじゃないですかと私は先ほど聞いたんです。中川大臣の答えは今の私の問いに対しての答えではないと思いますが。
○国務大臣(中川正春君) 海外を想定したときに、そこで株が取得ができて、それから日本でその対応をしていくということになるわけですが、その間、この細胞培養法によると、今のそれぞれの専門家の話の中では、六か月でこれを製造していくということができる、そういう体制をしいていくんだということであります。
先ほど申し上げたように、これまでの蔓延の波というのは、最初の部分を後へずらしていって第二波、第三波ということになると、その六か月間の猶予というのは、私は間に合うというふうに思います。
○山谷えり子君 ですから、WHOが推奨株をこれだと決めるまでに二か月掛かるんですよ。それからワクチンができるまでに一・五か月掛かるんですよ。それから生産開始して六か月なんですね。つまり、九・五か月。
一億二千万人、全国民がワクチンを接種するだろうというような体制を欧米は取っておりません。日本だけがなぜそのようなシミュレーションをしているんでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 事実関係だけ申し上げますと、平成二十一年の新型インフルエンザ発生時には、発生から約一か月後にWHO推奨株が決定されまして、その後、国立感染症研究所等でいろいろワクチン株を推奨したということで、その間一月掛かっておりまして、二か月後に国内ワクチンメーカーに生産開始を要請したということになっております。
で、今度の細胞培養へ行きますと、全国民にその後行き渡るには六か月掛かりますけれども、三か月後には国産ワクチンの初出荷を開始できるというふうになっておりまして、時間の関係はそういうことになっております。
○山谷えり子君 私は金曜日のレクで聞いた数字ですからね。それは、そこのところ、ちゃんと厚生労働省で見解を統一しておいてほしいというふうに思います。そして、このときは細胞培養法ではありませんでしたし、いろんな変化が今起きているということをきちんと認識しながら進めていただきたいと思います。
このワクチン生産体制づくりに四つの事業者が指定されて、そして既にお金も行っておりますが、その四つの事業者にそれぞれ幾らお金が渡っておりますでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 今委員の方からお話がございました四事業者でございますけれども、この四事業者に対しては現段階では約三百六十二億円が交付をされているところでございます。
○山谷えり子君 私は、やっぱり金曜日、レクを受けたところによりますと、一般財団法人化学及血清療法研究所に約二百四十億円、北里第一三共ワクチン株式会社に約三百億円、武田薬品工業株式会社に約二百四十億円、一般財団法人阪大微生物病研究会に約二百四十億円ということになっているんですが、今の答えと違いますね。
○大臣政務官(藤田一枝君) 全体として基金の中で割り振っている金額、総体的にはそういう金額だと思いますけれども、現時点で交付をしている額については三百六十二億円ということでございます。
○山谷えり子君 今私が言ったのは平成二十三年八月に決定しているものですから、今の私の数字でお答えいただくのが適当なのではないかというふうに思うんですが。
この四事業者、どういう基準で選定したんでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 平成二十三年度から第二次事業として、実生産施設の整備あるいは臨床試験の実施等に関する事業ということを行っておりまして、そこでこの四事業者を採択をしたわけでございますけれども、事業の実施に当たっては、まず事業者の公募を行って、提出された事業計画について有識者から成る評価委員会で専門的、学術的観点や事業の継続性の観点から評価をした上で、厚生労働省において価格などの観点を含めて総合的な評価を行いまして、応募事業者のうち評価の高かったこの四事業者を採択したものでございます。
○山谷えり子君 これまで、いろいろな医薬、製薬関係では、医者の学閥があったり製薬会社との利権があったり、国民は大きな不信感を持っているわけでございます。この四つの事業体が選定されて、そしてワクチン生産をこの四者で担っていくんだということに関しては国民のいろんな心配もあるかもしれませんので、きちんとプロセス、透明性をチェックしていただきたいというふうに思います。
この一億二千万人分ワクチンを生産していく、これ、欧米ではそんなことやりません。全国民の全てに生産するというような形を取ってはいないというふうに思うんですが、一億二千万人分、もう流行のピーク終わっちゃっているかもしれませんよね、九か月たっていて。幾ら掛かるんでしょうね。
○政府参考人(田河慶太君) 新型インフルエンザ対策に要する費用につきましては、新型インフルエンザ等の病原性の程度や、あるいは国内での流行の状況により異なるものでございまして、現時点でなかなかお答えすることが難しい面もございますが、しかし、仮に病原性が高い新型インフルエンザが国内で発生し、多くの国民に予防接種を実際行うというふうになった場合におきましては、これはやはりもう数千億円のようなお金が掛かる場合も考えられます。しかしながら、一方、そうした病原性が低い場合、そうした費用は掛からないことも考えられます。
いずれにせよ、新型インフルエンザが発生した際に必要な財政措置につきましては、状況に応じて適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
○山谷えり子君 ウイルスの型が途中で変容していくかもしれない、だから違うタイプのワクチンに生産切り替えなきゃいけないかもしれない、あるいは一億二千万人分も実は要らないというような状況が起きるかもしれない。誰が判断するんでしょうかね、これは。
○政府参考人(田河慶太君) 新型インフルエンザ対策につきましては、平時から事前に専門家等の御意見等も聞きながら政府対策行動計画を定めていく必要がございますが、状況に応じて対応を変えていく必要もございます。
その際、やはり、この法案の中でも学識経験者の意見を聞くことを定めておりますが、そうした学識経験者の意見も踏まえながら、政府対策本部として方向性を決めていくことになるというふうに考えております。
○山谷えり子君 六条の五に政府行動計画の作成、公表というのがいろいろ書かれておりまして、総理は、専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聞かなければいけないと。専門家、学者の意見を聞いて、そして閣議決定をしていくと。
ところが、当時、平成二十一年、厚生労働大臣でありました舛添さんが、先日、四月四日の参議院の予算委員会で、この行動計画、そのときは厚生労働省が作った、これが実は、強毒性の鳥インフルエンザだと思って行動計画作ったと、しかし実は弱毒性の豚インフルだったと、だから行動計画がかえって役立つどころか手かせ足かせになっちゃったんだということを言っているわけですね。
これ、学者を集めて、学者にはいろんな意見ありますよ。原発のときも分かりました。もういろんな学者がいろんな意見を言って、菅総理がお友達を集めてもういろんなことを言わせるから、船頭多くして船山に上るじゃないけれども、結局、手かせ足かせになっちゃったわけですよ。そういうことはないんでしょうかね。これ、机上の空論だと思いますよ、この六条の五というのは。
○国務大臣(中川正春君) 事前にしっかりとした学者集団あるいは専門家集団というのを確定をするということ、これは一つ大事なことだというふうに思うんです。そのときそのとき、あの人に聞いたらいい、この人に聞いたらいいというような、そういう話ではなくて、その委員会を構成する専門家が責任を持って判断する体制というのをつくっていくということ、これは一つあると思います。
その上に立って、最終的にその専門家がまとめた考え方を、それに基づいて政治的な判断をするというのは、これはもう最終、総理大臣の判断になっていくということでありまして、そこのところの体制というのを、事前に行動計画を作っていく過程で、そしてまた事が起こったときに対処ということで対応していく過程で、あるいはまた見直していく過程でそれぞれ機能させていくということでありまして、そこのところ、御指摘のように、あの大震災の経緯を踏まえて、しっかりとした整理をしながら専門家の意見を反映をさせていくということだと思っております。
