第174回国会 衆議院 外務委員会 第15号 2010年05月19日
平成22年5月19日(水)
○中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。
四年間、国会を離れておりまして、その期間、いろいろなことが頭に浮かんできたわけでありますが、いつも脳裏によぎるのは、北方四島あるいは尖閣諸島、竹島、何でこれは日本の領土なのに、こんなに長い時間をかけて、この領土問題、解決の糸口すら見つからないのかなというふうに思っていたんですね。あともう一つは、横田めぐみちゃん、元気なのかな、拉致問題もマスコミでは取り上げられるけれども、何で解決できないのかな。私も拉致議連に入っておりましたものですから、そういうことが日々頭の中をよぎったわけであります。
特に、国会へ車で朝来るときに、国交省を通って、毎朝目に飛び込んでくるのが「北方の領土 かえる日 平和の日」、響きもよくて、いつもなるほどなと思って、当選以来、私はこれを見て、国会議員としてやはりやっていかなきゃいけないなというような決意を新たにしたところでありますが、四号館の石碑に刻まれているんですね。これは非常に印象的で、まだあるというか、今もあって、あれは調べてみたら、北方領土に関する標語というのがずっと毎年あるんですね。いろいろあるんです。今回、資料を取り寄せてみて、そうだったのかと。あれは昭和四十五年度の標語だということもわかりました。
そこで、とにかく私は、国会議員の仕事はもういろいろ、経済から金融から社会保障から教育からたくさんありますが、やはり突き詰めるところは、国民の生命と財産を守る、国家を守る、領土を守る、これに尽きるのではないかというふうに確信をしているところなんです。
そういう観点に立って、まず領土問題について取り上げさせていただきたいと思うんですが、きょうは、北方領土の問題、特に、外務大臣はこの後、予定がありますので、外務大臣中心にお話をして、そして途中に中学校の社会科教科書の台湾表記についてを入れて、そして時間が来るまで、また戻って北方四島、住民支援とビザなし交流、これについての質疑をさせていただきたいというふうに思います。
今申し上げましたように、領土というのは、国家を形成する上で最も基本的な要素である、国家存立の基盤ですね。しかし、日本人というのは領土問題に関してはなかなか意識が希薄である、私はそんな気がするんですね。
例えば、自分のところの敷地とか、日本は国土が狭いし、住宅地でもあるいは私有地でも、もう大変、紛争になるくらい、兄弟げんかでも、肉親でも争いをするくらいの、そういう自分のところの私有地に関しては大変、これは自分の個人の問題で絡むんですから。しかし、領土という意識が非常に日本人は希薄である。この辺のところが、僕は領土問題の原点になるんじゃないかなというふうに思っておるんです。
例えば、私の知人の大学の教師が大学生に、北方領土はどこを指すんですか、わからない。歯舞、色丹、国後、択捉、漢字は書けない、読めない。私はあるところで、ある層の人たち、レベル以上の社会的に活躍している人たちにこの漢字を書けるかと言ったら、ほとんど大人でも書けないんですね。特に択捉という字が難しいんですよ。てへんを書いて沢のこっち側を書いて、あとはてへんで足ですね。これはなかなか書けないんですね。歯舞とか国後、色丹なんかは結構書けるんですね。驚いたことに、笑っちゃったんですけれども、北方領土をキタカタ領土と読んだ大学生がいる。会津の喜多方ラーメンならおいしくて私も好きですけれども、しかし、これは冗談にならないような、しゃれにならないような話でありまして、それだけやはり領土というものに対しては、小さいときの教育、一番大事だと思うんです。
鳩山総理は、日ソ国交回復を果たされた鳩山一郎元総理のお孫さんでございまして、当然そのDNAがしっかりと受け継がれていて、ことし二月の北方領土返還要求全国大会でも、総理は、政権交代後、最も果たしたい一番大きな思いが北方領土問題の解決だとおっしゃられておりまして、私も感動しました。心強く思いました。しかし、教育現場において本当に、再三申し上げておりますように、子供のときから領土意識、領土というものの意識を高めていく必要が今一番あるんじゃないかと思うわけであります。
そこで伺いたいんですが、きょう中川文科副大臣がお越しになっておりますが、現在使用されている小中学校、高等学校の社会科の教科書で北方領土についてきちんと触れられているのか、まず答弁をお願いいたします。
○中川副大臣 ちょっと原則的な話からいきますけれども、教科用の図書というのは、民間が創意工夫を生かして著作、編集を行うというものでありまして、学習指導要領に基づいた上で、どのように記述するかというのは当該図書の著作者等の判断にゆだねられている、これが一つの制度論なんですが、その結果、今どのように記述されているかということを、一つ二つ例を挙げてみたいと思います。
一つは、小学校なんですけれども、東京書籍で、二十一年度供給本の社会科の教科書ですが、五年生です。「北方領土 北海道の北東に続く歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の島々は、もとからの日本の領土ですが、太平洋戦争後、ソビエト連邦が占領し、今は、ソビエト連邦をひきついだロシア連邦が占領しています。日本政府は、これらの島を返すように求めて、交しょうを続けています。」こういう表記であります。
それから、中学校の教科書ですけれども、これは扶桑社のものですが、公民的分野、平成二十一年度供給本なんですが、これによりますと、「わが国も近隣諸国との間で領土問題を抱えている。国後島、択捉島、色丹島、歯舞群島の北方領土、日本海上の竹島、東シナ海上の尖閣諸島については、それぞれロシア、韓国、中国がその領有を主張し、一部を支配しているが、これらの領土は歴史的にも国際法上もわが国の固有の領土である。」ということを明記しています。
例示的にこういうふうに示させていただきましたが、大体こういう形で各教科書は表記をされているということであります。
○中津川委員 もう一つ、今度、教える側、先生の方にも、領土問題、北方四島、尖閣、竹島、日本の最西端は与那国なんだと、これもしっかり教員指導もしているでしょうか。これはちょっと質問事項になかったんですが、中川副大臣。
