衆議院 予算委員会(高木委員)
平成24年3月30日(金)
○中井委員長 次に、高木陽介君。
○高木(陽)委員 公明党の高木でございます。
まず、総理にお伺いしたいと思うんです。
これは通告していないんですけれども、政治の目的、究極の目的ですね。例えば、きょう、消費税の問題で閣議決定をされました。税と社会保障の一体改革、この少子高齢社会において重要な問題だと思います。また、先ほどから石破委員も、質問に出ていた北朝鮮のミサイルの問題、これも危機管理の問題としては重要な問題。外交、安全保障もある。または教育の問題や環境の問題、またエネルギー、経済、いろいろな分野、これはやらなきゃいけないと思うんですね。でも、それは何のためにやるのか。
実は、よくこの国会の議論でも出てくる、国民の生命財産を守るという言い方をよくしていますね。もちろん、財産、生命、それぞれ守らなきゃいけないんですけれども、究極は、国民の一人一人の命をいざというときに守っていく、これが政治の役割じゃないかなと僕は思うんですが、その点について、総理のお考えを最初にお伺いしたいと思います。
○野田内閣総理大臣 国の役割、政治の役割というのは、私はすごく幅広いと思うんです。きょう御議論いただいた社会保障と税、これはまさに内政における重要テーマ。一方で、国家の独立、そして平和を守るということも国として大きな役割です。こうやって吸っている空気だって、これは政治のテーマです。飲んでいる水だって、これは政治のテーマです。ありとあらゆるものが今多くの政治のテーマでありますが、でも、一番大事なことは、これは高木委員御指摘のとおり、国民の命を守るということだと思います。
○高木(陽)委員 今総理からそういうお言葉をいただきましたので、これから首都直下型の防災の質問をしたいと思います。
これは、なかなかリアリティーがなくて、まあ何とかなるだろうだとか思ってしまう。
三・一一がありまして、かなり国民の中には防災の意識が高まってまいりました。その中にありまして、東海地震を初め三連動の地震、これも政府部内ではいろいろと検討されている。きのうも中央防災会議が開かれたというニュースを見ましたし、そこでは、九・一の防災の日には首都直下型対応の防災訓練をやろう、こういうお話も出ていたと伺いました。
その中にありまして、内閣の閣僚の中にも東京選出の方が三人いらっしゃるんですね。法務大臣と厚生労働大臣と、あと松原国家公安委員長。総理も千葉ですから、枝野大臣も埼玉で、首都直下型というのは、もう皆さん方の命にかかわる問題ですね。それ以外の閣僚の方は、東京に大体在住というか平日はおられるわけですから、そういう部分でいうと、この首都直下というのは本当に重要な問題であるなということから質問をしたいと思います。
きょうは、追及だとかそういうことじゃなくて、共有の認識を、特に委員の皆さん方もその認識を持っていただいて、どうするかという、そのスタートにしていただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。
その上で、首都直下の発生の確率ということで、これまで、三十年以内に七〇%の確率と言われておりまして、この七〇%の確率というのは、三十年後に起きるんじゃなくて、きょう起きてもおかしくないという話なわけですね。
その中で、実は先日、文科省の研究チームが、東大の地震研を中心にして、フィリピンプレートが滑り込んでいくところの位置が十キロぐらい浅い、そういうようなデータが出まして、これまで中央防災会議で想定していた震度六強が震度七になる、こういう話がありました。
六強と七のこの差というのはもう天地雲泥の差があるということで、この被害想定及び対策の見直しについてやらなきゃいけないと思うんですけれども、いつまでに取りまとめるのか、これをまず伺いたいと思います。
○中川国務大臣 東日本大震災を受けまして、御指摘のように、専門家の間でも、日本列島の応力状態が大きく変化をしてきているということ、それを受けて、この首都直下型地震も切迫感を持って対応していかなければならないということ、これが基本だと思っております。
そんな中で、まず、直下型地震の想定なんですが、これはもともと平成十七年に想定をしておりまして、マグニチュード七クラスのものを前提にやってきました。それに加えて、先ほどの、東日本の震災、そして東大チームがさっき御指摘にあったような新しい知見を出してきたということ、さらに言えば、これまで想定のなかった相模トラフ沿いで発生するマグニチュード八クラスの地震なんですが、これも今回は対象にして、もう一度この地震想定というのを見直していきたいというふうに思っております。
それと同時に、最大クラスの地震、津波に備えた対策、これも今、それぞれの対策の委員会に基づいて議論を同時並行的に始めておるということであります。
そんな中で、具体的なスケジュールなのでありますが、防災対策推進検討会議のもとに、首都直下地震対策を検討するワーキンググループというのを実は三月七日の日に構成しまして、今、先ほど申し上げた、同時並行的にやっているんですが、その中で議論していかなければならない項目、これは、首都中枢機能の継続性の確保、それから震度分布、津波高の推計、それから被害想定の実施、そして被害想定に基づいた首都直下地震に対する予防、応急、復旧、復興の各対策の方向性を決めていくということにしております。
震度分布、津波高についてはことしの秋ごろまで、それから、これに基づく被害想定は冬ごろまでにまとめるということになってきておりまして、さらに、切迫性の高い首都直下型の地震で、できる対策を早急にやっていくということの中から、首都中枢機能確保対策や帰宅困難者対策、これを中心にして、夏ごろをめどに、当面実施すべき首都直下地震対策を取りまとめていくということ、こういうスケジュールでやっております。
○中井委員長 各大臣に申し上げますが、きょうは質疑時間が三時間であります。各委員は極めて短い時間でこの三兆数千億の暫定予算の質疑をしなきゃなりません。答弁は簡略にお願いします。
○高木(陽)委員 短くお願いいたします。
それで、これからどんどん見直しをするんですけれども、これは早急にやっていただきたいということと、その上で、では、今まで震度六強の想定でいろいろと手を打ち始めてきました。地震前に何ができるのか、発生したときにどうなるのか、またどういう対応をするのか、これはやはり重要で、できる限りのことをやらなきゃいけないと思うんですけれども、その中で、まずやはり耐震化ですね。
東京湾北部地震というのが一番被害想定が厳しくて、震度六強ですよ。そのときに、まず火災で焼失するのは六十五万棟、第一撃の揺れで全壊するのは十五万棟、液状化で三万三千棟が崩れる、急傾斜地が崩れて一万二千棟が崩れる、最終的に八十五万棟がいわゆる一瞬にしてなくなっていくわけですね。
その中で、まず耐震化なんですけれども、よく言われる、昭和五十六年に建築基準法が改正されて、五十五年以前の住宅戸数、首都圏一都三県、これは国交省で聞きまして、三百七十万戸ある。五十五年以前の建物が三百七十万戸ですよ。そのうちで、耐震診断及び耐震改修、補強した戸数、これはどれぐらいあるのかわかりますか。
○前田国務大臣 御指摘のことでございます、平成十八年から平成二十二年度の五年間の間で、耐震診断を行った戸数は十一万七千戸、耐震改修を行った戸数は一万七千戸です。