○山谷えり子君 基本的対処方針に関して、第十八条の四では、あらかじめ専門家の意見を聞かなければならない、ただし緊急を要する場合はこの限りではないと書いてあるんですね。
もう本当に危機的な状況で、学者の意見を聞かなきゃいけない、いや、このときはもうこの限りではないとか、今の民主党政権で本当にそのようなことができるんだろうかと。準備していくことは本当に大事なことだと思いますけれども、あの原発のときの民主党政権の官邸のめちゃくちゃぶり、あるいは原子力村のめちゃくちゃぶりを見ますと、これは相当に緻密に準備をしていかなきゃいけないし、それぞれの現場でコンセンサスが十分にお互いに行き渡っていなければ機能しないことだというふうに思っております。
北朝鮮がミサイルを発射した四月十三日、米国早期警戒情報は、SEWは、七時四十分確認、防衛省の幹部たちにも全部それが伝わりました。イージス艦にも空自のレーダーにもPAC3にも伝わりました。しかし、八時三分に内閣危機管理監は、全国の自治体にエムネットというシステムで、発射確認せずという、流したんですよ、偽情報を、間違った情報を。今回のこれも、この新型インフルエンザの対策ですね、今民主党のはた委員が、責任者、司令塔誰ですかと言ったら、まさにその内閣危機管理監だというじゃないですか。八時三分に全国の自治体に確認しないって間違った偽情報を、アメリカや韓国はもう当局のニュースとして七時四十分と言っているんですよね、それを実はそのとき総理も官房長官も知らなかったんですよ、そんな八時三分にネットを流したって。
これ、今更言ったってしようがないですけど、こういう民主党政権に、今、中川大臣、きれい事をお答えになられましたけれども、私は本当に機能するんだろうかということを思っておりまして、もっともっと細部を詰めていただきたいというふうに思います。
ところで、平成二十一年のときの推定接種者は二千二百八十三万人とされております。前回、ワクチンですね、国産で二百六十億円、外資で八百五十三億円使ったんじゃないかと言われておりますが、これは、国産にこれだけ注文するんだ、どこの企業に注文するんだということを誰が決めたんでしょうか、二十一年のときです。
○大臣政務官(藤田一枝君) 平成二十一年のワクチン量ですけれども、二十一年新型インフルエンザ発生時には、同年の七月から九月にかけて厚生労働省において専門家で構成する新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会というものを開催をいたしまして、ワクチンの接種対象者や接種回数等の検討を行ってまいりました。
その意見等を踏まえて、政府の新型インフルエンザ対策本部が二十一年十月一日に新型インフルエンザワクチン接種の基本方針というものを策定をいたしまして、二回接種を前提としたワクチンを、七千七百万人分程度のワクチンを確保する方針を決定したところでございます。
○山谷えり子君 その決定は、だから正しくなかったんですね。結局、弱毒性で、はやりもなかったということでたくさん余っちゃったんですよ、注文したのが。だから、外資の製薬会社に違約金を払わなければならなくなりました。ノバルティス社には幾ら払いましたか。
○政府参考人(外山千也君) ノバルティス社に対しましては、違約金といたしまして九十二億円を払っております。
○山谷えり子君 外資で注文した会社は、ノバルティス社とグラクソ・スミスクライン社です。グラクソ・スミスクライン社には違約金幾ら払いましたか。
○政府参考人(外山千也君) 払っておりません。
○山谷えり子君 なぜグラクソ・スミスクライン社はノバルティス社が違約金をもらったにもかかわらず違約金を放棄したんでしょうか、払わなくてもいいと言ったんでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 輸入ワクチンにつきましては、第二波に対応するために備蓄等を考慮してもなお余剰が見込まれたことから、グラクソ・スミスクライン社に解約を要請し交渉を行ったところ、先方の方からの申出によりまして違約金なしで解約に至ったものでございます。
○山谷えり子君 外資というのはお金にシビアなところです。ノバルティス社が九十二億円もらっているのに、グラクソ・スミスクライン社が違約金を要りませんと言う訳がちょっと私には分かりません。
その後、グラクソ・スミスクライン社が作っている子宮頸がんワクチン、サーバリックス、これに公費補助をするということが急展開で決まりました。当時、鳩山総理、長妻大臣は否定的な言い方していたんです。この有効性、安全性、まだまだ分からないし、ヒトパピローマウイルスという、百種類以上あるウイルスの中で子宮頸がんになるハイリスクタイプが十五種類、その中で、グラクソ・スミスクライン社のサーバリックスは16型と18型と二つのタイプにしか効かない、だから公費助成するのに適当かどうか、それはまだ結論が出ないというような答弁を本会議でも委員会でもしていらっしゃるんですよ。ところが、急に決まったんです。これはなぜでしょうか。
○政府参考人(外山千也君) 先ほどのグラクソ・スミスクライン社の対応でございますけれども、同社は他国でも場合によっては違約金なしで解約している例がございます。
この子宮頸がん予防ワクチンの問題につきましては、グラクソ・スミスクライン社のワクチンを使っているわけでございますけれども、これは子宮頸がん予防ワクチン、それから小児の肺炎球菌ワクチン、それからHibワクチンということで、厚生労働省の厚生科学審議会の予防接種部会の方でこの三つについてしかるべきワクチン接種事業を行うべしというふうなことは提言を受けまして、それから国会での様々な議論も踏まえまして、補正予算で対応したということでございます。
○山谷えり子君 だから、その決め方が急展開だったんです。Hibワクチンは副作用が出るから、お母さんたち、今打ちたくないといってすごく控えていますよね。十分なデータがそのときあったのかどうかということをもう一回検証し直していただきたいと思います。
平成二十二年八月二十日、菅内閣のときです。私は質問主意書を出しております。子宮頸がんワクチン、小六から高一まで七五%ぐらいが今もう打っています、既に。国と地方でお金を出すことが決まったと。三回打ってこれ六万円という非常に高いワクチンなんですね。それで、私は、子宮頸がん、若い人になぜ近年急に増えたんですか、子宮頸がんが、そして予防ワクチンはどの程度効くんですか、安全性、有効性のデータは十分ですかというような質問をいたしました。
なぜ近年、二十代後半から三十代の若い女性の子宮頸がん発症率が上昇しているのか、政府の見解を聞きましたが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 今委員の方から御指摘がございましたように、近年、四十歳代以下の年齢の女性に子宮頸がんにかかる方の割合が増加をしているということについては認識をいたしているところでございます。そして、この子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスは性交渉により感染することが知られておりまして、国立感染症研究所の報告によると、性交渉開始時期の低年齢化が四十歳代以下の年齢層の子宮頸がんの罹患率の増加に関係していると考えられるとされているところでございます。
○山谷えり子君 そうなんです。そのとき私の質問に対して政府が答えたのはこういうふうだったんです。性交渉開始時期の低年齢化等の影響があるものと考えている。そして、国立がん研究センターがん対策情報センターのホームページにもこう書いてありました。子宮頸がんリスクの要因は低年齢での初交、つまり十代前半とかローティーン、ミドルティーン、複数の人とセックスする、性的パートナーが多い、そして他の性行為感染症とのかかわりというようなことなんです。つまり、十三歳セクシャルデビューなんて言って、今もうワクチン接種の勧めをグラクソ・スミスクライン社はこんな漫画まで作ってやっているんですよ。それで、子宮頸がん予防ワクチンはセクシャルデビュー前、性交渉の経験前の十代で接種すると効果的と書いてあります。そしてまた、ホームページも、キティちゃんのこんなのを作って、メール、ツイッターでお友達に子宮頸がんワクチン打つのが大事よって知らせましょうねって書いてあります。