○中川副大臣 教科書がこのように書かれているように、指導要領の中で、これは国の意思として明記をしているということでありますので、指導する際にもそのように取り計らうということになってまいります。
○中津川委員 副大臣、きょう、せっかくこういう場ですので、教育でしっかり、せめて漢字は六年生までに書けるようにすると、頑張るとお約束してください。
○中川副大臣 大事な御指摘だと思いますし、そういう形で国民にこの問題を喚起していくということでもあろうかと思いますので、しっかり受けとめさせていただきます。
○中津川委員 それでは、北方領土問題について大臣にお伺いしていきたいと思います。
まず、鳩山総理は、政権発足後、九月の十七日、ロシア側首脳との信頼関係を早く構築して、できれば半年で国民の期待にこたえたいと、北方領土問題の解決に並々ならぬ取り組み姿勢をアピールしまして、ちょうど今八カ月がたったところなんですね。どうですか、その経過、糸口は見つかりましたか、大臣。
○岡田国務大臣 鳩山総理は、北方領土の問題の解決ということに非常に力点を置いておられるというのは委員御指摘のとおりであります。その北方領土の問題の解決のためには両首脳間の信頼関係をきちんと構築しなければならない、そういう考え方で、昨年の九月、十一月、そして本年の四月、三回の日ロ首脳会談を通じ、メドベージェフ大統領との間でこの問題の解決に向けて精力的に取り組んでおられるところであります。特に、四月のワシントンで行われた日ロ首脳会談において、首脳レベルで引き続き集中的に議論していくということで一致したところであります。
ことしも、鳩山総理とメドベージェフ大統領との首脳会談の機会というのは幾つかございます。首脳間でしっかりと方向づけをしていただくということが非常に重要であるというふうに思っております。
首脳間での雰囲気というものは、私が首脳会談で同席したのはニューヨークにおける会談でありますが、非常に波長は合うという感じはいたしますので、両首脳間で大きな方向性を見出していただき、そのもとで、外相レベルあるいは事務レベルでさまざまな意見交換を行っていくということだと思っております。
○中津川委員 そこで、四月の核セキュリティーサミットの際に日ロ首脳会談で、ことしの六月から十一月にかけて北方領土問題について三回の協議をすることになったと承知していますが、会談で鳩山総理は、四島の帰属が確定した後に生じる課題は実務的にクリアされている、あとは政治レベルで解決する帰属の問題だと。ちょっと持って回った言い方で、どういうことかというと、これは当たり前の問題で、とにかく帰属の問題がすべてだ、帰属が日本のものだと確定すればあとはスムーズに物が運ぶというのは、これはもう子供でもわかることであります。
そこで、今後、年内に行われる日ロ首脳会談で、四島の帰属に集中して首脳間で政治決着を図るというのが鳩山政権の当面の対ロ政策だと受け取ってよろしいでしょうか。
○岡田国務大臣 帰属が確定した後生じる問題、課題についてもきちんと話し合いを行っておかないと、結局、帰属の問題そのものも進まないということにもなりかねないわけで、ここはこことして、それなりに議論も深めているところでございます。
しかし、重要なのは、委員も御指摘のように、帰属の問題そのものであります。本年四月の日ロ首脳会談において鳩山総理は、本年は北方領土問題について本格的に議論していきたいというふうに述べられて、メドベージェフ大統領も、領土問題から逃げるつもりはないというふうに応じ、領土問題の解決に向けて首脳レベルで集中的に話し合いを行っていくということで一致したところであります。
鳩山総理は、首脳レベルの話し合いを通じて北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結するという基本方針のもとで、領土問題の前進を図る考えであります。
○中津川委員 岡田外務大臣は、三月上旬、みずから北海道を訪問して、北方領土返還運動関係者の皆さんたちと意見交換をしたり、この積年の懸案問題に非常に積極的に動いていらっしゃるということに対しては、心から敬意を表させていただくわけなんです。
北方領土問題に関しては、首脳間だけではなくて、外相間でもしっかり議論をしていきたいというのが岡田外務大臣の姿勢であると受けとめておるんですが、残念なことに、昨年十二月に続き、ことし三月、日ロ外相会談が行われたんですが、私は、ホームページで公表しているのを拝見しましたら、会談の概要を見ると、解決したいとか議論したいとか、こういうやりとりがリフレインしているんですね、何回も繰り返されている。これは外交事ですから、すべては否定しないんですが、こういうのがあって、この四島の帰属の問題というのが、しっかり話し合っているんだろうかというところを私はぜひお聞きしなければいけないと思ったわけでありますが、いかがですか。
○岡田国務大臣 前回お会いしたときは、これはカナダにおけるG8外相会談の合間を縫っての議論ですから、そう時間がたくさんとれたわけではありません。昨年の十二月に私がモスクワに参りましたときには、かなり時間をとって、相当厳しいやりとりになったわけでございます。
私は、外交交渉というのは正面から議論すべきだ、基本的にそう考えておりますので、時々あちこちで摩擦も起こったりするわけですが、ラブロフ外相もベテランの外務大臣でありますので、そもそも論も含めて、かなり突っ込んだやりとりになったということは申し上げておきたいと思います。
ただ、それをどこまで表に出せるかというのは、別の問題であります。
○中津川委員 大臣、お忙しそうで、参議院に行かなきゃいけないということで、たくさん用意してきたんですが、もう一つ大丈夫だというふうに筆頭からありました。
二月五日に承認されたロシアの新軍事ドクトリンでは、ロシアに対する他国からの領土要求が脅威の一つに挙げられていると、脅威という言葉を使っているんですね。ということは、これはもう北方四島はロシアのものだという、ロシアから見ると、とられちゃったら怖いよという意味にもとりかねないんですね。
ロシアの新軍事ドクトリンという、非常に強硬なものに対して、岡田外務大臣、最後の答弁になるかと思いますが、的確に、お伺いしたいと思います。
○岡田国務大臣 我が国が北方領土の返還を求めているということが、このドクトリンで言うロシアの領土要求というものに該当しないことは明らかだと思います。