○高木(陽)委員 一万七千戸。三百七十万のうちの一万戸ですよ。ということは、ほとんどされていないということですよね。それが、どこが震源地になるかにもよるんですけれども、崩れる。総理も私も同期ですから、ちょうど阪神大震災のとき一期目でしたね。あのときは、やはり震度七のところはもう本当に潰れていたわけですね。それがあるという前提。
その中で、公的な耐震助成というのが今行われています。これらも、実はやるのは自治体ですから、国がいろいろな交付金や補助金等々を出しているんですけれども、自治体によって大分ばらつきがあるんですね。例えば横浜なんかは、一律に、耐震改修するなら三百万円出す、こういう話がある、財政的な余裕もあるのかもしれませんけれども。これが区市町村単位でいきますと本当に差がある。ここら辺のところの制度をやっていない自治体もあるんですね、その耐震の補助を。
ここら辺のところは国として指導、対策をしっかり打った方がいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。
○前田国務大臣 委員御指摘のように、確かに自治体によっては耐震診断をしていないところもございますね。そういったところについては、特に昨年の震災以降ふえてきているように聞いております。
そして、御指摘の対策でございますが、地方公共団体において補助を行った場合については、そこについて社会資本整備総合交付金等により支援をしております。それからまた、税額控除もやっております。さらには、住宅の耐震のエコポイントということで、自治体を介さずに、マイホームのオーナーですか、改修をする施主のところに直接渡すというようなことで、できるだけの支援を今しているところでございます。
○高木(陽)委員 できる限りのことをやると言うんですけれども、さっき言ったように三百七十万のうちの一万戸ですから、まだ全然、規模が違う。
もう一つ、インフラ対策で、これは質問というより、ちょっと聞いていただきたいと思うんですけれども、緊急輸送道路というのがあるんですね。いざというときに、自衛隊等々または救援部隊等々がばっと入っていく。そのために道路を、この間の東日本のときには啓開活動を東北の整備局がやってくれました、そういう意味も兼ねて、そこはしっかりとあけなきゃいけない。
逆に言ったら、橋等々は崩れる可能性がありますから、緊急輸送道路に指定しているところは、その橋はもう一回チェックをしなきゃいけないということで、これは首都圏で、道路に一万一千の橋があるんです、川だとかにかかっている橋が。その緊急輸送道路用の一万一千の橋のうち、直轄及び高速道路等は八百、または自治体の管理の道路は千、これは補強してある、ちゃんとチェックをしている。まだ一割なんですね。だから、それが崩れてしまったら、幾ら応援部隊が入ろうと思っても入ってこれないという現状がある。
もっと言いますと、緊急輸送道路で現地まで行ったとします。最も大切なのは、例えば倒壊をした家屋から人を救出する。そのときに、例えば自衛隊が行きました、または消防が行きました。行ったはいいんだけれども、緊急輸送道路でそこまで行くんですけれども、ある一定の地域はもう市町村道ばかりですよ、路地だとか。そういうところの橋を含めますと、二万二千あるんです。これは各自治体管理が大半ですから、ここはほとんどチェックされていない。
それが崩れる可能性があったら、幾ら自衛隊が行っても、この間の東日本大震災のときは、自衛隊が仮設の橋をつくったところもありました。ただ、首都圏でそういうのが起きた場合に、七十二時間で倒壊をしているところから救出するのは、命の分かれ目ですから、そういったことができるかどうかを考えた場合には、こういう古いインフラを総点検して、これは緊急輸送道路だけじゃなくて、自治体も含めてやらせて、その上で、直下型の地震に早急に対応するべきだと思うんです。
これは、ある意味でいうと公共事業になっちゃうんですね。公共事業で、コンクリートから人へということで政権交代が行われましたけれども、二年半たって、総理も大分そういう言い方をされなくなった。やはり必要なところにつけなきゃいけないという認識になっていただいているとは思うんですけれども、ここで、何度か予算委員会、参議院の予算委員会でも我が党が主張しました防災・減災ニューディールということで、やはり命を守るところには集中的に投資をしてやらなければいけないと思うんです。
この必要性について、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
○野田内閣総理大臣 確かに、政権交代した後に最初の予算編成をしたときに、公共事業関係費を大きく削りました。その影響もありまして、最初、例えば平成二十一年の当初予算が七・一兆だったのが平成二十四年度で四・六兆という意味では、額としては減ってきています。
ただし、高木委員御指摘のとおり、命にかかわるものについては、これはやはりやらなければいけないということは、特に、阪神・淡路の事例もありましたけれども、直近の大地震によっても改めて痛感をしたことでございますので、真に必要なインフラ整備はこれからしっかりやっていきたいと思いますし、防災・減災ニューディール、御党からの御提起、それを参考にさせていただきながら、平成二十三年度の補正予算の際に生かしていただいたり、二十四年度予算に生かしたりさせていただいておりますので、これからも積極的な御提起をお願いしたいというふうに思います。
○高木(陽)委員 積極的なその御発言、感謝申し上げたいと思います。
今度は、地震が発生したとき、これはなかなかイメージできないと思うんですけれども、今回の首都直下型というのはまず火災が起きるだろう。関東大震災では十万人が亡くなりました。ほとんどは火災です。そのときに、同時多発で火災が起きるわけですね。
特に、東京でいうと、環状六号線、七号線、八号線の木造密集地域、このあたりは大体燃えるだろうと言われている。そのときに、同時多発で火災になったときに、消防、それぞれが消火に駆けつけると思うんですけれども、普通は、一つの消防署で一遍に二つ三つなんて火災はないわけですね。火災が起きて、消防署を挙げてがっと行くということはあるんですけれども、同時多発に起きて大規模火災になったときにどのように対応するのか、これをちょっとお伺いしたいと思うんです。
○川端国務大臣 お答えいたします。
通常の火災は、言われたように消防本部が対応する、あるいはもう少し大きいのだと応援協定を結んでいるところで対応するんですが、きょうの御議論は、首都直下型地震ということだと思います。
これに対して、東海地震、それから東南海、南海、このような大規模の部分に関しましては、被害想定をいたしまして、それに対して、いわゆる都道府県域を越えて出動する緊急消防援助隊の円滑な部隊運用のためにアクションプランをつくっております。
応援が必要とされているのが埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県に対して、被災状況に応じて段階を分けまして、被災都県を除き全国から応援部隊が投入されて消火活動に当たる、そしてそれも、担当の県も決めておりまして、段階に応じてそこへ出動するということになっております。
同時に、二十一年の三月に、緊急消防援助隊の登録隊数を今までの四千から四千五百隊にふやしました。その中で、消火部隊に対しては、首都直下型地震への対応強化ということで百隊増隊をいたしまして、体制整備にも努めているところでございます。