しかし、両方とも本当の原因を書いていないんですよ。なぜ子宮頸がんになるのか、十代の前半あるいはミドルティーンで複数の人とセックスする、性交渉年齢が早いからだって。二十代では、神様がちゃんとお体つくってくれているんですよ。だから、低年齢でセックスしちゃ駄目よって、そうすれば子宮頸がんになるリスク減りますから。それをまず教えるべきじゃないでしょうかね。
○大臣政務官(藤田一枝君) 今委員の方から御指摘をいただきました、そういう視点も含めていろんな啓発に取り組んでいかなければいけないと考えております。
○山谷えり子君 視点も含めてじゃなくて、それがまず第一だというふうに思っています。
これ地域差がありまして、16型、18型というグラクソ・スミスクライン社が効くと言われている型、これは欧米では八、九割ですが、日本ですと五割から七割有効という形で地域差もあるんですね。それから、長期的な効果、どのぐらい持続するんですかと聞きましたら、海外の十五歳から二十五歳までの七百七十六例を対象とした試験結果によると、平均追跡期間五・九年の時点では、その予防効果は最長六・四年間持続することが確認されているものの、その予防効果の持続期間については確立していないと政府はお答えになられました。これから二年たっていますから、今予防効果最長八・四年ぐらい効くと、こういう状況でよろしいんでしょうかね、政府としては。
○政府参考人(外山千也君) 最近のグラクソ・スミスクライン社より確認できた情報でございますけれども、十五歳から二十五歳の女性四百三十七例を追跡した海外の臨床試験では、平成二十三年三月時点で予防効果が最長九・四年間持続することが確認されております。
○山谷えり子君 費用対効果について、私はこのときも質問を政府にいたしました。
平成二十二年七月七日、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の資料によりますと、サーバリックスによる免疫維持期間が明らかでないこと、全ての子宮頸がん患者に占めるサーバリックスが感染予防効果を有するHPV、ヒトパピローマウイルスですね、16型及び18型が検出される子宮頸がん患者の割合が五〇%から七〇%までと幅があることから、費用対効果について現時点で評価は難しいというふうに言っているんですね。この政府見解は今も同じなんでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 子宮頸がんワクチン等について厚生科学審議会の感染症分科会予防接種部会に設けられましたワクチン評価に関する小委員会で、その効果や安全性、そしてまた医療経済的な評価というものをこの間行っていただいてまいりました。そして、昨年の三月十一日に報告書が取りまとめられたところでございます。
その中で、医療経済的な比較分析を行ったところ、ワクチン接種により健康な寿命を一年延伸させる効果を得るための費用については五百万円程度以下であれば良好であると判断されておりまして、この子宮頸がん予防ワクチンは二百一万円と推計されることから、国内での子宮頸がん予防ワクチン導入の費用対効果というものは良好であると、このように推計されたところでございます。
ただ、ワクチンの評価については医療経済的な分析のみで行えるものではなくて、効果や安全性などを総合的に考えていかなければいけないと、このようにも考えているところでございます。
○山谷えり子君 これ、婦人科の病院のホームページなんですが、ハイリスクタイプのヒトパピローマウイルスに感染しても、九〇%以上は体内から自然消滅すると。全世界で毎年三億人の女性が発がん性のハイリスク型ヒトパピローマウイルスに感染すると仮定した場合、そのうちの約〇・一五%が子宮頸がんを発症すると推定されているというふうなこともございます。
日本の場合、さっきも言ったように、HPV16型、18型が地域的には小さいもの、それから性交渉を十代の初め、半ば、そういった時期にしなければゼロなんですよ。今の費用対効果の、私、説明、何か違うんではないかと思いますけれども、疑問感じられませんか。
○大臣政務官(藤田一枝君) この子宮頸がん予防ワクチンの効果ということについては、いろんな御議論もございましたし、国会の中でも様々な御指摘もございました。もちろん、このワクチンだけが全てではなくて、先ほどから委員の方から御指摘をいただいているような啓発をしっかりやるということが当然必要だということは言うまでもございません。その上に、この予防ワクチンということで取組をさせていただいているところでございます。
○山谷えり子君 このグラクソ・スミスクライン社の子宮頸がんワクチンの説明書には、本剤の予防効果の持続期間は確立していないと書いてあります。それから、副作用の検証もまだ不十分でありまして、抗体が子宮頸部の粘膜ににじみ出ることによって予防されるのではないかと考えられているというような分析なんですが、そしてまた、新しいタイプの免疫増強剤も使われておりまして、この有効性、安全性というのもフォローアップが十分ではないんですね。
今、厚生労働省は、追跡調査をこの会社にお任せしちゃっているんですよ。グラクソ・スミスクライン社は、製造販売後ももちろん安全性を調査しているというところで、今、一生懸命安全性を調査しつつあるところなんですね。これに対して、国の行政としてはインフォメーションの在り方に非常に問題があると思いますけれども、今言ったような、まあ山谷さんの意見もそれはそうですねというような意見じゃ、答えじゃなくて、もう少し根本的に問題をとらえ直していただいて、十代、つまり十代の初め、半ばでセックスを始めて複数とするから、十数年の潜伏期で二十歳から三十歳までの子宮頸がんの人たちが今増えちゃっているわけでしょう、急に。そういうことをもう少し分かりやすく説明したらどうでしょうかね。
○政府参考人(外山千也君) 先生御指摘のように、現在、グラクソ・スミスクライン社では、有効性及び安全性に関する製造販売後調査を行っております。しかし一方、厚生労働省の方でも、子宮頸がん等接種緊急促進事業の中で、ワクチン接種後の副反応の収集、評価も実施しておりまして、医薬局、健康局合同の委員会の中でそういった副作用のことについても抜かりなくフォローアップしております。
○山谷えり子君 ノルウェーでは公費助成はまだ早いということでしていないというふうなことも聞いておりますし、またアメリカの大統領選でも、子宮頸がんワクチン打ったからもう子宮頸がんにならないからといってセックスしてもオーケーというような、そういうようなむしろモラル破壊の方がかえってリスクを高めているんだというようなこともありまして、きちんと海外の情報も得てください。この新型インフルエンザワクチンのことについても私は似たようなことが言えると思います。ある部分では欧米に倣ったりするんですが、この今の特措法に関しては私はちょっと前のめり過ぎるんじゃないかなと。そういう根拠がない状態の中で、根拠があるんならいいんですが、根拠を決めるその土俵設定が余りにも曖昧過ぎるということで、本当に何かに引っ張られていく可能性が非常に強いということを心配しているわけでございます。
医学と科学とは違う政治判断、政治決着、あるいはワクチンビジネスというお金の問題と絡んで、どこか人々の健康とか有効性とか費用対効果とか、そうしたこととは違う方向に走っていってしまう、それは国民の思いとは違うわけですから、十分気を付けていただきたいと思います。
中村祐輔先生、残念ながら、アメリカで研究するんだといって出られました。がんペプチドワクチン、それから丸山ワクチンのようながん免疫活性化療法にも注目すべきではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
○大臣政務官(藤田一枝君) がんペプチドワクチンが、手術、放射線療法、そしてまた化学療法に次ぐ第四の治療法として大変期待をされているということは強く認識をいたしております。このため、全国どこでも質の高いがんペプチドワクチンを受けてもらえるように、平成二十三年度より薬事承認を目指した新たな研究事業を立ち上げまして、八課題の臨床研究を採択をし、本格的な医師主導治験を実施する準備段階に入っているところでございます。
今後も、早期の実用化を目指して財政的な支援も含めて取り組んでまいりたいと、このように考えております。