日ロ間においては、第二次世界大戦後、これまでに国境は画定していない。そうであるからこそ、日ロ間、両首脳が、我々の世代で北方領土問題を最終的に解決すべく、平和条約を進めるということで一致しているわけでございます。
この点に関しては、メドベージェフ大統領も、昨年十一月に、欧州諸国との間で第二次世界大戦後に画定した国境と区別する形で、日本との国境問題については閉じられていない、すなわち、画定しておらず、別の問題であるということを認めておられるというふうに考えております。
○中津川委員 ありがとうございました。
では、武正副大臣、質問を渡していますので、お答え願いたいんです。
もう一つ、昨年十二月の日ロ外相会談で、北方領土問題に関し、ラブロフ外務大臣が岡田外務大臣に、国際法及び第二次世界大戦の結果を踏まえる必要があると、ここでも強硬に出てきているんですね。これもやはり、四島はロシアのものだというような意味合いに僕はとったんですね。
これに対して、今、岡田外務大臣、お出かけになりましたけれども、どういう主張をし、反論し、また日本政府としてはどう考えているか、お尋ねしたいと思います。
○武正副大臣 中津川委員にお答えいたします。
既に、昨年九月、両首脳間で合意をし、両外相間でしっかりと協議をしていこうというようなことで、昨年の十二月の日ロ外相会談、今御指摘のところでございますが、ラブロフ外相の発言は、北方領土問題に関するロシアの原則的な立場を説明したものと認識しております。
これに対して、岡田外務大臣からは、領土問題に関し双方の原則的な立場に隔たりがあり、今議論をすべきなのは、先ほども触れました四島の帰属の問題であると反論した上で、メドベージェフ大統領、プーチン首相、鳩山総理という顔ぶれがそろっている機会を逃さずに前進を目指すべきであるという旨を述べたところであります。
首脳レベルでのやりとりを受けまして、大臣のレベル、ラブロフ外相との間でもよく議論をして、この問題を前に進めていきたい、このように考えております。
○中津川委員 最後に、この問題について、まとめで要望しておきたいんです。
六月に、二十五から二十七ですか、G8サミットがカナダでありますね。この際に予定されている日ロ首脳会談ですが、十分に総理に用意をしていただいて、十分な会談時間を確保して、内容が併記じゃなくて、ロシアはこう思う、日本はこう思うではなくて、本当に実りある会談になることを私は心から期待をしておきます。
それでは、質問を移らせていただきます。中川副大臣、忙しいところ済みませんが、よろしくお願いします。
中学校の社会科教科書、地図帳の台湾表記について、きょう皆さん方に資料をカラーのでお渡ししていると思うんですが、中学校の社会科で使用している地図帳の中身については、この件については、同僚の笠浩史衆議院議員、これは小泉内閣時代、平成十七年十月三十一日に質問主意書で出しているんですね。この中で、台湾の東側、太平洋側に国境線を引いて、台湾を中国領と表記している。
これは文科省、御存じですね。ちょっとお願いします。
○中川副大臣 はい、認識をしております。
○中津川委員 これは歴史をひもときますと、一九七二年、田中総理、大平外相のときでしたか、日中共同声明というのがありまして、我々台湾問題をやっている者には、この第三項というのは有名なわけであります。これには、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」と書いてある。続けて、ここが大事です、「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」する。「理解し、尊重」するとしているんですね。つまり、台湾を中国の領土だと承認しているとは言っていないんですよ。
これは当時、やはり考えたんだなと。今こうやって、何年かたって議論できる、この見事な表現、見事な日本国の立場。その間の歴史、きょうは中台関係については私は申し上げませんけれども、理解し、尊重して、認めていないんですよ。
そこで、日本政府、日本がまるで台湾を中国の領土であることを受け入れているかのような対応、印象を与えるんですね、地図を見ると。地図が二つありますね。帝国書院発行の「中学校社会科地図」と、東京書籍発行の「新しい社会科地図」、これは台湾は中国の領土と、だれが見てもこう書いてあります。
こういうことを、さっき私は、日本の領土意識をしっかりと国民に植えつけるのは、小学校からの教育が大事だと言った。小学校、中学校でこんな地図を見たら、台湾というのは中国のものだと思われるわけであります。
これは文科副大臣に聞くのが適当かどうかわかりませんが、武正外務副大臣もおりますので、ちょっと一言ずつお答えください。
○武正副大臣 中津川委員御指摘のとおり、日中共同声明の第三項、先ほど引用をいただいたわけでありまして、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重しているが、これを承認するとの立場ではないということであります。
サンフランシスコ平和条約に基づき、台湾に対するすべての権利等を放棄しているので、日中共同声明第三項において中国側が表明しているような台湾の法的地位に関して何らかの認定を行う立場にはないわけでありまして、今御指摘の教科用図書は、台湾に関する以上の我が国の政府の立場とも合致する検定基準に照らし、教科書検定審議会により教科用図書として適切であると判断されたものと承知しておりまして、外務省としてお答えする立場にないということでございます。
○中津川委員 今の外務副大臣の発言を踏まえて、文科の副大臣に質問したいんです。
そういうことだ、承認はしていないということであって、きょう、ちゃんとこの正式な国会の委員会の場で武正副大臣が堂々と発言をされたわけであります。そうなると、これはやはり誤解を与えちゃいますよ、副大臣。これは次から検討してください。
一緒に検定の基準についてもお答え願いたいと思うんですが、これは検定基準があると思うんです。これは政府の見解があると思うんですが、今、そういう答弁が出ました。そういうことであるならば、これはちょっと文科省の方も、こんな誤解を招くような、地図が中国のものだと思われるようなことをこれから指導する、これからなくすというような前向きな考えを述べてもらいたいんです。
○中川副大臣 お答えをしたいと思います。