○高木(陽)委員 周辺から応援部隊が来るというんですが、先ほど言ったように、緊急の輸送道路が開通していればいいですね。開通していないと、東京または一都三県に入ってくることもできない。
その上に、問題は、燃えているところに本当に行けるかどうか。多分、東京の場合だと、昼間また夕方等々あった場合には、幹線道路には車があります。基本的に自家用車はそのまま、動かしちゃいけませんから、そこでもう渋滞でとまっちゃうんですね。三・一一の帰宅難民のときにも、幹線道路があれだけの大渋滞になりました。ただ、あのときは、被害がなくて大渋滞ですよ。今回は、電柱も倒れるでしょう、火災も起きているでしょう。そんなときに消防車がそこまで行けるのか。
例えば、先ほど言った、道路が不通、緊急輸送道路で何とかその地区まで行ったけれども、燃えているその場所は区市町村道の橋がおっこちていて消防車が行けない、こういう場面もあるでしょう。そういうようなときのことも考えて、やはりあらゆる想定をしなきゃいけないんじゃないかなと思うんですね。
各自治体消防ということもありますけれども、これは、神奈川、千葉、埼玉というのは、自治体消防、各市消防本部なんですね。東京は東京消防庁というでっかいところが司令塔になるんですけれども、一都三県の三県の方、ここら辺は、例えば総理の船橋で火災が起きた。船橋市消防本部が動いているんだけれども、ここはもう人手が足りない、消防車も足りない。隣の市川やその周辺のところも燃えている。応援をもらうにしても応援をもらえない。市消防本部ですから、それはどこが司令塔になるのかということをちょっとお伺いしたいと思うんです。
○川端国務大臣 市町村が基本的には消防の責任者でございますので、基本的には、普通の消防活動は各市町村長が司令塔になっております。各応援部隊が来たときには、同様の応援を受けた市町村長の指揮下に活動で入るということであります。
ただ、緊急消防援助隊が出動する場合というのははるかに大規模でございますので、その出動計画においては、被災地の市町村長の指揮を支援するために、大都市消防本部から登録されている指揮支援隊が被災市町村に出動するということになっております。
また、被災都道府県の知事は、被災市町村が複数ある場合の応援部隊の配置など総合的な調整を行うために、みずからを本部長とする消防応援活動調整本部を設置することとなっておりまして、緊急消防援助隊からは指揮支援部隊が出動し、本部員として活動することになるということであります。
市町村単位の場合はそこにそういう機能がありますが、複数の市町村にわたっての応援は、被災都道府県知事のもとにこういう組織をつくるということで決めておりまして、この仕組みは東日本大震災の際にも十分に機能し、効果を上げたものと考えております。
○高木(陽)委員 東日本大震災のときは、各市町村が壊滅したんですね、あれは津波でしたけれども。そういった部分では、情報さえとれない。例えば、宮城の知事が県下の市町村長と、首長さんと連携が最終的に全員とれたのは三日後だった。火事というのはその場で起きているわけです。三日間延焼したら大変なことになる。そういうことを考えた想定をしないといけないのじゃないかなというふうに指摘をしておきたいと思います。
もう一つは倒壊家屋ですね。中川大臣、これは答えなくていいです、認識をちょっと共有したいと思うんですけれども、東京湾北部地震で全壊をする。さっき、いわゆる揺れで十五万棟、液状化で三万三千棟、急傾斜地の崩壊で一万二千棟、十九万五千棟が崩れる。震度七だったらもっと多いでしょうね。
東京は、この間も発表されましたけれども、一世帯当たり大体一・九人、二人住んでいる。そうなりますと、約四十万人の人がその家屋の中にいるわけですね。これが、時間にもよりますけれども、寝ているときに起きてもし全壊した場合、震度七の揺れは十秒ぐらいでもう全壊しちゃうんですよ。抜け出せない。ということは、四十万人が生き埋めになっているんです。
そのときに、では誰がそれを引きずり出すか。消防は、十二時間後に四千七百五十人がそのために動く。四十八時間後に八千六十人です。警察も四万八千人。自衛隊が行く。自衛隊も機動力がありますから、当初は二万二千人、最終的には十一万まで行くということになりますけれども、十一万人がそこに入るには何日かかかる。
さっき言った全壊をしている人、七十二時間が限界点です。そのときに四十万人が生き埋めになるんです、東京湾北部で。震度七だったら四十万人どころじゃないですよ。桁が一つ上に上がるでしょう。百万人単位ですよ。さあ、百万人の命をどうするかという話なんです。だから、さっきの耐震化も、自治体に任せて、メニューがいっぱいありますからどうぞなんという悠長なことをやっていたら死ぬわけですね。
こういうことを、もっと政治がいわゆる想像力をたくましくしなきゃいけない。この間の三・一一みたいな想定外なんて絶対言っちゃいけないんですよ。最悪のパターンを想定しながら、では今できることは何なのかということを考えなきゃいけない。四十万人が生き埋めになるんですよ、数字上は。それはもっと少ないかもしれない、少ない方がいいんですけれども。
もう一つ、鉄道の対応を言いましょう。
ラッシュ時の運行で車両がどれぐらいあるか、乗車数、何人ぐらい乗っているかというのを、これは鉄道局に聞いたんですけれども、わからない。朝七時、三千五百万人の首都圏に住んでいる人が、働いている人、また通学する人、だあっと乗っている。実は、JRに確認したところ、これも正確な数字じゃないんですが、朝七時台は百八十万人が車両に乗っているんです。東京メトロに聞くと、大体五十万人乗っている。さらに民鉄各社、これは確認していないんですけれども、それも入れますと、大体三百万人が朝のラッシュ時に車両に乗っているんですね。それが、震度七が一気に来た場合どうなるか。
実は、阪神大震災は、震度七のときに、あのときは五時四十六分でした。ほとんど電車は走っていなかったんだけれども、十四本中十三本の列車が脱線したんですよ。九〇%以上です。震度六強のエリアでは、十三本中三本が脱線、二三%。東京湾北部、今、震度六で想定しますけれども、この脱線の想定というのはなされていますか。
○中川国務大臣 これは、先ほど申し上げた平成十七年の予想というのがあるんですけれども、朝八時台に東京湾北部地震が発生した場合に、脱線事故によって、死者三百人、それから重傷者を含む負傷者が約一万二千二百人発生するというふうに見込まれております。
しかし、定性的には、鉄道や道路をまたぐ橋梁が被災、落下したというようなことだとか、あるいは運行中の列車や車両が被災して死傷者が増加するというような、そんな要因も加えていくと、これよりも増加をしていくというふうな推定がされております。
○高木(陽)委員 今の話でいきますと、一万人がけがをするだろう。三百万人が乗っている、ラッシュアワーです。
JRにも聞いたんですけれども、落橋、いわゆる橋が崩れたり、この補強はかなりやっているんです。ところが、御茶ノ水駅というのは崖がありますね、駅のところ。あれは実は関東大震災で崩れているんです。しかも、聞いたら、あとは、盛り土の土手になっているような駅がありますね。この駅も崩れるんです。そういう想定というのはなかなかされていない。
さらには、例えば時速百キロで走っている、脱線をする。百キロで走っているんですよ、ただ脱線じゃなくて。しかも、カーブだったら福知山線みたいになりますよ。そこには、一つの車両でラッシュアワー時は三千人が乗っているんです。三千人が一遍に脱線する、または転覆する。だから、一万人ぐらいのけがじゃないんですよ、想定としては。まあ時間にもよりますけれども。