○山谷えり子君 今、丸山ワクチンもがん免疫活性化療法の一つだという形で再注目をされているわけですが、三十年前、残念ながら、厚生労働省の審議会で承認されなかったと。しかし、それからもずっと有償治験薬として三十数万人の方たちがお使いになられて、効くのではないかというようなことを言っておられるわけでありまして、バランスの問題として私は引っかかるものがあるんですね。
三十年前、私は記者でありまして、丸山博士、あるいは行列を並んで丸山ワクチンを手にしておられる患者の皆さん、家族の皆様、取材しました。そして、国会でも集中審議が開かれて、何だかおかしいんじゃないかというようなことが言われたんです。いろいろな形の承認あるいは財政的支援も含めて、バランスの良い支援体制というものをいま一度、今回の特措法を機にもう一度見直してほしいと思いますけれども、いかがですか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 難病あるいはがん等の疾患分野の医療費の、実用化研究事業ということで、先ほど申しましたように、平成二十三年度からかなり力を入れて取り組んできておりまして、今年度予算でも十二・六億円を計上させていただいているところでございます。そういうことを活用しながら、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
○山谷えり子君 ですから、その部署とかその金額の掛け方が全く違うんです。ですから、総合的にもう少しバランスの配分を見直してほしい。
それから、国内産業の育成ということが余り視野にないのではないかなというふうに思います。ですから、どんどん外資と合体していかないと生き残れないような状況に追い詰めようとしているように思われますけれども、国内産業の育成についてはどのような体制を取ろうとしていらっしゃいますか。
○大臣政務官(藤田一枝君) 医薬品産業というのは経済成長を担う重要な産業だというふうに認識もいたしておりますし、期待もいたしているところでございます。
政府としては、これは委員も御承知のことと思いますけれども、二十二年六月に閣議決定をいたしました新成長戦略において七つの戦略分野の一つにライフイノベーションを位置付けまして、日本発の革新的な医薬品等の研究開発等を推進をしているところでございます。厚生労働省としても、今年度予算で革新的医薬品等を創出するためのライフイノベーションの一体的推進として百二十七億円を計上させていただきました。
さらに、平成十九年に厚労省が取りまとめました革新的医薬品・医療機器創出のための五か年戦略というものがございますが、これが五か年を経過をいたしましたので、現在、医療イノベーション推進室と協力をして新たに医療イノベーション五か年戦略を策定しているところでございます。この新たな五か年戦略については、今後、日本再生戦略が策定される予定でございまして、その中にしっかりと盛り込んでいきたい、このように考えております。
今後も、医薬品産業を我が国の成長牽引役とすべく、引き続き支援を強化をしてまいりたいと考えております。
○山谷えり子君 今、百二十七億円って、少な過ぎるんですよ。で、中村祐輔先生は責任者として呼ばれたのに実は違っていたと。もう悲しみ、無念こらえながら、アメリカで研究の場を移されてしまうんですね。その事実を受け止めてください。
それから、子宮頸がんワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、これ千六百億円、よく分からないまま急に決まって、それから新型インフルエンザだってそうですよ、一億二千万人分作ると七千億円掛かると、もしかしたら無駄になるものかもしれない、流行終わっちゃっているかもしれないと。そのお金の掛け方が違う、それから透明性に対して非常に疑問を感じているところでございます。
最後に、専門家からのヒアリングで、経団連の久保田専務理事が、労働法制や事業法上の諸規制の弾力的運用、法令、事前リスト化など見直しが必要だというふうに思うのですと。ここには何にも書いていないんです、法律には、何にも書いていないんですよ、現場を分かっていらっしゃらないから、民主党政権は、申し訳ないけれども。事前に意見をきちんと経済界の皆さん方と、聞かなきゃいけないと思いますよ。その辺はいかがですか。
○政府参考人(田河慶太君) 御指摘の様々な活動に対するものでございますが、経団連等からもお話をこれまでもお伺いしております。そのため、例えばよく、これは知事会の方からも要望書の中で出されましたけれども、運転免許の更新期限が来たらどうするのか等々御指摘もいただきました。そういう観点から、この法案の五十七条におきましては、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法案を、これを準用するような規定も設けているところでございますが、それ以外にも運用の面で配慮していくべき点もございます。
昨年九月に改定しました政府行動計画におきましても、そうした点を踏まえ検討していく旨記載をしておりますが、今後私どもとしても、政府行動計画を策定する際には、経済界等のお話などもよく聞きながら、さらに運用面で考えていくべき点、そうした点も検討してまいりたいというふうに考えております。
○山谷えり子君 それから、同志社大学の川本哲郎法学部教授は、やはり参考人のヒアリングのときに、人権とか何か、不服申立てのところとか、もう全く何も書かれていないんですよ。
例えば、四十五条の三、施設管理者に感染防止の協力を求める、特に必要とされる場合って、じゃ、特に必要とされる場合って何なんですかとか、六十二条の方でも補償がいろいろ書いてありますが、補償の範囲とか何にも、これ政令で決めるって書いてあるんですが、イメージができないんです。イメージができない。
私、衆議院の内閣委員会のこの特措法に関する議事録全部読みました。たくさん質問していらっしゃいます、これに関して。答えは何にも分かりません。そういうことなんです。不服申立ての規定もありません。非常に乱暴な、雑な特措法なんですね、今のこの法案は。心配でいっぱいでございます。
時間が来ましたので、この委員会で更に詰めて、同僚議員が、いただけるというふうに思います。
質問、これで終わります。
○委員長(芝博一君) 以上で山谷えり子君の質疑を終了いたします。
次に、古川俊治君。
○古川俊治君 続きまして、自由民主党、古川俊治の方から御質問させていただきます。
まず、大臣に伺いたいんですが、先ほど、今、山谷議員のお話にもありましたけれども、大臣、いろんなところの、経済界の意見も聞いて、医療界の意見も聞いたとおっしゃっておりますけれども、この法案について、先日の参考人質疑でも相当の御議論があったようでございますけれども、私も医療界の仲間からも相当の批判が来ております。
本当にこれは聞いたと言えるのかどうか非常に疑問に思っておりまして、一つ申し上げると、特に三十二条の新型インフルエンザ等緊急事態宣言ですか、これが公示された場合には相当の基本的人権の制約ができるという構造になっている、これはお分かりだと思うんですね。第五条に、だからだと思いますけれども、必要最小限にしなきゃいけないと書いてあるわけですけれども、当然のことながら、基本的自由権、精神的自由権及び経済的自由権は必要最小限度じゃないとこれ違憲になるんですよ、そもそもが。だから、当たり前のことが書いてあるわけですね。それをまず御認識いただきたいと。
それで、今回の法案はまず、三年前の新型インフルエンザのように、多くの国民が免疫を持っていない、ですから、全国的かつ急速に蔓延するおそれがある、そういうものをまず対象にしているわけですよね。その上に立って、緊急事態宣言が出される場合には、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあって、かつ、つまりそれは病状が重いということだと思うんですね。それから、国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす可能性がある、そういう疾患だと言っているんですね。これが一体どういうものを想定しているのか。物すごく重篤で、まさに経済や国民生活が物すごく混乱すると甚大な混乱が起こるわけですから、私、ちょっと想定できないんですよね。