文科省が独自の基準をつくってこうした地図を著しているということではありませんで、これは国家として整合性を持たせたような仕組みということになっております。
文科省としては、外国の国名の表記については、検討基準の中で義務教育諸学校教科用図書検定基準というものをつくっています。この基準の中では、地名、人名それから地図等々の表記については、外国の国名の表記は原則として、外務省編集協力の中の「世界の国一覧表」というものがあるんですけれども、これによって表記をすることというふうに決めております。
この外務省による「世界の国一覧表」においては、台湾については「その他の主な地域」という分類にされておりまして、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの立場を表明しており、日本国政府は、その立場を十分理解し尊重することを明らかにしている」というふうに解説が付されています。
御指摘の教科書記述については、教科書発行者においてこの「世界の国一覧表」の記載を踏まえて教科用図書を編集したものだというふうに考えておりまして、そうした意味で、検定基準に照らしていっても、教科書検定審議会の専門的な審議によってこれを適切であると判断されたものというふうに理解をしているということであります。
〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕
○中津川委員 武正副大臣、今こうやって質疑をしておりまして、台湾問題、この間も私の質疑に前向きな考えを述べて、良識派の武正さんでありますから、私の意図はよくわかっていると思うんですが、台湾は、今、文科副大臣は、その何とかというのにそういうことがあるから地域だとおっしゃっている。確かに、私が一期、二期のときにも、地域と発言する大臣もいました。でも、国と言う大臣もいたんですよ。これはやはり主権国家であることは間違いないと私は思いますよ。
だって、民主主義と自由と人権がこれだけ見事になっていて、それで選挙をやっているんですよ。中国は選挙じゃないですからね。選挙で選ばれて、政権交代を日本よりダイナミックにやって、経済力なんかは今、台湾の方がありますよ。
それで、台湾の人というのは気持ちがすごくいい。韓国とか中国なんかは悪口を言うばかりじゃないですか。だけれども、日本が統治していたとき、台湾大学、東大と同じものをつくってくれた、あるいは上下水道をやってくれた、日本の官僚制度を取り入れてくれた、八田さんのダム、そういうようなものもいまだに感謝しているんですね。だから、今、日本人より日本人的なんですよ。あそこへ行くと僕はすごくふるさとを感じて、ああ、本当に自分は日本人なんだな、すばらしい人たちだなと。一生懸命、小さいけれども、いつ中国からとられるかもしれないと思って危機感を持って生活しているんですよ。
それで、今の一連の答えでありますが、外国人登録証も、私が最初、一期のときに質問したときは、台湾の人は、国籍が中国で、台湾省になっているんですよ。そんな何かフィクションのような状態だったんですね。それが今、やはりこの登録証も、台湾人と中国人は違うんだというのを、今度ちゃんと台湾になるような流れになっていますよね、法務省で。
そういうことで、私は、台湾を、文化、経済交流、もちろん教育交流、歴史的なつながりはもちろんですけれども、この外務委員会で取り上げるのは、安全保障上最も大事なところなんですよ。あそこをみんな船が通ってくるんですから、台湾海峡。あそこがもしとられちゃったら、日本に入ってこられないんですよ。もっと台湾を大事にしなきゃだめだと思います。
台湾は、民進党から国民党にかわって、前は国民党ですよね、一党しかなかった。それを、李登輝さんという立派な方がいて、選挙をやって国民党が選ばれ、それから民進党になって、今、国民党にかわりました。日本の国会でも、台湾のそういうものもしっかりと理解していこうという、もう中国派も台湾派もないんですよ。中国も大事なんだ、台湾も大事だ、そういう考えでやはり外務省、そして文科省もひとつ取り組んでもらいたいなと思うわけであります。
ですから、日本には正規の国交がないということで、議員外交しかないんですよ。私は、もうしょっちゅう台湾に行って、本当に町の中に入って、あるいは要人と会ったりしてやっているわけでありますが、日本・台湾安保経済研究会というのを私がつくって、今、九十人近くなって、民主党の議連に、大きくなりましたけれども。ですから、今、日本は代表処という形で、大使館がないんですね。でも、我々は大使と呼んで、前の民進党のときは、許世楷さんという大変人格的にも立派な人でありました。現在は、馮寄台さんという、この人もまた明るくて立派な人であります。
本当に一生懸命、議員外交をやっている、ここのところをぜひきょう両副大臣に御理解いただいて、台湾のあらゆる面での重要性をひとつ御理解していただきたい。そういうところで行政をやっていただきたい。
私、るる申し上げましたが、一言ずつ御意見を伺って終わりたいというふうに思います。
○武正副大臣 中津川委員にお答えいたします。
台湾とのそうした議員交流にかける中津川委員の思い、またそれを実際に行動に移されていること、今御披瀝をいただいたわけであります。
先ほど、我が国政府の立場についてはもう申し述べたとおりであります。そうした中、今、安全保障上のいろいろな大事な視点ということで台湾海峡についても述べられたわけでありますが、委員のさまざまな強い思いというものも、しっかりとまた承らせていただいたところでございます。
○中川副大臣 難しい外交バランスの中で今の政府のスタンスがあるわけですが、文科省として公式にお答えをするとすれば、先ほどのような答えになります。
しかし、個人的には、心情的に中津川委員と軌を一にするところは大いにありまして、台湾を大事にしていくということについても、しっかり、私たちとしてもこれから先も持ち続けていく心情だというふうに思っております。これは個人的な見解として表明をさせていただきます。
○中津川委員 両副大臣、ありがとうございました。特に中川副大臣には、きょうは忙しいという中で最後までおつき合いいただいて、ありがとうございます。
あと、私、北方四島住民支援とビザなし交流も勉強してきて用意したんですが、これは質問主意書でさせていただきたいと思います。竹島問題も、もうきょうはこれはできないと思ったんですが、これも質問主意書でやらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