そういうときに、では、乗客三百万人、JRに聞きました、メトロにも聞きました、とまると駅でおろすんですね。ところが、地震が来たらその場でとまりますから、駅でとまらない。そのとき、停電になるでしょう。もし安全だったら、停電じゃなければ駅まで運ぶんですけれども、それは多分できないから、その場でおろすんです。
ところが、車両のドアをあけますね、緊急にドアをあける。そうすると、ホームだったらそのままおりますけれども、線路におりるときは階段でおりますね。その階段は車両に一つしかついていないんですよ。満杯の電車の中で、しかも、高齢者や障害者や女性だとかは飛びおりることもできない。それだけでも、けが人が出ますね。
さらに問題は、では、それを何とかおろしました、駅まで連れていきました。三百万人が駅に滞留するんです。ラッシュ時だと、三百万人がさらに乗ろうとして駅に来ているんです。倍の人数ですね。これをどこに避難させるのか。今、駅と自治体がその滞留者をどうするかと検討し始めたわけです。でも、それは、駅にその三百万人もしくは倍の六百万人をずっと置いておくことはできませんよ。しかも、火災が迫ってくるかもしれない。
では、そういうとき、どこに避難をさせるか、これはどうなっていますか。
○中川国務大臣 そういう問題意識を持って検討しなければいけないということで、民間も含めた官民連携の、首都直下地震帰宅困難者等対策協議会というのを立ち上げました。
そこで今、先ほどお話しになられた六百五十万人を想定した議論をしているんですけれども、基本的には、むやみに移動させないということ、この基本原則を徹底していくということ。
それから、一斉帰宅抑制の基本方針をまとめていって、三日分の物資の備蓄を民間を含めてやっていくということ。
それから、あと、どこに導くかということ。一旦、さっきのお話のような状況になったときなんですが、これは、民間施設等も含めて、事前にそうした一時滞在施設としての協定を結んでいくということで、一つ一つ具体的に進めていきたいというふうに思っております。
○高木(陽)委員 今、滞留者という話がありました。
今、駅のところから言いましたけれども、自宅にいる、もしくは会社にいる等々はいいですけれども、例えば、電車に乗っていたり、移動していたり、買い物していたりという人が大体一千万人前後いるんですよ。一千万人をどうするかという話なんですね。
さらに言いますと、そういうことを今協議しているけれども、これも早急にやってもらいたいし、多分、話し合っても、例えば十万人、二十万人は何とかなるでしょう、または百万人ぐらいは何とかなるでしょう、残る九百万人は何とかならないんですよ。これが現実。
もう一つは避難所。これも内閣府防災担当に聞いたんです。都内の避難所というのはどれぐらいあって、収容人数はどれぐらいか、備蓄はどれぐらいあるのかと聞いた。知らない。把握していないんですよ。これは自治体の問題だということになっているんです。
縦割り行政だとか、または、国、いわゆる都道府県、市町村、それぞれがもっと連携をとらなきゃいけないんじゃないかなということでちょっと申し上げます。
東京都内、これは都庁に聞きました。
避難所の数は二千六百六十一、これは島を除きます。最大の収容人数は三百九十五万人なんですね。想定被害による避難所の生活者数、東京湾北部の場合は二百六十万人がそこにいるでしょう。三百九十九万人が避難者になるけれども、このうち、避難所以外で生活すると考える者も存在するため、二百六十万人と一応想定しているんです。
では、食料はどうなのか。一日三食、二百六十万人ですから、大体七百八十万食。一千万食近くですね。ところが、備蓄の食料は一千五百万なんですよ。二日分あるかどうか。三日何とか持ちこたえるというんですけれども、では、あとはどこから調達するかといいますと、例えば東日本のときは、三十五万人が避難所にいたんです。一日百万食ですよ。その百万食が避難所に届かなかったんです、三日間ぐらい。届いたところもある、県庁まで来たけれどもその先は行かない、そんなパターンですよ。しかも、自治体はかなり被災しているから、その避難所に対していろいろと手が打てない。では、周辺から来るか、西日本から来るかというと、多分、混乱しているから来ない。例えば東京のコンビニを見てみても、これは三・一一のときに一斉になくなりましたよ。そうでしょう。
そう考えると、日本全国でそういうのがなくなったときに、それを補給できるか。避難所に移った二百六十万人は家がないわけですから、その人たちは、一週間じゃない、一カ月もしくは二カ月、三カ月いるわけですから、その人たちの食料を当面毎日一千万食調達できるシステムをつくっておかなきゃいけないんです。
どこかから調達するじゃないんです。そういうことまで考えるのがまさに危機管理だと思うんですね。ところが、それは考えられていない。これは危ないことですよ。暴動が起きますよ、下手したら。東日本大震災で、日本はいい国だとなった。でも、そういう状況になったらどうなるかわからない。だからやってもらいたいということなんですが……(発言する者あり)いいです、ちょっと待って。もう時間なので。これは、共通認識で、責めているんじゃなくて、そういうのをやりましょうという話なんです。
もう一つは、官邸の備蓄食料というのはどれぐらいあるかと聞いたんです。これも、これは危機管理上秘密ですと。僕は、そんなにないと思うんです。どこかから買ってくればいいぐらいな感覚なんじゃないかなと思う。
官房長官、これはどうですか。
○藤村国務大臣 中央防災会議では、首都直下型地震に対して、一応三日間の備蓄をすべしということは決めていただいています。
首相官邸におきましても、具体的に今数字は申しませんが、それを上回る相当の備蓄をきちんとしている。そういうことがやはり備えである、そのように考えております。
○高木(陽)委員 例えば、総理がいざというときに指揮するわけですよ。御飯を食べないで三日間、一週間指揮できないですからね。そういうのもしっかり考えてやってもらいたいということ。
もう時間も参りましたので、これも一つ指摘だけしておきます。瓦れきの処理。
東京湾北部で、八十五万棟が焼失、全壊した場合の瓦れきが九千六百万トンなんですよ。今回は二千万トン。それの四倍、五倍、これができるわけですから、どこで処理するんだと。
そのときに考えようじゃだめですよ。今でさえ広域処理が、あれは放射能の問題もあって大変なんですけれども、首都圏で、山下公園は関東大震災でつくったと言いますけれども、九千六百万トン、一億トンです。これをどうするか。これも今からいろいろなシミュレーションをしながら考えておいていただきたいということ。
最後に、これはもう首都機能移転をした方がいいんじゃないかな、このために。何でか。三千五百万人がこの地域にいること自体が多過ぎるんですよ。これからずっと中央防災会議で内閣を挙げてやってもらうんですけれども、やってもらって、いろいろと手を打つ。でも、これは、三千五百万人、そしてそのうちの、今想定は一万一千人死ぬと言われているけれども、もっと死にますよ。関東大震災並みに十万人が一遍に亡くなるかもしれない。
そういうことを考えた場合に、やはり人口を減らすということを含めて、この首都機能移転も考えた方がいいのではないかな。今までも議論されてきましたけれども、喫緊の課題だということを御指摘申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○中井委員長 これにて高木君の質疑は終了いたしました。