先ほど言いました、確かに都市が都市型になってきて感染しやすくなる。それは全部同じなんですよ。今、インフルエンザだけじゃないです。都市型の感染症で起こっているものって、みんな今の医療体制の中でやっていますよ。別に何の混乱も起きていないじゃないですか、国民生活にも。それは生活が密になれば当然感染は起こりますが、軽症である限りはさほど問題はないわけですよ。それはそれなりに医療も進歩していますし、先ほど大臣おっしゃられましたように、いろんな機器も整備されてきて医療体制も確立されて、まず公衆衛生の状態が全然違いますから、昔とは。今回、スペイン風邪とかアジア・インフルエンザ風邪って、これはもう今から百年近く前、五十年以上前と、こういうことをやっているわけですよ。全く事情が違いますね、医療の事情がですね。それをまず申し上げて。
私は今回、ちょっとSF映画みたいな法律だと思っているんですが、一体どういう立法事実を考えていらっしゃるのか、あるのかどうか、そういう必要性がですね。全く想定外で、単に想像だけのことでこれだけ基本的人権を制約するような法律を本当に作っていいのかどうか、まずこの基本的なことが疑問なんですよ。どういう点で、科学的に根拠にというふうにいって今どういうような疾患を想定されているのか、その致死率何%ぐらいのものがあるのか、ちょっと教えていただきたいと思うんですが。
○国務大臣(中川正春君) 先ほどの質疑の中でもお話し申し上げたんですけれども、一つは、厚生労働省の新型インフルエンザ対策専門家会議意見書、これは専門家の中での議論でありますが、ここでスペイン・インフルエンザ並みの場合を重度として致死率は二%というふうに想定をしていると。これを欧米諸国においても対策を考える際の参考にされているということもありまして、これを一つ前提にしたということ。
それからもう一つは、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるということの根拠といいますか前提はどういうことかといいますと、一つは、高病原性である、病原性が高いということ。それからもう一つは、いわゆる波及性といいますか、流行前、確認された患者が多数の人に感染させる可能性のある行動を取っていた場合、多数の患者が発生する蓋然性が見込まれる状況、これがいわゆるパンデミックになっていく状況があるということ。この二つなんですけれども、一つ、その最初の方の重篤になるという部分については、発生した新型インフルエンザが強毒のH5N1であると遺伝子で判断されるようなことであるとか、あるいは海外で発生した新インフルエンザの臨床例の集積によって、通常のインフルエンザとは異なる重症症例、これが多く見られる。この異なる重症症例の例でありますが、多臓器の不全であるとか、あるいはウイルス性の肺炎、あるいは脳症等々、こういうことが見られるという場合、これを高病原性というふうに規定をしていくということ、この二つを想定をしているということであります。
それからもう一つは、病原性が変化をしやすいという特性があるということで、致死率は、第一波だけではなくて、第二波以降も含めた相当長期にわたる症例の積み重ねによって確定をされてくるということ、こんなことを前提にしながら緊急事態宣言の要件というのを確定をしていくということでありまして、そういう意味で、これが現実のものになると社会全体が相当に混乱をするということが想定をされる、そういう想定の中で法律で二段階に整理をしているということであります。
○古川俊治君 先ほど言いました二%というのはスペイン風邪とおっしゃっていましたよね、これ。それはもう今から九十四年前のことなんですよ、日本で流行したのは。それと今の医療事情と一緒にするのはおかしいと申し上げているんですね。それは、脳炎や肺炎は起こるかもしれません。それが死につながるかどうかというのは、その間の医療状況によって全然違いますから。多臓器不全というのがあると今おっしゃいましたけど、いきなりは起こってこないんですよ。途中の医療経過があって初めて最初に起こってくるんですね。今、様々な新しい薬もできている、いろんな治療法もできています。それが実際、致死率何%ぐらいなのか。私は、今そこであえて大臣とこれ議論する気はないですけどね。
そういうことも考えて、これ、単なるおそれのことなんですよ。それから、さっき言いましたウイルスが変異して強毒化する可能性がある。それは極めて抽象的なおそれだけで、これだけ現実的に具体的に基本的人権を制約するような法律を作っていいのかどうか。こういう問題がまず全然基本的に考えられていないんですよね。
これ、この法律で私が数えただけでも十七条項の国民保護法からの転用があるんですね、大体同じようにね。これ、国民保護法って武力攻撃ですよ、起こることが。私は、もう今まで二十五年医者やってきましたけど、病気が武力攻撃と同じぐらいというものは見たことがないですね。それはがんだって今、年間三十数万人亡くなりますけど、別に国民生活や経済、混乱していないですよ。多くの人が、二千万人罹患をした前回の新型インフルエンザにしても、多くの人は別に、悪化する人は悪化するし、治る人は治るんですよ。悪化する人は、今多くの場合、インフルエンザ疾患の場合は高齢者の方々、あるいは元々が合併症を持っている方々です。健常人がそのまま死亡するという例は今の医療下では本当にどのぐらいの可能性があるのか、これはきっちりやっぱり議論をして考えていかなきゃ困ると思っています。これはまず最初に申し上げます。
これだけ問題の多い法律で、国民保護法のときは、衆議院で五十二時間近く、参議院で四十三時間近く質疑が行われているんですね。ところが、前回衆議院でこの法案は五時間で終わっている、質疑が。それで、これは、私は正直申し上げて衆議院が余りに拙速であったと言ってもしようがないと思うんです、残念ですけどね。そう思っています。やっぱりここで必要があれば、しっかり改正すべきところは修正をしましてもう一度衆議院でも御審議いただくというような、しっかりとした議論を参議院で是非委員の皆さんにお願いをしたいというふうに思っております。
最初に、緊急事態宣言が出された場合、都道府県知事は、住民の外出規制や集会中止、学級閉鎖などの措置を要請、指示できることになっておりますけれども、これらの指示が感染の全国的かつ急速な蔓延を抑制可能なのか、その科学的根拠について教えてください。
○国務大臣(中川正春君) 施設利用の制限等については、これ一つは、これもスペイン・インフルエンザ発生時の米国の例があるんですけれども、多数の者が使用する施設の閉鎖を実施したセントルイスでは、対策を講じなかったフィラデルフィアと比べてピーク時の死亡率は四分の一以下であったと、こういうデータがございます。また、学級閉鎖についても、押谷東北大学教授らによる新型インフルエンザ流行時における学級閉鎖に関する基本的考え方、これにおいて、学校閉鎖はピーク時の罹患率を四〇%まで減少させるというふうに述べておられまして、こういう紹介の中でその有効性が示されているというふうに我々は考えております。
また、学校や興行等において長時間生活を共にしたり、あるいは人の密度が高くなるなど感染が広がりやすい、またこのような施設で感染拡大が起これば広い地域における感染源となるおそれがあるという、このことのために多数の者が集まる機会をできるだけ少なくするということ、それから感染拡大を防止してピーク時の患者を減らしていく、そしてピークをその後にずらしていくというふうなそういう効果があるということを専門家の中で指摘がありまして、それを踏まえてそういう設計をしているということであります。
○古川俊治君 なるべく端的にお答えをいただきたい、時間が限られていますから、お願いしたいと思っております。
先ほどセントルイスの例をおっしゃいましたけれども、あれで一つ気付いていただきたいのは、死亡率が下がっているんですね。後にピークずれるのは、そういうこと、可能性があるのは分かりますよ。ですけど、医療環境が同じだったら同じ疾患に罹患して死亡率が大幅に減ることってありますか。何でなんですかね。
○国務大臣(中川正春君) フィラデルフィアとそれからセントルイス、これを比べてということでありますから、そういう意味で、多数の者が使用する施設の閉鎖、これを実行したセントルイスがピーク時の死亡率が四分の一になったということ、ここだと思うんですけどね。
○政府参考人(外山千也君) 当然、感染者数が減ったということで、人口に対する死亡率で、死亡率が下がったということでございます。
○古川俊治君 それは対人口での死亡率ですね、致死率が減ったというわけじゃないですね。正確に御答弁いただきたい。