四年間、国会を離れておりまして、その期間、いろいろなことが頭に浮かんできたわけでありますが、いつも脳裏によぎるのは、北方四島あるいは尖閣諸島、竹島、何でこれは日本の領土なのに、こんなに長い時間をかけて、この領土問題、解決の糸口すら見つからないのかなというふうに思っていたんですね。あともう一つは、横田めぐみちゃん、元気なのかな、拉致問題もマスコミでは取り上げられるけれども、何で解決できないのかな。私も拉致議連に入っておりましたものですから、そういうことが日々頭の中をよぎったわけであります。
特に、国会へ車で朝来るときに、国交省を通って、毎朝目に飛び込んでくるのが「北方の領土 かえる日 平和の日」、響きもよくて、いつもなるほどなと思って、当選以来、私はこれを見て、国会議員としてやはりやっていかなきゃいけないなというような決意を新たにしたところでありますが、四号館の石碑に刻まれているんですね。これは非常に印象的で、まだあるというか、今もあって、あれは調べてみたら、北方領土に関する標語というのがずっと毎年あるんですね。いろいろあるんです。今回、資料を取り寄せてみて、そうだったのかと。あれは昭和四十五年度の標語だということもわかりました。
そこで、とにかく私は、国会議員の仕事はもういろいろ、経済から金融から社会保障から教育からたくさんありますが、やはり突き詰めるところは、国民の生命と財産を守る、国家を守る、領土を守る、これに尽きるのではないかというふうに確信をしているところなんです。
そういう観点に立って、まず領土問題について取り上げさせていただきたいと思うんですが、きょうは、北方領土の問題、特に、外務大臣はこの後、予定がありますので、外務大臣中心にお話をして、そして途中に中学校の社会科教科書の台湾表記についてを入れて、そして時間が来るまで、また戻って北方四島、住民支援とビザなし交流、これについての質疑をさせていただきたいというふうに思います。
今申し上げましたように、領土というのは、国家を形成する上で最も基本的な要素である、国家存立の基盤ですね。しかし、日本人というのは領土問題に関してはなかなか意識が希薄である、私はそんな気がするんですね。
例えば、自分のところの敷地とか、日本は国土が狭いし、住宅地でもあるいは私有地でも、もう大変、紛争になるくらい、兄弟げんかでも、肉親でも争いをするくらいの、そういう自分のところの私有地に関しては大変、これは自分の個人の問題で絡むんですから。しかし、領土という意識が非常に日本人は希薄である。この辺のところが、僕は領土問題の原点になるんじゃないかなというふうに思っておるんです。
例えば、私の知人の大学の教師が大学生に、北方領土はどこを指すんですか、わからない。歯舞、色丹、国後、択捉、漢字は書けない、読めない。私はあるところで、ある層の人たち、レベル以上の社会的に活躍している人たちにこの漢字を書けるかと言ったら、ほとんど大人でも書けないんですね。特に択捉という字が難しいんですよ。てへんを書いて沢のこっち側を書いて、あとはてへんで足ですね。これはなかなか書けないんですね。歯舞とか国後、色丹なんかは結構書けるんですね。驚いたことに、笑っちゃったんですけれども、北方領土をキタカタ領土と読んだ大学生がいる。会津の喜多方ラーメンならおいしくて私も好きですけれども、しかし、これは冗談にならないような、しゃれにならないような話でありまして、それだけやはり領土というものに対しては、小さいときの教育、一番大事だと思うんです。
鳩山総理は、日ソ国交回復を果たされた鳩山一郎元総理のお孫さんでございまして、当然そのDNAがしっかりと受け継がれていて、ことし二月の北方領土返還要求全国大会でも、総理は、政権交代後、最も果たしたい一番大きな思いが北方領土問題の解決だとおっしゃられておりまして、私も感動しました。心強く思いました。しかし、教育現場において本当に、再三申し上げておりますように、子供のときから領土意識、領土というものの意識を高めていく必要が今一番あるんじゃないかと思うわけであります。
そこで伺いたいんですが、きょう中川文科副大臣がお越しになっておりますが、現在使用されている小中学校、高等学校の社会科の教科書で北方領土についてきちんと触れられているのか、まず答弁をお願いいたします。
○中川副大臣 ちょっと原則的な話からいきますけれども、教科用の図書というのは、民間が創意工夫を生かして著作、編集を行うというものでありまして、学習指導要領に基づいた上で、どのように記述するかというのは当該図書の著作者等の判断にゆだねられている、これが一つの制度論なんですが、その結果、今どのように記述されているかということを、一つ二つ例を挙げてみたいと思います。
一つは、小学校なんですけれども、東京書籍で、二十一年度供給本の社会科の教科書ですが、五年生です。「北方領土 北海道の北東に続く歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の島々は、もとからの日本の領土ですが、太平洋戦争後、ソビエト連邦が占領し、今は、ソビエト連邦をひきついだロシア連邦が占領しています。日本政府は、これらの島を返すように求めて、交しょうを続けています。」こういう表記であります。
それから、中学校の教科書ですけれども、これは扶桑社のものですが、公民的分野、平成二十一年度供給本なんですが、これによりますと、「わが国も近隣諸国との間で領土問題を抱えている。国後島、択捉島、色丹島、歯舞群島の北方領土、日本海上の竹島、東シナ海上の尖閣諸島については、それぞれロシア、韓国、中国がその領有を主張し、一部を支配しているが、これらの領土は歴史的にも国際法上もわが国の固有の領土である。」ということを明記しています。
例示的にこういうふうに示させていただきましたが、大体こういう形で各教科書は表記をされているということであります。
○中津川委員 もう一つ、今度、教える側、先生の方にも、領土問題、北方四島、尖閣、竹島、日本の最西端は与那国なんだと、これもしっかり教員指導もしているでしょうか。これはちょっと質問事項になかったんですが、中川副大臣。
○中川副大臣 教科書がこのように書かれているように、指導要領の中で、これは国の意思として明記をしているということでありますので、指導する際にもそのように取り計らうということになってまいります。