○高木(陽)委員 公明党の高木でございます。
まず、総理にお伺いしたいと思うんです。
これは通告していないんですけれども、政治の目的、究極の目的ですね。例えば、きょう、消費税の問題で閣議決定をされました。税と社会保障の一体改革、この少子高齢社会において重要な問題だと思います。また、先ほどから石破委員も、質問に出ていた北朝鮮のミサイルの問題、これも危機管理の問題としては重要な問題。外交、安全保障もある。または教育の問題や環境の問題、またエネルギー、経済、いろいろな分野、これはやらなきゃいけないと思うんですね。でも、それは何のためにやるのか。
実は、よくこの国会の議論でも出てくる、国民の生命財産を守るという言い方をよくしていますね。もちろん、財産、生命、それぞれ守らなきゃいけないんですけれども、究極は、国民の一人一人の命をいざというときに守っていく、これが政治の役割じゃないかなと僕は思うんですが、その点について、総理のお考えを最初にお伺いしたいと思います。
○野田内閣総理大臣 国の役割、政治の役割というのは、私はすごく幅広いと思うんです。きょう御議論いただいた社会保障と税、これはまさに内政における重要テーマ。一方で、国家の独立、そして平和を守るということも国として大きな役割です。こうやって吸っている空気だって、これは政治のテーマです。飲んでいる水だって、これは政治のテーマです。ありとあらゆるものが今多くの政治のテーマでありますが、でも、一番大事なことは、これは高木委員御指摘のとおり、国民の命を守るということだと思います。
○高木(陽)委員 今総理からそういうお言葉をいただきましたので、これから首都直下型の防災の質問をしたいと思います。
これは、なかなかリアリティーがなくて、まあ何とかなるだろうだとか思ってしまう。
三・一一がありまして、かなり国民の中には防災の意識が高まってまいりました。その中にありまして、東海地震を初め三連動の地震、これも政府部内ではいろいろと検討されている。きのうも中央防災会議が開かれたというニュースを見ましたし、そこでは、九・一の防災の日には首都直下型対応の防災訓練をやろう、こういうお話も出ていたと伺いました。
その中にありまして、内閣の閣僚の中にも東京選出の方が三人いらっしゃるんですね。法務大臣と厚生労働大臣と、あと松原国家公安委員長。総理も千葉ですから、枝野大臣も埼玉で、首都直下型というのは、もう皆さん方の命にかかわる問題ですね。それ以外の閣僚の方は、東京に大体在住というか平日はおられるわけですから、そういう部分でいうと、この首都直下というのは本当に重要な問題であるなということから質問をしたいと思います。
きょうは、追及だとかそういうことじゃなくて、共有の認識を、特に委員の皆さん方もその認識を持っていただいて、どうするかという、そのスタートにしていただければなと思いますので、よろしくお願いいたします。
その上で、首都直下の発生の確率ということで、これまで、三十年以内に七〇%の確率と言われておりまして、この七〇%の確率というのは、三十年後に起きるんじゃなくて、きょう起きてもおかしくないという話なわけですね。
その中で、実は先日、文科省の研究チームが、東大の地震研を中心にして、フィリピンプレートが滑り込んでいくところの位置が十キロぐらい浅い、そういうようなデータが出まして、これまで中央防災会議で想定していた震度六強が震度七になる、こういう話がありました。
六強と七のこの差というのはもう天地雲泥の差があるということで、この被害想定及び対策の見直しについてやらなきゃいけないと思うんですけれども、いつまでに取りまとめるのか、これをまず伺いたいと思います。
○中川国務大臣 東日本大震災を受けまして、御指摘のように、専門家の間でも、日本列島の応力状態が大きく変化をしてきているということ、それを受けて、この首都直下型地震も切迫感を持って対応していかなければならないということ、これが基本だと思っております。
そんな中で、まず、直下型地震の想定なんですが、これはもともと平成十七年に想定をしておりまして、マグニチュード七クラスのものを前提にやってきました。それに加えて、先ほどの、東日本の震災、そして東大チームがさっき御指摘にあったような新しい知見を出してきたということ、さらに言えば、これまで想定のなかった相模トラフ沿いで発生するマグニチュード八クラスの地震なんですが、これも今回は対象にして、もう一度この地震想定というのを見直していきたいというふうに思っております。
それと同時に、最大クラスの地震、津波に備えた対策、これも今、それぞれの対策の委員会に基づいて議論を同時並行的に始めておるということであります。
そんな中で、具体的なスケジュールなのでありますが、防災対策推進検討会議のもとに、首都直下地震対策を検討するワーキンググループというのを実は三月七日の日に構成しまして、今、先ほど申し上げた、同時並行的にやっているんですが、その中で議論していかなければならない項目、これは、首都中枢機能の継続性の確保、それから震度分布、津波高の推計、それから被害想定の実施、そして被害想定に基づいた首都直下地震に対する予防、応急、復旧、復興の各対策の方向性を決めていくということにしております。
震度分布、津波高についてはことしの秋ごろまで、それから、これに基づく被害想定は冬ごろまでにまとめるということになってきておりまして、さらに、切迫性の高い首都直下型の地震で、できる対策を早急にやっていくということの中から、首都中枢機能確保対策や帰宅困難者対策、これを中心にして、夏ごろをめどに、当面実施すべき首都直下地震対策を取りまとめていくということ、こういうスケジュールでやっております。
○中井委員長 各大臣に申し上げますが、きょうは質疑時間が三時間であります。各委員は極めて短い時間でこの三兆数千億の暫定予算の質疑をしなきゃなりません。答弁は簡略にお願いします。
○高木(陽)委員 短くお願いいたします。
それで、これからどんどん見直しをするんですけれども、これは早急にやっていただきたいということと、その上で、では、今まで震度六強の想定でいろいろと手を打ち始めてきました。地震前に何ができるのか、発生したときにどうなるのか、またどういう対応をするのか、これはやはり重要で、できる限りのことをやらなきゃいけないと思うんですけれども、その中で、まずやはり耐震化ですね。
東京湾北部地震というのが一番被害想定が厳しくて、震度六強ですよ。そのときに、まず火災で焼失するのは六十五万棟、第一撃の揺れで全壊するのは十五万棟、液状化で三万三千棟が崩れる、急傾斜地が崩れて一万二千棟が崩れる、最終的に八十五万棟がいわゆる一瞬にしてなくなっていくわけですね。
その中で、まず耐震化なんですけれども、よく言われる、昭和五十六年に建築基準法が改正されて、五十五年以前の住宅戸数、首都圏一都三県、これは国交省で聞きまして、三百七十万戸ある。五十五年以前の建物が三百七十万戸ですよ。そのうちで、耐震診断及び耐震改修、補強した戸数、これはどれぐらいあるのかわかりますか。
○前田国務大臣 御指摘のことでございます、平成十八年から平成二十二年度の五年間の間で、耐震診断を行った戸数は十一万七千戸、耐震改修を行った戸数は一万七千戸です。
○高木(陽)委員 一万七千戸。三百七十万のうちの一万戸ですよ。ということは、ほとんどされていないということですよね。それが、どこが震源地になるかにもよるんですけれども、崩れる。総理も私も同期ですから、ちょうど阪神大震災のとき一期目でしたね。あのときは、やはり震度七のところはもう本当に潰れていたわけですね。それがあるという前提。