私、その期間を遅らせるというのは分かるんですよ、それ、幾つかエビデンスもあるようですから。そういう意味で私も全部調べました。その上で、何で患者数が、ピーク時の患者数が減るんでしょうか。専門家がそう言っているからというのはやめてください、報告があるとか。科学的にどうしてだということをお答えください。専門家にもいろんな意見がありますから、その点を明確にお答えいただきたい。なぜピーク時が遅れて、そこでピークの患者数が減るのか、論理的に科学的にお答えいただきたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) いや、私たち、政治的に判断するときには、専門家による委員会を構成して、その中で議論をした結論に基づいてそれを採用したシステムをつくるかどうかという、そういう判断でありますから、その中で出てきた知見に基づいていわゆる答弁させていただくよりないと思うんですよ。そこのところを私が説明しても恐らく説得力はないんだと思います。
○政府参考人(外山千也君) こういった問題につきましては、人道上の問題からケースコントロールスタディーなるものをやることは不可能だと思いますので、歴史的な状況から判断するという以外ないと思いますが、このセントルイスとフィラデルフィアにつきましては、類推されることは、これがインフルエンザでありますので感染症だということでありますから、接触の機会を制限すれば当然その感染の拡大のスピードは遅くなったであろうと。その結果としてフィラデルフィアとセントルイスでは差ができて、セントルイスはなだらかなピークになったんだろうと思いますけれども、厳密な意味でほかの要因も全部そろえて、人口集団とか他の医療の状況とか全部そろえた上での解釈じゃありませんので、一定程度の類推でございます。
○古川俊治君 大臣のおっしゃるのは、それはそうです、それはそうなんですよ。ただ、その場合に、いろんな意見がある中でなぜそういう有識者の意見を取ったのか、政府としてはやっぱりそれは国民に説明すべきでしょう。それは専門家の委員が言ってきたから、それを受け取るのが政治家の仕事じゃないですよ。これは、政治家、そういう意見の中でどれを採用するか、それを決断するのはまさに政治責任ですよ。だから、この場で問われたときにそれは答えられないじゃ困るということも、まずそういう認識でいていただきたいんですね。
それから、今のお話ありました、十分に検証ができないということですね、それ、今局長がおっしゃいましたけど。ですから、このことについて、そういった答えができないんであれば、何で、問題は、これほど重要な基本的人権の制限がそれほど答えられないようなエビデンスをもって許されるのか、そのことを考えなきゃいけないんですよ。これは弁護士会が言っていますよね、集会の自由、精神的自由権ですよ、それが答えられないようなエビデンスでもってそれを制約していいのかどうか。これはやっぱりちゃんと考えなきゃいけない。答えられないんですよ。まさにそれは科学的な問題でないはずであります。
それで、じゃ、次行きますよ。もう時間がないからいいです、そっちの。水際対策についてお聞きしますけれども、じゃ、水際対策のエビデンスって何なんですか。もっと言うと、一言で申し上げますと、もういいや、いいや、じゃ先に御答弁をお願いします。
○政府参考人(外山千也君) 平成二十一年の新型インフルエンザでは、WHOにより発生、フェーズ4の宣言がなされた時点では、既に北米における影響が広がった段階であったため、国内へのウイルス侵入を長期間遅らせる効果は期待できない状況にありました。それでも、発生後に行われました海外の研究によりまして、日本を含めた検疫の実施国におきまして国内感染をある程度の期間遅らせる効果があった可能性を示唆する結果が報告されております。
また、今年一月の厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議が取りまとめました意見書におきましても、この水際対策はその対策の開始時期に日本への感染者の到着数が少数と考えられる場合などに侵入遅延に有効となる可能性が期待できるとされていることから、入国する感染者数が極めて少ない段階では水際対策を行うことが適当であると考えております。
ただ、新型インフルエンザの感染力等は様々でございまして、フェーズ4からフェーズ6に進むまでの時間も様々であること等考えられますことから、実際に発生した場合に、海外や国内での発生状況を踏まえまして合理的な措置をとることとしてまいりたいと考えております。
○古川俊治君 今お答えありましたように、総括会議ですね、二〇〇九年のときの、その中で、水際対策については、検疫により感染拡大時期を遅らせる意義があるとする意見があるが、その有効性を証明する科学的根拠は明らかでないと言っているんですね。これ出ていますよね、お分かりだと思いますけど。
その上、よく考えていただいて、水際対策って、元々が無症状の人も多いんですね、最初。非常に不確定な症状です。それで、潜伏時期がありますから、だから、そうすると症状は出ていないんですよ。そういう人がどんどんどんどん入ってくるのに止められるわけがないです、論理的に考えてもね。そういう状況でやっていて、今局長おっしゃられませんでしたが、私が内閣府からいただいた資料の中にメタスタディーがありました、二十六か国を比較したやつですね。そこで結果は出ていないですよ、差がないという結論になっていますから。それからいうと、やっぱりこれは、中で見ても、停留させて相当の抑制、そこで全部チェックするわけですから、相当のこれはもう人権侵害になっているわけですね。これは十分にお考えいただきたい、本当にこういう状況でやるべきかどうか。これはやっぱり反省すべきだと思うんですね。同じです。それが仮にその時期を遅らせることに有効だとしても、本当にピークの感染者を減らせるのかどうか、こういうことも是非考えていただきたい。これ相当の抑制になっていますので、人権に対する、そこから取り組んでいただきたいと思います。
一番今回の本題に入りますけれども、今回の法案では新型インフルエンザ対策は、免疫を獲得していない国民が大変多い、その中で全国的に蔓延するおそれがあると、こういう場合についてやるわけですけれども、その中でも、実を言うと、患者さんの病態に応じて三種類に分ける対策になっているんですね。一番重いのが、大変重篤で国民の甚大な障害があるというやつですね、影響がある。これは緊急事態宣言が出されてという措置をやるということになっています。次が、季節性インフルエンザよりは病状が重いんだけれども、緊急事態宣言を出すほどには重くないというやつ、真ん中型ですね。一番下は、季節性インフルエンザと同等又はその以下というんですね。この三つに分かれているわけでありますね。
それで、まず新型インフルエンザ対策というのは、水際対策、それから医療機関への要請、指示というのは、季節性インフルエンザよりも重いものについては全て、これ水際対策とか、あるいは医療機関への指示、要請はやることになっているんですけれども、緊急事態宣言が出されないと集会の停止の要請とかそういうものは出されないことに、発動されないことになっているんですね。これはなぜなんでしょうか。私は、基本的に、人に接触しないというのは基本的なこれ防御の問題だと思うんですけれども、それがなぜ季節性インフルエンザよりも重いインフルエンザの場合は取られないのか、この点についてちょっと伺いたいと思います。
○国務大臣(中川正春君) これは先ほどの議論でもあったように、インフルエンザ自体の高病原性あるいはパンデミック性という、そういうことが前提になって緊急宣言ということが出てくるわけだと思うんです。それ以前のものについては、でき得る限りこれまでの対処法の中で対処していくということ。先ほどの水際も含めて国民に注意を喚起しながら、インフルエンザ、いわゆる季節性のインフルエンザの対応ということになっていくと、そういう前提だと思うんです。
それがあるときに、いわゆるその病状の程度によって、これは高病原性のものであるというふうなことが確定し、またそれをもって緊急事態宣言というのを発動していくわけでありますから、その二段階の中の前段というのは、当初は季節性のインフルエンザ等々を含めた対応になっていくということだと思います。