○中津川委員 副大臣、きょう、せっかくこういう場ですので、教育でしっかり、せめて漢字は六年生までに書けるようにすると、頑張るとお約束してください。
○中川副大臣 大事な御指摘だと思いますし、そういう形で国民にこの問題を喚起していくということでもあろうかと思いますので、しっかり受けとめさせていただきます。
○中津川委員 それでは、北方領土問題について大臣にお伺いしていきたいと思います。
まず、鳩山総理は、政権発足後、九月の十七日、ロシア側首脳との信頼関係を早く構築して、できれば半年で国民の期待にこたえたいと、北方領土問題の解決に並々ならぬ取り組み姿勢をアピールしまして、ちょうど今八カ月がたったところなんですね。どうですか、その経過、糸口は見つかりましたか、大臣。
○岡田国務大臣 鳩山総理は、北方領土の問題の解決ということに非常に力点を置いておられるというのは委員御指摘のとおりであります。その北方領土の問題の解決のためには両首脳間の信頼関係をきちんと構築しなければならない、そういう考え方で、昨年の九月、十一月、そして本年の四月、三回の日ロ首脳会談を通じ、メドベージェフ大統領との間でこの問題の解決に向けて精力的に取り組んでおられるところであります。特に、四月のワシントンで行われた日ロ首脳会談において、首脳レベルで引き続き集中的に議論していくということで一致したところであります。
ことしも、鳩山総理とメドベージェフ大統領との首脳会談の機会というのは幾つかございます。首脳間でしっかりと方向づけをしていただくということが非常に重要であるというふうに思っております。
首脳間での雰囲気というものは、私が首脳会談で同席したのはニューヨークにおける会談でありますが、非常に波長は合うという感じはいたしますので、両首脳間で大きな方向性を見出していただき、そのもとで、外相レベルあるいは事務レベルでさまざまな意見交換を行っていくということだと思っております。
○中津川委員 そこで、四月の核セキュリティーサミットの際に日ロ首脳会談で、ことしの六月から十一月にかけて北方領土問題について三回の協議をすることになったと承知していますが、会談で鳩山総理は、四島の帰属が確定した後に生じる課題は実務的にクリアされている、あとは政治レベルで解決する帰属の問題だと。ちょっと持って回った言い方で、どういうことかというと、これは当たり前の問題で、とにかく帰属の問題がすべてだ、帰属が日本のものだと確定すればあとはスムーズに物が運ぶというのは、これはもう子供でもわかることであります。
そこで、今後、年内に行われる日ロ首脳会談で、四島の帰属に集中して首脳間で政治決着を図るというのが鳩山政権の当面の対ロ政策だと受け取ってよろしいでしょうか。
○岡田国務大臣 帰属が確定した後生じる問題、課題についてもきちんと話し合いを行っておかないと、結局、帰属の問題そのものも進まないということにもなりかねないわけで、ここはこことして、それなりに議論も深めているところでございます。
しかし、重要なのは、委員も御指摘のように、帰属の問題そのものであります。本年四月の日ロ首脳会談において鳩山総理は、本年は北方領土問題について本格的に議論していきたいというふうに述べられて、メドベージェフ大統領も、領土問題から逃げるつもりはないというふうに応じ、領土問題の解決に向けて首脳レベルで集中的に話し合いを行っていくということで一致したところであります。
鳩山総理は、首脳レベルの話し合いを通じて北方四島の帰属の問題を最終的に解決して平和条約を締結するという基本方針のもとで、領土問題の前進を図る考えであります。
○中津川委員 岡田外務大臣は、三月上旬、みずから北海道を訪問して、北方領土返還運動関係者の皆さんたちと意見交換をしたり、この積年の懸案問題に非常に積極的に動いていらっしゃるということに対しては、心から敬意を表させていただくわけなんです。
北方領土問題に関しては、首脳間だけではなくて、外相間でもしっかり議論をしていきたいというのが岡田外務大臣の姿勢であると受けとめておるんですが、残念なことに、昨年十二月に続き、ことし三月、日ロ外相会談が行われたんですが、私は、ホームページで公表しているのを拝見しましたら、会談の概要を見ると、解決したいとか議論したいとか、こういうやりとりがリフレインしているんですね、何回も繰り返されている。これは外交事ですから、すべては否定しないんですが、こういうのがあって、この四島の帰属の問題というのが、しっかり話し合っているんだろうかというところを私はぜひお聞きしなければいけないと思ったわけでありますが、いかがですか。
○岡田国務大臣 前回お会いしたときは、これはカナダにおけるG8外相会談の合間を縫っての議論ですから、そう時間がたくさんとれたわけではありません。昨年の十二月に私がモスクワに参りましたときには、かなり時間をとって、相当厳しいやりとりになったわけでございます。
私は、外交交渉というのは正面から議論すべきだ、基本的にそう考えておりますので、時々あちこちで摩擦も起こったりするわけですが、ラブロフ外相もベテランの外務大臣でありますので、そもそも論も含めて、かなり突っ込んだやりとりになったということは申し上げておきたいと思います。
ただ、それをどこまで表に出せるかというのは、別の問題であります。
○中津川委員 大臣、お忙しそうで、参議院に行かなきゃいけないということで、たくさん用意してきたんですが、もう一つ大丈夫だというふうに筆頭からありました。
二月五日に承認されたロシアの新軍事ドクトリンでは、ロシアに対する他国からの領土要求が脅威の一つに挙げられていると、脅威という言葉を使っているんですね。ということは、これはもう北方四島はロシアのものだという、ロシアから見ると、とられちゃったら怖いよという意味にもとりかねないんですね。
ロシアの新軍事ドクトリンという、非常に強硬なものに対して、岡田外務大臣、最後の答弁になるかと思いますが、的確に、お伺いしたいと思います。
○岡田国務大臣 我が国が北方領土の返還を求めているということが、このドクトリンで言うロシアの領土要求というものに該当しないことは明らかだと思います。
日ロ間においては、第二次世界大戦後、これまでに国境は画定していない。そうであるからこそ、日ロ間、両首脳が、我々の世代で北方領土問題を最終的に解決すべく、平和条約を進めるということで一致しているわけでございます。