その中で、公的な耐震助成というのが今行われています。これらも、実はやるのは自治体ですから、国がいろいろな交付金や補助金等々を出しているんですけれども、自治体によって大分ばらつきがあるんですね。例えば横浜なんかは、一律に、耐震改修するなら三百万円出す、こういう話がある、財政的な余裕もあるのかもしれませんけれども。これが区市町村単位でいきますと本当に差がある。ここら辺のところの制度をやっていない自治体もあるんですね、その耐震の補助を。
ここら辺のところは国として指導、対策をしっかり打った方がいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょう。
○前田国務大臣 委員御指摘のように、確かに自治体によっては耐震診断をしていないところもございますね。そういったところについては、特に昨年の震災以降ふえてきているように聞いております。
そして、御指摘の対策でございますが、地方公共団体において補助を行った場合については、そこについて社会資本整備総合交付金等により支援をしております。それからまた、税額控除もやっております。さらには、住宅の耐震のエコポイントということで、自治体を介さずに、マイホームのオーナーですか、改修をする施主のところに直接渡すというようなことで、できるだけの支援を今しているところでございます。
○高木(陽)委員 できる限りのことをやると言うんですけれども、さっき言ったように三百七十万のうちの一万戸ですから、まだ全然、規模が違う。
もう一つ、インフラ対策で、これは質問というより、ちょっと聞いていただきたいと思うんですけれども、緊急輸送道路というのがあるんですね。いざというときに、自衛隊等々または救援部隊等々がばっと入っていく。そのために道路を、この間の東日本のときには啓開活動を東北の整備局がやってくれました、そういう意味も兼ねて、そこはしっかりとあけなきゃいけない。
逆に言ったら、橋等々は崩れる可能性がありますから、緊急輸送道路に指定しているところは、その橋はもう一回チェックをしなきゃいけないということで、これは首都圏で、道路に一万一千の橋があるんです、川だとかにかかっている橋が。その緊急輸送道路用の一万一千の橋のうち、直轄及び高速道路等は八百、または自治体の管理の道路は千、これは補強してある、ちゃんとチェックをしている。まだ一割なんですね。だから、それが崩れてしまったら、幾ら応援部隊が入ろうと思っても入ってこれないという現状がある。
もっと言いますと、緊急輸送道路で現地まで行ったとします。最も大切なのは、例えば倒壊をした家屋から人を救出する。そのときに、例えば自衛隊が行きました、または消防が行きました。行ったはいいんだけれども、緊急輸送道路でそこまで行くんですけれども、ある一定の地域はもう市町村道ばかりですよ、路地だとか。そういうところの橋を含めますと、二万二千あるんです。これは各自治体管理が大半ですから、ここはほとんどチェックされていない。
それが崩れる可能性があったら、幾ら自衛隊が行っても、この間の東日本大震災のときは、自衛隊が仮設の橋をつくったところもありました。ただ、首都圏でそういうのが起きた場合に、七十二時間で倒壊をしているところから救出するのは、命の分かれ目ですから、そういったことができるかどうかを考えた場合には、こういう古いインフラを総点検して、これは緊急輸送道路だけじゃなくて、自治体も含めてやらせて、その上で、直下型の地震に早急に対応するべきだと思うんです。
これは、ある意味でいうと公共事業になっちゃうんですね。公共事業で、コンクリートから人へということで政権交代が行われましたけれども、二年半たって、総理も大分そういう言い方をされなくなった。やはり必要なところにつけなきゃいけないという認識になっていただいているとは思うんですけれども、ここで、何度か予算委員会、参議院の予算委員会でも我が党が主張しました防災・減災ニューディールということで、やはり命を守るところには集中的に投資をしてやらなければいけないと思うんです。
この必要性について、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
○野田内閣総理大臣 確かに、政権交代した後に最初の予算編成をしたときに、公共事業関係費を大きく削りました。その影響もありまして、最初、例えば平成二十一年の当初予算が七・一兆だったのが平成二十四年度で四・六兆という意味では、額としては減ってきています。
ただし、高木委員御指摘のとおり、命にかかわるものについては、これはやはりやらなければいけないということは、特に、阪神・淡路の事例もありましたけれども、直近の大地震によっても改めて痛感をしたことでございますので、真に必要なインフラ整備はこれからしっかりやっていきたいと思いますし、防災・減災ニューディール、御党からの御提起、それを参考にさせていただきながら、平成二十三年度の補正予算の際に生かしていただいたり、二十四年度予算に生かしたりさせていただいておりますので、これからも積極的な御提起をお願いしたいというふうに思います。
○高木(陽)委員 積極的なその御発言、感謝申し上げたいと思います。
今度は、地震が発生したとき、これはなかなかイメージできないと思うんですけれども、今回の首都直下型というのはまず火災が起きるだろう。関東大震災では十万人が亡くなりました。ほとんどは火災です。そのときに、同時多発で火災が起きるわけですね。
特に、東京でいうと、環状六号線、七号線、八号線の木造密集地域、このあたりは大体燃えるだろうと言われている。そのときに、同時多発で火災になったときに、消防、それぞれが消火に駆けつけると思うんですけれども、普通は、一つの消防署で一遍に二つ三つなんて火災はないわけですね。火災が起きて、消防署を挙げてがっと行くということはあるんですけれども、同時多発に起きて大規模火災になったときにどのように対応するのか、これをちょっとお伺いしたいと思うんです。
○川端国務大臣 お答えいたします。
通常の火災は、言われたように消防本部が対応する、あるいはもう少し大きいのだと応援協定を結んでいるところで対応するんですが、きょうの御議論は、首都直下型地震ということだと思います。
これに対して、東海地震、それから東南海、南海、このような大規模の部分に関しましては、被害想定をいたしまして、それに対して、いわゆる都道府県域を越えて出動する緊急消防援助隊の円滑な部隊運用のためにアクションプランをつくっております。
応援が必要とされているのが埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県に対して、被災状況に応じて段階を分けまして、被災都県を除き全国から応援部隊が投入されて消火活動に当たる、そしてそれも、担当の県も決めておりまして、段階に応じてそこへ出動するということになっております。
同時に、二十一年の三月に、緊急消防援助隊の登録隊数を今までの四千から四千五百隊にふやしました。その中で、消火部隊に対しては、首都直下型地震への対応強化ということで百隊増隊をいたしまして、体制整備にも努めているところでございます。
○高木(陽)委員 周辺から応援部隊が来るというんですが、先ほど言ったように、緊急の輸送道路が開通していればいいですね。開通していないと、東京または一都三県に入ってくることもできない。