○古川俊治君 いや、だから季節性のインフルエンザよりは重いんですよ、この場合に、段階として。だから、水際対策もやるし、医療機関への指示をして、これ別の条文ですよ、今までも医療機関への要請は事実上やっていたかもしれませんけれども、それ以上のものが置かれているわけですね。ところが、重いにもかかわらず、とても重くなければ集会、人が集まることを抑制したりというお願いはしないと言っているんですよ。
私は、先ほど申し上げました、水際対策にエビデンスはないけれども、集会停止なんか、あるいは学校閉鎖なんかは多少のエビデンスはあると。そっちの方があるのに、それはもうとても重くならないとやらないと言っているわけですね。だって、季節性インフルエンザ、少なくとも重い疾患に対してですから、やったらいいじゃないですか、それ。
○国務大臣(中川正春君) 対策本部はそれぞれつくられていくわけでありまして、知事の判断の中でそれをしてはいけないということではないというふうに思うんです。それぞれの判断の中で、いわゆる指示や要請にはなりませんけれども、お願いをする形で、あるいはこういうことが発生をしておるのでそれぞれ気を付けてくださいというような、そういう体制の中で対応をしていくということについては妨げるということではないというふうに思っております。
○政府参考人(田河慶太君) この法案でございますが、現在も、地方公共団体で三年前も様々なお願いをされた、そういうこともございます。そうしたことを踏まえまして、この法案におきましても、法案の二十四条九項という規定の中でいろんな必要な協力の要請をすることができる、そうした規定も置いているところでございます。
○古川俊治君 いや、具体的な集会の中止の要請のお願いというのは、緊急事態宣言のところに書いてあるわけですよ。四十何条でしたっけね、そこに書いてあるんですけれども、別にそこだってやらなきゃいけないと書いていないんですよ、できると書いてあるんですよ、別に。だから、それは先ほど、都道府県知事ができるというのは別に禁止しているわけじゃないんだと、それは事実上できると言っていますけれども、だったら緊急事態宣言が出された後も、できると書いてあるんだから同じじゃないですか。
私は、この元々の集会中止なんかは、別に今回対策本部をつくるような病状の、同程度だったら、それは指示はしないまでも要請ぐらいできてもいいんじゃないか、せっかく書いてあるんだからね。先ほど今、田河さんおっしゃいましたけれども、その法条と別に書き分けてあるわけでしょう、特別にこういうことを要請できるって。私、そうすると、この緊急事態宣言等が出された場合の要請というのは一体、法律的に今そのほかの場合に知事ができる要請とどう違うのか、これもまた非常に疑問になってくるんですよ。それはお答えいただけますかね。
○政府参考人(田河慶太君) 第四十五条の緊急事態宣言時における要請の関係とそれ以外の場合のお尋ねかというふうに思っております。
この四十五条の感染防止のための要請や指示につきましては、これは病原性の高い新型インフルエンザが国内で発生した場合に行われるものでございます。そのため、まず要請等を行うわけでございますが、それでもなかなか従っていただけないようなそういう場合に関しまして、更にこれは必要な当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる、そうした規定を置いている、そういう意味では二段構えになっております。それに対して、緊急事態宣言以外の場合に関してはそうした指示の規定等は置いていない、そういうふうな違いもございます。
○古川俊治君 私の質問に答えてくださいよ。だから、緊急事態宣言が出された場合の要請とそれ以外の場合の要請はどう違うのかと言っているんですよ。
○国務大臣(中川正春君) そういうこともあって、法的に、法定化するということだと思うんです。
意味合い、よく分かるんですよ。知事が、これはパンデミックになる可能性があるということの中で、緊急事態宣言の前にそれぞれ判断をして集会あるいは興行場に対してお願いをしていくと、自粛をしてくれというようなお願いをするケースは出てくるというふうに思うんですが、その場合は法律の中で規定されたような行為ではないと。しかし、緊急事態宣言後は、ここで規定しているように、要請ないしは指示という形で法定化することによって、そこのところもはっきり段階的にさせていこうという意味。そういう意味で、今回、行動計画だけではなくて、法律というものでその辺の定義も特に緊急事態宣言以降ははっきりさせていくということがいいんではないかということだと思います。
○古川俊治君 だから、その緊急事態宣言より前の、病態になる前の段階のより軽いものであっても、季節性インフルエンザ以上なんだから知事の判断で要請できてもいいじゃないですか。それ、何で、法律に書き込んでもいいでしょう、悪いわけじゃないですよね。どう思われます、大臣。
○国務大臣(中川正春君) 実は、二十四条にこういう規定があるんですが、都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる、こういう規定の中で、これは、緊急事態宣言前に対してもこれを適用をするような形でここに規定は置いてあります。
○古川俊治君 じゃ、今この二十四条に書かれているような協力の要請と四十五条に書かれている協力の要請と、どこが違うんですか。要請と書かれている言葉がどういう意味なのかを知りたいんですよ。
○政府参考人(田河慶太君) 要請を行う状況は違いますが、要請ということ自身は大きな違いはないと思います。
ただし、四十五条の場合の要請につきましては、その要請に正当な理由なく従っていただけないような場合については指示ができる、そういうふうな二段構えの構成になっている、そういう点が違うというふうに考えております。
○古川俊治君 これ、またこの委員会の中で後日もう一回質問したいと思います。私、全くこれ意味が分かりません。
これ、二つ書き分けて、後の方はより人権に対する重大な侵害をしようとしているんですね。その場合の要請が前と同じ。わざわざ書き分けてあって、それだったら前のところに入れればいいじゃないですか、それがまず一点。
それで、もう一つ、じゃ、お聞きしておきますけれども、これは、田河さんも、先日も私お聞きしましたけれども、本部がなくなるような疾患、例えば、全国的に蔓延するんでしょう、元々が、新型インフルエンザ。二〇〇九年のときの新型インフルエンザもそうでしたけれども、免疫がなくてみんなに蔓延すると、そういうものなんですけれども、季節性インフルエンザと同程度の症状だったら何の対策もしなくていいとなっているんですよ、この法案の中では。季節性インフルエンザ、従来の対策だけでいいわけでしょう。全く対策本部はつくられないんですから、元々が。だから、今までの行動計画も何もできないわけですよ。
本当にそれでいいんですか。何でそれのときに何にも取らないんですか。教えてください。
○政府参考人(田河慶太君) この政府対策本部をどういう場合に置くのか、その病状の程度が季節性インフルエンザとおおむね同程度以下であることが明らかになったときに対策本部が廃止されるので、そういうことになってしまうんではないかというお尋ねかというふうに思っております。
しかしながら、新型インフルエンザのウイルス、変異しやすく第二波の方が病原性が高くなる、そういうふうな可能性があるという特性のために、現段階の科学的知見においては、その病原性、この法案の中でも明らかになったときというふうに規定しておりますけれども、その病原性が明らかになるには多くの国民が罹患し、その症状が大量に集積されていくことも必要であると考えております。そういうためには、やはり相当の期間も必要である。そういうことから、病原性が同程度以下であるかもしれない、そういう段階において、対策本部が即座に廃止され、また対策が講じられなくなる、そういうものではないということでございます。
○古川俊治君 時間限られているから短く答弁してください、要点は分かっているはずなんだから。
これ、何回も言っていますけど、二〇〇九年のインフルエンザのときに反省やっているんですよ。あれは病状が同じです、ほとんど季節性インフルエンザと。そうすると、あのときの反省って何も生かせないことになるわけですね、この中では。だって、適用されないんだから、何にも。