この点に関しては、メドベージェフ大統領も、昨年十一月に、欧州諸国との間で第二次世界大戦後に画定した国境と区別する形で、日本との国境問題については閉じられていない、すなわち、画定しておらず、別の問題であるということを認めておられるというふうに考えております。
○中津川委員 ありがとうございました。
では、武正副大臣、質問を渡していますので、お答え願いたいんです。
もう一つ、昨年十二月の日ロ外相会談で、北方領土問題に関し、ラブロフ外務大臣が岡田外務大臣に、国際法及び第二次世界大戦の結果を踏まえる必要があると、ここでも強硬に出てきているんですね。これもやはり、四島はロシアのものだというような意味合いに僕はとったんですね。
これに対して、今、岡田外務大臣、お出かけになりましたけれども、どういう主張をし、反論し、また日本政府としてはどう考えているか、お尋ねしたいと思います。
○武正副大臣 中津川委員にお答えいたします。
既に、昨年九月、両首脳間で合意をし、両外相間でしっかりと協議をしていこうというようなことで、昨年の十二月の日ロ外相会談、今御指摘のところでございますが、ラブロフ外相の発言は、北方領土問題に関するロシアの原則的な立場を説明したものと認識しております。
これに対して、岡田外務大臣からは、領土問題に関し双方の原則的な立場に隔たりがあり、今議論をすべきなのは、先ほども触れました四島の帰属の問題であると反論した上で、メドベージェフ大統領、プーチン首相、鳩山総理という顔ぶれがそろっている機会を逃さずに前進を目指すべきであるという旨を述べたところであります。
首脳レベルでのやりとりを受けまして、大臣のレベル、ラブロフ外相との間でもよく議論をして、この問題を前に進めていきたい、このように考えております。
○中津川委員 最後に、この問題について、まとめで要望しておきたいんです。
六月に、二十五から二十七ですか、G8サミットがカナダでありますね。この際に予定されている日ロ首脳会談ですが、十分に総理に用意をしていただいて、十分な会談時間を確保して、内容が併記じゃなくて、ロシアはこう思う、日本はこう思うではなくて、本当に実りある会談になることを私は心から期待をしておきます。
それでは、質問を移らせていただきます。中川副大臣、忙しいところ済みませんが、よろしくお願いします。
中学校の社会科教科書、地図帳の台湾表記について、きょう皆さん方に資料をカラーのでお渡ししていると思うんですが、中学校の社会科で使用している地図帳の中身については、この件については、同僚の笠浩史衆議院議員、これは小泉内閣時代、平成十七年十月三十一日に質問主意書で出しているんですね。この中で、台湾の東側、太平洋側に国境線を引いて、台湾を中国領と表記している。
これは文科省、御存じですね。ちょっとお願いします。
○中川副大臣 はい、認識をしております。
○中津川委員 これは歴史をひもときますと、一九七二年、田中総理、大平外相のときでしたか、日中共同声明というのがありまして、我々台湾問題をやっている者には、この第三項というのは有名なわけであります。これには、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」と書いてある。続けて、ここが大事です、「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」する。「理解し、尊重」するとしているんですね。つまり、台湾を中国の領土だと承認しているとは言っていないんですよ。
これは当時、やはり考えたんだなと。今こうやって、何年かたって議論できる、この見事な表現、見事な日本国の立場。その間の歴史、きょうは中台関係については私は申し上げませんけれども、理解し、尊重して、認めていないんですよ。
そこで、日本政府、日本がまるで台湾を中国の領土であることを受け入れているかのような対応、印象を与えるんですね、地図を見ると。地図が二つありますね。帝国書院発行の「中学校社会科地図」と、東京書籍発行の「新しい社会科地図」、これは台湾は中国の領土と、だれが見てもこう書いてあります。
こういうことを、さっき私は、日本の領土意識をしっかりと国民に植えつけるのは、小学校からの教育が大事だと言った。小学校、中学校でこんな地図を見たら、台湾というのは中国のものだと思われるわけであります。
これは文科副大臣に聞くのが適当かどうかわかりませんが、武正外務副大臣もおりますので、ちょっと一言ずつお答えください。
○武正副大臣 中津川委員御指摘のとおり、日中共同声明の第三項、先ほど引用をいただいたわけでありまして、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重しているが、これを承認するとの立場ではないということであります。
サンフランシスコ平和条約に基づき、台湾に対するすべての権利等を放棄しているので、日中共同声明第三項において中国側が表明しているような台湾の法的地位に関して何らかの認定を行う立場にはないわけでありまして、今御指摘の教科用図書は、台湾に関する以上の我が国の政府の立場とも合致する検定基準に照らし、教科書検定審議会により教科用図書として適切であると判断されたものと承知しておりまして、外務省としてお答えする立場にないということでございます。
○中津川委員 今の外務副大臣の発言を踏まえて、文科の副大臣に質問したいんです。
そういうことだ、承認はしていないということであって、きょう、ちゃんとこの正式な国会の委員会の場で武正副大臣が堂々と発言をされたわけであります。そうなると、これはやはり誤解を与えちゃいますよ、副大臣。これは次から検討してください。
一緒に検定の基準についてもお答え願いたいと思うんですが、これは検定基準があると思うんです。これは政府の見解があると思うんですが、今、そういう答弁が出ました。そういうことであるならば、これはちょっと文科省の方も、こんな誤解を招くような、地図が中国のものだと思われるようなことをこれから指導する、これからなくすというような前向きな考えを述べてもらいたいんです。
○中川副大臣 お答えをしたいと思います。
文科省が独自の基準をつくってこうした地図を著しているということではありませんで、これは国家として整合性を持たせたような仕組みということになっております。