その上に、問題は、燃えているところに本当に行けるかどうか。多分、東京の場合だと、昼間また夕方等々あった場合には、幹線道路には車があります。基本的に自家用車はそのまま、動かしちゃいけませんから、そこでもう渋滞でとまっちゃうんですね。三・一一の帰宅難民のときにも、幹線道路があれだけの大渋滞になりました。ただ、あのときは、被害がなくて大渋滞ですよ。今回は、電柱も倒れるでしょう、火災も起きているでしょう。そんなときに消防車がそこまで行けるのか。
例えば、先ほど言った、道路が不通、緊急輸送道路で何とかその地区まで行ったけれども、燃えているその場所は区市町村道の橋がおっこちていて消防車が行けない、こういう場面もあるでしょう。そういうようなときのことも考えて、やはりあらゆる想定をしなきゃいけないんじゃないかなと思うんですね。
各自治体消防ということもありますけれども、これは、神奈川、千葉、埼玉というのは、自治体消防、各市消防本部なんですね。東京は東京消防庁というでっかいところが司令塔になるんですけれども、一都三県の三県の方、ここら辺は、例えば総理の船橋で火災が起きた。船橋市消防本部が動いているんだけれども、ここはもう人手が足りない、消防車も足りない。隣の市川やその周辺のところも燃えている。応援をもらうにしても応援をもらえない。市消防本部ですから、それはどこが司令塔になるのかということをちょっとお伺いしたいと思うんです。
○川端国務大臣 市町村が基本的には消防の責任者でございますので、基本的には、普通の消防活動は各市町村長が司令塔になっております。各応援部隊が来たときには、同様の応援を受けた市町村長の指揮下に活動で入るということであります。
ただ、緊急消防援助隊が出動する場合というのははるかに大規模でございますので、その出動計画においては、被災地の市町村長の指揮を支援するために、大都市消防本部から登録されている指揮支援隊が被災市町村に出動するということになっております。
また、被災都道府県の知事は、被災市町村が複数ある場合の応援部隊の配置など総合的な調整を行うために、みずからを本部長とする消防応援活動調整本部を設置することとなっておりまして、緊急消防援助隊からは指揮支援部隊が出動し、本部員として活動することになるということであります。
市町村単位の場合はそこにそういう機能がありますが、複数の市町村にわたっての応援は、被災都道府県知事のもとにこういう組織をつくるということで決めておりまして、この仕組みは東日本大震災の際にも十分に機能し、効果を上げたものと考えております。
○高木(陽)委員 東日本大震災のときは、各市町村が壊滅したんですね、あれは津波でしたけれども。そういった部分では、情報さえとれない。例えば、宮城の知事が県下の市町村長と、首長さんと連携が最終的に全員とれたのは三日後だった。火事というのはその場で起きているわけです。三日間延焼したら大変なことになる。そういうことを考えた想定をしないといけないのじゃないかなというふうに指摘をしておきたいと思います。
もう一つは倒壊家屋ですね。中川大臣、これは答えなくていいです、認識をちょっと共有したいと思うんですけれども、東京湾北部地震で全壊をする。さっき、いわゆる揺れで十五万棟、液状化で三万三千棟、急傾斜地の崩壊で一万二千棟、十九万五千棟が崩れる。震度七だったらもっと多いでしょうね。
東京は、この間も発表されましたけれども、一世帯当たり大体一・九人、二人住んでいる。そうなりますと、約四十万人の人がその家屋の中にいるわけですね。これが、時間にもよりますけれども、寝ているときに起きてもし全壊した場合、震度七の揺れは十秒ぐらいでもう全壊しちゃうんですよ。抜け出せない。ということは、四十万人が生き埋めになっているんです。
そのときに、では誰がそれを引きずり出すか。消防は、十二時間後に四千七百五十人がそのために動く。四十八時間後に八千六十人です。警察も四万八千人。自衛隊が行く。自衛隊も機動力がありますから、当初は二万二千人、最終的には十一万まで行くということになりますけれども、十一万人がそこに入るには何日かかかる。
さっき言った全壊をしている人、七十二時間が限界点です。そのときに四十万人が生き埋めになるんです、東京湾北部で。震度七だったら四十万人どころじゃないですよ。桁が一つ上に上がるでしょう。百万人単位ですよ。さあ、百万人の命をどうするかという話なんです。だから、さっきの耐震化も、自治体に任せて、メニューがいっぱいありますからどうぞなんという悠長なことをやっていたら死ぬわけですね。
こういうことを、もっと政治がいわゆる想像力をたくましくしなきゃいけない。この間の三・一一みたいな想定外なんて絶対言っちゃいけないんですよ。最悪のパターンを想定しながら、では今できることは何なのかということを考えなきゃいけない。四十万人が生き埋めになるんですよ、数字上は。それはもっと少ないかもしれない、少ない方がいいんですけれども。
もう一つ、鉄道の対応を言いましょう。
ラッシュ時の運行で車両がどれぐらいあるか、乗車数、何人ぐらい乗っているかというのを、これは鉄道局に聞いたんですけれども、わからない。朝七時、三千五百万人の首都圏に住んでいる人が、働いている人、また通学する人、だあっと乗っている。実は、JRに確認したところ、これも正確な数字じゃないんですが、朝七時台は百八十万人が車両に乗っているんです。東京メトロに聞くと、大体五十万人乗っている。さらに民鉄各社、これは確認していないんですけれども、それも入れますと、大体三百万人が朝のラッシュ時に車両に乗っているんですね。それが、震度七が一気に来た場合どうなるか。
実は、阪神大震災は、震度七のときに、あのときは五時四十六分でした。ほとんど電車は走っていなかったんだけれども、十四本中十三本の列車が脱線したんですよ。九〇%以上です。震度六強のエリアでは、十三本中三本が脱線、二三%。東京湾北部、今、震度六で想定しますけれども、この脱線の想定というのはなされていますか。
○中川国務大臣 これは、先ほど申し上げた平成十七年の予想というのがあるんですけれども、朝八時台に東京湾北部地震が発生した場合に、脱線事故によって、死者三百人、それから重傷者を含む負傷者が約一万二千二百人発生するというふうに見込まれております。
しかし、定性的には、鉄道や道路をまたぐ橋梁が被災、落下したというようなことだとか、あるいは運行中の列車や車両が被災して死傷者が増加するというような、そんな要因も加えていくと、これよりも増加をしていくというふうな推定がされております。
○高木(陽)委員 今の話でいきますと、一万人がけがをするだろう。三百万人が乗っている、ラッシュアワーです。
JRにも聞いたんですけれども、落橋、いわゆる橋が崩れたり、この補強はかなりやっているんです。ところが、御茶ノ水駅というのは崖がありますね、駅のところ。あれは実は関東大震災で崩れているんです。しかも、聞いたら、あとは、盛り土の土手になっているような駅がありますね。この駅も崩れるんです。そういう想定というのはなかなかされていない。
さらには、例えば時速百キロで走っている、脱線をする。百キロで走っているんですよ、ただ脱線じゃなくて。しかも、カーブだったら福知山線みたいになりますよ。そこには、一つの車両でラッシュアワー時は三千人が乗っているんです。三千人が一遍に脱線する、または転覆する。だから、一万人ぐらいのけがじゃないんですよ、想定としては。まあ時間にもよりますけれども。