先ほど申し上げたように、それで、今おっしゃいました、それまで、明らかになるまでだというから二、三か月たてば分かるんですよ。ところが、前回のインフルエンザのときだって、二、三か月の間はまだ少なくとも数万人です、罹患したのがですね。最終的に二千万人まで行っているんでしょう。それ、数万人の段階ではもう既に季節性インフルエンザと同じだということはもう分かっているんですよ、はっきり申し上げて。そうすると対策が取られなくなっちゃうわけですね、これは、この法案でいきますと。本来であれば、それから数千万人に広がるときに、軽症ではあっても何らかの対策は生かされるべきなんですよ。それがそうなっていないんですよ、この法案は。どうですか、一言。
○政府参考人(田河慶太君) 先ほどの繰り返しになりますけれども、ある程度、相当な期間はやはりその状況が明らかになったとは言えないと思います。また、仮にその病状の程度が本当に季節性インフルエンザとおおむね同程度以下であった場合、そういう場合は感染症法等において適切にまた対策も講じられていく、そういうふうに考えております。
○古川俊治君 時間がないので短くしてください。
医療について伺っておきますけれども、三十一条の規定する要請と指示の違い、端的にお答えください。
○国務大臣(中川正春君) 要請というのは、一定の行為について相手方に好意的な処理を期待するものでありまして、医療関係者は法的に医療の提供等を行うべき立場に立たされるものではないが、指示というのは、一定の行為について方針、基準、手続等を示してそれを実施されることをいい、医療関係者は法的に医療の提供等を行う義務がここで生じるということであります。ただし、罰則は設けないということであります。
○古川俊治君 医師法十九条の一項にも応招義務の規定がありますけれども、これとの関係はどうでしょうか。
○政府参考人(田河慶太君) 要請と指示、大臣が今お答えしたところでございますが、医師法に定められた応招義務、これは患者からの個別具体的な診察治療の求めがあった場合の義務でございます。そういう面では、本法案における要請、指示、これは行政の側からのものでございますが、医師法による応招義務とは制度的に別なものであるというふうに考えております。
○古川俊治君 元々政府から要請があっても、結局患者さんから要請がなきゃ医療をやれないわけですから、その関係について伺ったんですけれども。
これ、いずれにしても重要なのは、その場合に、お断りした場合に罰則は付いてないと大臣おっしゃいましたけど、民事的にはこれ損害賠償の問題になってくるんですよ。それは、確定された判例もありますし、政府から指示来ているのにそこを断れない、断った場合には、罰則はなくても後々法的責任を問われるわけですね、民事によって。
この場合、例えば他の患者さんに感染する可能性がある、我が病院ではほかの患者さんが入院していてその患者さんがインフルエンザになっては困るということでお断りした場合は、これはどうですか。
○国務大臣(中川正春君) この応招義務については医師法の問題であって、厚生労働省において基本的には判断することになるんですけれども、それが正当な事由に該当するか否かということについて、社会通念に照らして個別具体的に判断されるものということになっていくと思います。
○古川俊治君 だから今日、大臣じゃなくて厚生労働省の方をお呼びしてあるんですけど、今伺ったことと、それからほかの患者さんに手いっぱいだった、そういう場合はどうなんですか。この二つの点について。ほかの患者さんに感染する可能性がある、あるいはほかの診療に手いっぱい、通常の業務をやるので手いっぱいだったと、そういう場合にインフルエンザの患者さんを診ないことは医師法の応招義務に触れませんか触れるのか、厚生労働省の方、お願いします。
○政府参考人(篠田幸昌君) 補足して御説明申し上げたいと思います。
いろいろケースあろうかと思います。具体的に個々の事案に即して考える必要があると思いますけれども、一例を挙げて申し上げるわけでございますけれども、ただいまの、今先生おっしゃいましたように、新型インフルエンザの発症の疑いのある患者さんがある医療機関を受診すると、その場合に、例えば当該医療機関では特別の感染防止が取られていないとか、あるいは地域の医療体制としてそうした患者の医療を担う医療機関がほかに整備されているとか、そういう場合につきましては、さらに、医療従事者や他の患者さんの安全、あるいは一般市民への影響等を考慮いたしまして他の医療機関を受診するようにお勧めをする、直接の診療をしなかったという場合ございますけれども、一般的にはそういうケースであれば医師法の応招義務違反には当たらないというふうに考えられております。
○古川俊治君 ちょっとこれ議論をする時間がないんですけど、それは是非大臣の方でも、そういう場合の指示に従わなくてもこれは問題がないということはしっかり現場の判断をさせていただきたい。
それで、もう一個、三十一条四項には、その要請や指示をする場合には、医療従事者の生命及び健康の確保に関し十分に配慮し、危険が及ばないよう必要な措置を講じるという義務が課されております。これは行政側に義務があるわけですね、こういう措置をとる。それなのに、六十三条には補償の規定が置かれているんですよ、医療従事者の健康を害したり死亡した場合ってね。これは矛盾するんじゃないですか。だって、危険が及ばないように措置をする義務が課せられているのに、何で補償する規定が置かれているんですか。それは死ぬということを元々想定されているわけですよね。これは何でなんですか。
○国務大臣(中川正春君) 医療関係者への要請とか指示を行うときは、特定接種の実施、あるいは新型インフルエンザ等に関する最新の情報を可能な限り適時に提供することなどによって、当該医療関係者の生命及び健康の確保に関し十分に配慮をして、危険が及ばないような必要な措置を講じること、これを厚生労働大臣や都道府県知事に課しています。
一方、さっき御指摘のように、六十三条では要請、指示を受けた医療従事者が死亡、罹患等した場合における損害補償を規定していますけれども、これは、危険が及ばないような配慮をしたとしても新型インフルエンザ等の発症を完全に防ぐことはできないということも想定をしておかなければならないと。万が一そのような事態になったときに、死亡、罹患した場合の損害を放置することは必要な場合に十分な医療関係者の協力が得られないというおそれがあるということで、そういう補償に関する規定を設けることとしたということであります。
○古川俊治君 これは、もしそこに書くんであれば、危険が及ばないようにって書いてあるんですよ、元々がですね、三十一条四項には。だから、危険が及んじゃいけないんですよ、この措置で。これは本来であれば補償ではなくて賠償ですよね。だって、国家がそういう義務を負っているのに、これを怠っているわけですから。国家賠償にして、これは補償ですと一定の限られた金額しか支払われません、これはやっぱり医師の逸失利益ということでもちゃんと払わなきゃいけないと思うんですよ。だって、そのために、指示を受けたためにそこで働いて亡くなるわけですから、当然、一定額の低い補償金で収めようというのは私はこれはおかしいと思いますよ。それは、まさに国民のために働いてくれって強制して、それだったらやっぱりその部分はしっかりと賠償と同程度の金額が払われるべきですよ。それぐらいはお考えいただきたいですね。
この法案、更にまだまだいろんな問題、先ほど申し上げました軽度のインフルエンザのとき、あるいは季節性と重篤の間の場合、それから重篤の場合、これをしっかり整理してもう一度議論し直さなきゃいけないと思います。
それから、今までの、二〇〇九年のときのインフルエンザ対策は、まさに医療現場の中でいろんなことが日々起こっているわけですよ。その意見が全然、吸収されて次々政策に生かしていけると、そういう反省がないんですね。元々、今、この法案も、まさにパンデミックになったときに、国内でですよ、医療が満杯になったときに、どうやって医療関係者の意見をそのまま吸い上げて、すぐにそこでうまくやっていくというようなシステムは全く考慮されていないんですよね。これは大きな欠陥だと思います。これ、やっぱりそういうところを総合的に参議院では議論させていただいて、しかるべき修正が私は必要だと思っています。
時間になりましたので、以上で質問を終わらせていただきます。
○委員長(芝博一君) 以上をもちまして古川俊治君の質疑を終了いたします。
午後一時に再開することとし、休憩といたします。
午後零時二十分休憩
→午後の委員会質疑(