文科省としては、外国の国名の表記については、検討基準の中で義務教育諸学校教科用図書検定基準というものをつくっています。この基準の中では、地名、人名それから地図等々の表記については、外国の国名の表記は原則として、外務省編集協力の中の「世界の国一覧表」というものがあるんですけれども、これによって表記をすることというふうに決めております。
この外務省による「世界の国一覧表」においては、台湾については「その他の主な地域」という分類にされておりまして、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの立場を表明しており、日本国政府は、その立場を十分理解し尊重することを明らかにしている」というふうに解説が付されています。
御指摘の教科書記述については、教科書発行者においてこの「世界の国一覧表」の記載を踏まえて教科用図書を編集したものだというふうに考えておりまして、そうした意味で、検定基準に照らしていっても、教科書検定審議会の専門的な審議によってこれを適切であると判断されたものというふうに理解をしているということであります。
〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕
○中津川委員 武正副大臣、今こうやって質疑をしておりまして、台湾問題、この間も私の質疑に前向きな考えを述べて、良識派の武正さんでありますから、私の意図はよくわかっていると思うんですが、台湾は、今、文科副大臣は、その何とかというのにそういうことがあるから地域だとおっしゃっている。確かに、私が一期、二期のときにも、地域と発言する大臣もいました。でも、国と言う大臣もいたんですよ。これはやはり主権国家であることは間違いないと私は思いますよ。
だって、民主主義と自由と人権がこれだけ見事になっていて、それで選挙をやっているんですよ。中国は選挙じゃないですからね。選挙で選ばれて、政権交代を日本よりダイナミックにやって、経済力なんかは今、台湾の方がありますよ。
それで、台湾の人というのは気持ちがすごくいい。韓国とか中国なんかは悪口を言うばかりじゃないですか。だけれども、日本が統治していたとき、台湾大学、東大と同じものをつくってくれた、あるいは上下水道をやってくれた、日本の官僚制度を取り入れてくれた、八田さんのダム、そういうようなものもいまだに感謝しているんですね。だから、今、日本人より日本人的なんですよ。あそこへ行くと僕はすごくふるさとを感じて、ああ、本当に自分は日本人なんだな、すばらしい人たちだなと。一生懸命、小さいけれども、いつ中国からとられるかもしれないと思って危機感を持って生活しているんですよ。
それで、今の一連の答えでありますが、外国人登録証も、私が最初、一期のときに質問したときは、台湾の人は、国籍が中国で、台湾省になっているんですよ。そんな何かフィクションのような状態だったんですね。それが今、やはりこの登録証も、台湾人と中国人は違うんだというのを、今度ちゃんと台湾になるような流れになっていますよね、法務省で。
そういうことで、私は、台湾を、文化、経済交流、もちろん教育交流、歴史的なつながりはもちろんですけれども、この外務委員会で取り上げるのは、安全保障上最も大事なところなんですよ。あそこをみんな船が通ってくるんですから、台湾海峡。あそこがもしとられちゃったら、日本に入ってこられないんですよ。もっと台湾を大事にしなきゃだめだと思います。
台湾は、民進党から国民党にかわって、前は国民党ですよね、一党しかなかった。それを、李登輝さんという立派な方がいて、選挙をやって国民党が選ばれ、それから民進党になって、今、国民党にかわりました。日本の国会でも、台湾のそういうものもしっかりと理解していこうという、もう中国派も台湾派もないんですよ。中国も大事なんだ、台湾も大事だ、そういう考えでやはり外務省、そして文科省もひとつ取り組んでもらいたいなと思うわけであります。
ですから、日本には正規の国交がないということで、議員外交しかないんですよ。私は、もうしょっちゅう台湾に行って、本当に町の中に入って、あるいは要人と会ったりしてやっているわけでありますが、日本・台湾安保経済研究会というのを私がつくって、今、九十人近くなって、民主党の議連に、大きくなりましたけれども。ですから、今、日本は代表処という形で、大使館がないんですね。でも、我々は大使と呼んで、前の民進党のときは、許世楷さんという大変人格的にも立派な人でありました。現在は、馮寄台さんという、この人もまた明るくて立派な人であります。
本当に一生懸命、議員外交をやっている、ここのところをぜひきょう両副大臣に御理解いただいて、台湾のあらゆる面での重要性をひとつ御理解していただきたい。そういうところで行政をやっていただきたい。
私、るる申し上げましたが、一言ずつ御意見を伺って終わりたいというふうに思います。
○武正副大臣 中津川委員にお答えいたします。
台湾とのそうした議員交流にかける中津川委員の思い、またそれを実際に行動に移されていること、今御披瀝をいただいたわけであります。
先ほど、我が国政府の立場についてはもう申し述べたとおりであります。そうした中、今、安全保障上のいろいろな大事な視点ということで台湾海峡についても述べられたわけでありますが、委員のさまざまな強い思いというものも、しっかりとまた承らせていただいたところでございます。
○中川副大臣 難しい外交バランスの中で今の政府のスタンスがあるわけですが、文科省として公式にお答えをするとすれば、先ほどのような答えになります。
しかし、個人的には、心情的に中津川委員と軌を一にするところは大いにありまして、台湾を大事にしていくということについても、しっかり、私たちとしてもこれから先も持ち続けていく心情だというふうに思っております。これは個人的な見解として表明をさせていただきます。
○中津川委員 両副大臣、ありがとうございました。特に中川副大臣には、きょうは忙しいという中で最後までおつき合いいただいて、ありがとうございます。
あと、私、北方四島住民支援とビザなし交流も勉強してきて用意したんですが、これは質問主意書でさせていただきたいと思います。竹島問題も、もうきょうはこれはできないと思ったんですが、これも質問主意書でやらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。