そういうときに、では、乗客三百万人、JRに聞きました、メトロにも聞きました、とまると駅でおろすんですね。ところが、地震が来たらその場でとまりますから、駅でとまらない。そのとき、停電になるでしょう。もし安全だったら、停電じゃなければ駅まで運ぶんですけれども、それは多分できないから、その場でおろすんです。
ところが、車両のドアをあけますね、緊急にドアをあける。そうすると、ホームだったらそのままおりますけれども、線路におりるときは階段でおりますね。その階段は車両に一つしかついていないんですよ。満杯の電車の中で、しかも、高齢者や障害者や女性だとかは飛びおりることもできない。それだけでも、けが人が出ますね。
さらに問題は、では、それを何とかおろしました、駅まで連れていきました。三百万人が駅に滞留するんです。ラッシュ時だと、三百万人がさらに乗ろうとして駅に来ているんです。倍の人数ですね。これをどこに避難させるのか。今、駅と自治体がその滞留者をどうするかと検討し始めたわけです。でも、それは、駅にその三百万人もしくは倍の六百万人をずっと置いておくことはできませんよ。しかも、火災が迫ってくるかもしれない。
では、そういうとき、どこに避難をさせるか、これはどうなっていますか。
○中川国務大臣 そういう問題意識を持って検討しなければいけないということで、民間も含めた官民連携の、首都直下地震帰宅困難者等対策協議会というのを立ち上げました。
そこで今、先ほどお話しになられた六百五十万人を想定した議論をしているんですけれども、基本的には、むやみに移動させないということ、この基本原則を徹底していくということ。
それから、一斉帰宅抑制の基本方針をまとめていって、三日分の物資の備蓄を民間を含めてやっていくということ。
それから、あと、どこに導くかということ。一旦、さっきのお話のような状況になったときなんですが、これは、民間施設等も含めて、事前にそうした一時滞在施設としての協定を結んでいくということで、一つ一つ具体的に進めていきたいというふうに思っております。
○高木(陽)委員 今、滞留者という話がありました。
今、駅のところから言いましたけれども、自宅にいる、もしくは会社にいる等々はいいですけれども、例えば、電車に乗っていたり、移動していたり、買い物していたりという人が大体一千万人前後いるんですよ。一千万人をどうするかという話なんですね。
さらに言いますと、そういうことを今協議しているけれども、これも早急にやってもらいたいし、多分、話し合っても、例えば十万人、二十万人は何とかなるでしょう、または百万人ぐらいは何とかなるでしょう、残る九百万人は何とかならないんですよ。これが現実。
もう一つは避難所。これも内閣府防災担当に聞いたんです。都内の避難所というのはどれぐらいあって、収容人数はどれぐらいか、備蓄はどれぐらいあるのかと聞いた。知らない。把握していないんですよ。これは自治体の問題だということになっているんです。
縦割り行政だとか、または、国、いわゆる都道府県、市町村、それぞれがもっと連携をとらなきゃいけないんじゃないかなということでちょっと申し上げます。
東京都内、これは都庁に聞きました。
避難所の数は二千六百六十一、これは島を除きます。最大の収容人数は三百九十五万人なんですね。想定被害による避難所の生活者数、東京湾北部の場合は二百六十万人がそこにいるでしょう。三百九十九万人が避難者になるけれども、このうち、避難所以外で生活すると考える者も存在するため、二百六十万人と一応想定しているんです。
では、食料はどうなのか。一日三食、二百六十万人ですから、大体七百八十万食。一千万食近くですね。ところが、備蓄の食料は一千五百万なんですよ。二日分あるかどうか。三日何とか持ちこたえるというんですけれども、では、あとはどこから調達するかといいますと、例えば東日本のときは、三十五万人が避難所にいたんです。一日百万食ですよ。その百万食が避難所に届かなかったんです、三日間ぐらい。届いたところもある、県庁まで来たけれどもその先は行かない、そんなパターンですよ。しかも、自治体はかなり被災しているから、その避難所に対していろいろと手が打てない。では、周辺から来るか、西日本から来るかというと、多分、混乱しているから来ない。例えば東京のコンビニを見てみても、これは三・一一のときに一斉になくなりましたよ。そうでしょう。
そう考えると、日本全国でそういうのがなくなったときに、それを補給できるか。避難所に移った二百六十万人は家がないわけですから、その人たちは、一週間じゃない、一カ月もしくは二カ月、三カ月いるわけですから、その人たちの食料を当面毎日一千万食調達できるシステムをつくっておかなきゃいけないんです。
どこかから調達するじゃないんです。そういうことまで考えるのがまさに危機管理だと思うんですね。ところが、それは考えられていない。これは危ないことですよ。暴動が起きますよ、下手したら。東日本大震災で、日本はいい国だとなった。でも、そういう状況になったらどうなるかわからない。だからやってもらいたいということなんですが……(発言する者あり)いいです、ちょっと待って。もう時間なので。これは、共通認識で、責めているんじゃなくて、そういうのをやりましょうという話なんです。
もう一つは、官邸の備蓄食料というのはどれぐらいあるかと聞いたんです。これも、これは危機管理上秘密ですと。僕は、そんなにないと思うんです。どこかから買ってくればいいぐらいな感覚なんじゃないかなと思う。
官房長官、これはどうですか。
○藤村国務大臣 中央防災会議では、首都直下型地震に対して、一応三日間の備蓄をすべしということは決めていただいています。
首相官邸におきましても、具体的に今数字は申しませんが、それを上回る相当の備蓄をきちんとしている。そういうことがやはり備えである、そのように考えております。
○高木(陽)委員 例えば、総理がいざというときに指揮するわけですよ。御飯を食べないで三日間、一週間指揮できないですからね。そういうのもしっかり考えてやってもらいたいということ。
もう時間も参りましたので、これも一つ指摘だけしておきます。瓦れきの処理。
東京湾北部で、八十五万棟が焼失、全壊した場合の瓦れきが九千六百万トンなんですよ。今回は二千万トン。それの四倍、五倍、これができるわけですから、どこで処理するんだと。
そのときに考えようじゃだめですよ。今でさえ広域処理が、あれは放射能の問題もあって大変なんですけれども、首都圏で、山下公園は関東大震災でつくったと言いますけれども、九千六百万トン、一億トンです。これをどうするか。これも今からいろいろなシミュレーションをしながら考えておいていただきたいということ。
最後に、これはもう首都機能移転をした方がいいんじゃないかな、このために。何でか。三千五百万人がこの地域にいること自体が多過ぎるんですよ。これからずっと中央防災会議で内閣を挙げてやってもらうんですけれども、やってもらって、いろいろと手を打つ。でも、これは、三千五百万人、そしてそのうちの、今想定は一万一千人死ぬと言われているけれども、もっと死にますよ。関東大震災並みに十万人が一遍に亡くなるかもしれない。
そういうことを考えた場合に、やはり人口を減らすということを含めて、この首都機能移転も考えた方がいいのではないかな。今までも議論されてきましたけれども、喫緊の課題だということを御指摘申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○中井委員長 これにて高木君の質疑は終了いたしました。